俺たちの夏

南田朗 作
　4

　家に帰った俺はどんなカメラを持っていけばいいのか悩んだ。シャッター音がするのはマズイ。画質のいい一眼レフは諦めて、明るいレンズが付いているコンパクトタイプのデジカメを選んだ。通風口の格子越しにどれだけ撮れるか不安だったが、とにかく美由紀さんの姿をカメラに収めたかった。

　美由紀さんはどんな風にオナニーをするんだろう。それを想像するだけで鼓動が高まる。おまけに写真や動画が撮れる。興奮が収まらず俺は風呂場で見た美由紀さんの裸を思い出しながら一発抜いてしまった。

　陽二から電話がかかってきた。「やっぱ、やめにする」なんで言われたらどうしようと思いながら通話ボタンを押した。

「もしもし、どしたの？」

「ちょっと早く来いよ。物音立てたらマズイから天井裏で待ってた方がいい」

「わかった。いまから行く」

「通用口は開けとくから離れに直接来るんだぞ」

「わかってるって」

「じゃあな」

　俺はホッとしながら電話を切った。

　敷地が広い陽二の家に気づかれないように入るのは簡単だ。むしろ、親の目を盗んで家を出る方が気をつかうくらいだ。部屋の窓ガラスを軽く叩くと、すぐに陽二が顔を出した。

「義姉さん、台所にいるから今がチャンスだ」

　窓を開けるなり陽二はそう言った。

　古い造りの家だから水回りの大きな変更ができず、台所は離れとは反対側の端にある。俺たちは足音を忍ばせて母屋へ入り、例の納戸へ向かった。

「もうダクトは外してあるから」

　陽二は寝室の方向へ慎重に進みながら言う。

「ちょうどいい。カメラのテストしたかったから」

「通風口から撮れるの？」

「うん。見れるんだから撮れるはず」

「ふ〜ん」

「心配するなよ。フラッシュはオフにして光らないし、消音モードでシャッターや他の音もしないからバレるはずないよ」

「でも、通風口って15センチ角くらいだから、二人で見たらいっぱいじゃね？」

「まっ、なんとかなるよ。小っちゃな三脚もあるし」

「俺はいつも見てるから今日は直人に譲るよ」

「悪いな・・・」

　俺はそう言いながら三脚にカメラをセットして通風口の脇に置いた。スイッチを入れると薄暗い室内が背面液晶に浮かび上がった。

「やっぱマズイな」

「なにが？」

「液晶の灯りでバレちゃいそう」

「こうすりゃ大丈夫だよ」

　俺はバリアングルになっている液晶を裏返しにする。写真を撮っていいと言ったものの、まだ陽二には迷いがあるらしい。

「無理にとは言わないけどさ、やっぱヤなわけ？」

「あ・・・うん・・・いいよ・・・」

　生返事する陽二。そのとき部屋の灯りが点いて美由紀さんが入ってきた。

　水音がする風呂場と違って少しでも物音を立てたらバレそうなので緊張する。

　部屋に入るなり美由紀さんはジーンズを脱いだ。ピンクのTシャツがミニのワンピースみたいで色っぽい。ふとももの白さが眩しかった。

　ワードローブを開けて手にしたのは透明のぶっといバイブレーターだった。昼に見たやつだ。これから起こることを想像して俺は音を立てないようにツバを飲み込んだ。

　枕元にバイブレーターを置いた美由紀さんは自然な動作でパンティを脱いでジーンズを掛けた化粧代の椅子に乗せた。

　そしてベッドに横になる。

　俺たちの位置からだと下から見上げるようなアングルだ。

　少し立てた膝の上に杉の木を逆さにしたように生えているヘアーが見える。

　おれは思わずシャッターを押していた。オートフォーカスの補助光も切っているからピント合わせも遅い。レンズが動く小さなモーター音さえ聞こえてしまわないかドキドキした。

　美由紀さんの右手が股間へ伸びていく。

　左手はTシャツの裾の中へ。あの豊かな胸を搾るように動いている。

　俺はカメラを動画モードにしていなかったことを後悔していた。しかし背面液晶を開いたら光が漏れてしまう。何度もシャッターを押しながら俺は美由紀さんの行為を凝視し続けた。

「はぁん・・・」

　甘い吐息のような声がかすかに聞こえる。

　右手の指先が細かく動いている。

　美由紀さんは目を閉じて、なにかに堪えるような表情をしている。

「あん・・・」

　さっきより明確な声がして腰がうねった。

「ああ・・・あん・・・」

　指の動きが激しくなる。大きくあそこをなぞるようにしている。

　ほんとうはあそこがもっと見たいんだけど指の陰になってよくわからない。脚だって大きく開いているわけじゃない。俺たちに見せようとしてるんじゃないから当たり前だが、もどかしさと興奮がない交ぜになって、何も考えることができなかった。

　それでも自分を慰める美由紀さんの姿はエロさ全開だ。目を離すことなんてできない。

　どれくらい時間が経っただろう。美由紀さんは左手をTシャツから抜いて枕元を探りはじめた。そしてバイブレーターをつかむと同時に根本にあるスイッチを入れた。

　ヴィィィィ〜ン

　蜂の羽音のような音が部屋に響く。

「あうっ・・・んっ！」

　二股になったバイブレーターの小さい方の突起をあそこへ押し当てたとき美由紀さんは大きな声を出してビクンと痙攣した。陽二の言ったとおりだ。

「ああ・・・んっ！」

　甘い声をあげ、腰を浮かせて、足の指を鍵型に曲げながら自分を慰める美由紀さんは最高にエロかった。

　女のオナニーがこんなにきれいなものだとは思わなかった俺はシャッターを押すのも忘れて見入ってしまう。

　やがて美由紀さんはうつ伏せになって尻を突き出すような恰好になった。

　花のつぼみのようなお尻の穴が蜜で濡れていた。淡くヘアーが生えた肉の膨らみが合わさっている。夢にまで見た美由紀さんのオマ○コがそこにあった。

　美由紀さんは両手でバイブレーターを持って先端をその部分にあてがう。

「はぁんっ！」

　先の方が沈み込んだとき、また甘い声が漏れる。

　ズブズブとバイブレーターが埋没していく。

　それは、それは凄い眺めだった。

　まるで自分がバイブレーターになってしまったような気がした。

「あんっ！」

　バイブレーターを根本まで飲み込み、小さな突起があそこへ触れたのが合図のように美由紀さんは喘いだ。

「あんっ・・・ああんっ！」

　美由紀さんはバイブレーターを3センチくらい引き抜き、また根本まで押し込む。その動きに合わせて甘い声がする。

　俺は風呂場を覗いていたときのように自分のものをしごいていた。

「あんっ！　あんっ！　あんっ！」

　美由紀さんの声に合わせて俺も指を動かす。

　その間隔がどんどん短くなっていった。

「ああ〜んっ！！」

　高い喘ぎとともに美由紀さんがビクンビクンと痙攣したとき、俺もその声につられて射精していた。

　バイブレーターを抜いてベッドの上に置いた美由紀さんは横向きになって膝を曲げ胎児のようなポーズのまま、しばらくそのままでいた。正確に言うと、ときおりヒクンと震えていた。

　やがてベッドの頭の方にあるティッシュの箱に手を伸ばし数枚引き抜くと後始末をしはじめる。そして「ふう〜っ」と息を吐くと勢いをつけて立ち上がりパンティとジャージを履いた。たぶん、あれが寝間着なんだろう。

　そしてバイブレーター手にして部屋を出て行く。

　陽二は俺の肩を指でつついて「行こう」と小声で言った。

　本当は一晩中でも見ていたかったが逆らうこともできない。

　俺は陽二の後について慎重に部屋の隙間を納戸の方向へ進んだ。
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2013.1.30掲載
3話（2013.1/30時点）
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