|
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
～あらすじ～
首都圏をエリアに探偵業を営む平尾孝治(42歳)は、自宅に近い横浜駅の近くに自分の興信所を構えていた。数年前、平尾の依頼者である由美子という人妻に頼まれて、由美子と由美子から夫と家庭を奪った、Ｋ子という女を報復レイプする仕事を受けてしまった。以来、探偵仲間の噂が噂を呼び、レイプを有償で請け負うことになってしまった・・・。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第９話【 ～ 閉店大仕事 ①～ 】
＊依頼の内容＊
[ 背景 ]
平尾は、一週間～10日に一度の割で仕事を請け負ってきたが、体力的にキツイのと、新しい、ビッグビジネスの準備の為に、新規依頼は断わってきた…。ところが、ある一件、いや一件自体が数人の鬼畜男への復讐で、しかも、この一件に対して別々の人間が同じ恨みを持つということが分り、加えて、鬼畜男の社会的地位が比較的高いこともあり、この仕事の集大成として、全力で取り掛かることにしたのだ。
[ 動機 ]
これは、複数の男(夫)が自分の子でないことが分かり切っていながら、その(戸籍的にも)父親を押し付けられ結婚生活を継続されられた者。又、その内、結婚生活を継続中にも、その妻と戸籍上夫婦でありながら、第一子に引き続き、自分の子種でなく、第二子までも他人の子種で妊娠出産と子育てをされられた恨みを持つ男(依頼人)が５人集まった、という極めて特異な例である。しかも、ターゲットとなるべく男は下記の４名の男とそれぞれの妻や妾であり、二組の父子と、しかもこの二組の父子は仕事がら密接に繋がった間柄である。
[ 内容 ]
この５人は、５人ともターゲットに自分と同じ境遇に遭わせてやりたりたいという、依頼そのものは単純である。即ち、ターゲットの妻に他人の子種で妊娠させて必ず出産させ、出産を世間に認知させて、その子を育てる方向に持っていく、というものである。
[ ターゲット ]
▽君川敬太郎(52歳)・君川建設会長
⇒▼妻・照絵(29歳)
⇒▼妾・富美子(31歳)
▽君川敬一(31歳)・君川建設社長
⇒▼妻・聖子(25歳)
▽笹川純一郎(58歳)・県会議員
▽笹川一郎(33歳)・市会議員
⇒▼妻・君子(27歳)
舞台は三浦半島の山葉市。
今から25年程前、このオゾマシイ父親同士の付き合いが始まった。君川敬太郎が選挙資金や票田を提供するかわりに、笹川純一郎が仕事の話を市（今は県）から持ってくる、という、国会議員でもやっている美味しい話の、ミニ版を山葉市と県の一部でやっていることになる。
笹川が県会議員に初当選してから、この二人とその息子達の絶対やってはいけない性のプレイが始まった…。最初の頃は、自分の性処理として交際していた女が孕んで、孕ませたままの女を自分の立場の弱い部下に押し付けて結婚させたのだ。結果的には良くある話なのたが、君川も笹川も、これを「趣味」のごとくにやりはじめたことに犯罪性があるのである…。
今回、平尾に依頼してきた男は五人。
いや、実は、そのうち一人は既に故人（交通事故死）となっていて、生前に依頼に来た時に、依頼請料が「一人８００万円」と聞いて支払えず、その場での依頼は諦めて、「自分にもしもの事があれば、と弁護士に生命保険料から3,200万円を平尾探偵事務所に支払って欲しい」と遺言を残して他界した。この話が約半年前の話で、平尾としては、この仕事は辞めるつもりでいたから、依頼は断わって返金するつもりでいた。
ところが、そうこうしているうちに、一人また一人という具合に全く同ターゲットに対する依頼が平尾にやってきたのだ。
依頼者は、（依頼日順）
■瀬川勝（故人・享年36）3,200万円（ターゲット４人分）
⇒君川、笹川父子４人の子を勝の妻は妊娠し出産二人を育てている。子供二人なのに、４人分の依頼料を支払うということは、笹川、君川父子４人ともに勝の妻はオモチャにされ、誰の子か特定できないから、４人の男の女全員がターゲットになったわけだ。
■山谷一郎（32歳）800万円（ターゲット１人分）
⇒一郎は君川建設の社員で、一郎の(当時独身だった)妻を、君川敬一の性処理女として散々利用された挙句に中絶不可能な時期になって山谷一郎に押し付けた。
■秋口正治（33歳）800万円（ターゲット１人分）
⇒当時独身だった正治の妻は、笹川純一郎の市会議員時代の秘書である。性処理女として散々利用された挙句に中絶不可能な時期になって、やはり秘書をしていた正治に押し付けた。
■横須賀徹夫（30歳）1,600万円（ターゲット２人分）
⇒この男は、婚姻関係にある妻を、借金の担保として連れて行かれ、君川敬太郎、君川敬一と他の社員数人に三日三晩輪姦された。産み育てた子は一人だか、君川親子への恨み骨髄で、君川敬太郎のほうのターゲットは妻の照絵と指定があった。
■金沢真一（32歳）800万円（ターゲット１人分）
⇒当時独身だった真一の妻は、市会議員・笹川一郎の秘書であった。性処理女として散々利用された挙句に中絶不可能な時期になって、やはり秘書をしていた真一に押し付けた。
人生の幸福感の半分以上を奪われた男達なのである。平尾としては、できれば、最初に瀬川の話を聞いた時に請け負ってやりたかった。金が欲しいのでなく純粋に男として父親としての同情心からだ。君川、笹川の父子４人に瀬川になりかわって敵討ちをしてやりたいと純粋に考えた。そして、出産は無理としても（安い他のコースに変更を提案して）レイプと妊娠くらいならできますよ、と提案したが瀬川は"他人の子種での出産コース"にこだわった。
そして、瀬川の交通事故死が一層彼の人生の暗さを増させて、同量程度に平尾も瀬川に同情を深めたのだ。
集まった金は７，２００万円。
いや、（依頼を受けた場合）集まる金、というほうが正しい。
故人・瀬川から預かった金は3,200万円あるが、それでも、平尾は受けるかどうか難渋していた。
そもそも、夫以外の精子で妊娠させて出産までさせる"請負料"としての８００万円は断わる為にわさわざ高額に設定した金額なのである。実際、レイプして妊娠はさせれても、出産までさせる、というのは、どう考えても不自然だし、第一、途中で中絶するに決まっている。中絶させない唯一の方法は人里離れた山小屋かなにかに妊娠した女を監禁して、中絶不可能な時期にしてから監禁から解放して、夫のもとに返す方法しかあるまい。
いや、平尾は元々やる気が無かったので、その程度の浅知恵しかなかった。監禁中に、当然のように夫は捜索願を出すだろうし、そうなれば平尾は営利誘拐の重罪人になる。それに加えて、妊娠中というデリケートな時期の母体は体調の変化が激しく、病気にもなり易い…。それが原因で病死でもされたら、殺人罪だ。営利誘拐に殺人罪がプラスされれば、たとえ病死者が一人でも間違いなく死刑になる…。
『どう考えても無理だな！笑』
『しかし、今回は、金の為だけなく、五人の男の恨みも晴らしてやりたいが…、無理だ(笑)』
『来週早々にでも、瀬川の女房に金返しに行くか…。他の４人にも断わりの電話もしとかんとなぁ…』
平尾が、事務所でウイスキーを飲みながら、独り言を呟いていた。
気がついたら、大学の後輩、中村に電話を入れていた。
『どうだ。久しぶりに酒でも飲まんか、中村。この前行った伊勢佐木町のスナックで待ってるよ。ああ。金はいらん。何軒行っても、全部、あたしのオゴリさ』
百合が、平尾のウイスキー水割りのお替りを持って来た。
二条百合（28歳）は、あの一件以来、平尾の事務所に入り浸り状態である。
今は、教師を休職して、英語とインド語の学校に昼間通っている。だから、入り浸り状態といっても、夕方以降顔を出して平尾の晩メシや酒の友をする、そして時々、平尾に抱かれるという具合である。この二条百合が、やがて、展開される（５人の男達の）大復讐戦で、非常に重要な役割を果たすことになる。
その翌日。
中村は、伊勢佐木町のスナックで先に待っていた。
普通、社会人というものは頼んだほうが先着するのがマナーだが、平尾と中村は大学体育会の先輩と後輩の間柄である。後輩があとから来るなんて無礼は許されない(笑)。今回は百合も同行している。
「っちわっ、す」
『ああ、中村、久しぶり。こちら、あたしの、新しい恋人、百合さん。綺麗でしょ(笑)』
「はじめまして。平尾先輩の大学時代の後輩の中村と申します」
「それで…、どうしましたか。また、困ったことでも起こりましたか(笑)」
『起こったけどな。もう解決した』
「はあ。では、ゆっくりお酒を飲ませてもらえますね？」
『ああ。好きなの、飲んでくれ。百合、お前は何にする？』
「ええ。わたしはブランデーにしよかな。ロックで」
小一時間ほどしてから、平尾は、今回の案件の詳細を中村に語った。
解決した（請け負わない）と言いつつも、７，２００万円はやはり大金である(笑)。
万に一つでも、妙案があれば、聞いてみたいというが人情だ…。
「で。どうするんです？やるんですか、仕事…」
『いや、できん。営利誘拐で無期懲役は流石に嫌だね、あたしでも(笑)』
「俺が先輩なら、やりますけどね！笑」
『営利誘拐で無期懲でもか？笑。場合によっては死刑にもなりうるゼ！笑』
「そりゃあ、平尾先輩がやる場合でしょう？笑。中絶不可能な時期まで女達を監禁するなんて、原始人じみた事やる場合の！笑」
『おまえ、中村。俺に喧嘩売ってんのか？こらっ！…。でも待てよ。監禁しないで、生ませる方法なんてあるのか？中村！…』
「あります。ありますけど、この安い酒では口が動きません(笑)。レミーのＸＯを飲ませて下さいよ(笑)」
『この野郎！足元見やがって！イマイチな話なら、吐いてでも返してもらうゾ！笑』
百合は、二人の軽快漫才をクスクス笑いながら聞いていた。
レミーのＸＯのロックをグラス単品でたてつづけに三杯飲ん中村は口を開いた。
「ヒントは先輩、あの、山本美佐枝の事件にありますよ(笑)」
『どういうふうに？』
「いや。だから、美佐枝の亭主は無精子症だったのに、戸籍の上では血繋がりの二人の子の父親になっとるでしょう？」
『ああ…』
「だから、それをやればいいですよ！笑」
『どういう事だ？さっぱり分らん』
中村は、両手を広げて、お手上げだ、というゼスチャをして百合を呼んだ。
「ちょっと、百合さん、ここに来て下さい。はい、俺の隣りです」
「仮にですよ、仮に。平尾先輩と百合さんは夫婦だとしますわ、仮に…」
『それで？』
「それで？…」（平尾と百合がハモるように聞き返した）
「俺が、百合さんの家に招かれた日にたまたま先輩は急用で帰宅が遅くなり、そうこうしているうちに、俺はムラムラして魅力的な百合さんを押し倒して、レイプして膣内射精をした。しかも、その日は百合さんの危険日だった…。どうします？百合さんは？」
「モーニングアフターピル使います」
「そうですよね(笑)。じゃあ、その設定に加えて、俺が平尾家を去った後で先輩が帰宅して、（俺のことは知らずに）"おおっ！可愛い妻よ！"とやはりセックスして膣内射精をした…。どうします？百合さんは？」
「えっ。中村さんの子で妊娠した可能性もアリですよね(笑)。やっぱり、モーニングアフターピル使いますよ…」
平尾が苛立った。
『だから、中村！何が言いたいのだ。さっぱり…』
中村も平尾の言葉を遮断した
「次に…」
「次に、百合さんが街中で散策か買い物中に原因不明で気を失ったとします…。それで、俺もしくは俺の配下の者が、失神中の百合さんの子宮の中に、俺の備蓄しておいた大量の精液を注入したとします。危険日に。その行為は百合さんは気が付きません。公園か何かのベンチで正気を取り戻して帰宅します。結果的にその精子で妊娠していたら、どうします、百合さんは？」
「出産します。だって、平尾の子としか思えませんから…(笑)」
賢い百合は、笑った。
中村の構想が理解できたからだ。
「百合さん。あなたは、こちらの御人と違って利発です(笑)。ちょっと、百合さんなりに理解された俺の構想を、アタマの固い大先輩に教えてあげてください(笑)」
「中村さん。間違ってたらスミマセン…」と中村に断わりを入れてから、おもむろに百合は語った。
「女達はレイプしないで、妊娠させる。本人が気が付かないように、夫とは違う他人の精子で妊娠させる。そうですよね？中村さん」
「はい！その通り！その先、続けてください、百合さん」
「いえ。これは、わたしの想像ですが…。男達も女達と同じ方法で、拉致して、本人達が気がつかないように、"去勢手術"をする？…。違いますか、中村さん…？。あっ…。だけど、これは男達の去勢は女達を妊娠させる前じゃないといけませんね？」
「その通り！あなたは、学歴だけでなくて、本当に脳の構造の出来が素晴らしい。その脳の一部、こちらの大先輩に移植手術してくださいな(笑)」
百合は笑った。今度は歯を見せて笑った。平尾も笑った。
『こらっ！中村っ！先輩をコケにするのも大概にしろ！笑。しかし、なんだなぁ、素晴らしい構想だな、それ。流石、あたしの後輩だわ(笑)』
中村は自分の構想を自画自賛した♪
「そうでしょう！素晴らしいでしょう！第一、ターゲットの男達には、これ以上ワルサさせん為にも、過去の罪を償わせる為にも、これだけの事くらいされても文句は言えん筈です(笑)。
女達が他人の精子で、無事目出度く出産したら、ネットで怪情報として流布しますよ。"種無し男の妻が妊娠・出産"ってね。これだけやれば、５人の依頼人も納得してくれるでしょうよ！笑。なんなら、テレビの地方局に投稿して、こいつらの出産劇を、産み落とすまでの一部始終を、追跡させて広く世間に認知させることだって可能です。なにせ、地元有力者のオメデタイ話なのですから…(笑)」
『おおうっ。中村。今のおまえ、後光が射しとる。オーラも出とる…』
『で、成功の目算は？』
「さあ…」
『さ、さあ、って、それでは困るゾ！もっとちゃんとしたプランはないのか？』
「何を眠ったいこと言ってるんですか？笑。７，２００万円は誰が貰う金ですか？あとは、自分で考えて下さいよ！笑」
『し、しかしなあ、中村…』
「少なくとも！…」
「少なくとも、レイプした女達を数ヶ月も監禁する作戦よりダイブンとマシですがぁ！百合さん、どうです？笑。それに、営利誘拐でパクられてム所で暮す"彼氏"に面会なんか行きたくないでしょう！笑」
「あっ、はい。平尾さん。平尾さんは悔しい(？笑)でしょうけど、中村さんのお話のほうが現実味があるし、安全ですよ(笑)」
平尾が中座して、レミーのＸＯの(今度は単品ではなく)ボトルを持ってこさせた。
『中村"先生"。その先をもう少し、頭が固いアタシの為に分かり易くご指導くださいませ(笑)』
中村は愉快になった(笑)。平尾としては、彼女の百合まで中村の味方になられては、議論しても勝ち目はないのだ。空手をやっていた人間、いや、他のスポーツでもそうだが、一流の人間は負けは負けてとして認めた上で、被害を最小限に食い止めて次の反撃の機会をうかがう冷静さがあるのだ。いや、実は、こういうスタンスがスポーツにおいてもビジネスにおいても、一流と二流のボーダーラインになるのである…。
とにかく。
大先輩がここまで仁義を尽くせば、答えるのが後輩たる中村の使命だ。
「男どもの、パイプカットですが…」
中村がいきなり"本丸"攻撃作戦の話をした。
「 7,200万円もの大金を貰うんですから、それなりの資本投下をしてもらいます。つまり、拉致は街で行うのでなく、クラブかバーか、"こいつら"にとって、それなりの風情のあるシュチエーションが望ましいでしょう。ですから、クラブかバーをこいつらの生活テリトリーの中でオープンして下さい。その店のママ、賢い百合さんが適任です」
『それで？…』
「拉致されるのと、自分の意志で酔い潰れて、数時間、いや、一夜を過ごすのとはワケが違います。パイプカットは数十分の手術とは言え、下手糞な医師がオペると稀に数日間、局部に苦痛を伴うそうです。酔いつぶれて自己反省の境地の人間には、局部の痛みの"原因"までには関心が及びません」
『しかし、誰がオペをやるのだ？パイプカットの…』
「一々、人の話の腰を折る人だなあ、先輩は(笑)。金に困ってる医師を探せはエエだけの話でしょう、それを探すのは先輩の本業でしょう！笑」
『わ、わかった。一々怒るなよ、中村！笑。で、女達はどう妊娠させるのよ？』
「あ、はい。こいつら全員のパイプカットが完了してから、三ヶ月間はクラブは存続させます。こいつらの精子が、妊娠させる女達の命中弾になってないのを確認する必要があります。この段階では最早、百合さんの使命も完了するので、雇われママは誰でもいいでしょう。三ヶ月というのは女達の妊娠があった場合、誰の子かを見る必要がある為です。で、三ヶ月後には女達用に何がしかの、飲食店かカルチャーセンターのようなものをオープンさせます…。ギャラさえ貰えるなら、その店の実行部隊の隊長になってもいいですよ、俺が…(笑)」
平尾が完全に"やる気"になった。
心強い"作戦参謀"がいるのだ。第一、この作戦は面（顔）をターゲットに見せなくて済む。考えてみたら、一件１５０万円で請け負ってきたレイプの仕事がいきなり、（自分にとって）危険なビジネスに思えてきた…。
『じゃあ、中村。明日以降残りの４人に事務所来てもらう。８００万や１，６００万円貰う以上は、ちゃんとした説明しておかんとな…』
『早速、ターゲットの男の血液型を調べさせるわ、江川に頼んで…』
「その必要はありません！」
中村は、キッパリと言い切った。『他人の精子で妊娠させるからには、夫の血液型とは違う精子で妊娠させんとイカンだろが！』と、平尾は疑問を持ったが、中村もこの構想の発案者だけに引き下がらない…。
「先輩。ちょっと、おうかがいしますけどね。一連の事件の最大の犠牲者は誰ですか、ね？」
『金を出す依頼人。他人の子を育てされられとる男達(父親)に決まっとるだろ、が！』
平尾としては、誰が何番目の犠牲者でも関係無い。中村から聞きたいのは、作戦の具体的詳細なのだ。だから、多少、ムッとした。だが、中村も、真剣な顔つきで語った…。
「先輩。違いますよ。最大の犠牲者は生まれてきた子ですよ。二番目の犠牲者は、その子を産んだ母親。金を出す依頼人なんて三番目の犠牲者でしかありませよ。依頼者は５人とのことですが、８００万円もの大金を工面できなかった男、そもそも、復讐自体を諦めてる男だって５人以外に多数いると思いますよ…。百合さんは、今の俺の意見には賛成ですか？」
「あっ、はい(笑)。立場的には平尾の味方をしないといけないと思うんですが…。中村さんのご意見に１００％賛成ですわ(笑)」
『ケッ！百合、おまえ、いつから中村の女になったのだ！笑。まあ、ええわ。中村、なんで血液型調べんでええのか教えてくれや！』
「ひと目見て…。生まれた瞬間に他人が、ひと目、見て夫の子じゃないと分る子を出産してもらうんです…」
『…。って。お前、まさか！…』
「はあ。そのまさかです。肌の色が違う人種の精子で妊娠させるんですよ…。東洋人というかモンゴリアンじゃない精子です。日本国の同盟国の軍隊が駐留しとるでしょ、そういう人種の」
『惨ご過ぎんか？』
「だから。先輩に聞いたじゃないですか。最大の犠牲者は誰か、って。生まれながらに、父親の愛情を貰えない子供達なんですよ。そういうムゴイことを、この４人の男は繰り返しやってきたんです…」
平尾は、飲みかけのウイスキーの水割のを一気に飲んだ。
百合も、ブランデーのロックを半分くらい一気に飲んだ。
つづく。
|