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「ふふ、感度も抜群じゃないか」
　弾力ある白い乳房が、こねくりまわす掌の中でムンムンと上気していく。
（あっ……どうして……私、本気で感じてるわ）
　高島の美貌が躊躇いがちに緩んだ。
「こういうのが好みかね？」
津上が単刀直入に問う。
「い、いえ」
　高島は小さくかぶりを振りながら答えた。
「気付いていないとでも？」
「おっしゃっている意味が分かりませんわ」
「あくまでも認めたくないわけか……ふん、まあいい」
　鼻を鳴らし、眼を細めながらなおも強く乳椀を揉み潰す。
「くっ……」
　本当にマゾの気があるのかしら……そう思ったのは、嫌悪感に混じりながら熱い疼きが深奥で蠢くのを感じたからであった。

　津上の右手が十分に弄んだ乳房からスッと離れ、背筋にまわってからツツーッと滑り落ちると、その指先の後にはプツプツと鳥肌の波が柔肌上に立った。
　右手の先はすぐにヒップの頂へと到着した。
「う〜ん、すべすべした良い肌触りだ。ここも気に入った」
　左手で器用に双乳を甚振りながら、大きく開いた右手がムンズと片方の尻朶を鷲づかみする。
　高島の口から甘い吐息が漏れた。
　肉体が、乱暴な愛撫の中から何かを感じとっている。
　否定できない快美さがズキン、ズキン、と身体のあらゆる性感へ流れていく。
　すでに固くなっている乳首は異常に燃え疼き、津上の指から弄ばれるたびに甘美な痺れが痛烈な針となって五体を貫いているのだ。高島は複雑な感覚に囚われていた。
（そういえば……最後にセックスしたのって、いつだったかしら……）
　特定の彼氏という存在はいないが、肉体関係だけのボーイフレンドなら何人かいないわけでもない。いわゆるセックスフレンドである。
　セックスは定期的にやっていた。
　単純に快楽を求める場合もあったが、主に高島の場合はセックスをストレス解消の一手段としておこなうことのほうが多かった。
　しかし、ここ最近は仕事がめっぽう忙しく、睡眠すらまんぞくにとれない日々が続いている。もともと性欲旺盛ではない彼女にしてみれば、生活の中にセックスがなくても何ら問題はないはずだったのだが……どうも肉体のほうはそうでもないらしい。
　自分のことを理解しきれていなかったのか、津上の乱暴な行為にも身体は酷く悦んでいる。これまでの高島には、快楽さえもコントロールできるという自負を持ち合わせていた。現に、これまでも性行為の中で自分を見失うなんてことは一度もなかった。
　だが、今夜いまこの状況でその自負が脆くも揺るぎたった。
　身体の芯が、これまでにないくらい熱を帯び始めているのだ。
「濡れてきたか？」
　津上が、指の腹で乳首を擦りながら聞いてきた。
「わ、わかりません」
「分からない？　それじゃあ〜、確かめてみよう」
　そう言うと、津上は高島の身体を解放して、そそくさとソファー前に置いてある長方形のテーブル上を片付けだし、
「さあ、このテーブルの上に乗りたまえ。そして、脚をゆっくりと開いて見せるんだ。お前の股に張り付いているその小さな布っきれが、一体どうなっているかじっくりと検証しようじゃないか」
　と、好色丸出しに命令した。
「そ、それはいくらなんでも……は、恥ずかしいですわ」
　高島のピンク色の耳たぶがカッと赤くなる。その表情に、いつもの冷静さはまるで感じられない。メガネをはずし、いっそう艶めいて見える切れ長の黒目が、どこかオドオドとしているようだ。
「早く言われた通りにしなさい。これは命令だ」
「ああぁぁ……」
　秘穴をしたたる厭らしい雫の存在には、早くから気付いていた。それが故に、パンティが湿っていることくらい簡単に予想できた。津上にもそれは分かっているはずだった。これは完全に辱めをあたえようとする津上の悪戯だ。高島の胸奥で、羞恥と屈辱感がざわめきたっていく。が、しかし、もう後には引けるはずもない。
「ふん、奴隷になることを承諾したんじゃなかったのかね？」
　ソファーにふんぞり返り、方眉を釣り上げて津上が睨む。その眼力には、何度も同じことを言わせるな、と言わんばかりの威圧がこもっている。
「す、すみませんでした。今後は素直な奴隷になります」
　津上に一礼し、ひとつ軽い溜息を吐いてから高島はテーブル上に膝を立てて座った。
「よしよし、いい子だ。それじゃあ、ゆっくりと脚を開きなさい」
「は、はい……」
　腕組みしたまま微動だにせぬ津上の前で、高島がゆっくりと美脚を開いていく。反らした上半身を後ろ手で支え、まずは膝から下を大きく開いた。
　津上の視線が、股間の悩ましい膨らみ一点へと集中する。高島の美貌がわずかに険しくなった。この場になって羞恥心と同じくらいの屈辱感が湧いてきている。しかしながら、行為を中断しようなどという考えは一切なかった。
　どのような要求をされようとも、もう二度と躊躇はしないと頑なな決意が心を縛っている。
　迷心はない。
「ご主人様、申し訳ありません……わたし、嘘をついていました。あ、あそこは……すでに濡れています」
「んっ、なにぃ？」
　高島の告白に、津上は踏ん反り返っていた上体をグッと起こして前のめりになった。
「どれ、早くこの色っぽい太ももを開きなさい」
「ああ……」
　痴態を晒すおぞましさにブルッと震えながら、高島がスゥーッと太ももを開脚していく。
「おっ……おおお！」
　みっちりとした太ももの付け根にグッと食い込んだ小さな布。その、やや下あたりの中央部分が小さく濡れている。いつも凛とした、気高いイメージしかない女の粗相だけに興奮もひとしおだった。
「お前、ずいぶんと濡らしてるじゃないかぁ！　わっはっは、そうかそうか、うんうん、ここだな？　ここが厭らしい涎を垂らしてるんだな？」
　津上は、純白のパンティにクッキリと描かれた厭らしい染みをツン、ツン、と指でつつきながら破顔して喜んだ。
「あっ、んくっ、……も、もう脚を閉じてもよろしいでしょうか？」
「んっ、なぁにを言っとるかぁ！　まだここの感度を確認しとらん。いいから、そのまま動くんじゃない」
　パンティ越しに陰唇の膨らみをつつかれ、そのつど高島の下肢がピクンッと反応する。津上は何度も陰唇をつついた。冷静さを欠いていく様がなんとも堪らないのだ。
「あうっ……」
　陰部をつつき遊んでいた指先が、ふいに膨らみの中央あたりに押し付けられたままその動きを止めた。
「おい、染みがだんだんと大きくなっているみたいだが……気のせいかね？」
「す、すみません……」
　布をあいだに置いてグッと食い込んでいる指先が、ツツーッと亀裂をなぞりながら上へ移動していく。そして、恥骨の感触をとらえるとすぐにまた同じ筋を辿り降りてくる。太い指が、力の入れ加減を微妙に変えながらこの動作を何度も繰り返す。陰唇の上を指が通るたびにパンティ上へは亀裂の影が浮かび、また、染みの部分にいたっては、うっすらと秘肉が透けているようにも見える。
「ふふふ、最高にいい画だ」
　津上のギョロッとした眼が淫色に澱んでいく。
　これほど淫靡なポーズをとらせても、あくまで優雅さを失おうとしない高島の華麗なボディ―――。
　津上は低く笑った。
　官能美に優れた高島の肢体に、生きる歓びがひしひしと湧いてくる。上がり続ける欲情のボルテージには、限界などないようであった。
　高島が来る前から想像しては興奮し、来たら来たで淫熱はずっとあがりっぱなしだ。津上は、空いた手をガウンの中に突っ込んで己のものに触れてみた。
「ほっほ〜、俺としたことが……六十にもなって、まだまだここはガキだなぁ」
　そこは若い頃を彷彿させんばかりの勢いでギンギンにいきり起っている。強固に反り返った肉幹を指でなぞっていくと、その尖端からはすでにヌルヌルの我慢汁が亀頭裏の筋を伝い落ちるまでに溢れ出ていた。
「おい、ところで、今日の撮影では濡れたかね？」
「は、はい……濡れました」
「ふむ、そうか」
　津上は、徐々に険しさを増していく高島の美貌をジィーッと見据えながら、我慢汁にまみれている手をグイッと高島の口元へ差し伸ばした。
「ほれ、これを見ろ。俺だってこんなに濡れている」
「あっ……」
　横に向けた顔をわずかに傾け、深い黒目で津上の指に視線を送る。指先は淫靡な液体でヌラついていた。
「しゃぶるんだ。お前の口でこの手を綺麗にしなさい」
　そう言い、ヌラついた指先をヒタッと唇に当てると、ゆっくりと動かしながら柔らかい薄紅の肉をなぞっていく。一瞬、高島は呼吸を止めた。おぞましさを通り越した不快感が全神経に鋭い針をたて、おもわず息をすることすら忘れてしまったのだ。
「ほら、どうした？　口を開けて咥えろ」
「んっ……んふぅ」
　セクシーな唇をゆっくりと一周し終わった指が、下唇を押しながら中へ入ろうとしてくる。高島は素直に口を開いた。そして、顔の向きを変えながら自分の意思で二本の汚れた指を咥え込んでいった。
「いいか、扱きながら根元までネットリとしゃぶるんだぞ。舌も巧みに使え」
　その間も津上の片方の手が股間を擦り上げている。先ほどよりも力をこめ、亀裂にパンティ生地が減り込むほどの激しさで上下に擦りたてていく。
「んっ……んぷっ……んはぁ……」
　高島は、口腔にある指を根元まで飲み込んでは吐き出し、そしてまた根元まで飲み込んだ。ヌラついた指はなんともしょっぱい味がした。
　そのしょっぱさが何故か卑猥さを増大させ、意味不明に思考をぼやけさせた。
　酷く嫌悪した指への奉仕もいったん口に含んでしまえばすぐに慣れてしまい、知らずのうちに咥えた指への執着が熱っぽくなっていく。高島の愛撫がどれほど本気なのかは、赤みを帯びだしてきた津上の表情を見れば一目瞭然だった。
　しっとりと濡れた舌を常に指へ絡ませ、ときおり指のあいだにも舌先をすべり込ませてやる。津上が喜ぶように、チュパ、チュバ、と大袈裟な音もたててやった。だが、ときおり口唇の動きが止まってしまうのは、弄くり回されている秘唇あたりからゾクゾクとした甘美流がけたたましく駆け上ってくるせいであった。
「んん……んふぅ……」
　口唇の隙間から漏れてくる熱い吐息が、次第にその悩ましさを膨らませていく。
（ふふふっ、ずいぶんと昂揚してきたな……）
　静かに漏れだしてきた艶女の濃厚な呼吸は、津上の耳にもちゃんと聞こえていた。
「おいおい、なかなか上手いじゃないか。君のイメージとは百八十度違っているが、もしかして奉仕するのが好きかね？」
　チュパ、チュパ、と音を立てながら、高島は小さく首を横に振った。
「んっ、そうか、奉仕は嫌いか。うーん、しかし君には素質があるぞ。経験の少ない若者なら、指をしゃぶってもらうだけで十分にイってしまうかもしれんな」
　津上の言葉を聞き流しながら、高島は口の中にある指の愛撫に没頭した。
「こうやって眼を閉じてみると……ふふっ、なんだか性器の中にでも突っ込んでいるみたいだよ。どれどれ、本物のほうも確かめてみよう」
「んああっ」
　指に吸い付いていた高島の口唇がパッと開き、弛緩した。
「ほっほう、中のほうもかなり湿ってるじゃないか」
　パンティの縁をずらしてスルリと中へ入り込んできた指が、その指先を軽く折り曲げながらヌルヌルと膣壁を擦ってくる。
「おっ、えらく敏感になっているようだな。ずいぶんと指を締め付けてくるぞ」
「あんっ……」
　秘唇が恥ずかしいほど濡れているのが分かった。
　津上の指が秘奥でこそこそと蠢くたびに下腹が震え、秘唇が熱く疼いていく。それは、扉の花びら一枚一枚にも燃え広がっているようである。高島は、津上の指を咥えたまま溜息を漏らして顔を左右へ打ち振った。