| 6 翌日の朝、俺はメシを食いながら、夏休みの自由研究でネコの行動を映像にしたいから小型の動画カメラを貸して欲しいとオヤジに頼んだ。 オヤジはふたつ返事で引き受けてくれたばかりか、ワイヤレスで操作ができるリモコンや長時間用のバッテリー、64GBのSDカードまで貸してくれた。これならバッチリだ。 作動時に点灯するランプを黒いテープで覆った俺は動作を確認して陽二の家へ向かった。 「そんなカメラで動画が撮れるの？」 コンパクトデジカメより小さなカメラを見て陽二が言う。 「これ、フルハイビジョンで撮れるんだ。テレビ局だって使ってるんだぜ」 プラスチックの透明ケースに入れれば防水防塵になるこいつは言ったとおりテレビの現場でも使われているし、ビックリするくらい画質もいい。 「ふ〜ん、それよか、パソコン持ってきてくれた？」 「もちろんだよ。お前のためにOSとソフトをクリーンインストールしといたから」 俺はバッグからノートPCを取り出した。 「うわっ、サンキュー」 陽二がうれしそうな顔をして言う。 「で、寝室行きたいんだけど」 「あ、いいよ」 俺たちは母屋の奥にある寝室へ向かった。 「あっ、これ、俺んちにもある」 本棚の最上段に置かれているラジコンカーのプラスチックケースを見て俺はそう言った。 「それ兄貴のだから・・・」 「これに穴開ければカメラだってわかんないし・・・兄さんのものだったら美由紀さんいじんないだろ？」 「そうだけど・・・」 「大丈夫だよ。後で俺んちのと替えておけばわかりっこしないさ。いいだろ？」 「う・・・うん・・・」 俺の勢いに押されて陽二は返事をした。 「陽二、ちょっとベッドに寝てみて」 カッターでケースに穴を開けカメラがわからないようにカモフラージュした俺は、本棚の上にケースを戻して言った。 「どうして？」 「テストするんだよ」 「わかった・・・」 陽二はためらいがちに美由紀さんが使っているベッドに横になる。 その表情から複雑な心境が伝わってくるようだった。なんてったって毎日美由紀さんがオナニーしてる場所なのだ。 俺はカーテンを閉め、電気を点けて夜と同じような状況にしてリモコンのスイッチを入れた。 「なんか、しゃべってみて」 「音まで入るの？」 「そうだよ。喘いでみて」 「んなもん、できるわけないだろ」 陽二が笑う。 「オッケー。ちょっと待ってて」 またケースを降ろした俺はカメラからSDカードを取り出してパソコンに取り込んだ。ファイルをダブルクリックするとプレイヤーが立ち上がりタイムマシーンのように今さっきの光景がモニタに映し出された。 「おお、すげぇ」 陽二は単純によろこんでる。 カメラは単焦点の広角なので余分なものまで写り込んでいたが画面は鮮明だった。ノートPCのしょぼいスピーカーでも陽二の声が聞こえる。これならバッチリなはずだ。 「なっ。これならいい絵が撮れるだろ。それより頼みがあるんだけど」 「なに？」 「昨日、美由紀さんが使ってたオモチャ見たいんだ」 「いいよ」 陽二はワードローブの引き出しを開けた。 「これこれ・・・」 俺は並べてあるオモチャの中から昨日使っていた透明のバイブレーターを手にとって匂いを嗅いだ。 「あは。俺もそれやった」 「ちぇ・・・」 「なんの臭いもしないだろ。義姉さんがしっかり洗っちゃってるからね。でも、雰囲気だけでも嗅ぎたいんだよな。お前の気持ちわかるよ」 「だよな・・・」 俺は苦笑いするしかなかった。 「でも、もう一回どんなふうに動くのか確かめてみるのも悪くないぜ。義姉さんがどうやって感じるのか想像できるし」 「そっか・・・」 俺は二つあるスライド式のスイッチの片方を入れてみる蜂の羽音に似た音がして二股の小さい方が細かく振動した。 「うわ・・・すげっ・・・」 その先端を触ってみるとムズ痒いような感覚が指先に伝わってきた。 「なっ？」 陽二は笑っている。 もう片方のスイッチを入れるとギュインギュインと音がして太い本体がくねりはじめる。思わず手のひらで包んで美由紀さんのあそこがどうなっちゃうのか感触を確かめた。美由紀さんのオナニーを見る前とは見え方というかリアリティがまるで違う。 「そっちは、あんまり使わないんだ。よさそうなんだけど、女の感覚って違うみたい」 「ふ〜ん」 俺は感心するしかなかった。 「お前、義姉さんのあそこの臭い嗅ぎたいだろ？」 「うん」 「だったら今日は夜中までいろよ。昨日のは洗濯しちゃったから無理だけど、夜になれば今日履いてるのが洗濯カゴにあるから」 「お前、ほんとにいい奴だなぁ・・・」 「俺もやったから、お前の気持ちはわかるんだよ」 「じゃあ・・・」 「うん。覗いた後、義姉さんのパンツで何度も抜いちゃった」 「くぅ〜っ！ たまんねぇ」 「でもさ・・・」 「なんだよ？」 「それだけじゃ、だんだん満足できなくなっちゃうんだ」 「どういうこと？」 「慣れてきちゃうと、もっと近くではっきり見たいと思うようになるし、できれば触ったりしたい・・・」 「でも・・・」 「そうなんだよ。夏休みがはじまったら時間あるだろ。妄想が止まんなくなっちゃって・・・お前がいないとマズイことやりそうで・・・」 「そうだったんだ・・・」 俺は陽二の気持ちをやっと理解しはじめていた。 「お前が撮った動画をネットにバラ蒔くぞって脅せば・・・なんて考えちゃうんだよ・・・」 「いくらなんでも、それ、まずくね？」 「わかってるよ。でも、気持ちが高ぶるとさ・・・抑えられなくなっちゃって」 「まっ、ともかく、俺も考えてみるよ。なんかいい方法」 そうは言ったものの中坊にアイデアなんて浮かぶはずもなかった。 「うん、頼むよ。お前、頭いいし、相談できるのお前しかいないんだ」 頭がいいと言われたのを悪知恵がはたらく、相談と言われたのを共犯と思ってしまったのが俺たちの曲がり角かもしれなかった。 7 動画は期待したとおり、なかなかの出来だった。 アングルが固定なのが不満だが、被写体が一級品だし、身近にいる女の映像はネットに転がっているものとは価値が違う。 昨夜は美由紀さんの入浴、オナニー、そして匂い付きのパンティーで抜くといったフルコース。そして、今日は陽二の部屋で動画の鑑賞会だ。 「見慣れてるはずなのに、こうやってパソコンで見ると興奮するな」 陽二はモニタに見入って言った。 「だろ？ でも、やっぱりだな・・・」 「なにが？」 「お前の気持ちがわかるよ。これじゃ満足できない。もっと近くで撮りたいし、おっぱいやあそこもはっきり撮りたい。できれば全身の写真も欲しい」 「なんかさ・・・見れば見るほど、もっと見たくなるし、その先がしたくなるんだよな・・・」 「お前、どこまで考えてんの？」 「決まってるだろ」 「だよな・・・」 それっきり、俺たちは黙り込んでしまった。 「あのさ・・・」 どれくらい時間が経っただろう。俺は昨日から考えていたことを切り出した。 「俺んちに睡眠薬がいっぱいあるんだ。美由紀さんに飲ませる方法ってないかな？」 「えっ・・・？」 陽二が顔を上げる。 「眠らせちゃえば、やりたい放題だろ。バレなきゃいいんだよ」 一年ほど前、一緒に住んでる婆さんが処方された睡眠導入剤を飲みもせずに溜め込んでいるのを俺は知ってた。どうも、あの世代はものを捨てられずにとっておく習性があるらしい。なのに半分惚けているから溜め込んでいることさえ忘れているんだ。 陽二は何か考えている。 「うまく飲ませる方法さえあればなぁ・・・」 俺は独り言のように言う。 「あるかも・・・」 陽二がポツリと言った。 「ほんとかよ？」 「義姉さん、寝る前にサプリメントのカプセル飲んでるんだ。中身を入れ替えたってわかんないだろ」 「だったら試してみね？」 「うん」 「俺、家帰って薬持ってくるよ」 ダッシュで家に戻ったのは、まだ夕方になる前だった。 |
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| 2013.2.9掲載 |
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5話（2013.2/9時点）
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