俺たちの夏

南田朗 作
　9

　もう他のことは考えられなかった。

　俺は急いで服を脱ぐ。

「これ、頼むぞ」

　カメラを陽二に渡す。

「どうすりゃいいんだよ？」

「そのまま俺たちに向けてりゃいいんだ。もう録画してるから」

「わかった・・・」

　コンドームのパッケージを破いて中身を取り出す。思いの外フニャフニャで陽二が苦労してたのがわかる。根本に入り込んだ毛を引き出しながら、俺は美由紀さんの方へ向かった。

　ついに童貞とオサラバするときが来た。

　ベッドの上で身じろぎもしない美由紀さんの肢体を見下ろしながらそう思った。

　陽二と同じように俺も美由紀さんに覆い被さる。

　柔らかい肌の感触と弾力、そして体温が密着した肌から伝わってきた。

　陽二が夢中になるのも無理はない。それは天国にいるような感触だった。

　唇を合わせる。

　なんて美由紀さんの唇は柔らかいんだろう。

　フルーツのようないい匂いが鼻孔を刺激する。

　舐め尽くしたい、触りまくりたい、俺も欲望の虜になった。

　弾力に満ちた乳房を揉みながら頂にある突起を吸う。

　脇腹やふとももを撫でて舐めた。

　うつ伏せにさせてヒップを揉み、その谷間に指を這わせる。

　天井裏から覗いているときバイブレーターの動きに合わせてヒクヒクしていたお尻の穴まで舐めた。

　蜜壺に指を入れて内部の感触を楽しむ。

　そこは、形容詞が見つからないくらい柔らかくて気持ちのいい場所だった。

　未知の世界、憧れと妄想が現実になった。

　もう、やるしかない。

　俺は、また美由紀さんを仰向けにして脚を開く。

　たっぷりとツバで先端を潤してから蜜壺にあてがう。

　ヌルリ

　ちょっとだけ抵抗があって俺のものが美由紀さんに入り込んだ。

　生暖かい肉に包まれる感触に俺は痺れた。

　そのまま美由紀さんの身体を抱きしめる。

　何回か腰を動かすと限界がやって来た。

「うおおっ！」

　俺は叫んだみたいだ。

　熱い脈動が俺のものを伝わって飛び出した。

　頭の中が真っ白になる。自分でするより何百倍も気持ちよかった。

　尻の穴に力を入れて最後の一滴を搾り出すと、そのまま余韻に浸って美由紀さんの体温を感じていたかった。

「こんどは俺だ」

　陽二の声がした。

　見上げると、もう陽二のものは天を向いていた。新しいコンドームが付いている。

「まだ、すんのかよ？」

「当ったり前だろ。したくてしたくてたまらなかったんだ」

　陽二の目は血走っている。

　俺との行為を見て興奮したんだろう。嫉妬も混じっているのかもしれない。

　俺は美由紀さんから身体を離した。

　すぐに陽二は美由紀さんに覆い被さった。

　さすがに二回目だから迷わず挿入できたようだ。

　陽二は勢いよく腰を動かしている。

　美由紀さんとベッドがその動きにつられて揺れている。

　そんな光景を見てると俺も興奮してきた。こんなチャンスは二度と来ないかもしれないのだ。美由紀さんが目を覚ましてしまえば終わりだ。我慢ができない。きっと陽二もそうだったに違いない。

「おい、陽二」

「なんだよ・・・？」

「俺もまた興奮してきた」

「ちょっと待てよ・・・もうすぐなんだから・・・」

　言葉とは裏腹に陽二は終わりそうもない。二回目だから無理もないだろう。

「目を覚ます前にしないと・・・」

「だから・・・なに？」

「美由紀さんを上にできないかな？」

「どういうこと？」

　俺はエロサイトで見た二穴挿入っていうのを思い出していた。美由紀さんの尻に俺のものを入れることを想像するとどうしようもなく興奮した。それに尻だったら中で出しても妊娠の心配はない。

「俺、尻の穴に入れてみたいんだよ。あのサイトで見ただろ」

「一緒にか？」

「ダメかな？」

「う〜ん・・・いいよ・・・おもしろいかも・・・」

　一瞬、間があって、陽二は動きを止めて言った。

「手伝うよ」

　俺は脱力したまんまの美由紀さんの背中に手を入れた。

　陽二も美由紀さんの膝を折り曲げて体勢を入れ替えようとしている。

「むずかしいな・・・」

　なかなか思うような恰好にならない。

「枕で腰を持ち上げてみたら？」

　俺は枕を二つ折りにして陽二の下に置く。

「おっ・・・いいかも・・・もっと持ち上がんねぇかな・・・」

「これは？」

　隣にあるベッドの枕を持ってくる。

　とうとう美由紀さんは陽二の上でつながったまま膝を折り曲げて、しゃがんだような恰好になった。少しだけ開いたように見えるお尻の穴が俺の方を向いている。

　もう、俺のものははち切れそうに硬くなっていた。

　中途半端に付いているコンドームを取り去る。

　さっき出したものでヌルヌルだったけど念のため指にツバを付けて美由紀さんのお尻の穴に塗った。

　試しに人差し指を入れてみる。

　入り口は硬い感じだけど内部は意外に狭くない。これなら大丈夫そうだ。俺は自分のものをあてがって力を入れた。

　ググッと肛門が凹んだが入っていかない。

　やはり指とは違うみたいだ。さらに腰を進めると滑って陽二のものにぶつかってしまう。ちょっと気持ち悪い。

　もう一度指を入れてみる。どうやら角度があるらしい。俺は腰を落として手を添え、指が入ったのと同じ突き上げるような角度で腰に力を入れた。

　ズルリ

　かなりの抵抗があって先端がめり込んだ。

「うおっ！」

　無意識に俺は叫んでいた。

「は、入ったのか？」

「うん・・・」

「すげぇ・・・」

　もう俺は美由紀さんが目を覚ましてもいいとさえ思って強引に結合を深くした。

　本来の場所じゃないけど、生で美由紀さんとつながってる。これから俺のものを体内に注ぎ込むんだと考えるとムチャクチャ興奮した。

「あ・・・俺・・・すぐかも・・・」

　このシチュエーションに陽二も興奮してるらしい。

「俺もだ・・・」

　さっき出したばかりなのに、もういきそうだった。

「ううっ・・・」

　陽二が腰を突き出した。奴の脈動が伝わってくるような気がした。

「おおおっ！」

　俺も思いきり美由紀さんの中へぶちまけた。

　まるで俺の分身が美由紀さんの中へ入っていくような感覚に痺れた。

　しかし、それは長くは続かなかった。

　精液が潤滑剤となって萎えたものが抜けてしまうと入道雲みたいに罪悪感が湧き上がってきた。まるで精液と一緒に心の毒が出てしまったような気分だった。

　いくら夢中だったとはいえ、俺はとんでもないことをしたんだと思った。

　俺はベッドの傍らに座り込んでしまう。

　ほんの少しだが股間から漂ってくる排泄物の匂いが落ち込む気持ちをいっそうのものにしていた。

「どしたんだよ？」

　美由紀さんをどかした陽二が俺を見て言った。

「おれ・・・ひでぇこと・・・しちゃった・・・」

「ああ・・・」

　陽二の声も心なしか暗い。

「なんか・・・すごい罪悪感・・・」

　俺はまともに陽二の顔を見られなかった。いや、美由紀さんに顔を向けられなかった。

「でもさ・・・」

「えっ・・・？」

「お前が、そういう奴でよかったよ」

「どういう・・・こと・・・？」

「もし、もっとやりたいなんて言い出したら・・・俺・・・お前のことぶん殴ってたと思う・・・俺も・・・悪いことしちゃったって・・・」

「そっか・・・」

　俺はやっと陽二の顔を見ることができた。奴もおんなじ気分らしい。

　陽二に慰められた気がした。なんていうか絆が深まったっていう実感があった。

「美由紀さんを元に戻さなきゃ・・・」

「そうだな・・・」

　俺たちは美由紀さんに服を着せ、自分たちも服を着て、考えられる限り部屋の状態を元に戻した。

　おかしな言い分かもしれないけど、美由紀さんがまったく目を覚まさないのが悲しかった。

　作業が終わると俺たちは無言で陽二の部屋に向かった。
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2013.2.16掲載
7話（2013.2/16時点）
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