| 人妻加奈子の奴隷生活.69 「若林彩美…」 携帯を手にした祐平が呟く。 「え？誰…？」 「加奈子の学生の時の友達…」 「彼女がどうかしたの？」 冴子が聞く。 「いや、どうと言うか…最近よく会っていたみたいだから何か知っているのかもと思って…」 「そうだな…今はほんの少しの可能性でも賭けるしかないもんな…」 「でも今日はもう遅いわ…野々村さんのお布団、こっちに敷くわね…」 「冴ちゃん、悪いね…」 友人夫婦の持て成し気持ちを落ち着ける事が出来た祐平は布団に入ると朝までぐっすりと眠る事が出来た。 翌朝目を覚ますと朝食が出来ており、木下は既に出勤した後だった。 「冴ちゃん、朝食ありがとね…」 「ううん…今日、彼女に会いに行ってみるの？」 冴子の言葉に祐平は彩美の事を思い出した。数回会っただけだがどこか妻の加奈子に似た雰囲気を持った彼女は印象的で記憶は割と鮮明だった。 「わからない…連絡が取れて会えたらいいんだけどね…」 「そっか…私たちに出来る事があったら何でも言ってね…」 「ありがとう、そろそろ行くよ…」 祐平を玄関まで見送る冴子。端から見ると本当の夫婦に見えるだろう。祐平自身、冴子の見送る姿に妻加奈子を思い出していた。加奈子もいつもこうやって玄関まで見送ってくれた。 「今日もウチに泊まるんでしょ？」 「いや、それは…」 「今日も夕飯頑張らなくちゃ、子供たちも楽しみにしてるから…」 言葉を遮る強引な冴子に圧倒されたまま送り出されてしまった。ここでも祐平の心は軽くなり、肩の力を抜く事が出来た。 一旦ホテルに戻った祐平はもう一度携帯のアドレス帳を開き、彩美の名前を見る。彼女の番号は加奈子が彼女と二人で温泉旅行に行ったときに教えられた物だった。 そのまま通話ボタンを押し、コールする。呼び出し音が鳴るばかりで出る気配が無い。 切ろうとした時、繋がる。 『もしもし…』 「もしもし、私、野々村と申します。野々村加奈子の夫です。今、よろしいですか？」 『あ、加奈子さんの…ご主人…あの…、今はちょっと…えと、今日の夕方くらいでよろしければこちらからお電話差し上げますが…』 「わかりましたいつでもいいのでご都合がつきましたらご連絡いただけますか？よろしくお願いします」 彼女と会うことで何かわかるといいが…祐平は深いため息を吐く。 昼過ぎに木下から電話があり、会社の社員食堂で落ち合う。昼時が終わり空いた食堂の端の方に陣取った。 「そうか、彼女と連絡取れたか…何かわかるといいんだがな…」 「離婚するにもちゃんと加奈子にあってからじゃないとな…」 「…お前、本当に加奈ちゃんがお前を裏切ったと思うのか？」 「いや、それは…でも…」 「信じられないなら今すぐにでも離婚届にハンコ突いて役所に出して来いよ…信じてないんじゃ会う必要もないだろ？」 「そうだな…加奈子が裏切るような人間じゃない事は僕が一番知っている…」 「興信所を使うって手もあるぞ…」 「興信所…？探偵か…そうだなそれも考えてみる…」 「そうなったらまずは澤田の身辺から探った方がよさそうだなぁ…」 祐平は木下の顔をじっと見て言う。 「お前…楽しんでないか？」 午後三時を回ったころ、彩美から連絡があった。 祐平はこちらから出向くと言ったが彼女がホテルに来ると言うのでホテルの喫茶店で待った。 「すみません、遅くなってしまって」 雑誌を読んでいた祐平は彩美の声に顔をあげる。祐平は一瞬加奈子が目の前にいるのかと思った。 「どうもご足労いただて…」 祐平は立ち上がり彩美に席を勧めた。 「若林さん、今日はお聞きしたい事がありまして…」 「澤田さんと加奈子さんの事でしょうか？」 「澤田とご存知なんですか？」 彩美は何かを思うように目を瞑る。 「率直に言います…加奈子さんと澤田さんは関係がありました。そして私は北村さんと…」 祐平は彩美の告白を黙って聞いている。というよりは何も言えないでいた。 目の前で自分と加奈子に起こった事を話す彩美の目からは大粒の涙が零れる。周囲の人間がその様子を奇異の目で見ていた。 「…若林さん、場所を変えましょう…良かったら私の部屋で…」 彩美を促して部屋へと向かった。 やはり妻は澤田の罠に嵌められていた。ずっと一人で抱え込み悩んでいたかと思うと自分の無力さにやり切れない思い出いっぱいだった。 「騙すような真似をして申し訳なく思っています…」 「騙す？」 「私は澤田さんと加奈子さんとの事を知りながらご主人に話さなかったばかりか、二人の関係を手助けするような事を…」 「そんな…あなたは何も悪くない…頭を上げてください…」 そっくりと言うわけではないが目の前にいる彩美はまるで加奈子を見ているようだった。 「話してくれてありがとうございます…とても勇気がいる行為だったでしょう…澤田とは決着をつけてやる。」 「ご主人…気を付けて下さい…あの人は…澤田さんは目的のためなら手段を選ばない人です…追い詰めると何をするか…」 「心配なさらないで下さい…慎重にやります…私はしばらく戻らないので落ち着かれたら帰って頂いて結構ですので…今日はありがとうございました…」 祐平は彩美を残してホテルを出た。 |
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| 2008.8.8掲載 |
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全８０話
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