| 人妻加奈子の奴隷生活.72 祐平は酷い二日酔いだったが、痛む頭を堪えながら人と会うために約束の場所へ向かった。 相手は澤田の調査を依頼している探偵の長谷川だった。まだ彼からの報告は無かったが、澤田との接触が合ったことは報告しておかなければならないだろう。 約束の場所の喫茶店へは十分ほど早く着いたが、長谷川は既に来ていた。 「すみませんお待たせしてしまって…」 「いえいえ、待ってませんよ」 祐平はウェイトレスにコーヒーを注文すると席についた。 「昨日、澤田氏と会われたとか…」 彼は既に注文していたサンドウィッチを口に運びながら話す。 「伝言を残しておいたので向こうの方から接触を…」 「どうします？調査の件、もういいと仰るのなら私は引き上げますが…」 「いえ、調査は続けていただきたいです。ヤツの行動を把握しておきたいので…」 「そう仰るのならかまいませんが、野々村さん、くれぐれも物騒な事はなさらないで下さいね」 「いくらなんでもそこまで馬鹿なことは考えてませんよ…まだ一人身なら考えたかも知れませんけどね…私にはまだ娘がいるんで…」 祐平は笑いながら答えた。 「野々村さんなら心配ないとは思ったんですけど、最近は真面目な方ほど物騒な事件を起こすので…」 長谷川も笑い返した。 「澤田自身、妻との関係を認めました…妻が離婚を望んでいるとも…しかし妻と会って直接話をするまでは信用できなくて…未練がましいのですが…」 「誰でも野々村さんの立場ならそうなりますよ…」 「以前、澤田の調査の過程で妻の事がわかればと言いましたが、彼をカギとして妻の事を探すと言った感じでお願いしたいのですが…」 「ええ、こちらは引き受けさせていただきます」 祐平は加奈子の写真など必要な情報を長谷川に渡し別れた。 「まったく…あいつは諦めの悪い男だ…自分の女房が孕まされて離婚を突きつけられても女々しく食い下がってくる…」 薄暗いマンションの一室で仁王立ちになった澤田。そのペニスにしゃぶりつく女。 豊満な乳房、黒ずんだ乳首、腹部には生々しい妊娠線がある。 「二人目を種付けしてやろうか？」 ペニスを咥えたまま女が首を横に振る。澤田が頭を抱え、腰を振る。女の苦しげな声が部屋に響いた。 プルルルルル…プルルルルル… 『もしもし…』 「若林さんですか？野々村です…」 『あの、折り返し電話させていただきます…』 祐平が返事をする暇も無く電話は切れてしまった。 （今日はご主人がいるのか…） 祐平は電話が切れる瞬間、向こうで男の声がするのを聞いた。 数分後、彩美から電話があり、この前と同じようにホテルで会うことになった。 ホテルのロビーで待っている祐平を見つけた彩美は軽く会釈をすると近付いてきた。 どこか物憂げな表情が彼女の美しさを際立てさせていた。 「昨日、澤田に会いました…ヤツは…その加奈子の姿を収めたディスクを持っていました」 「そ…そうですか…」 彩美は顔を赤らめる…祐平は加奈子の姿を収めたディスクと言ったが、彼の言葉通り、ただ姿が映っているだけでは無いという事はわかっていた。 男女が絡み合う姿…そこには自分と北村の姿もあっただろう…それを目の前の祐平にも見られたと思うとこの場から逃げ去りたい衝動に駆られた。 「若林さん…私は澤田の態度、さも妻を自分の女にしたかのような…情けないが正直言って自分の気持ちがわからなくなっています…」 「自分の気持ち…？」 「…本当に妻を愛しているから澤田と戦おうとしているのか、ただの澤田に対する意地なのか…もし…もし妻の気持ちが澤田にあり、本当に妻の事を思うのであれば私が身を引くのがいいのかもしれないとまで思ってしまう事がある…こんなんじゃとても…」 「違います…加奈子さんの気持ちはどうあれ澤田さんは彼女を幸せには出来ないと思います。言い訳にしか聞こえないかも知れませんが、澤田さんは女を…女の体を狂わせてしまうような恐ろしい人です…どれだけ心で拒んでいてもどうする事も出来ない…いや…私達がもう少し強かったら抗えたかも…悪夢はいつかは覚める…止まない雨は無い…耐え抜くつもりでも気付いた時には取り返しがつかなくなっていた…」 彩美は涙を浮かべながら話す。こう言った場合、涙は女の武器…と笑うものもいるだろう。 だが少なくとも祐平には彩美の涙に嘘はないと思った。 「彩美さん、ありがとう…あなたの言葉で妻を信じる勇気を与えられた気がする…」 「加奈子さん言ってました…いつか思い出の場所であなたや子供たちと一緒に暮らす事が出来れば何も要らない…と。でも…」 「思い出の場所…」 「何でもご主人との思い出がある場所と…」 加奈子が行っていた思い出の場所とはどこだろうか…祐平は妻との思い出の場所を思い返してみる。しかし思い出は幾らでも溢れてくる。 「私も…私も加奈子と子供たちと一緒に暮らしたいです…」 祐平は彩美に笑顔を向けた。 |
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| 2008.8.30掲載 |
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全８０話
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