| 人妻加奈子の奴隷生活.73 「なぁ、この前、子供の話してたろ？」 ホテルのラウンジで飲みながら木下が言う。 「その事なんだが、今後の加奈ちゃんとの事を考えるならやっぱりハッキリさせておいた方がいいんじゃないのか？」 「木下…僕はあの子が例え澤田の子供だったとしても絶対にヤツには渡さない…加奈子も…」 「わかるよ…わかるけど…」 木下はここまで言って言葉に詰まる。普段、祐平に言っていた状況は状況でしかないという事。澤田と加奈子、やはり状況で見ると子供は澤田の子供と考えるのが普通だろう。 子供の事を調べて行けばたどり着く先に真実はあるが、それは残酷なものだ。 「酷な言い方かも知れないけど、あの子のためにも真実をハッキリとさせておいた方が良いと思うんだ…」 祐平も真実を、いや現実を知るのが怖いのだろうと木下は思った。 「DNA鑑定をした方がいいと思うか？正直なところ、僕は真実なんてどうでもいいんだ…加奈子と子供が帰ってきてくれれば…」 「…でも真実から目を逸らしたまま生きていくわけには行かないぞ…」 「ああ…」 祐平はグラスの中身を飲み干した。 「なぁ、鑑定って言っても何が必要なんだろう…」 「髪の毛とか血液とか聞くけど…あと唾液か…？」 「翔のだろ？どれ一つ手元にないよ…やっぱり加奈子を見つけるしかないな…」 「そうだな…別に加奈ちゃんが見つかってからでも遅くないからな…早く見つかるといいな加奈ちゃん…」 「良かったよ、お前が親友でさ…僕達夫婦のために力になってくれて助かってるんだ…」 「言っておくけど、興味本位でやってるんじゃないからな…」 「わかってる…あの時は冗談で言っただけだから…そうだ、DNA鑑定の事、探偵に聞いてみるよ」 木下と別れた後、さっそく長谷川に連絡を取ってみる。 『そうですね…調べる事は出来ますよ…ウチでするんじゃなくて専門機関に依頼するわけですが…そう言う依頼もよくあるんで…』 「そうですか…鑑定をお願いする場合、何が必要になりますか…？」 『え…と、野々村さんの場合だと澤田と野々村さんとどちらがお子さんの父親かってところが重要ですから…お子さんのサンプル…そうですね、通常は髪の毛とかがあれば十分だと思いますが…何かお持ち…ではないですよね…何かお子さんの唾液が付着したもの、例えば涎掛けとかがあればサンプルを採取できるかも知れませんが…』 祐平は涎掛けと聞いてマンションで引き取った荷物を思い出した。 「あの、ちゃんとしたサンプルがあるかわかりませんけど、子供の衣類なら何着かは…」 『本当ですか？洗濯とかされていなければまだ可能性はあるかもしれませんが…とにかく、そのままゴミ袋でも何でも構いませんから袋の中にいれて保管なさってください。こちらで必要なサンプルがあるか調べてみましょう…』 祐平は言われた通り紙袋をそのままゴミ袋に入れ、ガムテープで封をした。それを持ち、長谷川の下を訪ねた。 サンプルが採れるとは限らないが出来る限りの事はやっておきたかった。 「野々村さん、この荷物の中にサンプルがあったとしてもそれがお子さんの物だとは限りません。ちゃんとした結果はやはり奥さん本人から採取したサンプルで行う必要があります…そこだけは理解していただけますか？」 「はい、わかります…」 「ただ、正式じゃないと言うだけでお子さんに関して何らかの答えが出るのは確かですけど」 「それはどういうことですか？」 「まずサンプルが採取できたとします…この荷物の中のサンプルの主、髪の毛等の主ですが、野々村さん、奥さん、娘さん、澤田氏、そして問題のお子さん、それぞれの物である可能性はありますよね？」 長谷川は一度大きく深呼吸すると続けた。 「今回の鑑定で野々村さん、あなたと奥様、澤田、娘さん以外のDNA型が出ればそれはお子さんの物という可能性が高くなります。他の誰かの物という可能性もありますが、もしそのDNA型がお子さんの物であるなら野々村さん、澤田、どちらかのDNAを受け継いでいるわけですから暫定的にですが、父親が誰かわかるというわけです…野々村さんのDNAを受け継がない物であればその場合は、もしかしたら全く関係の無い人間の物と言う可能性もあります…そうなると関係者のサンプル採取し、鑑定をし直さなければならないと思います…」 「なるほど…」 「確か、DNAで年齢もある程度わかる筈なのである程度は答えは出るかと思いますが、あくまで親権を争う際の証拠として適用されないのでそこはご理解を…それにはちゃんとしたサンプルが必要になりますから…それまで答えはお預けということになります…」 「…とりあえずお願いします…」 祐平は長谷川に袋を託した。 |
| あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。 |
| 2008.9.20掲載 |
|
全８０話
|
| 【71】 【72】 【73】 【74】 【75】 【76】 【77】 【78】 【79】 【80】 |
徳利さんの作品群→ |