| 人妻加奈子の奴隷生活.75 彼女の携帯に電話をかけが、すぐに留守番電話に切り替わる。 しかし、祐平は彩美のマンションの近くまで来ていた。もう一度かけ直すも結果は同じだった。 普段ならアポも取れていないのに直接押しかけるような真似はしないが、祐平は冷静に心がけようとするが、焦りは隠せず、気付けば近くまで来ていた。 一度インターフォンを鳴らし、留守のようだったら一旦引き上げようと思った。自動ドアを通り、エントランスに入った所でオートロックの扉の向こうのエレベータから見覚えのある人物が降りてくるのを見つけ、咄嗟にポストクロークに身を隠した。 幸い祐平はその人物と鉢合わせになることはなかったが、その人物の去り行く姿を見つめた。 「澤田…」 長谷川の言う通り、彩美は澤田と関わりを持っていた。長谷川の報告を聞いていた祐平はここで澤田とあった事はただの偶然ではないとわかっていた。 しばらく考えた後、思い切ってインターフォンを押すとすぐに彩美の応答はあった。 彩美は祐平を招きいれた。祐平は突然の訪問を詫びる。 「どなたかお客さんだったんですか…？」 「え？どうしてですか…？」 「いえ、さっき二人分のカップを片付けられているのを見たもんで…」 「ええ、ちょっと友人が来ていたもので…」 彩美は祐平から目を逸らしながら新しく入れてきたコーヒーをテーブルに並べながら答える。 「そのご友人は男性ですか？」 普通なら失礼な質問を祐平はあえてぶつけてみた。 「いえ、女性ですわ…」 彩美も普通なら不快感を顕わになるような質問なのに様子がおかしかった。 「そうだ…そこで偶然知り合いを見かけました…誰だと思います…？」 「いえ…わかりません…どなたですか…？」 「澤田ですよ…彼もこのマンションに知り合いがいるようで…」 「………」 「正直に話してもらえませんか…」 彩美は俯いたまま口を開こうとしない。 「どうしてあなたが澤田と会っているんです？あいつはあなたを…」 「ごめんなさい…」 彩美は静かに言った。 「前にご主人に話した事覚えてらっしゃいますか…？」 「というと…」 「思い出の場所です…」 「…虹美ヶ丘…」 彩美の口から思い出の場所と聞いた時、無意識に祐平の口をついて出た。 「やっぱりわかっておられたんですね…」 「いえ…たまたまですが…」 「加奈子さん、自分の罪深さを悔いていました…そして翔くんと二人で思い出の場所へと…もちろん澤田さんから逃れるために…」 祐平は彩美の言葉に聞き入っていた。 「その日の内に出発すると言っていました。何故私にそんな話をしてくれるのかと加奈子さんに聞きました…そうしたら、誰か一人でも私たちの行方を知っていて欲しいと…でも…」 「でも…？」 「私思うんです…加奈子さんは本当はご主人に助けてもらいたかったんだと…だから私に行き先を教えてくれたんだと…口ではご主人と顔を合わす事は出来ないと言っていましたけど…わかるんです…人間はそんなに強くないですから…」 「加奈子が…」 「…ご主人…澤田さんは加奈子さんの居場所を知っています…」 「え？…まさかあなたが…」 彩美はかぶりを振った。そして、 「盗聴器です…私と加奈子さんが話していた事はみんな澤田さんに知られていました…」 「加奈子が本当に虹美ヶ丘にいるとするなら澤田は居場所を知っている…」 彩美は静かに頷いた。 「私が加奈子さんたちをそっとしておいてあげて下さいとお願いすると、私に体を要求してきました…私が体を許す限り加奈子と翔くんには手をださないと約束するからって…」 「馬鹿な…あいつがそんな約束を守る筈は…それにどうしてあなたがそこまで…あいつは…」 祐平は虹美ヶ丘に澤田が何度も足を運んでいる事は知っているが、その事は伏せておいた。 彼女を疑っての事ではなく、澤田が彼女との約束を守らず、加奈子の元を訪れていると知れば彩美は悲しむだろうと思ったからだ。 「とにかく…もう澤田に会うのはやめてください…ここからは僕がなんとかしますから …」 「お願いです…加奈子さんを許してあげて下さい…」 「僕に加奈子をどうにかする権利はありませんよ…それより、澤田にはもう…」 彩美はそっと頷いた。 祐平は彩美のマンションを飛び出すとすぐに長谷川に連絡を取った。 「長谷川さん、加奈子は虹美ヶ丘です…」 『それは確かな情報なんですか…？』 「ええ、それで今から現地に向こうに行こうと思ってます…」 『ちょ、ちょっと待って下さい…早まっちゃダメだ…向こうにはウチのスタッフがいます…現地の情報が不足しているのに動き回るのは得策じゃない…』 祐平は長谷川の言葉に焦る気持ちを落ち着ける。 『とにかくウチのスタッフと打ち合わせをしますので落ち着いて…』 その夜、祐平は一睡も出来ないで夜を明かした。太陽の日差しが差し込む景色が黄色く見える。九時を回ったころ、約束どおり長谷川から連絡が入る。 『野々村さん、澤田が動きますよ…今晩から出張先に向かうと思われます…私は彼をマークします。もし虹美ヶ丘に奥様がいるのなら彼はそこに向かうでしょう…』 「わかりました…私は現地に向かいます…そちらに動きがあれば頼みます…」 祐平はプロにまかせ、自分では動かないのがいいのでは…と考えたが、ここに来てじっとしている事が出来なかった。 長谷川から現地のスタッフと合流するようにと連絡先を聞き、木下から車を借りると高速を走った。 |
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| 2008.10.8掲載 |
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全８０話
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