１２　男も女も同じ人間ならん

　おんながふたり、丸裸になって立っている。
　むろん、衝立があって、ふたりの下半身は見ることはできないが。
　それにしても、ふたりは腕を伸ばして抱き合い、顔を近づけて、互いの口と口を奪い合おうとしているのだ。
　実際、後深草院はお腹立ちになっていた。

　おんなの甘いくちびるというものは、おとこのためにあるのだ。
　それをおんなが吸ってよいものか。

（『わぁっ、スんっゴイ、男尊女卑！』）
（『これこれ、恥原シュン成、こんなところに顔を出してはならぬ』）
（『あっ、これは御所さま、相すみませぬ』）

　しかし、なんということであろうか、吸っている方も吸われている方も、どちらもとてもよい顔をしている。
　きっとふたりとも気持ちがよいのであろうと院には思し召しになる。

　おとこがかぐわしきおんなのくちびるを吸うのは、気持ちがいいからである。おんなとて、おんなのくちびるを吸うのは気持ちがいいのかもしれない。
　おんなとて、おとこと同じように気持ちがよくなることをしてみたいのかもしれない。

『おとこもすなる日記というものをおんなもしてみんとてするなり』とかなんとか、平安の御代の紀貫之（きのつらゆき）さまも『土佐日記』の冒頭で申しておられたが…。

　がともかく、本人同士たちは、気持ちのいいことをしているのだから、周りの者がとやかく言っても詮無いこと（仕方が無いこと）ではないかと院にはお考えになっている。

「ああ、君子（くんし）、好きよ、好きよ」
「ああ、涼子（りょうし）、わたしもよ、わたしもよ」

　丸裸になって抱き合っているふたりを見ながら、院にはしきりに首を傾げておられる。
　おとこがおんなを好きになる。そのことはとてもよくわかるのだ。
　しかし、おんながおんなを好きになる、そういうことが全然わからないのである。

　しかし、と院はお思いになる。
　おとこがおとこを好きになることはあるかもしれない、と。
　大（だい）のいいおとなが、稚児（＝おんなの子みたいな可愛いおとこの子）を好きなることがあるらしいのだ。
　お寺には、おんながいないのである。よって年配の僧侶が、少年の見習い坊主を好きになり、夜中、こっそりと忍び込み、かわいく思って掻き抱くということがままあるという。
　おとこが同性であるおとこを好きになることがある。
　とすれば、おんなとて、同性であるおんなを好きになることだってあるのかもしれない…。

　と、横を見れば、兼嗣が震えている。
「どうしたのだ、鷹司？」
「いえ、どうも致しませぬ」
「隠すな。おぬし、からだが震えておるぞ」
「えっ、そんな！」
「無理もない、童貞のおぬしをいきなりレスビアン・ショー（女同士の性愛行為について見学をさせること）のショー・パブ（お酒を飲みながらダンスや歌の舞台演劇を楽しむことができるクラブハウスのこと）に連れてきてしまったのだから」
「御所さま、今は２１世紀ではありませぬ、１３世紀にございますよ」
「こりゃ、鷹司、ごちゃごちゃ理屈をこねてはならぬ。人間の色欲の世界に、２１世紀も１３世紀もあるものか。色欲は時空を超えた人間の業（ごう）なのじゃ」
「はぁ〜ん？」
「よいよい、おぬしは問注所の文書記録（＝最高裁判所の判例記録文書）ばっかを読んでおじゃるのだから、仏法の業（ごう）などという概念はむじゅかちゅうて、わからぬであろうよ」
「ブーッ！（＝ふて腐れているさまを言う）」

　と、おんなたちが向こうへ行く。
　院は、畳に手を置き、膝をついて這うようにして、おんなたちの後を追われる。
　衝立の向こうには、なんと、真っ白い寝具が敷かれてある。
　しかも、何台もの燭台があって。燭台には、背の高いものや、背の低いものがある。
　その燭台には炎が点っていた。
　御壷（部屋）は煌煌として、とても明るい。
　それに芳（かんば）しい匂いがする…。
　菜種の油に、何か、お香でも混ぜている（＝ブレンドしている）のであろうか。
　涼子が寝具の上に仰向けに寝ている。
　美しき裸身であった。
　そして、その横に、これまた美しいからだをした君子が添い寝をしていく。

　院は涼子の裸身を見ておられる。
　呆けたように口を半開きにされ、その口の端から、よだれをお流しになって。
　なにしろ、白く美しく華奢な肢体。
　それなのに、股間にはびっしりと生え広がった草叢があり、その草叢は黒々として、院は生唾をゴクリと飲まれる。
　ほっそりと白いからだに、濃く盛り上がった陰毛の群れが何とも不釣合いで、院の好きごころを刺激しているのである。

　院は１３世紀のお方である。２０世紀における女性のヘア・ヌード裁判所のことなどご存知のはずもない。
　ともかくも７００年後の世の中において、ヘアの丸出しがわいせつであるか、わいせつでないかが裁判所で争われるのであるが、そういうこともさもありなむと思えるほどに、涼子のヘアはわいせつであり、院の股間のモノをビックンと空に向けたのである。
　涼子の、おとこの好きごころを刺激して止まぬほどに股間に繁茂するヘア（＝インモウ）を見て、それは決してわいせつではないと言い切れる裁判官がいるのなら、時空を超えた電波を捕捉しうるＦＯＭＡのケータイにて、その未来の裁判官の顔を見たいものだとさえ、院にはお思いになった。

（ああっあああっ）
　院は叫ばれる。
　君子（くんし）が、その草叢を手で擦っているのだ。
　そんなことをしてもいいのだろうか、いや、われとてさわりたいのに。
　院は、ゴックンと生唾をお飲みになった。

　赤々と燭台の火が燃えている。
　涼子の姿態をながめつつ、院には、
（これは卑猥というものではない、美というものだ。これは決して猥褻などというものではない、まさしく芸術というものだ）
　とお考えになっている。
　おんなは、まぐわう（交合する）とき、明かりを好まないものなのに、と院は思われている。
　しかし、それにしても、君子の、涼子の草むらへのさわり方はなんという優雅なことか。
　まるで琴をつまびくようにやさしい指使いなのである。
　君子は、涼子という楽器を奏でているのではあるまいか。
　われなどがやるやり方は、おんなの姿態という繊細な楽器を、やみくもに叩いているだけではあるまいか。
　われのやり方は、無骨な作業。
　君子が為しているのは、まさしく芸術というべきもの。

　君子は、やがて、涼子の股間に身をうずめていく。
　そして、しなやかな指先で、涼子の茂みをかき分けて。
　両方のきれいな手先で、かき分けると、涼子の真っ赤な赤貝が、ぽっくりと現れ出る。
　院には、また、股間のモノがビックンと立ち上がるのを覚えられる。
　その赤貝を指で開きつつ、君子はくちびるを近づきつつ、ぺろぺろと舐めて。
（ああ、それは。そんなことをしては。われこそが、それをしたいのに）

　院には、涼子の股間にいる君子を横にどかせて、われがその涼子の股間に飛びつきたかったのに。
　しかし、院にはなぜか身が動かない。

　君子のくちびるから舌が見えて。
　その舌がちろちろと。
　まるで、子猫が、お皿の中のお汁を舐めているような。
　ああ、なんであんなに微妙で早い舌の動きができるのだろうと院には君子の技量（性技）に感心をなされていた。
　しかも、しっかりと指で玉門を左右に開きながら、門口に当たる襞肉を舐めていて、その君子の度胸のすわったたくましさにも院は内心ほとほと舌を巻いておられた。

　と、上を見遣ると、そんなやさしくも残酷な愛撫を受けて、涼子ときたら、もう恍惚とした表情をしているのであった。
　しかし、院にはその涼子の顔をまことにうつくしいと、ご覧になっていた。

「あああ、あっ、ふ〜ん！」
　涼子が身をよじりつつ、もだえている。
　君子は何をしているのだろう？。
　
　院は下を見られる。
　君子は、涼子のお○ネの包皮を舌先で剥いているらしい。
　院も、君子に任すのではなく、ご自分の舌で、そういうことをなさりたかった。
　なにしろ、後宮のおんなたちも、院が股間のお○ネを口唇で愛撫をしておやりになると、それこそ、涙を流さんばかりにしてよろこぶのであるから。

　院は、もうがまんができなくなって、君子のそばに近寄っていかれる。
　そして、君子の耳に口を寄せるようにして、たずねられる。
「君子（くんし）、われにもやらせてはくれまいか？」
　君子は、首を横に振っている。
　そして、君子は、あごをしゃくるようにして、
『ここはおよろしいから、御所さまは上のおっぱいの方を舐めてやってくださいな』
　と目で告げていた。
　君子の目の合図に、院もうなずかれている。

　院は、涼子の胸の近くに膝をお進めになり。
　すると、その院の気配を感じたのか、涼子が目を開けて。
　そして、涼子は、手を伸ばしてきた。
　院はその手をにぎられて。
　そして、院は、顔を涼子の乳房の上に被せられる。
　すでに、乳房の頂きに広がる乳暈（にゅううん）は紫から紅に染まり、乳首は大きく盛り上がり、その先端部は勃（お）っ起（た）っているように見えた。
　院が大きくなった乳首を口に咥（くわ）えられると、その乳首はコリコリッとその硬さを増して、院の口唇を快く刺激する。
　涼子が、院の頭を胸にかき抱いている。
　院は夢中で乳首を吸っておられ、口の中からはたくさんの唾液を出しておられ、股間のお○ン○ンの先からは、先走りの透明なお汁を盛んに漏れ出させておられるのであった。

「ハァ、う〜ん、ハア、はぁっ、ハァ、はぁ、ハァッ」
　院は、涼子の乳首を吸いながらも、涼子のよがり声が気がかりで。
　涼子のあえぎ声の調子と自分の口唇の動きとが、なにやら合わないような。
　下を見ると、なんと、君子が、自分の下半身をしっかりと涼子の股間にくっつけているのである。
（ああ、やはり、われがおっぱいを吸うよりは、君子がお○んこをくっつけている方が気持ちがいいらしい…）
　と院は思われる。
　君子は、腕を突っぱね、上半身を反らす。
　君子の下半身が涼子の股間に密着している。
　互いの陰毛と陰毛とがこすり合わさって。
「あああっ、いいわ、いいわ、はぁっ、はぁ〜ん！」
　涼子が寝具をにぎりしめ、胸を反らす。
　院は、もう、涼子のおっぱいを揉むことすらお忘れになっている。
　身をかがめ、目を皿のようにしておんなたちの、こすり合わさった下腹部を見ておられるのだ。
　たぶん、君子は大きくなったお○ネで、剥き出しになった涼子のお○ネを攻めているにちがいない。
　君子がゴリゴリと腰を押し付けている。
　そのたびに、涼子が呻く。
「ああああ、ああああああっ、イク、イク、イク―――ッ！」
　涼子のからだが、かわいそうなくらい、ビックンビックンと跳ねていた。
　涼子は激しく痙攣して…。
　涼子は、君子のお○ネ攻めで、イッたらしいのだ。
　院には、頭の中が凍りつくようでありながら、股間のモノは痛いほどに固くなり。
（ああ、涼子のやつ、男ではなく、女でイカされるなんて！）
　院は、本当にセクハラながら、おんなという生き物を内心、馬鹿にされているにちがいない。
　院は涼子を軽蔑しておられる。
　しかし、その涼子を君子が添い寝しながら、いとおしむように掻き抱いている。
　院は深いためいきを漏らされていた。
　君子は、決して涼子を軽蔑などしていない。
　院には、君子というおんなが立派なおんなに見えたのである。

　そして、そばを見遣ると、兼嗣もいて。
　兼嗣もおんな同士のまぐわい（性器合わせ）を見たらしい。呆けたような、疲れたような顔をしていた。
　院は、這って兼嗣のそばに行かれる。
「兼嗣、何とも、われら、面目もないことよのぉ」
「……」
「おんな同士のまぐわい（＝貝合わせ）でも、こんなに互いがいい気持ちになれるなんて、この世の中、おとこなんぞ、要らぬということではないか」
「しかし…」
「しかしも、なにも、あるものか。われは情けなくなったわ…」

「あっ、あああっ、あああっ………」
　と、背後で、涼子の声が聞こえる。
　院は後ろを振り返られる。
　また、君子が涼子の股間を広げ、その股間に寝そべって、何やら、わるさをしているみたいなのだ。
　院は、またぞろ、好きごころを出されて。
　這うようにして、おんなふたりの許へ行かれる。
　で、涼子の股のところに視線をおやりになると。
　何やら、股間のところでは、男根の形をしたものを君子がにぎって、それを涼子の玉門（膣口）の中に差し入れをしているのである。

　院は、涼子の胸の上から身を起こして、張形（男茎形）が玉門を出入りするさまを熱心にごらんになっている。
　水牛の角が、涼子の淫液で濡れているさまが、何とも院の好きごころを刺激してやまない。
　奈良の時代に、朝鮮半島の高麗（こうらい）とか百済（くだら）の国から日本にやってきた職人が、大陸中国の呉（ご）の国で取れた水牛の角（つの）で、男のあのモノ（＝ペニス）とそっくりなモノ（張形）を作ったらしい。
　それは院にもご承知であった。
　尼寺の尼僧たちが、朝夕の勤行ではなく、夜の性生活において重宝をしているらしい。
　それに聞けば、水牛の角で作ってある、その張形の空洞の部分に湯に浸した綿を突っ込んでおくと、水牛の角の皮があたたかくなって、しかもやわらかく、ふっくらとふくらむので、玉門（膣）の中に入れると、おんなはとても気持ちがよくなるのだという。

　今、君子は、その水牛の角で作った張形で、涼子の玉門を攻めているのである。
　で、院は、君子にお頼みになった。
「ねぇねぇ、君子や、われにも、それをやらせてはもらえぬだろうか？」
　すると、君子は、『それはだめです』とばかり、首を横に振るのであった。
　院は、仕方なく、涼子の股間に顔を寄せて、君子の芸術的な手の動きを見学されるほかはなかった。
「ああ、あん、あん、ハヤク来て、来て」
　涼子が、お尻をもじもじしながら、院を呼んでいるような。
　しかし、院は、股間で、水牛の角が玉門を出入りするところを見学されている方がおもしろいのである。
　と、つい、上を見ると、なんと、鷹司兼嗣が涼子の胸のあたりに近づいている。
　涼子は、院が来られないので、兼嗣を手招きして呼んだらしい。
　涼子は、悩ましい顔をしながら、兼嗣の手を取り、わが胸に宛がおうとしている。
　兼嗣は遠慮しているみたいで。
　しきりに院の方を見ている。

　院は仕方がないと思われた。
『ああ、よいよい、おぬしが涼子の胸をさわるのを許可することにしようぞ』
　とでも言うように、首を縦にお振りになる。
　兼嗣は、
『御所さま、あいすみませぬ』
　とでも言うように、頭を下げた。
　そして、兼嗣はおそるおそる涼子の、真っ白なおっぱいに手を伸ばしていった。
　院は、兼嗣の手を見ておられた。
　その手がぎゅっと締まると、「アン」とばかり、涼子がうめく。すると、院には、胸がキュンとなり、股間のモノがビックンと跳ねるのを覚えられた。
　どうも、兼嗣に対する嫉妬らしいと院には思われる。
　おとこに対しては、やはり、嫉妬心が湧く。
　しかし、奇妙なことだが、おんなの君子には嫉妬が湧かないのだ。君子とて、張形（男茎形）で涼子を攻めたてているのだ、君子に対しても嫉妬を感じてもよさそうなものなのだが…。

　院は、寝そべるようにしながら、君子の手の動きを見ておられた。
　と、君子が、院に囁くように言う。
「ねぇ、御所さま、わたくしも気持ちよくなりたいのです…」
「えっ？」
「ねぇ、御所さまったらぁ〜…」
「ああ、君子、われはどうしたらいいのか？」
「御所さま、どうか、わたくしを後ろから攻めてくださいな」
「ええっ？、でも、水牛の角は一本しかないではないか…」
「まぁっ、御所さまったら！。ご自分の立派なものがあるではありませぬか」
「ああ、こはしたり。この、われのモノでいいのであるか？」
「はい」
「でも、このモノをそなたのお○んちょに差し入れれば、涼子が何と言うことやら…」
「あらっ、御所さまはわたくしのことが、おきらいなのですか？」
「いや、そういうことではない。ただ、われは涼子にきらわれたくないだけじゃ」
「では、涼子にお伺いをお立てになっては…」
「ああ、そうであるな」

　院は、涼子の股間の辺りで寝そべっておられたが、身を起こされる。
　そして、上の方へ移動される。
　ああ、なんと、あさましきこと。兼嗣は、しきりに涼子のおっぱいを揉みしだき、そして乳首を吸っているではないか。
「これ、これ、兼嗣、なんじゃ、そんなに口からいっぱいに唾液を出して。みっともないではないか」
「ああ、これは御所さま。申し訳ありませぬ。涼子殿のおっぱいはとてもおいしくて、おいチくて」
「兼嗣、おぬしには遠慮というものがないのか。そんなにガツガツすると、われはもうおぬしをこの館（やかた）には連れて来てはやらぬぞ」
「ええっ？、そんなぁ〜ぁ…」
　兼嗣はいかにも残念そうな声を上げている。よほど涼子のおっぱいはおいチいらしい。
「まぁ、御所さまっ！」
　上の方から、涼子の声がする。
「御所さま、お連れの方と仲良くしてくださいな。でないと、わたくし、御所さまのこと、きらいになりましてよ」
「ああっ、そんなこと！。ゆるせ、ゆるしてたもれ。われは兼嗣と仲良くするから」
「はい、そうしてくださいな。さぁ、御所さまも、わたくしのおっぱいを吸ってくださいな」
　院は、仕方なく、涼子の左のおっぱいに吸い付かれる。なにしろ、右のおっぱいは兼嗣のやつが占領しているのだ。
　そばに、邪魔者がいて、なかなか涼子のおっぱいに集中できない。
　しかし、涼子の乳首が勃（オ）ッ立ってくると、もう兼嗣がそばにいることなどお忘れになって、涼子の乳首をチュウチュウと夢中になってお吸いになっていく…。

　と、肩をトントンと叩くものがいることに院はお気づきになって。
　ちらりと見ると、君子の顔がそばにある。
『さぁ、はやく、涼子の了解をお取りくださいな』
　と、君子が目で合図をしているではないか。
　君子のお○んこに、水牛の角ではなく、おのれの純ナマの角を差し入れてもよいかどうか、涼子に聞くはずであったのに…。

　それで仕方なく、涼子のおっぱいを味わうのを中断され、院には、からだを起こされ、涼子の上に身を乗り上げるようにしながら、涼子の耳元に顔をくっつけられる。
「ねぇ、涼子、君子と遊んでもいいかい？」
「いやいや、もっと、わたくしのおっぱいをモミモミして…」
「でも、君子が、ね」
　すると、君子が助け舟を出してくれた。
「ねぇ、涼子、わたしも玉門の中に、固いモノが欲しいの。いいでしょ、御所さまのモノをお借りしても」
「まぁ、仕方ないわね。じゃぁ、御所さま、しっかりがんばってくださいね」
「ああ、わかった」
　院は、涼子の許可が降りて、ほっとなされた。
　さっそく、院は身を起こして移動をなさる。
　見ると、君子は、ふたたび、涼子の股間に、顔をつっこみ、寝そべるようにして、張形を涼子の玉門に差し入れていた。

　院は、君子のうしろに回られた。
　君子を背中から、羽交い絞めをするように、お抱きになる。
　院は、手を君子のおなかの方に回し、そして、その手を股間部に…。
　中指をうちに折り曲げながら、草叢のほこらの穴をぐにゃぐにゃといじくられる。
（ああ、濡れている！）
　院は、感動なされていた。
　君子のお○んちょは、十分、濡れそぼっていたのだ。
　院は、膝をつき、上半身を直立に起こされて。そして、天を仰いでいる○んぽこを押さえつけられて。
　院は真面目な顔をされ、ねらいを定めて、うしろから君子のおめ○ちょに、ズボリッと、一気に差し入れられる。
「あっ、うっ、ぎゃーッ！」
　と、君子があごを上げながら、叫ぶ。
「あっあああっ、あつい！」
　と、院が叫ばれる。
　院には、熱い蜜壷の熱気で、ち○ぽコが火傷（やけど）でもするかのような錯覚におちいられ、引き抜こうとされるが…。
「ああ、あああっ」
　なんと、君子は、蜜壷をギュギュッと締め付けてくるのだ。
「ああ、そんな、そんな、ゆるめて、ゆるめて」
　院は泣き出しそうな声で。
「だめだめ、我慢して。動くと出そうなら、そのまま動かなくてもいいから」
「ああっ、はいはい」
　院は、しっかりと君子のお尻の肉をにぎりしめられ、おのが尻の穴を閉じるようにして。
　また、頭の中では何も考えないようにして、目をしっかりと閉じ、じっと快感の滾りをがまんしておられる。
（出してはならぬ、出してはならぬ。ここで出したら水牛の角に負けることになる）
　院は、呪文のように、
（牛には負けるな、牛には負けるな）
　とつぶやいておられる。

「ぐちゅ、ぐちゅ、くちゃ、くちゃ、くちゃり……」
　目を瞑っていると、卑猥な音が耳元に届く。
　おのれは、腰を君子のお尻にぴったんこと、くっつけたまま、動いていないのに。
　しかし、それは、どうも、君子が、水牛の角を涼子の玉門に差し入れしている音みたいであった。
　しかし、そんな卑猥な音が耳元に届いても、院は、刺激をされず、しっかりと君子のお尻を抱えたまま、身動きひとつされなかった。

　すると、やがてのほど、
「ぐちょり、じゅぼっ、じゅっ、じゅぼっ、じゅっ、じゅっぼぉー！」
　と、さらに卑猥な音がしはじめる。
　院は目を開けられた。
　ああ、なんと、兼嗣の奴、涼子の顔の上に、打ちまたがっているではないか。
　そして、こちらからは、兼嗣の背中しか見えないが、どうやら、兼嗣のお○ンチンを涼子がかわいいお口で咥え、しゃぶっているみたいなのだ。
　君子のお○んちょの中で、院は、お腹立ちでもなされたように、おのがお○ンチンをビックン、ビックンと大きく揺らされた。
　兼嗣に対する嫉妬らしい。
（なんで、なんで涼子は、そんな奉仕〔サービス〕を兼嗣にするのだ、あいつは今日は相棒として連れて来ただけなのに…。あいつのことはどうだっていいのにぃ…）
　院は、ムラムラと嫉妬心が湧いてきて。
　綿○り○ちゃんではないけれど、背中を蹴りたいほどに兼嗣が憎くて。
　金○ひと○ちゃんではないけれど、蛇のように身をくねらせながら悶えている涼子の耳に穴を開け、金具（ピアス）でも差し込みたいほど涼子が憎らしくて。

　院は、君子のお○んこの中から固くなったモノを引き抜き、君子のからだを横にどかし、涼子の濃い草叢の穴をめがけて、おのが猛り狂ったモノを突っ込みたい衝動に駆られておられた。
　しかし、それは頭の中で考えられることであって、実際は、君子の玉門の中があたたかくって、気持ちよくて、引き抜くなど、とんでもないことであった。
　それに、君子の玉門はそれをゆるさぬほど、しっかりとお○ンチンを締め付けてくれているのであった。

　もう、院には、その気持ちよさをじっとしたままでがまんをするということがおできにならなかった。
　もっともっと気持ちよくなりたいと思われたのだ。
　そうなれば、腰を前後に振って、抜き差しをする以外にはないのであった。
　院は、君子の腰を両側からしっかりと抱え上げるようにして、行動を開始される。
　君子の背中にくっついていては、動きが十分取れない。
　院には、身を反らすようにして、上半身をお立てになって。前腰をバンバンと音がするほどに、君子のお尻にぶち当てられる。
「アンアン、そんな、そんな……」
　君子が、院の激しい動きに、もだえはじめる。

「ああ、だめだめ、アレが抜け落ちる、抜けていくわよ」
　涼子の声がする。
　君子には、後ろから院に攻められ、手元がおろそかになるのか。涼子に対する張形（バイブ）の抜き差しができかねているらしい。
　もう君子は、涼子の股間に男茎形を差し込む作業を続けることはできなかった。院に後ろからお尻を抱え上げられ、激しく突かれているのだから。
　君子は、下腹部も頭の中も熱くなってくるのだった。
「ああ、ああっ、御所さま、ゆるして、ゆるして」
　君子は、あまりの苦しさに、そしてあまりの気持ちのよさに、からだを反り返させていく。そして、院のからだをどんどん後ろへ倒さんばかりに押しやっていく。
　とうとう君子の勢いに、院も後ろにお倒れになり。
　院は、君子のお尻を股間に抱えつつ、寝具の上に仰向けになって倒れられた。
　君子は、上半身を直立させて、院の腰の上に、後ろ向きにまたがるかっこうになってしまい。
　君子は、院の腰の上にあって、もう水牛の角から手を離ししまっていた…。

　股間における水牛の突撃が終わってしまって、
「あっ、ぁぁ………」
　と、涼子が、残念そうな声を漏らしている。
　すると、兼嗣はすばやく、涼子の股間に身を移動させ、水牛の角に手を掛ける。
　兼嗣は、額の汗をぬぐう。深呼吸をする。
　そして、真剣な表情で、水牛の角を涼子の股間で抜き差しをしはじめた。

　一方、君子は、院のからだに跨り、自由に動けて、上半身をくねらせている。院はそんな君子を支えてやらねばとばかり、下から手を伸ばし、君子の腰のくびれにその手を宛がっておられた。
　君子が腰を上下にゆする。
　君子の長い髪が背に垂れて。
　腰をゆっくりと降ろす、そして、ゆっくりと引き上げる。
　君子の顔は、こちらからは見えない。しかし、その背中のありようが、恍惚とした顔の表情すら想像させてくれるのだ。
　時々、君子は、グリグリッと、院の大陰茎をこじるように腰を降ろして。
　そして、大陰茎をぐりぐりっとねじり、引っ張り上げるように、腰を回しながら上に上げていく…。
「あああ、そんなだめだ、そんなことしたら、イッてしまうぅぅ！」
　院は、おんなみたいな（？）情けない声を挙げられて。
　院には、腰を突き上げられ、君子のくびれた腰をしっかりとにぎりしめられている。

「ああ、いいわいいわ、あなた、すてきよ」
　君子の声ではない。
　誰だ！。
　涼子の声だ。
　院は、驚いて、横を向かれる。
　えっ、なんと、自分たちの横で、涼子と兼嗣が重なっているではないか。
　しかも、兼嗣は、腰を使っている。
　院は、怒りと嫉妬でカァーッとなられた。
　そして、すぐに、頭の中が凍りついて。
　院は、口で息をされている。
（涼子が、おとこに犯されている！）
　院は衝撃を受けられ、目を瞑られる。
　目に涙がにじんできて…。
　しかし、今、上に乗っかっている君子をどかして、涼子の許にかけつける、というわけにもいかない。
　なにしろ、股間のモノは、ひとつしかないのだ。
　そのものは、君子の中にある。
　君子から抜くなんてできはしない。
　院には、このとき、股間のモノが二つ欲しいと思われた。しかし、それは無理だ。
　神さまは平等なのだ。ひとりの男には、ひとつのお○んちんなのだから。

「あーん、あつい、気持ちいっいぃーーっ！」
　君子がよがる。
　心は泣いていても、大陰茎はその硬さを失っていないらしい。
　君子がその大陰茎を締め付ける。
　院は腰を浮かしつつ、その快感に酔われて。
　心とからだがバラバラになっていく。
　院には、涙を流しておられる。
　あがこを兼嗣に取られたような気がされているのだ。
（ああ、あのように、あがこはやがて実兼に抱かれてしまうのであろうか！？）
　院には悲しくて、心を濡らされていた。
　でも、股間のモノは別ものだった。君子に締め付けられて、涎を流している始末であった。

「あああ、イクイク、イクッ、イッちゃうーーぅぅ！」
　君子が身を震わせて、前の方にばったりと倒れ込んでいく。
　大陰茎がはずれてしまう。
　院は身を起こされていく。
　そして、うつぶせになった君子の背中に抱きついていかれる。
　そして、君子の足を広げさせ、固くなって、まだ気をやっていない大陰茎を、後ろからズブリッと君子の玉門に。
「アン、んっ、んん、ン、ンンッ………」
　君子が呻く。
　院は、君子を背中から抱きしめながら、激しく腰をお使いになる。
「うっ、ウウッ、ウッウッ―――ッ！」
　院も、君子の締め付けに呻かれて。
　院は、後ろの腰あたりから突き上げてくる竜巻に耐えられず。ギューンとばかり、胸を反り返されると、君子の玉門の中に、熱い血潮をグビィッ、グビィッとばかり、吐き出されるのであった。

　院は、放出のあとも、君子の背中にしがみついておられた。
　と、そのとき、
「ああああっ、ああああああ……」
　と、そばからおんなの声がした。
　それは、まさしく、涼子の気をやる声であった。
　院は、まるで奈落の谷底に突き落とされるような気がして。
　頭が締め付けられて来る。
　腋の下からは、冷たい汗が滴り出て…。

（あがこ、あがこ、われはそなたを愛しているのに…）
　院は、君子の背中に顔をくっつけたまま、涙を流しておられるのであった。
（つづく）

（注）この翻案小説を書くにあたり、下記の図書を参考としました。
　　「女西行――とはずがたりの世界――」　松本寧至　著　　　勉誠出版（株）刊
　　「とはずがたり」　　　　　　　　　　　富岡多恵子　著　　講談社　刊
　　「張形と江戸をんな」　　　　　　　　　田中優子　　著　　洋泉社　刊