２６　後深草院の冷たい仕打ち
　
　実兼は重いまぶたを上げた。
　夜が明けたようだった。
　先ほどまでいた尼僧たちは、もう誰もいない。
　部屋には雅子さんとふたりきりであった。
「そう長くは、ここにいられませんね」
　実兼はつぶやくように言った。
「……」

　雅子さんからの返事はなかった。
　実兼はがっくりと肩を落とす。
（雅子さんだって、もうお休みになりたいだろうに。一晩中、わたしに付き合ってもらって…）
　実兼は去りがたかったけれども、帰り支度をしはじめた。
「すみません、せめて縁先まででも、見送っていただけないでしょうか？」
　実兼は雅子さんに頼んでいた…。

　雅子は立ち上がる。
　実兼さまがそうおっしゃっているのだもの、お見送りぐらいはしてさしあげなくては…。

　雅子は見送りに出ていた。
　縁先にまで出ると、東の空は、ほのぼのと明るくなりつつあった。
　東の山の峰には白い雪が冠のようにかぶさっていて、その白雪が旭日に照らされて少しばかり輝いている。
　でもその白雪の照り返す光はか細くて、とても物悲しく感じられるのだ。
　すると、白い、無色の狩衣を着た従者たちが三人ばかり現れて、主人である実兼さまを牛車へと案内していく。
　実兼さまは肩を落として前に進まれる。
　こちらを一度も振り向かれない。
　一晩中、お酒をお飲みになり、琵琶も弾いてくださった。
　時々、実兼さまは、わたしのことをじっと見つめられ…。
　懇願されていたのかもしれない、わたしの唇を、わたしの胸を…。
　でも、わたしは静かに首を横に振って…。
　ふたりっきりだと何となく不安で。
　それで、部屋を出て尼僧を起こしに行った。
　尼僧たちにも部屋に来てもらい、尼僧たちも入った賑やかな酒盛りになった…。
　
　実兼さまは、ふたりっきりの方がよかったのかもしれない。
　きっとわたしをお抱きになりたかったにちがいない…。
　そして、わたしも、実兼さまから甘い口吸いをしていただきたかった…。

　実兼さまの背中が遠ざかる。
　実兼さまがお帰りになる。その後ろ姿が見えなくなって。何とも耐えがたく、物寂しく思われるのはなんとしたことであろう。
　わたしには、御所さまがいらっしゃるというのに。
　おなかには御所さまのお子を宿しているというのに。
　御所さまだけではない、実兼さまのことも心にかかる。
　そんな二股をかけた自分が疎ましい。
　われながら何とも情けなく思われて、雅子は目を拭っていた。

　実兼は帰りの牛車の中で涙を流していた。
　御所さまは何といっても自分の上司であり、場合によれば公家たちの官職を剥奪しうる絶対的な権力者なのだ。
　御所さまには逆らえない。
　雅子さまを奪って自分の屋敷に囲うなど、決して御所さまはお許しにならないであろう。
　でも、本当に自分が雅子さまを愛しているなら、そのように自分の屋敷に閉じこめるのが自然の姿であろうにと思うのだ。
　それができないのは、本当には雅子さんを愛していないのだ。
『雅子さんを本当には愛していない』
　そのことが実兼を苦しめる。そして本当には雅子さんを愛することができない自分が情けなくて、実兼は熱い涙を流すのであった…。
　
　今はまだ、わが父の後嵯峨法皇の喪が明けてはいなかった。
　諒闇（りょうあん）といって、天皇家の場合、父母の喪に服すのは満１年とされている。
　その喪が明けていないのに、あがこの安産の祈祷を華々しくするのは避けねばならないだろう。
　それに、あがこにとっても、父親の久我雅忠が亡くなってまだ喪に服しているところであり、安産の祈祷をことさら大々的にやる必要もないにちがいない。

　そのとき、後深草院には苦い顔をなされた。
　色々と、あがこの安産の祈祷に難癖をつけているが、結局は、正妃の東二条院に遠慮をしているだけにすぎないのではないかと思われるのだった。
　東二条院は、何かと、あがこのことになると、嫉妬心をあらわにするのだ。なぜかはわからない。
　たぶん、あがこが、美貌の持ち主と宮中でも評判であった、四条隆親女（たかちかのむすめ）、大納言典侍近子の娘であるからであろう。
　大納言典侍（だいなごんの・すけ）近子（ちかこ）は後深草院にとって初恋の女であった。
　そして、その初恋の人の娘に、自分は恋をしてしまったのだ。
　正妃の東二条院にすれば、近子も、その娘のあがこも、にくいのかもしれない…。

　あがこのおなかの中の子は、わが子には間違いがないのだ。
　後深草院は、あがこの安産の祈祷を仁和寺（にんなじ）に依頼された。
　しかし、残念ながら、これを盛大に執り行うことはできなかった。ひとえにそれは、正妃東二条院への遠慮、そして、東二条院の姉であり、わが母でもある大宮院への遠慮であった。
　
　後深草院は、鬱々として、心が楽しまなかった。
（結局、自分はあがこのことを愛していないのだ。愛しているのなら、もっと正妃の東二条院に対しても強い姿勢で臨むことができるであろうに…。情けないことにわれは、正妃の東二条院には頭が上がらない…）

　後深草院はあがこの許に使いを遣った。
　安産祈願のことを知らせてやったのだ。

　使いにやった舎人（とねり）が御所に戻ってきたらしい。
　御所は庭先で、その舎人をお呼び止めになった。
「二条のあがこは、いかがしておった？」
「それが、お目にはかかることはできませんでした」
「うん？」
「いまだ、二条さまには父上さまの菩提をお弔いになるとかで、醍醐寺の方におられまして。屋敷の者に言付けを頼んでまいりました」
「そうか。それで、何か評判でも聞いてまいったか？」
「いえ、何もございません」
　後深草院は、鎌をかけられる（相手の本音を導きだすために、巧みに誘い水を出された）。
　院はちょっと笑いながら舎人に尋ねられたのだ。
「醍醐寺は有名なお寺じゃ。そこには公家たちも参拝するらしい。それに今は二条のあがこが寝泊りをしているのじゃ。きっと公家たちの何人かが訪問しているであろう」
「恐れ入りました」
「で、近頃誰が詣でたのか？」
「屋敷の者に聞きましたところ、西園寺さまが醍醐寺をお訪れになられたとのこと。そして、院主の真願房さまには、西園寺さまより袈裟（けさ）をさずけられた、とか」
「ほーぉ、その寺の主（あるじ）は、実兼から袈裟（僧の服装のひとつで、左肩から右わきしたにかけて、衣の上にまとうもの）をもらったのか…」
　院は、舎人に笑って語りかけておられる。
　しかし、内心はそう穏やかではない。
（実兼の奴め、尼たちに取り入り、あがこに会ったな！）

　実兼は弱っていた。
　醍醐寺へ二条雅子に会いに行ったのだ。
　一晩中、酒盛りをしていた。
　それで明け方屋敷に帰ってからは寝込んでしまったのだ。
　起きたのは、もう夕刻であった。
　寝床から起きあがると、そばに、正室の顕子（けんし）がいた。
　よく見ると、顕子は泣いているのだった。
　顕子は、村上源氏の血を引く、名門三条坊門家からやってきた。名門の出ゆえか、性格はおおらかでくったくがない。実兼とて、一緒に屋敷で暮らす分には、特段不満があるわけではないのだが…。
　顕子は、泣いているわけを言わない。
　それで、実兼はわけを尋ねる。
　しかし、顕子は答えない。
　実兼にすれば、そのわけというのが、何となくわかっている。もうそれ以上強いては問うわけにもいかないのだ。
　顕子はしゃくり上げるように泣いている。
　かわいかった。
　実兼は指で、顕子の流れる涙をぬぐってやる。
　それでも後から後から熱い涙が漏れ出てくるのだ。
　実兼はそっと肩を抱いてやった。
　顕子はいやがらなかった。
　顕子のからだから、雌（メス）の匂いがわき上がってくる。
　実兼は自分の股間のモノがピンッとみなぎるのを感じていた。
　昨夜、恋しい雅子さんを抱けなかったという反動があるのか、実兼は顕子の背中に手を回し、乱暴に顕子のからだを抱き寄せていた。
　そして、性急にも、実兼の手はもう顕子の着物の裾を掻き分けていた。
　手が震える。
　多少はあせっているのかもしれない。
　薄い紅色の下衣が垣間見られる。
　そこを掻き分けて。
　手が顕子の内腿を撫でていた。
　とても柔らかい肉であった。
　指を中へ、そしてまさぐる。
　顕子の股間は濡れていた。
　実兼は大きく顔を顕子にかぶせ、顕子のくちびるだけでなく、舌までも激しく吸っていた。
　股間の指をほじくる。
　その指がしとどに濡れる。
　そのとき、凶暴にも実兼は、顕子を押し倒していた。

　後深草院には、最近、涼子の屋敷から遠ざかっておられた。
　おそらく、涼子との遊びに飽きて来られたのであろう。
　がしかし、涼子の方とすれば、院を間にはさんでの遊びには、まだ刺激的な喜びが感じられるらしいのだ。しきりに誘いの文（メール）があるのだった。
　後深草院も退屈であった。
　それに、醍醐寺にいたあがこを実兼が訪ね、あがこを抱いたと思うと悔しくてならないのであった。
　院には、涼子からの文を開けておられる。
　文には、『御所さまには、近頃足が遠のかれたのでさびしい』と書かれている。
　
　院は重い腰を上げられた。
　そして牛車に乗り込まれる…。
　涼子の屋敷に着くと、もう酒盛りがはじまっていた。
「わかいの、遅いではないか」
　見ると、客人はあの年配者のふたりであった。
　年配者のひとりは髪に白いものが混じっており、もう片方の年配者は、頭のてっぺんに髪の毛がなかった。
　涼子は実際、この年配者にモテていた。
　涼子は、ふたりの男性から膝を撫でられ、そして時には胸を触られ、クスクスと笑う。
　その涼子の笑い声がとても淫靡（セクシー）で、院は股間のモノを硬くしながら、苦虫をつぶしておられた。

　と、部屋に、若い、いや、とても幼い子が入ってきた。
　お酒を持ってきたらしい。
　年の功は、１３，４歳というところだろうか。
　なかなかかわいい顔をしている。
　が、その幼な子は、お酒の壷を置くと、さっさと部屋を出て行く。
　院は、今にも着物を脱ぎ捨て、年配者に豊かなおっぱいを差し出そうとしている涼子にお尋ねになる。
「あの子は？」
「御所さま、だめですわよ、あの子は」
「……」
「御所さま、あの子には好きなおのこがいるのですからね、お手をつけられたらいけませんわよ」
「では、あの子はおぼこ（バージン）ではないのだね」
「ええ、それはそうですけど。御所さま、手をお出しになったらゆるしませんわ」
「どうして？」
「だって、あの子には好きなおのこが…」
「でも、そなたとて、こちらの年配者の方々が好きなのに、われにもからだを許しているではないか…」
　涼子が視線を落とす。
　何か元気がないような。
　まさかに嫉妬しているわけでもなかろうに。
「が、ともかく、おぼこ（未通娘）じゃないんだったら、あの子もここへ呼んで一緒に遊ぼうではないか」
「そんなこと！」
　涼子は怒っている。
　なぜなら、眉を吊り上げている。

「まぁ、まぁ、涼子や、御所さまがああ言っておられるのだから…」
　白髪まじりの男が助け船を出してくれる。
「ともかく、御所さまがどんな風にあの子を口説いて来られるか、ここは御所さまのお手並みを拝見しようではないか」
　頭の禿げた男も助け船を出してくれた。
「ご勝手に！」
　涼子だけが機嫌が悪い。

　どうして怒っているのか、御所さまには涼子の気持ちがおわかりにはならないのだ。
　涼子が焼き餅を焼くわけがない。
　涼子は、この年配者たちと仲がいい。むしろ、こっちが焼き餅を焼きたいくらいだと御所さまには思っておられる。
　自分などは、たまたま着物の反物を持ってくるからこそ、涼子に歓迎されているのであって、反物などの贈答品がなければ決して相手にはされないであろう。

　しかし、今、それでも何となく涼子がひょっとして焼き餅を焼いてくれているのではないかという思いは、御所さまの自尊心をくすぐってはいるのだ。
　二条のあがこは、わたしのことを決して妬かない。
　わたしはいつも実兼のことで焼き餅を焼いているというのに。
　あがこを妬かせるなんてことはとうていできない。
　せめて、涼子には妬いて欲しい。
　あの若い女の子を抱いて、涼子に焼き餅を焼かせてみたい…。

　御所さまは席を立たれた。
　そして、誰に言うでもなく、大きな声で言われた。
「では、われがあの子を口説いてこようぞ」

　御所さまは、さほどこの屋敷の中に詳しいというわけではない。
　が、ふと、台所に達せられた。
　誰かの背中が見える。
　何かを食べているような。
　やはり、さっきの女の子のようであった。
「これ、そこの子よ」

　女の子が振り返る。
　びっくりして、手に持っていたお椀をひっくり返し。
　汁が着物の裾を濡らしている。
「ああ、すまなかった、びっくりさせて」
　御所さまは、女の子のそばに寄って。
　ご自分の着物で、女の子の着物のよごれを拭っておられる。
　女の子といえば、急におとこが現れ、びっくりして声も出ず。からだを縮め、固まった（フリーズした）みたいだった。

「今度、われが反物を持って来てやろうぞ。それで涼子に新しい着物を縫ってもらいなさい」
　御所さまはそんな女の子の気を引くようなことを言いながら、着物の布地の上からとはいいながら、女の子の膝から上の腿のあたりを撫でておられる。
　女の子は固まっているので身動きできない。
　それに主人である涼子のお客さまみたいで、膝を撫でるのを止めて欲しいとも言い出せない。そんなことを言えば、客人にわるいとでも思っているにちがいない。
「そなたには、好きなおのこがいるらしいではないか？」
「……」
　御所さまは、胸を触っておられる。
「そのおのこに、時にはこうして胸を触ってもらうのか？」
「……」
　女の子は答えようがない。
　身をよじる。
　しかし、ご主人さまの客人は、ギュッとお乳をにぎるのだ。
　女の子は、いやいやと首を振っているのに。
　御所さまは、着物の上からではあるが、女の子のお乳を揉んでおられた。大きくはない。しかし、とても硬そうであった。ナマで揉みたいと思われた。
「そなたのおのこにも、われが今度、何かおいしいものを持ってきてやろうぞ」
　そう言いながら、御所さまは、女の子の胸の併せに手を入れられて。
　女の子がイヤイヤと首を大きく振って。
　そのしぐさが御所さまの目にはたまらなく可愛く映って。
　いやいやと振られている首の根っこを御所さまはおつかみになり、顔を捻じ曲げさせ、そして、女の子の可愛いくちびるを、ご自分の唇でお塞ぎになる。
　女の子は逃げようともがくのに。
　御所さまは、背中に手を伸ばしておられ、しっかりと背中から抱きしめられているので、女の子はもう御所さまの腕の中からは逃げられなくなっていた。
　御所さまは、くちびるを、そして舌をお吸いになっている。
　女の子はもう、背中が、背骨が痛くてたまらないのだ。
　それほど強く強く御所さまに抱かれてしまっているのであった。

　口を吸われている。
　苦しい、息ができない。
　女の子の意識が朦朧としかかっている。
　そのとき、やっと、くちびるを開放されて。
　男の唇を耳元で感じる。
「ここでは誰かが来るかもしれない。そなたが寝ているところにわれを案内してくれないか。そこでそなたをゆっくり抱きたいのだ」
　男の声に、女の子はやっと気を取り直す。

　御所さまは、涼子や年配者たちがいる部屋に、この子を連れて行くつもりはなかった。
　だれにも遠慮なく、この女の子を抱きたかった。

　女の子はじっと客人を見ていた。
　悪人ではなさそうな気がした。
　ご主人さまの客人に失礼なことがあってはならない、女の子はそんなことを思っていた。それで少しばかり身づくろいをして立ち上がる。そして先に立って歩いた。
　女の子は台所からいったん、外に出た。
　そして、納屋のようなところに立った。
　その扉を開けて。
　御所さまも、後について、その納屋の中にお入りになる。
　ムッとした匂いが。
　何であろうか？。
　女の子が火打石で灯りをともした。
　板の間に藁（わら）が敷き詰めてあった。
　どうも先ほど鼻孔を襲ったのは、この敷き藁の匂いだったらしい。
　こんな粗末なところで寝ているのか、と御所には女の子のことを気の毒に思われた。
　敷き藁が湿っている。
　この敷き藁の上で、この子は好きなおのことまぐわい（セックス）をしているのだろうかと御所は感慨深く思われていた。

　と、御所さまが顔を挙げられると、女の子が着物を脱いでいた。
　女の子が丸裸になる…。
　わずかに股間に恥毛が見え…。
　その恥毛に向かって、御所さまは這うように近づいていかれる。
　近づくと、女の子は、身をかがめ、自分から敷き藁の上に裸の身を横たえてくれていた。
　御所さまは、まるで少年のようにあせっておられる。
　息遣いも荒く、女の子の小さな胸に顔をつけられる。
　手は、女の子の股間に。
　その手が震えているのだ。
　股間を両手で広げられると、顔を胸から一気に草叢に。
　草叢にしっかりと顔をつけられ、その草叢の匂いをお嗅ぎになる。
　藁の匂いがする、そして、小水（おしっこ）の匂いがまじっているのもおわかりになる。
　鼻先にコリッしたものが当たると、御所さまの股間のモノ（魔羅）に、芯がピッ――ンと入ってくるのだった。

　御所さまは、その硬いモノを、今にも女の子のぎっちぎっちの（＝とても窮屈そうな）裂け目に突っ込みたいとお思いになるのだが…。
　何しろ、草叢の泉はまだ乾いていた。
　御所さま自身の股間のモノは、すでに獲物を前にした狼のように、その上部の裂けた小口から涎を垂れ流しているというのに。
　御所さまは、突っ込みになりたいのだ。硬いモノをズボリと…。
　しかし、女の子の割れ目は小さく、濡れていないもいないから、とてもではないが、入り口のところではじかれそうなのだ。
　御所さまは、割れ目におのが唇を付けられて。
　そして、唇の間から舌を出して、まだ固い筋肉質のビラビラ（小陰唇）を舐められる。
　ビラビラ（小陰唇）を掻き分けられると、谷間（膣前庭）に達する。
　その谷間の底に小さな泉（膣口）があるように思われた。
　その小さな泉から、小水（おしっこ）の匂いがして。その匂いが御所さまの脳みそを蕩（とろ）かしていく。
　御所さまは夢中で舌を使われていた。
　谷間（膣前庭）はもう、御所さまの口から出る唾液でヌレヌレになっていた。
　そして、コリッとしたものが鼻に当たったので、その谷間の上にあったコリッとしたおサネもお口を当ててお吸いになった。
　そのおサネも御所さまの舌の上で大きくなる。
　御所さまの股間の逸物は、もう天を仰いでいた。
　その逸物は、もはや巌（いわお）をも突き破らんかのようであった。
　今の御所さまに、人間のような心はないらしい。
　御所さまは、半身を起こされ、股間のモノに手を宛がい、股間の先っぽで谷間（膣前庭）をえぐっておられる。
　女の子は、そのえぐりすら痛いらしい。
　女の子は顔をしかめつつ、上へ上へとずり上がっていく。
　股間の棒（ペニス）の先が濡れている。
　それはどうやら狼になられた御所さまの、小さな裂け口から出たよだれらしい。
　そのよだれの量がおびただしい。おいしいえさにありつけそうだという期待感が大きいのだろう。
　
　泉の中に水を湧き出させようと、しきりに硬い棒のようになった魔羅（ペニス）で井戸（膣）の中をかき混ぜになるのだが…。
　そして、魔羅（ペニス）でかき混ぜながら、親指の腹で、おサネも揉んでおられるのだが…。

　そのさらさらとした涎（よだれ）に、ねばっこいものがまじるようになった。
　女の子の泉から、やっと湧き水（淫液）が誘い出されたらしい。
　御所は、身を反らすようにして、股間のモノを女の子の割れ目（クレバス）こじ入れようとなさっていた。
　きしむ。
　なかなか入らない。
　しかし、院は強引であった。
「ウーン、ウーン、だめ、だめよ、だめよ」
　女の子は苦しそうに訴えた。
　女の子の痛さや苦しさは、眉間の皺の深さで、御所さまにはよくわかるのだ。
　にもかかわらず、御所さまには股間のモノがますますギンギンにみなぎっていくのをどうしようもなく、腰を前に前にと押し込みになっていく…。
「アーンッ！」
　女の子が胸を反らし、お尻を持ち上げたとき、御所さまが腰を押し込まれると、魔羅（ペニス）がすっぽりと割れ目（膣）の中に入ってしまって。
　しかし、もう御所さまは、動けなかった。
　しっかりとはさみつけられ、気持ちがいいというより、むしろ痛いという感じがするのだ。

　御所さまは、動けない。
　御所さまの魔羅（ペニス）はきっちりと女の子の割れ目（膣）の中に、はまり込んでいるらしい。
　御所さまが腰を上げられると、そのまま女の子の小さなお尻さえもくっ付いて持ち上がってくる始末なのだ。
　御所さまは、上下動をあきらめられ、おのが上半身を、女の子の胸に預けられた。
　女の子の顔がすぐ目の前にあった。
　苦しそうで、痛そうな顔をしていた。
　そんな顔は見たくないとでもいうように、御所さまは、目を瞑られ、女の子のくちびるをお吸いになる。
　と、女の子がその御所さまの口吸いに応えてくれるではないか。
　女の子が自らくちびるを差し入れてくる。
　いとおしくて、御所さまは、その舌を咥え込み、お吸い上げになった。
　女の子の肩を、背中を抱いておられると、何やら、腰が動きそうで。
　女の子の股間が何か少し濡れてきたようなのだ。
　試しに腰を浮かしてみられる。
　ぬるりと魔羅（ペニス）が蜜壷（ヴァギナ）の底から上がってくる。さっきのように、女の子のお尻まで一緒に上がって来ない。腰が楽に浮くのだ。
　そして、御所さまは腰を落とされる。
　スルっと魔羅（ペニス）は蜜壷（お○ンコ）の奥へと入っていく。

　御所さまは、腕を立てられて。
　そして、腰を上下に動かされる。
　窮屈は窮屈なのだが。
　股間のモノが、女の子の割れ目の奥深くにめり込んでいくと、魔羅（ペニス）の根っこが締め付けられて気持ちがいい。
　引くときは股間の先っぽが、割れ目の入り口付近でキュッと締め付けられるので、とても気持ちがいいのだ。

　動いているうちには、女の子の割れ目がどんどん濡れてきたような。
　御所は、動きやすくなったとお感じになっている。
　その一方で、股間のモノ（ペニス）が、女の子の股間（ヴァギナ）に擦られる感じが薄くなってくる…。
　しかし、股間のモノが、女の子の熱い淫液で、熱くなってきて。
　そして、蜜壷がくちゅくちゅと、魔羅を絞るように刺激してくるのだ。
　腰が痺れてくる。いや、頭の中さえ痺れてきて、気持ちがいいのだ。
　盛んに御所さまは腰を使われる。
　そして、御所さまは、右手を股間の接触点に差し入れられ、女の子の小さな蕾（クリトリス）を指で揉んでおられた。
　指が濡れる。
　抜き差しも楽になる。
　蜜汁が溢れてきているのだ。

　御所さまの腰の動きが速まる。
　ピチャピチャと卑猥な音がして……。
「あっ、ああああっ、あっ、ああああっ」
　女の子がうめき声を挙げつつ、身をよじる。
　そして、女の子は胸を反り返し、お尻を跳ね上げつつ、股間の襞肉で御所さまのモノを締め上げる。
「アッ、アアアアッ・・・」
　女の子はそう叫んだと思うと、全身を膠着させ、両足を突っ張り、ブルブルッとからだを震わせた。

　御所さまも、魔羅があまりに締め付けられるので、あまりの痛さと快さに声を漏らされて…。
「ウッ、グゥ――――ッ」
　突然、御所さまには、後ろの腰が痺れ、前の股間からは熱いものが飛び散っていくのがおわかりになった。
　目の前が真っ暗になり、目から熱い熱（ねつ）のようなものが吹き出て、気を失いそうになられる。
　しかし、快感の余韻なのであろうか、ビックンビックンと飛び跳ねる女の子の上半身に、御所さまはしっかりとしがみつかれていた…。

　御所さまはしっかりと気を遣られていた…。
　そして、若い筋肉質の蜜壷は、萎んでいく魔羅をなかなか離してくれないのだった。
　しばらく、ボーッとしておられ、時の経つのも忘れておられたが。
　御所さまも、いくら気持ちがいいとはいえ、いつまでも女の子の体の上に覆いかぶさっているわけにはいかなかったのであろう。
　いやいやながら上から降りておられた。
　そして、横向きになって、女の子の肩を抱いておられる。

　やがて、女の子の匂いが御所さまの鼻孔を襲う。
　それは、メスの匂いというより汗の匂いであった。
　しかし、それは芳しく、とてもよい匂いである。
　たぶん、若い女の子でしか発することができない貴重な匂いなのであろう。
　わずかに藁の匂いがする。
　御所さまは、女の子を横抱えにしながら、髪を撫でておられた。
　と、女の子が胸にしがみついてくる。
　御所さまは、そんな女の子が愛おしく、からだが折れんばかりに抱きしめられる。
　御所さまは、もうすぐ３２歳になられるというのに、まるで青年のように、再び股間のモノを硬くされ、おのが股間を女の子の股間に押しつけになられるのであった…。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）

（注）この翻案小説を書くにあたり、下記の図書を参考としました。
　　「とはずがたり」　新潮日本古典集成　　福田秀一　校注　　新潮社　刊
　　「女西行――とはずがたりの世界――」　松本寧至　著　　　勉誠出版（株）刊
　　「とはずがたり」　　　　　　　　　　　富岡多恵子　著　　講談社　刊