３５　涼子の肉体に溺れられる院

　ここは牛車の中なのだ。
　狭いところなのだ。
　それなのに、御所さまは淫情を催されている。
　目の前に、二条あがこの顔が浮かぶ。
　まるで軽蔑しているような目である。
　しかし、反ってそのあがこの視線を跳ね返さんばかりに御所さまは凶暴になられ、涼子の着ているものを剥ぎ取って行かれる。
　涼子はいやいやと首を振っているというのに、御所さまは、よいではないかと言わんばかりに無理矢理涼子にお尻をちょっと上げさせ、腰から下衣をすばやく剥ぎ取ってしまわれた。
　涼子の白い肌が現れ、御所さまはにっこりとうれしそうな顔をされている。
　御所さまは、その真っ白い膚をよくよく見たいと思われて、灯心を引き寄せられた。
　太腿の内側の膚のきめの細やかなこと。御所さまはゴクンと生唾を飲み込まれる。
「いや〜ん、そんなに見つめちゃ・・・」
「いいではないか。今夜はそなたとふたりっきりなのだから」
「でも…」
「そなたは、あの年配者の二人がいないと燃えないのか？」
「そんなこと…」
「わたしは、おまえとふたりだけの方が燃えるのだ」
「でも、後ろの方立て（引き戸）が開いていますわ」
「ああ、しかし風が入って快いゆえ、そのままにしておこうぞ」
「でも…」
「よいではないか。ここを覗こうとする者など、誰もおらぬ」
　御所さまは、涼子の足をお開かせになり、そして、また、灯心をさらに引き寄せられる。
　そして、御所さまは涼子の足の間に顔を近づけられる。
「涼子…」
「なぁ〜に？」
「濡れそぼっておるぞ」
「いや〜ん・・」
　涼子が足を閉じようとするのに、御所さまは両手を内腿に差し入れ広げて、涼子の股を閉じさせないようになさる。
　御所さまは顔を覗かされ、涼子の陰毛を指で掻き分けられる。
　そして、玉門口（膣口）を守る両方のびらびらの陰唇（小陰唇）を左右にお開きになる。すると紅色をした襞肉が御所さまの目に飛び込んでくる。
　御所さまは、その濡れた紅色の肉襞に、指で触りたくなられた。
「ああ、いやっ」
　が、そこにちょっと指を当てただけなのに、御所さまの指は涼子の淫液がしたたり落ちて、濡れてしまっていた。
　そして、その濡れた指先をお舐めになる。
　芳しい匂いに、御所さまの股間のモノがビックンと屹立（きつりつ）し、その存在を誇示する。
「いやぁっ」
　涼子が急に股座を閉じる。
「何もしていないよ」
　御所さまは怒ったように顔を上げられる。
「でも何だか、誰かに見られているような気がしますわ…」
「はぁ？」
　御所さまは、上半身を起こされて。左右を見られる。
　確かに、左右の物見窓は開いてはいるが…。特別誰かが外から覗いているというわけでもないようだ。
　後ろを振り向かれる。方立て（引き戸）は確かに左右に開いている。しかし、誰かが内を覗いている様子は見られない。
「涼子、誰もいないよ」
「でも…」
「心配はいらないよ。怪しいものは誰も来ないよ。牛車の周りには従者たちがたくさんいて、怪しい者たちが近づかないように見張っているからね」
「・・・」

　御所さまはポカーンとしている涼子に構わず、また涼子の股間を開かれ、顔を涼子の足の間に近づけられる。甘い雌の匂いに誘われるように。
　唇を突き出し、淫汁のしたたる秘肉を味わおうとなさって。
　唇を丸めるようにして、玉門口（膣口）の襞肉をお舐めになる。
　そして、舌を突き出しになり、舌先でもって、玉門（膣）の奥よりあふれ出ずる淫汁を受け留めになるのだった。

　蜜汁が玉門よりじくじくと溢れて出てくる。
　御所さまは、涼子が興奮しているのだとお思いになる。
　涼子の玉門を口で愛撫してやっているが、涼子はとても気持ちよいのであろう。それにひょっとしたら涼子は、物見窓や後ろの方立て（引き戸）から牛車の従者たちに覗かれているのではと、内心興奮しているのかもしれないと御所さまは思われるのであった。

　涼子は、もしかして牛車の従者たちに見られているかもしれないと興奮しているのだろうが、御所さまにとっては覗かれていようがそうでなかろうがそんなことはどうでもいいことであった。
　御所さまにしたら、涼子が蜜汁をあふれ出しているので、股間のモノを早く入れていい気持ちになりたいと、あせっておられるのであった。
　しかし、涼子は若い。
　もっともっと感じたいのであろうと思われる。
　そこで、御所さまは、股間の硬いモノを入れる前に、指を差し込まれたのであった。
　その指を玉門の中で掻き混ぜになる。
　玉門の入ってすぐの上側の襞肉を御所さまがコキュコキュと指でお掻きになると、涼子は本当にフンフンと鼻を鳴らして喜ぶのであった。
（ああ、もう入れたい）
　と、御所さまが思われた時であった、なにやら、右側の物見窓に、人の顔が…。
　御所さまは、『ああ、従者の中にも物好きな者はいるらしいな』とお思いになる。
　とすれば、あまりにあっけなく終わるのも何かもったいないと思われるのであった。

「涼子、どうだ、気持ちがよいか？」
　御所さまは、上体を涼子の上半身の上に置きながら、指では玉門を愛撫しながら、お尋ねになる。
「いいわ、御所さま」
「そうか。今夜は涼子はわれだけのものじゃ」
「そんなこと…」
「いつもなら、あの白髪頭の男が、ここにやつのお○ん○んを入れて、そなたを喜ばすのであろうな」
「いやぁっ！」
「そなたは、わるいおなごじゃ…」
「・・・・」
「そなたのここはいつも濡れており、どんな男のモノでも受け入れるのであろう」
「・・・」
「そして、誰のモノであれ、ここにソレを突っ込まれると、そなたはよい気持ちになる…」
「……」
「たくさんの男どもの心を惑わせて、わるいやつじゃ…」
「そんなこと、おっしゃらないでっ！」
「そなたはそうは思っていなくても、そなたの発する匂い（フェロモン）が、男どもの心をかき乱すのじゃ」
「では、御所さまも…」
「ああ、そうだ。そなたが発散する雌の匂いが、われの心を掻きむしる」
「あっ、あああっ・・・」
「そして、その心の高まりは、そなたのからだを抱かぬかぎり、鎮まらないのだよ」
「まぁっ、そんなことをおっしゃって、いやいやっ…」
「そうか、そなたはわれのことはきらいなのじゃな。そなたが好きなのはあの白髪頭の男や髪の毛が少ない男たちなのであろう」
「いやいや・・」
「われは、妬けて、妬けて…」
　御所さまは、本当に妬けて、涼子の玉門の中をグリグリと乱暴にお掻き混ぜになって。
「あっ、ああああっ！」
　涼子が顎を突き出し、のけぞる。

　そのとき、御所さまは、横目ながらはっきりと物見窓に人の顔をおとらえになっていた。そして、それが御所さまにかえって落ち着きを取り戻すきっかけにもなって…。
　御所さまは、再び、体を涼子の下肢の方へ移動させられる。
　涼子の股間からよい匂いが立ち上ってきて、御所さまは、ビラビラっとした涼子の淫門（小陰唇）に口をつけられる。
　その淫門は湿っていて、しかもいい匂いが漂っていた。
　それに何と言っても、涼子の淫門（小陰唇）の肉襞は、コリコリっと硬いのであった。
　このコリコリッとした淫門の肉が、抜き差しをするたびに、先端部のえらの張ったところを強く刺激してくれるのだった。だから早く入れて、擦ってもらいたいのだが…。

　涼子は、お尻を振っている。そして内よりさらに愛液をしたたらせている。
　しかし、御所さまはその滴りを指でおすくいになるだけで、まだ入れるのは我慢をしておられた。
　今度は、両側の淫門が上端部で交じり合うところにある陰核（クリトリス）をお舐めになる。
「う〜ん、はんはぁ〜ん、いいわ、気持ちいいわ」
　涼子はやはり、淫門（小陰唇）よりは、陰核（クリトリス）の方が感じるらしい。
「はぁ、はぁ〜ん、いやいや、いや〜ん」
　御所さまは、股間のモノが涎を流さんばかりに勇んでいるので、本当は早く涼子の中に入れたく思われるのだが、何だか牛車の中の畳の上では、涼子の上にのっかってやると膝頭が痛いように思われるのだった。
　それに、おのれが涼子の上に覆いかぶさったのでは、外から見ている分には、涼子の美しい裸身の姿がみえにくいであろうと思われもするのだった。

「涼子、そんなに感じて、いいのか？」
「どうして、御所さま？」
「あの年配者たちがそなたの帰りを待っているであろうに…」
「でも・・・」
「でも、何じゃ？」
「御所さまが帰してくださらないんですもの」
「ああ、そうか、そうか。それでは、われの股間のモノを味わわずして、もう屋敷に帰りたいというわけじゃな」
「そんな…」
「あのものたちの股間のモノはさぞかし、味がよいのであろう。松茸のように先端部には大きな傘が張っていて…」
「そんないじわるなことをおっしゃらないで…」
「そなたは、色々な松茸の味を味わいたいのであろう…」
「・・・」
「そうであろう？」
「ごめんなさい・・」
「よいよい。そういうそなたが、われはにくいが、どうにも忘れられぬ」
「それなら、はやく、ハヤク・・」
「どうして欲しいのじゃ…」
「いや〜ん」

「のぉ、涼子、頼みがある」
「な〜に」
「われが下になる。だから、そなた、上になってはくれぬか？」
「ちゃんと、御所さまのモノを、わたしのあそこに納めさせてくださいますか？」
「あ〜ぁ、もちろんじゃ」

　涼子が恥ずかしそうに。
　でも、御所さまにはそんな涼子がとてもかわいくて。もう股間のモノをビックンビックンと脈立たせておられるのである。
　御所さまが仰向けに寝られる。
　そして、もう着るものをすべて取った、白い裸身の涼子が、足を広げて、御所さまの体に跨って来る。
　涼子が恥ずかしそうに、膝を内側に曲げて、用足しでもするかのように、しゃがみこんでくる。
　その涼子の妖艶な様子を見られて、御所さまは股間のモノをぴったりとおなかにくっつけられる。
　美しいからだよのぉ、と御所さまは思われている。
　物見窓から覗いている従者たちも、さぞ股間をおっ立たせているであろうと御所さまは推測をなさり、内心は、ほくそ笑んでもおられる。
　と、涼子に、股間のモノをつままれて。
　おなかから引っ剥がされて。体の線と直角にまで涼子の指でお○ん○んを引き上げさせられる。

「アアアッ」
　御所さまは、手でにぎられているだけなのに、情けない声を上げられて。そして股間のモノの先っぽが濡れるのがわかり。
　たぶん、その先走りの淫汁が涼子の親指と人差し指を濡らしているかと思われると恥ずかしくて。
「アッ、アアアッ！」
　先っぽがちょっと熱い蜜壷の中へ入っただけなのに、御所さまはうめかれて。
　そして、ズボッとばかり、蜜壷が茎全体に覆いかぶさって来る。
「アッ、アアア、アアッ」
　締まりのよい蜜壷が大陰茎をすっぽりと包み込むのだ。
　あまりの気持ちの良さに、御所さまは目から涙をお流しになる。
「涼子、涼子、気持ちがいいぞ」
「あーん、御所さま、わたしもよ」
　涼子が顎を突き出している。
「ちょっと、動いてくれるとよいが…」
「はい・・」
「ウッ、ゥゥゥ・・、ハァッ」
　涼子が腰を上げる。すると股間の傘が涼子の硬いビラビラ肉（小陰唇）にこすれて、何ともお尻が跳ね上がるほどに気持ちがいい。
「ハァ、ウッ――ッ」
　涼子が腰を降ろす。すると股間のモノが柔らかく暖かい襞肉で押し包まれ、何とも心がザワザワと打ち震えるほどに気持ちが良い。

　と、御所さまは、イきそうになるのをこらえようと、気分を紛らわせるため、涼子のおっぱいを楽しもうとなさる。
　左腕を伸ばして。
　そして、おっぱいをぎゅっと掴まれる。
　涼子がしかめっつらをする。
　それで、御所さまは今度はやわやわと優しく揉んで…。
　涼子のうれしそうな顔…。
　そして、もっと涼子を喜ばせてやろうと、右手を涼子の股間に入れ、涼子の陰核を指で撫でておやりになる。
「はぁっ、はあぁ〜ん！」
　どうして涼子は、こんなに感じるのであろうと御所さまは思われる。
　多情なのであろう。
　われが抱かなければ、ほんと、誰か、誰でもいい、男に抱かれていなくては不安なのかもしれない…。
　せわしなく、涼子の陰核をお揉みになる。
　と、涼子は長い髪を振り乱しながら、腰を上下動させる。
「あっ、あああ、あああああっ」
　傘の張ったところが、いや、大陰茎全体が涼子のビラビラッとした肉片によって刺激される。
「涼子、浅く、浅くじゃ。浅く抜き差しをしてくれると、先っぽがとてもよいのじゃ」
　涼子が腰を上げる。
　中腰になって。
　御所さまの、えらの張ったところを玉門口（膣口）できつく締める。
「アアッ、そのまま、浅く動いてくれぬか」
「あい」
　涼子は小刻みに腰を動かして。
「アッ、アアアッ」
　先端部の雁首の快い刺激に、御所さまには、脳天が痺れてしまい、
「涼子、涼子、たまらぬ、イきそうじゃ・・」
　と、お悶えになる。
「御所さま、もう少し、もう少し待ってぇ〜っ」
　すると、涼子は気分を変えて御所さまの気持ちを反らそうとするかのように、まるでそば粉を引く、碾き臼（ひきうす）でも引くかのように御所さまとの接点を中心に、腰をグリグリと円回転させていくのであった。
　大陰茎の根元がねじれる。
　そして、涼子の熱い粘液が、御所さまの陰毛をしとどに濡らす…。
　御所さまは、腰の後ろあたりから、心地よい痺れが襲ってくるのがおわかりになる。
「アア、イッイィッ、イッイッ――ッ！」
　そう叫びながら、御所さまは、腰を下からズーンとばかり、お突き上げになる。
「あっん、そんなに、突いたら、いやいや、落ちる、落ちるぅ」
　と、御所さまは、少し頭を上げられ、そして、両手で、涼子の膝頭をにぎられる。
　涼子の上半身が少し安定してきたような。
　そこで、御所さまは今度は、ゆっくりと腰をお使いになる。
「あっ、そこそこ、ああ、いいわ、いいわ、そこを突いてぇ〜ぇっ」
　御所さまは、もうホント、出そうなのだが、お尻の穴をすぼめるようにして、我慢をなさりつつ、上の涼子の動きに合わせ、腰を落とし、そして腰を突き上げになる。
「ああ、いい、いいわ、いきそうよぉ、いきそうよぉっ」
「ああ、涼子、われもいい、イッイ〜〜ッ」
「ああ、御所さま、いいわいいわ、いく、いくぅぅぅぅぅぅっ！！」
　涼子がのけぞった。涼子の下半身が痙攣している。
　御所さまは、お尻を突き上げたまま、涼子の蜜壷の奥深くに突っ込まれたと思うと、その瞬間、大陰茎を収縮され、熱い精液を激しく上へ上へと噴き出される。
「ハァグゥッ、アッ、ウッ、ウゥゥッ！」
　御所さまは、腰を突き上げたまま呻かれて、涼子よりちょっと遅れられたけれども、激しく気をおやりになった…。

　御所さまは深い息をされて。すると、涼子が弓のようにからだを後ろに反り返し、上半身をまだ痙攣させているのがおわかりになって。
　御所さまは、顔を上げ、上体を少し起こしながら、涼子の腰のくびれに手を当てて、涼子のからだを支えておやりになる。
　涼子は長く、反り返っていて、御所さまが腕に痺れを感じはじめられた時、涼子はバッタリと上体を預けてきた。
　御所さまは寝そべり、下から涼子をしっかりと抱き抱えられる。
　涼子の背中を撫でておられると、手の平がべっとりと涼子の汗で濡れて来た。
「涼子、がんばったのだね」
「ごしょさまぁぁぁ……」
　御所さまは、まるで涼子の父親にでもなったように、涼子の背中をゆっくりと撫でておやりになるのであった。
　涼子はと見れば、目を瞑り、すうすぅと眠っていた。
（この女をせっかくわれひとりのものにしたのに…。この女をまた、あの白髪頭の年配者たちの手に委ねなければならないとは…）
　しかし、かといって、涼子を御所の館に連れて行くわけにはいかない。正妃の東二条院に『あなた様も物好きな。あのような身分の低い女を屋敷に入れるなんぞ』と皮肉を言われるのが落ちなのだから。
　御所さまはひどく虚しさを感じておられた。

　男と女の仲とはどういうものなのであろう。
　人間の命がはかないとすれば、男女の仲とてそれと同じようなものではなかろうか…。
　人間が仮に５０年を生きたとしても、何かを成さねば、５０年という歳月などあっというまに過ぎ去っていくのではあるまいか、この世という舞台に何の痕跡も残さないままに…。
　そして、男女の間に例え何か激しい情熱が交わされたにせよ、一陣の風が吹き去ってしまえば、最初から何もなかったことと同じことになるのではあるまいか…。
　そのようなはかなさがつらくて、御所さまはぎゅっと涼子のからだを抱きしめになられた。

　どれくらい時が経ったのだろうか。
　御所さまは、目を開けられ、ここが牛車の内であることに気がつかれた。
　後ろの方立て（引き扉）にいる従者に、御所さまは手招きをされ、その従者が近くに寄ってくると、上に乗っかって眠っている涼子を気遣うように、
「牛車を涼子の屋敷へ戻してくれぬか」
　と、小声で従者に言いつけをなさるのであった…。
（つづく）

（注）この翻案小説を書くにあたり、下記の図書を参考としました。
　　「とはずがたり」　新潮日本古典集成　　福田秀一　校注　　新潮社　刊
「女西行――とはずがたりの世界――」　松本寧至　著　　　勉誠出版（株）刊