４１　実兼の精を奥深くに受けてしまう

　後深草院は、時には、ひとり寝をされることもある。
　その時はいつも、二条あがこのことを想われるのであった。
　昼間、御所であがこに会っても、知らんふりをされるのであったが。
　それはそうであろう、近頃、あがこは西園寺実兼の訪問を受けているというのだから…。
　でも、後深草院は心の底では、あがこのことを求めておられるのであった。

　後深草院は、寝床で、そばにはいない二条あがこの幻（まぼろし）に話しかけておられた。
『あがこ、そなたはどうしてこの頃、冷たいのだ？』
『だって、御所さますら、そうなんですもの』
『わたしはそんなことはない』
『いいえ』
『そなたは、どうしてそのようなことを言うのだ？』
『御所さま、お隠しになってもだめですわ。うわさになっていますわよ』
『えっ？』
『御所さまが、夜な夜な若いおんなの許にお通いだということが…』
『そのようなことはない…』
『そんな言い訳なんて聞きたくありませんわ』
『あれは単なる夜遊びであって、本当に愛しているのは…』
『ただ、歩き回っているだけ、と？』
『そうじゃ』
『そんなこと、信じませんわ』
『われが愛しているのは、そなただけだ。他の女とは、単に戯れているだけじゃ』
『その戯れが、どこまで戯れで済んでいるのでしょうか？』
『いや、それは…。たまには、戯れにおんなを抱き寄せて、口を吸ってやることもあるが…』
『そこでお終いになさるのですか？』
『そうだよ』
『うそ、うそ…』
『そなたに嘘をついてもしかたがない』
『信じられません』
『噂など信じてはいけない。どうか、そなただけはわれを信じて欲しい。愛しているのはそなただけなのだから』
　後深草院は、本当に、あがこに、すがるように頼んでおられる。
　そして、一方で、院にはあがこを責めたい気もあるのであった。
　そなたはどうなのだ、実兼とできているのではないか、と。
（あがこが実兼とできている、からだの関係がある）
　そう思うだけで、院には、心がうずき、濡れるのである。

　実兼のものにしてやれば…。
　実際、われには、君子がいる。
　それなのに…。渡せないのだ、あがこ（吾が子）を。
　どうしてなのだろうと考える。
　やはり、あがこの母親の大納言典侍近子が想われるからなのだろう。
　近子が、われにまぐわい（セックス）を教えてくれたのだ。
　近子の顔が、「吾（あ）が子」（＝二条あがこ）の顔に重なるのだ。
　それに、あがこの処女を奪ったのは、他ならぬ、われであった。
　しかも、あがこの父親の久我（こが）雅忠には、「あがこのことは、すべてわれに任せて欲しい。将来にわたって面倒を見るから、心配を致すでない」と約束したのだ。
　それなのに…。
　われは、実兼にあがこを抱かせる段取りをしてしまい…。
　しかし、実兼にいったん抱かせたら、あがこのことがにくくなって。
　そして、そのやり場のない嫉妬をまぎらわすために、涼子や船子、君子など、色々な女を抱くはめになってしまった…。
　
　恋しい女だったのに…。
　その恋しい女を他の男に寝取られ、何もできない無力な自分が情けなくて、院には涙を流されるのであった。

　後深草院は、昼過ぎに目覚められた。
　なんとなく、胸騒ぎがするのだった。
　二条あがこの許に、実兼がいるような気がして…。
　そんなときに、われの文（手紙）が届けば、あがこはどんな顔をするであろうか。
　たぶん、動転するのではないだろうか？。

　後深草院は、とうとう硯（すずり）を手に取られた。
　あがこを驚かせてやりたい。
　いや、それよりも、まだ自分はあがこにどうやら執心しているみたいなのだ。
（われの今の気持ちを何とか、あがこに伝えたい…）
　そして、後深草院は、一首、歌を詠まれたのである。
「うば玉の　夢にぞ見つる　小夜衣（さよごろも）　あらぬ袂（たもと）を　重ねけりとは」　（夢に見たぞよ　そなたが　わたし以外の男と　枕を交わしている　ところを）

　一方、こちらは、里下がりをした二条の屋敷…。
　明け方、実兼に挑まれ、あれから眠りについてしまった二条であった。
　二条が目覚めると、もうお昼も過ぎているような時刻になっていた。

　横を見ると、なんと、実兼がそばで寝ている…。
　あれほど、この男の愛撫で、明け方には燃えてしまったのに。
　今、こうして、冷静になってみると、何とも浅ましいことであった。
　実兼さまに肩を抱かれ…。拒絶しようと思えばそれもできたかもしれないのに。いつしか、仰向けにされ、おっぱいを吸われているうちには、実兼さまにからだを開いてしまっていた…。
　御所さまに、わるいことをしてしまった…。
　実兼さまとの、こうしたことが、何度も度重なるうちには、御所さまに、知られそうで、二条はとても恐ろしい気がするのであった…。

「ねぇ、もう起きないこと？」
　二条は隣に寝ている実兼を揺り動かす。
「うっ、うぅ〜んっ・・」
「ねぇ、ねっ、起きましょうよ」
「いやだ、いやだ」
「しようのない人ねぇ」
「ねぇ、もう一度、しようぉっ！」
「いやよ」

　しかし、実兼さまったら、掛け蒲団をはぐり、下にもぐり込んできて。
　着物の裾を広げ、腰に巻いた下衣を上にお上げになって。
　内腿に舌を這わせながら、手ではしきりに草叢をお撫でになる。
「いや、いや。もうお帰りにならないと」
「だめだ、だめだ。あなたと、したいのです」
　実兼に、もう下衣の紐を解かれてしまっていた…。
「あっ・・っ」
　下肢が剥き出しにされてしまっている…。
　実兼さまの手が陰核に触れて。
「あっ・・っ、だめよ。顕子さまが・・・」
「あいつは、待ってなんかいませんよ」
「そんな…。もぉっ、わ・る・い・ひ・とぉ・・・」

　二条は、頭の中に霞が立っていくような気がしていた。
　わたしが、股に込めていた力を抜いてしまったものだから、実兼さまに、しっかりと足を広げさせられ、頭を嵌めこまれてしまう…。
　股間に嵌まった実兼さまの頭が、上下に動く。
　くちゅくちゅという音がして。
「あっ、あああ、ゆ・る・し・て、あ・な・たぁぁぁ・・」

　実兼は、二条の後ろに回る。
　二条をうつ伏せにした。
「ねぇ、少し、顔を横に向けてよ」
「こんな風に？」
「ああ、いいよ」
　二条は、うつ伏せになりつつ、しっかりと右の頬を敷き布団にくっつける。
　実兼は、少し二条の背中を押す。
　二条は、右の前肩さえ、敷き布団に食い込ませてしまう。
　と、二条のお尻が高くなる。
　とっても白いお尻で…。
　頬ずりしたくなるほど、すべすべとしたお尻であった。
　実兼の股間のモノがコッキンと音を立てるぐらいに硬くなる。

　実兼は、二条の後ろにひざまずいていた。
　両の手で、二条のお尻を左右に開く。
　菊の紋章（＝アナル）が見えた。
　おのが手を、菊の紋章の下の方にある、二条の蜜壷の入り口に差し添える。そして、やさしくコする。
「あっ、あーん」
　その穴はすでに濡れていた。
　中指の腹のところで、割れ目をこすりあげる。
　すると、指がびっしょりと、愛液で濡れそぼるのであった。
　そして、その中指をさらに、裂け目の上の方に当てる。
　コリッとしたものをやや強く中指の腹で擦り上げる。
「あっ、ああっ、いやっ！、あ〜〜ン！」
　気持ちがよいのか、二条は、真っ白で小さなお尻を左右に振っている。がそれも実兼には好ましいことであった。
　それで、実兼は濡れた指先で、ゆっくりとやさしく、陰核の頂きを撫でる。
　そして、まぁ〜るく、円を描くようにして、陰核の周辺部をなでさするのであった。

　実兼は、大きくなった自らの大陰茎に手を添える。
　その先っぽを、ぽっかりと開いた紅色の裂け目にあてがった。
　大陰茎の先っぽが、二条の愛液で濡れて光っている。
「ヌルッ」
「あっ、うーん、はぁっ」
　先っぽが二条の玉門（膣）の中に入る。
　立ち膝のまま、実兼はゆっくりと腰を前に進めた。
「うーん、フォ〜ッ！！」
　大陰茎が根元まですっぽりと蜜壷に入り…。あまりの気持ちよさに、実兼から声が洩れたのだった。

　実兼は、二条の腿の付け根のあたりをしっかりと手で抱いて…。
　そして、抜き差しをする…。
　抜く。あの松茸のような広がったカサのところが、玉門口（小陰唇）にひっかかって、とても気持ちがいい。
　突く。狭いところに押し込めるとき、太い亀頭部が入り口のところできゅっと締め付けられて、とても気持ちがいい。
　がなんといっても、グッと中まで押し込み、大陰茎を根元でキュッと締め付けられるのがいい。
　奥深く押し込んだままで。
　実兼は内腿から手をはずし、二条の背中を大きな手の平でゆっくりとなでてやる。
　そして、わき腹をこするようにして愛撫した。
　わき腹の愛撫に飽きると、手を下に差し入れ、二条のおっぱいを揉むのであった。

　実兼は、また手を二条の内腿に戻していた。
　実兼が上半身の背を反らすと、さらに大陰茎が二条の玉門の奥深くに入っていく。
　二条も気持ちがいいらしい。しきりにお尻を左右に揺らし、右頬を敷き布団にくっつけたまま、呻いている。
　そして、愛液がこんこんと溢れ出し、大陰茎の根元の陰毛を濡らすのであった。

「あんあん、あ・な・た・・・」
　二条が背中をねじ曲げてこちらを見ようとする。
　そして、手を伸ばし、こちらの手を取ろうとするかのようであった。
　二条は、相対して、しっかりと抱いてもらいたがっているようだ。

　実兼は、二条の玉門から大陰茎を抜く。
　それは、ほっかほっかの、蒸かし芋のように白い湯気をたてていた。

　二条は、実兼の手で、仰向けに寝かされていた。
　実兼が添い寝をしてくる。
　そして、実兼の手が、割れ目に置かれ…。
　裂け目に沿ってなぞられる。

　とっても気持ちよくて、二条は目を細める。
「ねぇ、ねぇ…」
「なんだい？」
「お口を吸ってちょうだい」
　実兼は、下のお口をくちゅくちゅしながら、二条の上のお口をちゅうちゅうと吸わせてもらう。
　恋しい女の口は、本当においしかった。
　そして、舌を差し入れ、恋しい人の舌におのが舌を絡めていくのだった。

「ねぇ、来て！」
　二条が腕を伸ばして催促してくる。
　実兼は、股間のモノが痛いほど硬くなっているのに気がついていた。
　しかも、その先っぽは、おいしい料理を出されたお客のように、小さな鈴口から涎を流しているのであった。
　実兼は上半身を起こす。そして、手で二条の股を割っていく。
　二条の足の間に、わが身を置いた。
　二条の足をちょっと曲げさせて、そして、広がった股間に、自らの熱いモノを宛がう。
「あっ、ウッ！」
　実兼が呻く。
　入れさせまいとするかのような、肉襞の抵抗があるのだ。
　下腹部の丹田に力を込め、グッと腰を押し付ける。
「ズルッ！！」
「あっ、あああっ、アン、イイわ」
　二条が呻きつつ、身を反らせる。
　実兼は身をかがめつつ、二条の乳房を揉み、乳首を口に含む。
　そして、ゆっくりと上体をかぶせていく。
　隙間なく、肌と肌がくっつけ合わされる。
　二条の乳房が、胸に心地よくて実兼は目を細めていた…。
　
　二条は目を瞑っていた。
　実兼の優しい愛撫が気持ちいい。
　実兼が、からだを重ね合わせたまま、口を吸ってくれる。
　彼の頭を掻きいだき、おもわず彼の舌まで吸い込んでしまう二条であった。

　実兼は、再び、上半身を起こしていた。
　二条の足を広げる。
　そして、その広げた二条の足を曲げて、屈曲位の形に持っていった。
　腋に、二条の足を抱えるようにし、手は前方に伸ばして、二条の二の腕を掴む。
　その二の腕を引きつつ、腰を前に押し込むと、大陰茎が深く二条の奥に突き刺さり、二条が「ウッ」とばかり呻く。

　そして、実兼は、二条を押さえ込み、腰を上下しながら、大陰茎を抜き差しを繰り返す。
「はぁ、フーン、あああっ…」
　二条は苦しげである。
　とてもやるせなさそうな顔をしている。
　が、抜き差しで、快感が倍加しているように実兼には推察された。
　ちょっと体を浮かし、下の方を見やると、二条と接している股間のところで、おのれの大陰茎が出入りしているのがわかる。
　その出入りしている様子を見ながら、実兼は、時にはゆるく、時には強く速く、抜き差しをする。
「ああっ、もうだめ、ダメ・・・」
　二条は頭を左右に揺らしつつ、切なげな、閉じたまなざしをこちらに向ける。
「ああっ、ちょっと待って。一緒にイきたいから…」
　そう言いながら実兼は、あわてて二条の二の腕から手をはずし、上半身を起こす。
　腋に抱えていた二条の両足をはずして、伸ばしてやる。
　屈曲位から多少は楽な体勢になったと思う。
　そして、実兼はおのれの下肢も伸ばし、上体を二条のからだの上に重ねていく。
　実兼は、二条の頭を抱えながら、チュッ、チュー、チュー、チュチュッとばかりに、二条の口を吸う。くちびるを吸い上げてやると、フンフンと鼻を鳴らしながら二条が応える。そして左手で二条の乳房を揉んでいく。

　二条のくちびるや舌を夢中で吸っているうちに、いつのまにか二条の中に入れた大陰茎が急速にその大きさと硬さを増していく。

「ああっ、いいわ、いいわ、とっても感じるぅぅぅ…」
　二条は、下半身が浮いてくるように感じて…。そして、何か股間から激しく突き上げてくるものを感じるのだ。
　股間の津波が胸まで押し寄せてきて…。
　そして、頭にまでうねりが…。
　そのうねりに身を任せていると、ほんとうにからだ全体が波の上をさまよっているようで…。
「あっ、あーんっ、気持ちいっいー、アーン、アアアアッ・・・」
　二条がピーンと足を伸ばし、胸を反らす。
　その時、股間から激しい火の柱が立ち上り、それが脳天まで貫いていったような気がした…。
「あっ、あああ・・・ぁ　ぁ…　…　」
　二条は頭の中が朦朧としてくる。
　そのとき、からだの奥深くに、何か熱いモノが吹きかけられたような気がした。
「ア−ン、うっ、うぅぅぅ……」
　二条は、上半身の肉を痙攣させつつ、しっかりと実兼の体にしがみついていく…。
　熱いものを、からだの奥深くで、しっかりと受け止めてしまったような…。
　そして、気を失ってしまう…。

　夕暮れももう近いというのに…。
　まだ、わたしと実兼さまとは、裸に近い状態で、お布団の中にいて…。

　いくらなんでもと思い、二条は身を起こす。
　実兼は、口を開けたまま、まだ眠りについていた。
　二条は寝床から抜け出し、身づくろいをしていた…。
　そうこうするうちに、後深草院から、「そなたが他の男とまぐわい（セックス）をしている夢を見てしまったよ…」という手紙が届いた。
　二条はドキリとしてしまう。
　御所さまは本当に男女の仲のことには敏感なお方なのだと、二条は思う。
（もしかしたら、わたしと実兼さまのことだって、御所さまには、ばれているかもしれない…）
　しかし、二条は、頭をしきりに振って、その自分の思いを断ち切ろうとしていた。
　二条は気を取り直していた。

　二条は、実兼を置いて、書院の間に移っていた。
　座り机に向かい、墨をすっている…。
　筆を取り、紙に向かう。
　自分ながら、とてもあつかましいとは思われたけれども、二条は、言い紛らわしつつ、後深草院（＝御所さま）に、文を書く。
　その文に二条は歌をしたためる。

「ひとりのみ　片敷きかねる　たもとには　月のひかりぞ　やどり重ぬる」
（他の男の人と寝たなんて、そんなことをおっしゃってはいやよ。いつもひとり寝をして、とてもつらい思いをしているというのに。わたしのたもとには、毎夜月のひかりが宿っているだけのことですわ）

　しかし、そのような歌を返しつつも、二条は良心の呵責から逃れることはできなかった。二条は御所さまの怒りが怖く、しっかりとわが胸を掻き抱くのであった…。
（つづく）

（注）この翻案小説を書くにあたり、下記の図書を参考としました。
「とはずがたり」　新潮日本古典集成　　福田秀一　校注　　新潮社　刊
「女西行――とはずがたりの世界――」　松本寧至　著　　　勉誠出版（株）刊