４４　虚しい夢を追うふたり

（うん、もぉ、もうちょっとだったのに…）
　二条あがこは、絶頂感（アクメ）まで行けなくて、ちょっとすねていた。
　股間から、スルりと御所さまのモノが抜け落ちる。
（ずっと熱いまま、からだの中にいてくれたらいいのに…）
　とあがこは思う。
　でも、御所さまに、
「わるかった…」
　と謝（あやま）られ、あがこは機嫌を直そうとしている。
　いや、あがこは、御所さまの気持ちを確かめようと、わざと御所さまにすねた顔を見せているのだった。

「いやいや、自分だけおイキになって！」
　あがこは、御所さまの胸に手を置きながら、わざと甘えるように言う。
「だって、さぁ…」
　と、御所さまは、あがこのからだの上で、恥ずかしそうな顔をされている。

　あがこにとっては、御所さまのからだの重みが心地よい。
「だって、って、なに…？」
「そなたとは久しぶりなんだもの、興奮しすぎちゃったみたいだよ」
「あらっ？！」
「そういうものだろぉ、好きな女とヤるときは、男はどうしてもハヤクなりがちなものさ」
「えっ、そうなのですか？」
「おんなの子はどうなの？」
　あがこは、わからない。小首をかしげている。

「わたしのからだ、重くないかい？」
「大丈夫よ」
　あがこは、やさしく言ってくれた。
　いつまでも、あがこのからだの上にのしかかっていたい…。
　が、しかし、御所さまは、あがこに遠慮をされ、立て肘になり、自分の上半身の重さを両肘で支えておられる。
　そして、あがこの顔にかぶさるようにして、あがこのくちびるをお吸いになる。
「ああっ」
　あがこが呻く。
　しかし、御所さまも、突っ張った肘が畳の上では痛くて、あがこの横にからだを降ろされた。

　御所さまは、からだを横にしつつ、まるであがこの父親になったみたいに、添い寝をされている。
　あがこも、からだを横向きにして、顔を御所さまの胸に埋めている。
　御所さまは、右手であがこを抱きすくめられ、左手をずっとばかりに、あがこの下半身に走らされる。
　その左手の指が、あがこの股座の割れ目に当てられる。
「くちゅくちゅ」
　あがこの裂け目の泉からは、こんこんと蜜のような淫液が噴き出していた。
「あがこ、よく濡れているね」
「いや〜ん」
　でも、御所さまは、うれしいのだ、あがこがまだ自分のことを好いていてくれていると思われて…。
　御所さまは、あがこの顔を挙げさせられて。
「あがこ、愛しているよ」
　と、御所さまは囁かれる。
　そして、御所さまは、あがこの可愛いくちびるをそっと、お吸いになる。
「あっ、あ〜ん」
　と、あがこが熱いためいきを漏らす。
　そのうめきの声が御所さまの下半身にまで伝わり、股間のモノに芯が入っていく。
　
　御所さまは、あがこのくちびるや舌を吸っているうちに、股間のモノが徐々に硬くなっていくのに気がつかれる。
　右肘に体重を掛けながら、半身になりつつ、からだを少し起こされる。そのおかげで下の方に伸ばした左手がさらにあがこの股間に行き渡る。
　あがこの股間の割れ目から、とろとろっとした、白みがかった淫液を指で掬（すく）い取られる。そして、御所さまの指先からは幾筋もの糸が引いていく…。
　御所さまは、ねっとりと濡れた指先で、裂け目の上にある、コリコリッとした小豆大（あずきだい）のおサネを、お揉みになる。
「はぁ、ふーん、いやいや」
　あがこは、あごを突き出すようにして、その気持ちの良さを訴えてくる。それは、御所さまにとっては、まるで、猫が咽喉を鳴らしているような気がされるのであった。
　御所さまは、顔をあがこの胸の上に持っていかれる。
　すでに、あがこの乳首はおっ立っていた。
　その紅色（ピンク色）をした乳首を口にふくまれる。そして、その乳首を啜（すす）られる。
「はぁ、ハァ〜ン、ウーン」
　あがこが、お尻をもじもじさせながら悶える。
　左の乳首を強く吸い込み、舌をからませていく。
「フーン、ハァ、ハァッ、ハァ」
　あがこが、とてもやるせなさそうな声を漏らす。
　御所さまは、乳首を啜りながら、左手の指でおサネ（陰核）をこすっておられる。
　陰核の周りを撫でつつ、時折、コリッと陰核の尖った先端部を中指の腹で擦られるのだ。
「ハウぅ、ハウぅ、うううっ、うーん」
　乳首を啜り、陰核を撫でると、あがこの身もだえが一層激しくなる。そして、時々は、虹のように上体を反り返し、その身を反転させる。
　クリクリとした乳首と、コリコリッとした陰核とは、何か、神経というものが、つながっているのであろうか？。

　御所さまは、あがこの股を少し広げ気味にされて、自身のからだを下の方にずらされる。
　もう、あがこのアソコの位置はわかっていた。
　あがこの下半身に、のしかかるような姿勢を取られている。
　少しからだを浮かせ、上半身を反り返しながら、硬くなったモノに手を添え、あがこのアソコに宛がい、グッとばかりに腰を押し入れられると、そのモノは、ズルズルと玉門（膣）の秘肉を掻き分け、中に入り込んでいく。
「ああっ」
　と、あがこが呻けば、御所さまも、あがこの中の、あまりの熱さと締め付けの良さに、
「アアアッ」
　と、声を漏らされる。

　御所さまは、胸を反り返されたまま、目を瞑っておられる。
　ジワリジワリと大陰茎を、襞肉に包まれて、さらに気持ち良くなられていた。
　そして、からだを、あがこの胸に合わされていかれる。

「どう、気持ち、いいかい？」
　御所さまは、顔をあがこの右頬にくっつけられて…。口をあがこの耳元に寄せられてささやかれる。
「ええっ、とっても」
「そうか、それはよかった…」
「とっても、硬いわ」
「そうかい」
　御所さまが、わざに腰を入れられる。
「ああっ、いいわ、とっても…」
「そうか、あがこ。愛しているよ、とても…」

　御所さまが、クイックイッと腰を使われると、
「うーん、んっ、んんっ・・・」
　と、あがこがそれに応える。そして、あがこの蜜壷は、御所のモノをキュッキュッと締め付けるのだ。
　御所さまは、その締め付け具合が、とっても気持ちがいい。
　でも長持ちはしそうであった、さっき、出したばかりだから。

　御所さまは、下半身を密着させたまま、手を突っぱねて、上半身を弓のように反らされる。
　魔羅が奥深くに入り、気持ちがいい。
「うーん、うーん、うううっ」
　魔羅（ペニス）の先端部が、奥の院（子宮口）に到着したみたいだった。
　そのまま、グリグリっと、奥の院を抉られる。
「うっ、うう、うーん」
　あがこは、苦しそうで、痛そうであった。
　御所さまは、心配になられる。
「ねぇ、大丈夫？」
「ハァ、ハァ、御所さま、だいじょうぶですわ」
　御所さまは、あがこから返事があって、ほっとされる。
　でも、もっともっとあがこの奥深くに魔羅（ペニス）を突っ込みたいと思われるのであった。

　御所さまは上体を起こされる。
　そして、いったん、あがこの玉門（膣）から魔羅をお抜きになる。
　御所さまは、あがこの両足を肩の方にかつがれて。そして、その足を折り曲げられて。
　あがこのお尻が挙がり、あがこの玉門（膣）がよく見える。
　おサネ（陰核）を揉みながら、自分の魔羅（ペニス）をあがこの玉門（膣）に近づけて、そして、ヌルっとばかりに、上から押し込みになる。
　魔羅を押し込みつつ、指でおサネ（陰核）を押すように揉みしだくと、あがこは、フンフンと鼻を鳴らし、お尻を振って喜んでくれる。
　それに、御所さまが魔羅と玉門のつなぎ目に目をやられると、そのつなぎ目から、あがこの淫液があふれ出しているのがわかるのだった。

　御所さまは、ちょっと、魔羅をお抜きになる。
　あがこからちょっと離れて、あがこの下肢の両膝の折れ目をさらに深くされ、その両膝があがこの胸にくっつくほど両脚を押し付けられる。
　あがこの膝小僧を強く押し、あがこの両足が隙間もなく折り曲げられると、あがこの背中が丸くなり、お尻が盛り上がって、裂け目はさらに上を向いて、陰穴が露わになる。

　その淫穴に、まさしく上から魔羅を突き刺したいと思われる。
　御所さまの魔羅は、天を仰いでいて…。
　そのモノを上から下へ押し曲げて、グッとばかりに、深く突き刺しになる。

　あがこは目を瞑っていた。
　苦しい。背中を丸めさせられていて。
　でも、御所さまを恨む気持ちはない。
　もっともっと、苛めて欲しかった。
（御所さま、わたしったら、実兼さまともこんなことを…。わたしはわるい女……）

　御所さまの陰茎が、肉襞を押し分けるように入ってくる。
　気持ちがよくて、あがこの頭の中が徐々に白くなっていく。

　御所さまは、魔羅の亀頭部が奥の院（子宮口）に達すると、そのままじっとされていて…。しばらくすると、今度は、ゆっくりとお抜きになる。
「ウッ、ウウウッ」
　御所さまは、胸を張りながら、呻かれる。
　突き刺すときは、あがこの肉襞をこするのか、ゾクゾクするような快感があり、抜くときは肉襞を逆撫でするのか、腰全体に痺れが回るほどに気持ちがいいのである。

　御所さまは、腰を浮かしつつ、浅く速く抜き差しをされる。
　しかし、気持ちが良すぎて、乳白色の淫汁を吐きそうになられる。
　で、次は、気分を変えるように、ズボりズボりと、大腰を使って魔羅を深くゆっくりとお突きになる。

　熱く、強い肉襞の締まりの中に、硬くカチカチになった魔羅を突き刺すときの、オスとしての優越感とその気持ちの良さは、男でなければわかるまい。
　そして、抜くときは、松茸の傘のように張りに張った雁首が、玉門を囲む門構え（小陰唇）にこすられて、頭のてっぺんまで痺れるほどに気持ちがいいのだ…。そんな気持ちは女などにはとうていわかるまい。

　御所さまは、浅く、そして時には深く抜き差しを続けておられる。
「あっ、うっん……んっ……んっんっ……」
　あがこが、身を捩り、お尻をぴっくん、ぴっくんと跳ね上がらせる。
　そのしぐさが、とても愛らしい。もう、とてものこと、御所さまにはがまんができないほど興奮されているのだ。
　御所さまは、あがこの折り曲げた足を解放されて、からだを合わしていかれる。

　あがこは、両足を伸ばし…。
　伸び伸びとした気分になる。

　あがこは、御所さまの上半身を待っていたのだ。
　しっかりと抱きついていく。

　御所さまも、あがこの上半身をひしとお抱きになる…。
　御所さまは、あがこの肩口にあごを、右頬をあがこの右頬にぴったりとくっつけて、
「あがこ、あがこ………」
　と、呼びかけになる。
　動きにくい体位ながら、なおも、御所さまが腰をお使いになると、
「……んっんんんっ、あっ、ううっ、んっ、ああああっ」
　と、身も世もないほどにあがこがとり乱す。

「あっ、うーん、御所さま、ごしょさま・・・」
　あがこが指を立てるように、背中にしがみついてくる。
　そして、あがこは足を腰にからめてくる。

　御所さまは、そんなあがこがいとおしくてたまらないのだ。
　ついに、あがこの興奮に気を移されてしまう…。
「あがこ、あがこ、愛している、でも、でも、もう・・・」
「御所さま、ああっ、来て来て……」
「あがこ、あがこ……」
　と、あがこの蜜壷がキューっとばかりに、すぼまって。
　陰茎が食いちぎられそうで…。
「うっ・・、ううううっ、うっ！！」
　とばかり、御所さまは丹田に力を込められて。その肉壷の締め付けに抵抗をなさる。
　グーンと、肉棒に力がみなぎり、プク−ッと膨らみを増すと、縮まろうとする肉壷を、そうはさせじと押し広げていく…。
「あっ、あっん、ああああっ………」
　あがこが、足を突っ張り、上半身を弓のように反り返す。
　がしかし、御所さまは、あがこのおなかの上に、のしかかりつつ、
「ウッ、ウン、ウウウウッ」
　とばかり、深く腰を突き刺しになる。
「あああっ、あああああっ………」
　あがこは両足を突っ張り、激しく下肢を痙攣させている。
「アッ、アッ、アアアア、アッ！」
　御所さまも、もう堪らず、あがこをしっかりと抱きしめられ、腰の震えとともに、グビッ、グビッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ―――ッと、ばかり男の精をあがこの奥の院に打ち込まれる。
「あ―――――――っ」
　あがこは、一言漏らすと、胸やおなかの肉に硬直痙攣を起こし、気を失っていく…。
　そして、あがこの蜜壷は、いつまでもいつまでも、御所さまの肉棒を離そうとしないのであった…。

　御所さまは、横抱えにしながら、あがこを自分の胸に掻き抱いておられた。
　あがこは、スウスウと寝息をたてている。
　寒くないようにと、御所さまは、あがこの肩に着物を掛けておやりになった。

（どうして、わたしは、こんなにかわいいあがこを実兼なんぞに抱かせてしまったのだろう…）
　御所さまは泣いておられた。
　悔いても悔やみきれない。
　この可愛いあがこは、本当にわたしひとりのものにしておきたかったのに…。

　御所さまは、涙を流しながら、あがこの髪を撫でておられる。
　今夕は、あがこと夕餉を一緒に執りたいと思われた。
　写経（＝如法経書写）の行（ぎょう）が終わったのだ。本来ならば、正妃である東二条院の許に行くべきなのであろう。しかし、今は行きたくなかった。
　あがこと、いつまでもこうしていたかった。
（なぜ、この女がこんなに愛おしいのだろうか？）
　御所さまは自問自答をしておられる。
　御所さまは、仏法が説くところの、輪廻転生（生まれ変わり）を信じておられるということは決してなかった。
　しかし、今、こうして御所さまが、あがこを胸に抱きしめておられると、あがことは、前世においても、どこかでこうしていたような気になられるのであった…。
（つづく）

（注）この翻案小説を書くにあたり、下記の図書を参考としました。
　　「とはずがたり」　新潮日本古典集成　　福田秀一　校注　　新潮社　刊
「女西行――とはずがたりの世界――」　松本寧至　著　　　勉誠出版（株）刊