| 13 俺たちは美由紀さんを挟んでベッドに座っていた。 もちろん、みんな素っ裸のままだ。 さっきまで俺と陽二はへたり込んでいたし、美由紀さんは余韻に浸ってか倒れたままヒクヒクと痙攣していた。しばらくすると陽二が美由紀さんを起こしてそんな体勢になった。 美由紀さんは胸とあそこを手で隠してうつむいている。 「義姉さん、もう後戻りはできない。俺たちは運命共同体だ」 本の虫である陽二は難しい言葉をよく知ってる。 「大丈夫。兄貴には話さないし、このことは三人だけの秘密にする」 陽二は言葉を続ける。美由紀さんはうつむいたままだ。 二人で土下座してからの展開は現実とは思えないほどシュールで刺激的だった。陽二がどうして変わっちゃったのかもわからない。 俺たちは狂ったように美由紀さんを弄んだ。いや、蹂躙とか陵辱という言葉を使ったほうがいいかもしれない。なにもかもがわかったような陽二の言いなりになった。美由紀さんはそんな俺たちを受け入れてくれた。たしかに言葉では抗っていた。でも、本気で嫌だったらここまではできなかったはずだ。 「義姉さん、俺、知ってるんだ。義姉さんが兄貴に満足してないってこと」 美由紀さんの肩がピクリと震えた。 「それに、俺、義姉さんのエッチな妄想を書いた小説みたいなの、読んじゃったんだよ」 「あ・・・ああっ・・・」 美由紀さんが両手で顔を覆った。 「義姉さんだって途中からわかってたはずだ。俺が義姉さんの妄想通りに行動してたってこと」 初耳だったが、なんとなく俺は理解しはじめていた。どうして陽二があんなに自信たっぷりに振る舞えたのか、どうして美由紀さんが逃げもせず俺たちに犯されてしまったのかを。 「あれが、本当に義姉さんが書いたものか自信がなかった。でも昨夜、義姉さんの裸を間近で見たときにわかったんだ。犯されたい暗い願望を持った主人公が義姉さん自身だったってことに。あそこの右脇にホクロがあったからね」 俺は呆気にとられて陽二の話を聞いているしかなかった。あのとき「あっ」とさけんだ陽二がなにを考えていたのかがやっとわかった。 美由紀さんは泣いているのか小刻みに肩を震わせている。 「だから俺は昨日のことを謝って、義姉さんの願望を叶えることにしたんだ」 「わたしが・・・いけない・・・のね・・・」 美由紀さんは消え入りそうな声で言った。 「義姉さんは悪くない。義姉さんがこの家に来てから、俺はずっと義姉さんに憧れてきた。義姉さんのことが知りたくてたまらなかった。覗いたり、盗み聞きしたり、義姉さんのノートを盗み読みした俺が悪いんだ。どうしたらいいかわからなくて、毎日、気が狂いそうだった。だから直人を誘い入れたんだ」 「これから・・・わたし・・・どうしたら・・・いいの・・・」 「いままでどおりさ。俺たちはバイブレーターの代わりに義姉さんの願望を叶える道具さ。そして、それは俺たち自身の願望でもあるんだ。三人だけの秘密にすればみんなハッピーじゃないか」 「修一さんに・・・」 「兄貴のことを気にしたってしょうがないじゃないか。もう後戻りはできないんだ。だいたい、こんな素敵な義姉さんをほっておく方が悪いんだよ。それに、すぐ終わっちゃうから義姉さんだって不満だったんだろ？」 「どうして・・・」 「ごめん。覗いてたからね。ねえ、決めちゃいなよ。俺も直人も義姉さんが大好きなんだ。だから、これからのことは義姉さん次第さ」 「・・・」 美由紀さんは黙っている。けど、最初に比べると、なんとなく場の雰囲気は和んだ感じがする。すくなくとも俺たちを拒否していない。 「それとも、俺たちよりこんなオモチャがいいのかなぁ？」 そんな雰囲気を陽二も感じているんだろう。すこし、おちゃらけた声でバイブレーターを手にして言った。 「ようじさん・・・やめて・・・死ぬほど恥ずかしいんだから・・・」 「エッチな話書いてたことや、こんなオモチャ使ってたことがバレちゃってたから？ それとも、こうして三人で裸でいること？」 「ばか・・・」 媚びを含んだ美由紀さんの口調で風向きが変わったのがわかった。 「ほんと言うとさ、どっちがいいか悩んでたんだ。このまま三回戦に突入して無理矢理義姉さんに『気持ちいい』って言わせてドレイにしちゃうか、それとも義姉さんに俺たちとの関係を認めてもらって仲良くエッチするか。俺としては後の方がいいんだ。義姉さんのことが大好きだからね。今日は土曜じゃないか。ゆっくり楽しもうよ」 恫喝なのか、計算なのか、陽二は言葉で美由紀さんを追い込んでいた。 「もう・・・降参・・・フラフラなの。これ以上は無理よ・・・ごはん作るから一緒に食べましょ」 「うん。休憩しよう。みんなで、ごはん食べて、お風呂入って、また楽しもうよ」 「だめよ。ほんとに壊れちゃうかと・・・思ったんだから・・・」 「義姉さんだったら壊れるくらい滅茶苦茶にしてみたいな」 陽二はニヤリと笑って言った。 「もう・・・ばか・・・」 美由紀さんの声はゾッとするほど色っぽかった。はっきりとは言わないが期待しているのがわかる。 「メシ作るの手伝うよ。体力が勝負だからね。俺たちビギナーだから下手かもしんないけど体力にだけは自信があるんだ。おまけに二人だしね。義姉さんを満足させるまでがんばるよ。だから、いろいろ教えてね」 陽二が立ち上がる。そして、美由紀さんの手をとった。 「もう・・・ばかなんだから・・・」 そう言いながら美由紀さんも立ち上がった。 その顔からは迷いが消えて微笑すら浮かんでいた。 「行こうぜ、親友。これから最高の夏休みのはじまりだ」 陽二が俺を見て笑った。 こうして、俺たちの夏がはじまった。 エピローグ あの夏から三年が経った。 俺と陽二は地元の大学に進学することにして推薦も決まった。 理由？ もちろん美由紀さんと一緒にいるためだ。 あの日のことは今でも思い出す。そう、陽二と一緒に謝った日のことだ。 朝メシを食った後、三人で風呂に入り、またはじまってしまった。吹っ切れてしまったのか、このときは、むしろ美由紀さんの方が積極的だった。結局、夕方まで爛れた時間は続いた。最後は美由紀さんが失神同然になってしまったし、俺たちもヘトヘトだった。 美由紀さんは「こんなに感じたのは初めて」だと告白した。 こうして俺たちと美由紀さんの奇妙な三角関係がはじまった。 美由紀さんはピルを飲むようになって妊娠の心配がなくなり俺たちは思う存分楽しめるようになった。 最初が最初だったからか陽二に対して嫉妬みたいな感情を抱くことはなかった。美由紀さんが俺たちを平等というか、どちらにも同じように尽くしてくれたからかもしれない。 陽二の兄さんは月に一回くらいのペースで日本に帰ってきては、また出張するという生活が続いていた。あるとき、美由紀さんと兄さんのセックスを例の通風口から覗いたことがある。美由紀さんが欲求不満になるのは当然だと思った。ほとんど前戯もせずに挿入して、あっという間に終わっちゃうんだ。出せばいいって感じ。あれじゃあ美由紀さんがかわいそうだ。 だから、俺たちは美由紀さんを感じさせることに一生懸命になった。 そんな気持ちが通じたのか、美由紀さんも俺たちの欲望やガキっぽい好奇心に協力的だった。エロサイトで見たいろんなプレイを試してみたり、女がどんな風に感じるのかを実施で教えてくれたりもした。 美由紀さんが書いたというノートも読んだ。美由紀さんに被虐願望があることがよくわかった。そのストーリーの通りに美由紀さんを縛って二人で交互に犯すと、最後に美由紀さんは狂ったように乱れて失神してしまった。 これは妄想で誰にでも犯されたいと思っているわけじゃないと言い訳をしていたが、美由紀さんは、このときからM的な本性をさらけ出した。 それでも美由紀さんは俺たちのマドンナで大切な存在だった。 卒業と高校入学のお祝いをかねてドライブに連れて行ったもらったこともある。俺たちは初めてラブホに泊まって美由紀さんの身体を堪能した。 高校に入っても俺と陽二はホモだと噂されるほど仲がよかった。 美由紀さんのおかげで他の女に悶々とすることがなく勉強に集中できたので成績もよかった。おまけに、ガツガツしたところがないせいか、けっこう女子からモテた。浮気心というんじゃないが、近寄ってくる同級生に手を出したこともある。でも美由紀さんの大人の魅力に敵うわけもなく関係は一度だけで終わってしまった。 俺たちとの関係ができてから美由紀さんは妖艶さを増した。ミスじゃないけどミスN市の仕事は続けていた。地方局の番組にもよく出演してけっこう有名人だったので、俺たちはスキャンダルを避けるため慎重に行動した。陽二の家に出入りする分には誰もおかしな目で見ないし、高い塀に囲まれた大きな旧家は秘密を守るのに好都合だった。陽二の母さんはなんとかいう難病でほとんど入院してたんだ。 陽二はいい奴だった。美由紀さんと暮らしているから当然チャンスは多い。美由紀さんと二人っきりで楽しむこともよくあった。そんなときには俺に謝って美由紀さんと二人で過ごす時間を作ってくれたりもした。こいつのおかげで三角関係がトラブルもなく続いたと言ってもいいだろう。 この夏が終われば俺たちもある意味大人の仲間入りだ。 三人の関係が世間的に許されないことはよくわかっているがやめるつもりはない。むしろ、許されないからこそ関係は強いものになっているとさえ思う。 いつか、三人で暮らせるようになればいいと思う。 そのために陽二はいろいろと考えていることがあるらしい。 常識や道徳のしがらみから解放された世界を作ること。それが俺たちの夢だ。だから大学に入っていろいろ勉強しようと思う。おかしなことに、こんな目的を知らない大人たちから俺たちは熱心で真面目な学生に見えるらしい。 いつものように三人で楽しんでいるときのこと。美由紀さんの艶やかな肌を舐めながら、俺は世間に対して「ざまあみろ」とつぶやいていた。 |
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| 2013.3.9掲載 |
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全11話
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