２　雪江のズロースの上に

　　昔は、見そめる、思いそめる、
　　　思いなやむ、こがれる、まよう、思い死ぬ
　　　　などの言葉があった。
　　　　　今はひとつしかない。
　　　　　　「Ｉ　ＬＯＶＥ　ＹＯＵ」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　作：　竹久　夢二

　わたしは窓口で薬をもらった。
　これで帰れると、ほっとした。
　玄関の下駄箱のところに向かう。
　昼までには、あの山荘に戻れるだろう。

「竹久さん！」
　振り向くと、医院の看護師さんが…。
「なにか？」
「あなたね、このあいだ、宇佐美さんの後を追っかけたでしょう」
「・・・」
「わたくしどももね、放っておいてわけじゃないんですよ。あの子はいつもああなんですから」
「そうなんですか・・」
「それで、あなた、あれから、あの子と駅の待合室で仲良く座っておられたらしいじゃないですか」
「えっ！？」
　実際、わたしは驚いていた。
　もしかしたら、看護師の誰かに、宇佐美雪江にｋｉｓｓをしているところを見られたかもしれない…。
「あの子に構ってはいけませんわ」
「えっ、どうして？」
「あの子は、精神分裂症（＝統合失調症）なんです」
「それが、どうして？」
「なかなか治らない病気なんです」
「どうして治らないのです。それは不治の病なんですか？」
「ともかく、あの子に関わっていくのはおやめになってください」
「・・・」
「あなた、いい年をして、なんですか！」
　わたしはギクッとした。
　看護師さんの目を見た。
　それはひどく怒ったような目だった。そして、それはやがて蔑みの目の色に変わって行った。
　わたしは、腋に冷たい汗を流していた。
　くるっとくびすを返し、わたしは、下駄箱からわたしの靴を取っていた。

　一週間が経った。
「竹久先生！」
　精神科の医院を出て、わたしは声を掛けられていた。
　振り向くと、このあいだの早稲田の学生であった。
（「せんせい」などと呼ばれるのはいやだな。）
　確か、彼は「酒井」とか言っていたように思う。
「何か？」
　酒井という男子学生がそばにやってくる。ふたりして、歩きながら駅に向かった。
「宇佐美さん、待っているのですがね」
「えっ、何を」
「先生、宇佐美さんに絵のモデルになって欲しいとお頼みになったのでしょ」
「・・・」
　ああ、そうだった。
　が、なぜ、酒井君は、わたしと宇佐美君とのことを知っているのだろう。
　いや、宇佐美君が酒井君にしゃべったのにちがいない。
　酒井君と宇佐美君とは、一体、どういう関係にあるのだろう？

「実は、宇佐美さん、これから行く駅の待合室で待っているんです、先生のことを」
「えっ！」
「ですから、先生のアトリエに案内してあげてくださいよ」
「そんな！」
「宇佐美さん、先生のモデルになりたい、と言っていましたよ」
　わたしは顔を赤らめていた。
　あんな若くて可愛い子が、わたしのモデルになりたい、なんて！。
　わたしはともかく、彼女をわたしのうちまで案内しようと思った。
　わたしは近頃、世田谷松沢村の松原というところに、アトリエ付きの新居をかまえたばかりであった。
　多少は自慢できるアトリエではあった。
　ともかく、彼女をそこに案内したいと思った。
　新居に案内し、アトリエに着いてから、そのとき、あらためて彼女が本当にモデルになってもいいかどうか、聞けばいいと思った。モデルの仕事なんて、そう簡単にできるものではない。何時間も同じ姿勢で。大変な仕事だと思う。
　近頃、彼女には精神科の医院で会っていない。彼女の連絡先すらわからない。
　いや、あの日あの時、駅の待合室で、茱萸（グミ）の実のように赤いくちびるを盗んだ後でさえ、恥ずかしくて、彼女の住所すら聞いていなかったのだ。

「先生、ほら、あそこに、宇佐美さんが・・」
　待合室の前で、確かに。
　彼女がこちらを見ている。
　上は併せの着物で、女学生が着る袴（はかま）を穿いているようだ…。
　
　あっ、彼女が、気がついたような…。
「では、先生、僕はこれで・・」
「あっ！」
　心細かった。
　しかし、酒井という学生は、背を向けて、駅とは反対方向に向かって歩き去っていく…。

　わたしは、また、身を返し、彼女の方を。
　彼女が立っている。
　が、なぜか、わたしには、彼女がとっても恥ずかしそうに立っているように見えた。
（そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに…。こんなわたしの前なんかで・・・）
　わたしは、歩きはじめていた、勇気を持って。
　横目で彼女を見ていた。
　長い髪を後ろで結んでいるようだ。
　そして、後ろの黒髪が赤いりぼんで結ばれている…。

　彼女をどうにかするというわけではないのだ。
　彼女をアトリエに案内するだけなのだ。
　宇佐美さんは絵が好きなのだ。
　大人の絵描きがどんなところで絵を画いているのか、知りたいだけなのだ。

「やぁ、久しぶりだね」
「・・・」
　彼女が会釈している。
　そして、恥ずかしそうに、顔を上げた。
　わたしは、すぐに、ぐみの実のような紅色の唇を見ていた。
　わたしは、この可愛い唇に、わが唇を重ねたのだと思った。そして、そう思った瞬間、股間のモノが熱く、ムクムクと力を漲らせていた。
　もう一度、彼女の、硬くて、いい匂いのする唇を奪い取りたいと思った。

「わたしの仕事場に来てみないか。きたないけれど、色々な物を置いているから。きっと、将来、君が絵を画くときの参考になると思うよ」
　わたしは顔を赤らめていた。
　彼女を口説いているように思えたからだ。
　声は確かに、優しいトーンになっていたと思うのだが。何か、胸にはどす黒いモノが芽生えつつある。それがこわかった。
『竹久さん、何です、いい年をして・・・』
　あの精神科医院の看護師の言葉が耳もとに響く…。
　わたしはまた、腋（わき）の下に、冷たい汗が流れ出していくのを感じていた。

　わたしは勝手に切符売り場へ行く。
と、そばに彼女がやってきた。
　とてもいい匂いがした。
　それは処女の匂いに間違いなかった。

「下高井戸まで、二枚、ください」
　横を見ると、彼女が財布からお金を出そうとしていた。
「いいよ、僕に出させて・・」
　彼女がちょっと笑った。
　それで、わたしも、笑い返していた。

　彼女がついてきてくれる、うれしかった。
　しかし、わたしは、不機嫌そうな顔つきをしながら、京王線のホームに向かって歩いていた。
（こんなことをしていて、いいのだろうか？）
　
　彼女はそばに来ている。不機嫌そうな顔をしなくてはならないのに、思わず顔はほころんでいく。
　電車がやってきて…。
　入り込み、席に腰をかけると、彼女はわたしのすぐそばに腰掛けてきた。
　わたしは、いい年をしていながら、気もそぞろになっていた。
　彼女の清々しい匂いが、わたしの自制心に麻酔をかけてしまっているように感じるのだ。
　電車が揺れる。そのたびに、わたしの腕が彼女の二の腕に触れた。
　もう少し、彼女から離れて座るべきかもしれない。
　しかし、わたしは、そのままじっと腰を落ち着けていた。
　離れたら、彼女の芳しい匂いが嗅げないからだった…。

　下高井戸の停車場（駅）に着いた。
　ホームらしいホームでもない。
　電車がホームを出て行く。
　電車が去っていく左手の方向の先には、赤土が剥き出た小高い原っぱが見えた。
「宇佐美さん、さぁ、こちらだよ」
　わたしは、緑の草叢に覆われた、右手の小高い丘の方を手で指し示していた。こちらの丘はそれでも雑木林に覆われて風情があるとわたしは思っている。
　草叢を行く。
　草を踏み分けていく。
　土と草の匂いのする小道だった。
「ほらっ！」
「あらっ！、三角の屋根が見えますね！」
「ああ、あれがそうなんだよ」
　急な坂にさしかかる。
　わたしは、彼女の手を取ってやった。
「あっ、あれって蔦の葉ですね」
「ああ、そうだね。あれは蔦の葉だよ」
　三角屋根の小窓に蔦の葉がからんでいた…。

　門はない。
　いわば山小屋風の建物にしてある。
　玄関には大和絵が描かれている杉戸を当て嵌めていた…。
　４畳半の日本間を通り、そこの板戸を開ける。
「あっ！」
「ここが、わたしのアトリエ（画室）だよ」
　１０畳ほどの板の間だった。
　しかし、キャンバスとか絵の具とか本とかが山のように積まれていて…、１０畳もあるようには見えない。
　時計を見ると、正午をちょっと回っていた。
　わたしは画室の中に置かれている物に見惚れている彼女に声を掛けた。
「僕はお昼ごはんを作るから、君はゆっくり画集とかスケッチ・ブックとかを見ていなさい。何を見てもいいからね・・・」
「・・・」

　あいにくと、食材がそろっていなかった。
　お葉が家出をしてから、あまり買い物にも出かけていないのだ。
　あり合わせのもので用意するしかない。
　でも、釜でご飯を炊いたり、七輪の炭に火を起こして干し魚を焼いたり、お味噌汁をつくったり…。とっくに１時間がかかってしまっていた…。
　テーブルに料理を並べ、アトリエに行って、彼女を食堂に呼んだ。
「さぁ、君の口に合うかどうかわからないが、どうぞ…」
　彼女は黙って、ゆっくりと箸を小さな口に運んでいた。
　彼女は畳の上に座って、食膳を前に食事をするのだろう。
　木のテーブルで、木の椅子に座って食事をするのには慣れていないのかもしれない。
　わたしはおなかが空いていた。そのせいもある。ただ、もともと、食べるのは速い方なのだ。
　彼女は緊張しているのだろうか、それこそゆっくりと食べていた…。
「どう、味噌汁の味は？」
「とてもおいしいです」
「ああ、そぉ、それはよかった」

　食事が終わると、わたしは、洗い場に行き、コップに水を注いで、精神科でもらった薬を飲んだ。
　と、わたしのそばに彼女が立っていた…。
「わたしも・・」
「ああっ・・」
　わたしは、水槽から柄杓（ひしゃく）で水を掬った。
　コップを洗う。
　そして、そのコップにきれいな水を注いだ。
「はい、これでどうぞ」
「すみません」
　彼女も薬を飲んだ。
　互いに精神を病んでいる・・・。
　妙な一体感があった。

「わたし、後片付けをします」
「ああっ・・」
　しかし、彼女にばかりさせるわけにもいかない。
　食器を洗い場まで運ぶ。
「休んでいてください」
「でも・・・」
「おいしいお昼をごちそうになりましたから…、せめて…」
「そうですか・・」
　わたしは、彼女の好意に甘えることにした。
「じゃ、僕は日本間にいるから、片付けが終わったら、声を掛けてくださいね」
　わたしは廊下を横切り４畳半の日本間に移った。
　そこで、わたしは寝転がり、畳の上で仰向けになっていた。
　どうしたものか、と考えていた。
　モデルになって、とはなかなか言えなかった。厚かましすぎると思った。
　今日は、この山小屋のような屋敷に来てもらっただけでよしにしようと思った。

　が、なかなか、彼女がやってこない。
　心配になって、食堂へ戻ってみる。
　彼女の背中が見える。
　まだ、彼女は食器を洗っているみたいであった。
　よほど、丁寧な性格と見える。
　わたしは、また、日本間に引き返していた。
　
「あのぉっ・・・」
「あっ・・」
　わたしは畳の上で眠っていたらしい。
　久しぶりに一人でなく、誰かそばに人がいて、ゆったりとした気分で食事をし、満腹になったせいなのだろうか。それとも精神科でもらった薬のせいなのだろうか。
　わたしは、まだ、眠くてしかたがなかった。
　これでは、仮に、彼女がモデルになることを承諾してくれたところで、とても筆を執るまでにはいかないような気がした。
「ねぇ、君もここで少し休まないか。僕は何か眠くて・・」
　
　わたしは起き上がり、それでも畳の上では背中が痛かろうと、押入れから敷布団を出して畳の上に敷いてあげた。そして、枕も用意してあげた。
「さぁ、君はこの上で横になりなさい」
　そう言ってから、わたしは畳の上に寝ころがり、敷いた布団の方には背を向けて横になり、目を瞑った。
　本当に、薬のせいで、眠くて、眠くてしようがなかった。
　彼女がこのまま昼寝をせずに、帰っていっても構わないと思った。
　まだ陽は高いはず。下高井戸の駅まで行き、下りの電車に乗りさえすればいいのだから…。彼女は来た道をひとりで十分帰ることができるだろう…。
　ともかく、わたしは眠たかった…。

　ふと、わたしは目覚めた。
　何時だろう。寝返りを打つ。
　と、女の子が寝ている。袴を穿いた・・・。
　彼女だった。
　彼女が寝ているのだ。
　彼女も疲れているのだろうか。
　それとも、薬のせいなのだろうか。

　わたしは、上半身を起こし、こっそりと彼女に顔を近づけていく。
　スースーという寝息が聞こえる。
　グミの実のような、艶やかな紅色をしたくちびるがちょっと開いていて。白い前歯がちらっと見えて…。
　わたしはその白い歯に魅せられて、さらに顔を近づけていく…。
　彼女は、本当にきれいでかわいい顔をしていた…。すべすべした顔の皮膚。
　恥ずかしいことだが、彼女の顔を見ただけで、わたしは股間のモノを大きくしていた…。

　わたしは、彼女の袴の紐に手をかけていた。
　その紐をほどく。
　そして、袴を下に引いていく、ゆっくりとゆっくりと。
　やっと、袴を脱がせることができた。
　もう夏はとっくに過ぎているというのに、わたしはびっしょりと額に汗を掻いていた。
　彼女は、真っ白なズロース（女性用のパンツ）を穿いていた…。
　それを脱がしたいと思った。
　しかし、そんなことをすれば、彼女はきっと目覚めるにちがいない。
　
　しかし、何と言う、白い膚であろう。
　彼女の太ももを食い入るようにわたしは見ていた。
　触りたかった。
　すべすべとした彼女の内腿の皮膚に…。
　でも、そんなことをしたら、彼女が目を覚ますだろう。
　わたしは、我慢にがまんを重ね、そのため、もう顔を真っ赤にしていた…。

　ついに、わたしは、理性の糸を切ってしまっていた。
　立ち上がり、ズボンを脱ぎ捨てていた。
　下半身はパンツだけの、恥ずかしい姿であった。
　しかし、わたしは、年がいもなく、彼女の上に身を覆いかぶせていこうとしていた…。
　彼女とセックスまがいのことをしようとしていたのだ。
　両腕を、腕立て伏せのようにしながら、彼女のからだの両脇のところに立てていた。足も指を折りながら突っ張って。自分の腰が、彼女の腰の上にのっからないようにした。
　体重を掛けたら、すぐに彼女が目を覚ましてしまうにちがいない。
　わたしは、彼女の上に、覆いかぶさり…。体重をかけないように、注意を払いながら。
　そして、息を止めて。
　そのまま、顔を彼女の顔に近づけていく。
　わたしは、彼女のくちびるに、そっと触れていった…。
　とても刺激的だった。
　ピクピクッと彼女の唇が動いていて…。
　わたしの唇はむずがゆいほどであった。

　わたしは、顔を上げる。
　しかし、彼女は目を閉じたままで。
　眉毛が動いているような。
　ひょっとして目覚めるかも…。
　でも、その眉毛が愛おしかった。
　わたしは、堪らず、また、彼女のくちびるに、おのが唇を合わせていった。
　彼女のくちびるはとても甘かった。
　わたしは、厚かましく、彼女の乾いたくちびるをそっと、吸っていた。
　パンツの中で、わたしのペニスが、もう硬く、ギンギンに張っている。
　彼女のヴァギナにこれを嵌めることができたら、と思う。
　しかし、彼女を妊娠させることはできない。
　もし彼女が妊娠をしたりしたら、どんなにか、彼女のご両親は嘆かれることだろう。

　わたしは、足が痺れてきた。
　突っ張っている両腕もだるくなってきた。
　いや、ｋｉｓｓだけでは、もうがまんができなくなっていたのだ。
　わたしは、パンツの中のペニスが張り裂けんばかりになっているのを感じていた。
　ペニスはピクピクと蠢き、何かを追い求めていた…。
　わたしは、ゆっくりと腰を降ろし…。
　そして、股間のモノを彼女のズロースの中の裂け目にくっつけていった。
　わたしは、目を瞑っていた。
　彼女が目を覚まさないことだけを願っている…。

　目の前がクラクラとしてくる。
　彼女の股間の上に、わたしは股間のモノを軽く押し付けているだけなのに…。
　それなのに、股間のモノは先っぽから透明な液汁を出しているのだ。
　もう少し、強く、押し付けたい。
　でもそれができない。
　でも、もう限界であった。
　わたしは、彼女の肩に抱きついていってしまっていた、そのとき、ドクドクッと気をやってしまっていたのだ。
　目の前を多くの光線が飛び交っている…。
　気がつくと、おびただしい量の精液が放出されていた…。

　彼女が肩を動かす。
　子どもがむずかるような仕草であった…。
　目覚めているのだ、彼女は…。
　しかし、わたしは、彼女の肩先に顔をくっつけ、彼女の上半身にしがみついたままだった。しかも、下半身もしっかりと彼女の股間にくっつけたまま。
　放出感の余韻…。それは、わたしの羞恥心をはるかに越えていた。
　わたしは、彼女の耳元に口びるを寄せていた。
「しばらく、しばらく、このまま、抱きつかせていて・・・」
　彼女は、むずかるのをやめてくれていた。
　わたしの下で、彼女は静かになった。
　わたしは激しい放出感のあとの気だるさで、全体重を彼女にかぶせかけているというのに。

　パンツの中のヌルヌルとしたものが冷えてきたらしい、気持ちがわるくなる…。
　それにこのままだと、わたしのパンツから彼女のズロースにまで精液が染み渡っていきそうであった。
　わたしは、腕を突っ撥ねて、少し上半身を起こした。
（股間の汚れたものを、ちり紙で始末しなくては…）
　彼女の顔が目の下にあった。
　彼女の目が大きく見開かれていた。
　何が起こったのか、わからないような眼差しをしている…。
　わたしは、澄んだ瞳の奥に囁きかけていた。
「ごめんね。君を抱きたかったのだよ、僕は。いや、ごめんなさい、君のからだが欲しかったのだよ。君はただ、アトリエが見たかっただけなのに。ごめんね」
　彼女のひとみが潤んでいるように思えた。
「でも、心配しなくていいよ。妊娠するなんてことはないからね」
　と、彼女が腕を伸ばしてきて…。わたしの首の後ろにそれを…。
　わたしは、何がなんだかわからず、股間の気持ちのわるいことも忘れて。わたしも手を彼女の首の下に這わせて…。
　そして、しっかりと彼女の顔を持ち上げるようにして、彼女の甘いくちびるを吸った…。
（つづく）

（注）この小説を書くにあたって、下記の図書を参考としましたので、あらかじめおことわりしておきます。
「〈評伝〉竹久夢二」　三田英彬（ひであき）　著　　芸術新聞社　刊
「竹久夢二　　恋の言葉　　」　　石川桂子　編　　　河出書房新社　刊
「竹久夢二　−美と愛への憧憬に生きた漂泊の画人−」　石川桂子・谷口朋子　著　　六耀社　刊
「竹久夢二　−大正モダン・デザインブック−」　石川桂子・谷口朋子　著　　河出書房新社　刊