１　カップル喫茶で二人の女と

　東京本社に出張があった。
　会議中である。ケータイが鳴った。マナーモードにしてある。見ると、同期の桜庭からだった。桜庭は、本社で課長をやっている。
　今、本部長が秋に取り組むべき重点項目を説明しているのだ。開けるわけには行くまい。
　休憩中に桜庭からのメールを開ける。
『今夜、付き合えよ』
　わたしは返信した。
『ああ、いいよ』

　夕刻、わたしは本社の玄関ロビーのところで同期の桜庭と会った。
「おお、秋山、久しぶりだな」
「おまえも元気そうだな」
「まあまあな。じゃ、行くか？」
「いつもの、焼き鳥屋か？」
「ああ」

「今年の夏も暑いな」
「そうだな。今年は梅雨明けが遅くて。なんかジトジトして、からっとした晴れ間が少なかったが。それでも梅雨が明けてからはいつもの夏がやってきたな」
　わたしは桜庭と、生ビールを飲んでいる。
「どうだ秋山、近頃は？」
　桜庭が支社勤めのわたしに近況を聞いてくる。
「まぁまぁかな。しかし、成果主義の人事評価には、まいっているよ。毎年毎年、評価の仕方が変わって。評価項目といい、評価基準といい…。がともかく、目標を達成しなくちゃいけないわけだから、それが常にプレッシャーとしてあるわけよ」

　わたしも、４８歳になり、一応、支社の課長をやっている。
　むろん、同期の中には、すでに本社で部長を務めている者もいるが。
「確かにな。能力評価はまぁっ、感覚的にやれてもな。目標管理評価については数値目標を立てさせられるからな。実績数値を目標数値で割るわけだから、達成率はすぐに出てしまう…」

　わたしと桜庭は、生ビールを飲みながら、会社での不満を吐き出していた。
　そして、いつしか、話題は家庭の話へ。
「涼子さん、どうしてる？」
「ああ、元気にやっているよ」
　が、わたしと涼子との間に、子どもはなかった。
　桜庭のところは、子どもが二人いる。
「お前のところはどうだい？。美津子さん、今は働いていないんだろ？」
「ああ」

　実は、わたしと桜庭は、ふたりとも社内結婚なのだ。
　わたしは桜庭の奥さんの美津子さんを知っているし、桜庭もわたしの妻の涼子のことはよく知っているのだ。
　美津子さんは桜庭と結婚して会社をやめ、主婦業に専念することになった。
　涼子は会社を移った。職場結婚はいいにしても、結婚後、同じ職場では働けなかったのだ。
　涼子は結婚しても働きたいと言って、自分で新しい会社を探して来た。
　わたしは、支社に転勤になった。
　わたしは頭を下げて、涼子に会社を辞めてもらい、一緒に地方に来てもらったのだ。
　むろん、涼子はまた働き口を見つけ、今はわたしの転勤先のＮ市で、出版社に勤めている。

　ひとり考え事をしていると、桜庭も黙ってチュウハイを飲んでいた。
　で、声をかける。
「しかし、桜庭よ。近頃、なんか、家に帰っていても、疲れを感じていてな、おれ…」
「なんで？」
「会社でのストレス、それが家に帰っても引きずっているらしい。目標が達成できそうになくて、くよくよ考えてしまい、夜、眠れないことがあってな。それに、かみさんとアレができなくて…」
「なにっ！、インポにでもなったのか？」
「いや、そうじゃないさ。しかし、アレの回数が減って。今じゃ、月一、というところか」
「バイアグ○（強壮剤の一種）でも使ったらいいじゃないか」
「そこまでして、なぁ〜」
「そうか、そうかもしれん。俺のところも、なんか、セックス、マンネリなんだよなぁ」
「……」
「なぁ、秋山、カップル喫茶でも行くか？」
　そういえば、むかし、桜庭のやつと、ファッション・ヘルスに行ったことがある。

「この近くには、そんなところ、ないだろぉ」
「いいじゃないか、新宿の歌舞伎町に行けば…」
「でも、相手がな」
「あそこのマスターと心安いんだ。さくらの女の子、マスターに言えば、紹介してくれるのよ」
「さくらって？」
「別に女房とか恋人とかを連れていかなくてもいいってことよ」
「……」
「ほら、デリヘル（＝デリバリー・ヘルス嬢）みたいに、女の子を派遣してくれる会社があるわけよ。あそこのマスターがそこと契約しているみたいでさ。カップル喫茶に同伴してくれる女の子をちゃんと世話してくれるのさ」

　桜庭がケータイで、カップル喫茶のマスターと交渉している。
　桜庭は、女の子たちの服装とか持ち物を詳しく聞いている。
　そして、わたしたちは、女の子たちとＪＲ新宿駅の前で会うことにした。

　４人で店内に入る。
　靴を脱がさせられる。
　絨毯の上を歩く。ふかふかで、ソックスを穿いた足がのめり込むようだ。
　中は異様に暗かった。
　しかし、目が慣れてくる。
　オープンスペースがある。
　そして、個室のようなものも見える。
　ところどころに背の高い観葉植物があって。
　どうやら、背もたれの高いソファのあるボックスの中では、男と女が抱き合って、キスをしているようだ。
　そして、それを、もう一組のカップルが見ているような…。

　わたしたちの組は、あるボックスに入った。
　案内してくれた、ウエイトレス風の女が桜庭に何か聞いている…。
「リストバンドがご入用でございますか？」
「いや、いいよ」
　桜庭が、その店の女の子に答えている。
「もし、個室がご入用でしたら、このブザーでお知らせください」
「ああ、わかったよ」
　それから、桜庭が、店の女の子にビールを注文した。
　女の子たちはカクテルを注文している。
　わたしの横に座っている女の子は麻耶と言った。
　桜庭の横にいる女の子は、留美と言った。
　ふたりとも、年は２３，４というところか。
　わたしたちは、真ん中にテーブルをはさみ、向かい合うようにして、長いすに座っていた…。

「桜庭、リストバンドは要らないって、どういう意味なんだ？」
「ああ、リストバンドね。あれはさ、相互鑑賞のカップルが身につけるものだからさ」
「……」
　わたしは内心では、首をひねっていた。
（相互鑑賞のカップルはリストバンドをつける。ということは、リストバンドをつけていないカップルというのは、相互に恋人を交換してセックスをしてもいい、ということなのか？）

　見ると、桜庭のやつ、もう、連れの、留美とかいう女の子といちゃついて。腰を抱き寄せて。顔をくっつけている。
（ああっ、キスを。俺の目の前で。桜庭のやつ…）
　舌を絡ませつつ。
　相手の女の子、それをいやがっていない。

　と、桜庭がこっちを見た。
「秋山、このテーブル、かたづけような」
　わたしは、真ん中のテーブルを桜庭とボックスの隅に片付けた。
　
　席に戻る。
　と、桜庭のやつ、女の子を押し倒して…。
（なぁっ、なにぃ！？…）
　よく見ると、長いすとばかり思っていたソファ、なんと背もたれを倒すと、小ぶりのベッドになるのだ。
　そして、ソファの背にあったクッションは枕代わりになるのだった。
　桜庭は、女の子をベッドの上に寝かせつつ、クッションを頭の下に枕代わりに。
　自分もベッドに乗っかり、女の子のおっぱいを揉み、そして、デープキッスを続けていた…。

　わたしは桜庭に刺激を受け、女の子のおっぱいをさわることにした。
　服の上から揉む。
「ねぇ、一緒に、シャワーを浴びてから…」
　と、女の子がむずかる。
　わたしは早くヤリたかったが。
　女の子にうながされて、ソファから立ち上がる。
　すると、真向かいの女の子もベッドから立ち上がり、そして、桜庭もその女の子に手を引かれ、シャワールームについてくる…。

　わたしは大して筋肉質でもない。
　それに、股間のモノも、立派ではない。
　バスローブを羽織って、早々にボックスに戻った。

　と、麻耶はランジェリー姿で戻ってきた。
　とてもセクシーだった。

　目の前に、桜庭と相手の女の子がいる。
　わたしは見ているのに。ふたりはベッドに倒れこんでいく。
（ああ、もう、桜庭のやつ、彼女の股間に下半身を入れ込んで…）

　わたしは、目の前のカップルに刺激され、麻耶を抱き寄せていた。
　キスをしようとする。
　が、顔をそむけられてしまう…。
　なぜだろうと、わたしは考え込んでしまう。
（麻耶は、煙草やアルコールの匂いはいやなのだろうか？）
　しかたがない、麻耶の首もとにくちびるをくっつける。
「ねぇ、脱がせて」
「いいの？」
「ええ」
　わたしは、ブラジャーのホックをはずし、前から、はだけさせていく…。
　白い小さなおっぱいが現れる。そのおっぱいに口をつけようとする…。
　と、わたしの目の横に、桜庭と女の子の姿が入った。
　桜庭は、また長椅子の背を倒して、ベッドにし、女の子を仰向けにさせていた。
　そして、桜庭は、ベッドの下の方に、背もたれの高い椅子を後ろ向きにして引き寄せているのだ。
　一体、彼は何をしようとしているのだろう。
　椅子はふたつ。引き離されて。
　桜庭は、女の子の足を広げさせ、ふたつの椅子の背もたれの上のところに、踵を載せさせている。
　背もたれの椅子のおかげなのであろう、女の子の両足はそれらの椅子に乗っかっているため高く持ち上げられており、かつ、その椅子が間隔を置いて離れているため、両足は広く広げられているのだ。
　見ていると、桜庭は、彼女の股間に入り。そして、顔をそこに埋めていく。
　そして、どうやらクンニリングスをはじめたらしい。桜庭の頭が小気味よく、小刻みに動くのが見えるのだ。
　しかも、両手を上に伸ばし、両手で彼女の両方のおっぱいを揉んでいる。
　桜庭の相手をしている女、確か、留美といった。その女がとても気持ちよさそうな顔をしている。

「ねぇ、そんなに向こうばっかり見ていないでよ」
　振り向くと、そばに、わたしの相手をしてくれる麻耶という女がいた。

「しかし、それにしても刺激的だな」
「……」
　麻耶が笑っている。
「あなた、初めてなの？」
「ああ。カップル喫茶って、ちょっと、週刊誌で情報を仕入れていただけだから」
「ともかく、あなた、わたしにも、クンニして欲しいな」
「ああ、いいよ、君さえよければ」
「うれしいな。ゆっくり、くちゅくちゅしてね」

　わたしはハンドルを操作して、ソファの背もたれを倒した。
　簡易ベッドになる。
　わたしたちのボックスのスペースには、ベッドがふたつ並んだことになる。

　わたしは、麻耶をベッド仰向けに寝かせた。
　ほんの申し訳程度に彼女の股間を隠しているスキャンティーの布切れをむしり取る。
　わたしも、バスローブを取り、トランクス（パンツ）も脱いだ。
　わたしは、ベッドの下手の絨毯の上に、膝をついて上半身を立たせている。
　彼女のからだを、わたしの方へ引き寄せる。
　彼女の足は、膝から折り曲げられて、足の裏は下の絨毯にくっついている。
　彼女の両膝に手をやり、彼女の股を大きく開かせる。
　股間からプーンと、ソープ（石鹸）の匂いが立ち上ってきた。
　わたしは、匂いフェチの気があるのだろうか、その匂いで、股間のペニスが妙に勢いづいてきたような気がした。
　わたしは、彼女の内腿に手をやり、彼女の股間をさらに大きく左右に広げた。
　そして、指で、大陰唇を広げ、膣前庭を舌で舐め始めた。
　とても、いい匂いがする。
　と、彼女の蜜壷から湿り気が感じられてくる。
　その湿り気に誘われるように、舌先をクレバスの中に入れ込む。
　すると、ややきつい匂いが鼻を刺激する。それはチーズのような甘いだった。
　くちびるがぬれる。
　彼女の蜜液だ。
　わたしは、その蜜液をすすっていた。
　おいしかった。
　わたしは４８歳になる。
　しかし、蜜を吸ううちに、何か、気持ちは若返っていくような気がした。

　顔を上に挙げる。
　と、鼻先に、こりっとしたものに当たる。
　彼女のクリトリスだ。
　わたしは、包皮を舌先で上の方に剥きはじめていた。
　どうやら、包皮がめくれ、クリトリスが剥き出てきたらしい。
　ヒクヒクと蠢いている。
　その小動物を、わたしは舐めたり、吸ったりして遊んでいた。

　バッコン、バッコンと変な音がする。
　横を見遣る。
　横のベッドの上では、桜庭が、女の子の上に乗っかり、ペニスを嵌めこんで、ピストン運動をしているのだ。音は、股間の肉同士がぶつかり合うときに出ている。
（桜庭のやつ、すごいな。まだ、馬力がある）

　わたしは、股間のモノが一瞬、萎えていくような気がしたが、悪友の元気さに、反って嫉妬のようなものを感じ、元気を奮い起こしていた。
　わたしは、自分の相手をしてくれている女の子に集中しようとした。
　今度は、指も入れて、女の子を刺激することにした。
　右手の指で、クレバス（裂け目）の中をいじくる。
　左手では、おっぱいを揉んだ。
　そして、からだをかがめ、口でクリトリスを舐めたり、吸ったりした。

　彼女のクレバス（裂け目）から淫液が滾々と湧き出てくる。
　そして、わたしのペニスも、硬く大きくなって、やがて、先端からカウパー氏液（オスの先走り粘液）が滲み出る。
　わたしは、股間から口を離し、上半身を起こす。
　そして、彼女の足を広げた股間に、膝で立つ。
　わたしは絨毯の上に立膝で立っており、彼女の股間はベッドの上だった。
　彼女の膣の位置と、わたしのペニスの位置を測る。
　やや、わたしのペニスの位置が高い。
　それで、わたしは、足の膝と膝の間を広げる。すると、腰がやや下に落ちていく。
　天を仰いでいたペニスを下に折り曲げると、それは床面と水平になり、その位置が、ちょうど、膝を広げて寝ころがっている彼女の股間の膣の位置と一致する。
　わたしは、ペニスに軽く手を添えながら、腰を前に突き出す。
　彼女の膣口は濡れている。
　しかし、ペニスが入らない。
　どうしてだろう？。
　たぶん、彼女の膣口が狭いのだろう。
　そして、その狭さを貫くだけの勃起力が、わたしには不足しているのかもしれない。

　わたしは、顔を赤らめながら、突入を試みていた。指を、ペニスの茎の部分に宛がいながら。が、入らない。
　あせる。
　わたしは、泣きべそをかいていた。
　と、わたしのペニスが誰かの指でにぎられた。
　なんと、寝ていた彼女がやや半身を起こしつつ、自分の指でペニスを捕まえて、膣の中に入れようとしてくれているのだ。
　彼女がペニスの先端部をしっかりと膣口に宛がう。わたしは、腹の下に力を込め、一気に腰を前に進める。
「あっ！」
　彼女が叫んだとき、わたしは、やっと彼女の中に入っていた。
　うれしかった。
　それに、膣が狭く、圧迫感があって、とても気持ちがよかった。
　女の子は、足を絨毯の上に投げ出したまま、また、ベッドにしっかりと背をつけている。
　わたしは、ベッドの下の絨毯に膝をついたままだった。しかし、挿入感をさらに感じるために、胸を反らし、腰を彼女の股間に深く入れ込んだ。
　彼女を見下ろす。
　彼女はいやがっていない。
　それに、とても気持ちのよさそうな顔をしていた。
　わたしは、少し余裕ができた。
　ゆっくりと腰を前後に動かす。
　そして、手を股間にやり、指でゆっくりと彼女のクリトリスを揉んだ。

「おおっ、秋山、がんばっているじゃないか」
　見ると、横に、桜庭と、留美という女の子が近寄ってきていた。
　わたしたちのベッドの横にいる…。
　ふたりは、絨毯の上に膝を立てて、こっちを見ていたらしい。
　ふたりは、物めずらしそうな顔をして、わたしたちカップルのセックスをのぞきこんでいるのだ。
　と、留美という女が、わたしの女の麻耶のおっぱいを吸い始めるではないか。
　そして、桜庭のやつ、わたしが麻耶の股間に置いていた手を打ち払い、自分で麻耶のクリトリスを揉もうとしているではないか。
　桜庭と留美が、わたしたちのセックスに参加しはじめたのだ。
（おいおい、ちょっと待ってくれよ。俺は、麻耶と、ふたりっきりで楽しもうとしているんだからさ…。邪魔しないでくれんなよ）
　わたしは、いやそうな顔をしているというのに。
　桜庭はいたって、気にしていないようだ。いや、そもそも気がつかないらしい、わたしの気持ちには。
　桜庭は、わたしのことなど全くお構いもなく、うれしそうな顔をして、麻耶のおなかを手で撫でたり、クリトリスを指でさすったりしているのだ。
「あっ、あああ、あん」
　麻耶が声を上げている。
　どうも、見るに、それは、留美という女が、麻耶の乳首を舐めているせいではないかと思われる…。
　男の沽券かかかわる。わたしはそう思った。
　わたしのペニスがまた一段と硬くなっていく。
　わたしは動いた。
　硬くなったペニスで麻耶のクレバスの奥を突く。いや、突きまくっている。
　バッコン、バッコンと卑猥な音が…。
　額に汗が滲み出てきた。
　それに、腰のあたりに快い痺れが…。
　射精まで、もう少しだ。

「おい、秋山、ちょっと、代わってくれよ」
「えっ！？、なにぃ！」
　わたしは桜庭の急な申し出に、パニック状態に陥っていた…。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）