２　美津子さんの手淫現場を…

　もう少しなのに…。
　もう少しで出るところだったのに。
　水を差されてしまった。

　しかし、友達の申し出なのだ。
　仕方なく横を見る。
　桜庭の股間のモノは、天を仰いでいた。
（桜庭のやつ、あんな若い女を抱いて、イカなかったのだろうか？）
　しかも、よく見ると、桜庭のペニスには、コンドームが嵌まっていた…。
　わたしは、ぎりぎりまで、ナマで楽しみたかった…。わたしはコンドームを装填しないまま、若い留美という女の子のクレバスにペニスを挿入していしまっていたのだ。
　しかし考えてみると、エイズ（後天性免疫不全症候群）は怖い。
　ともかく、桜庭のやつは、こんなことに馴れているのだろう。

　わたしは、桜庭の精力の強さに圧倒されたのかもしれない。股間のモノが萎えはじめたのだ。
　いや、せっかく留美とのセックスに没頭しようと思っていたのに、横から変な邪魔者が入ってきて、気分が殺がれてしまったようなのだ。
「しかたがないな」
　そうつぶやきながら、わたしは、麻耶のからだから離れる。抜き身は、ショボンとしていて、しなびたナスビみたいに見えた。でも、何となく、相手の女の子の淫液が陰茎に、まとわりついていて、卑猥な感じがする。

　と、桜庭は、麻耶のからだをベッドの端から中央部に引き上げていた。そして、麻耶の両足を大きく開かせ、自分の股間の太いモノに手を添え、麻耶美の股間の中に埋めようとしていた。
「うっ！」
　麻耶が呻く。
　しかし、桜庭は、挿入後、上体を麻耶の上にあずけ、そして、正常位で、腰を使っていた。
　その腰使いの見事さ。
　麻耶の白いからだの上で、桜庭の毛深く色黒の体が、躍動する。
　まるで、桜庭のやつ、麻耶のからだの上で泳いでいるようだ。からだ全体がしなやかに波打っている。
　
　わたしが、桜庭と麻耶の正常位のセックスに見とれていると、そばに、さっきまで桜庭の相手をしていた留美が近づいてきた。
　留美は、ほんと、スッポンポンだった。麻耶よりちょっとおっぱいが小さいようだ。しかし、下半身はとても肉感的だった。
　留美に耳打ちされる。
「わたしたちも、あっちのベッドに移りましょうよ」
　留美とわたしは、隣のベッドの上に上がりこむ。
　わたしは、ベッドの上に、膝を組んで座っていた。
　留美がわたしの股間を覗きこんでいる。
　そして、留美は、わたしの、しなびている股間のモノを、濡れティッシュできれいに拭いていた。
「さぁ、仰向けになって」
　わたしの裸はきっと、若い女の子たちから見れば、みっともないことだろう。しかし、もう、まな板に乗った鯉なのだ、留美の言葉に素直に従うしかない。
　と、留美という女が、わたしの股間に、顔をくっつけて…。
　ペニスが、あっ、何か、ヌメッている。
「あっ、あああ」
　わたしは、首を上げ、下を覗く。
留美にフェラチオをされているのだ。
「うっ、ううっ…」
　ペニスの亀頭部を舐められている。
　そして、鰓の張った後ろの、窪んだところを、舌先でちろちろと舐めまわしてもらっている。
　若い子に、こんなことをしてもらって…。
　やはり、お金の力はすごいものだと思う。

「あぅっ、そんなに締め付けるなよ」
「ああ、いいわ、イクイク」
「ああ、俺も、いい、いい」
「ああっ、きて、きて、あああっ、あっ」
　なんと、隣の、桜庭と麻耶はともに、昇りつめようとしているのだ。
　それを見て、わたしの股間のモノも、再び、硬くなっていた。

「ねぇ、入れてもいい？」
「えっ？」
「わたし、上になりたいの」
「ああ、いいよ」
　さっきまで、わたしみたいな、しょぼくれた中年男のために、フェラをしてくれたのだ。
　留美の好きなようにさせてやりたい。
　留美は、股ぐらを広げ、わたしの腰の上にのしかかってきた。
　ペニスを指で挟まれる。
「あの、コンドームはしなくていいの？」
「いいのよ。ピル（経口避妊薬）を飲んでいるから」
　エイズは心配だ。
　しかし、ナマで若い女の子とヤりたいという欲望に、すでにわたしは負けてしまっている。それに留美という女を信用するしかない。

　ペニスは、留美の手で、寝そべっているわたしの腹の水平線から直角に立てられていた。
　そのペニスに向かって、留美がゆっくりと腰を落としてくるような。
　ペニスの先端部が濡れてくる。
　留美も、けっこう濡れているのだろう。
「あっ、うっ」
　留美の中はとても熱い。
　そして、ペニスの先端部が、そして、茎の部分が、締め付けられる。
　気持ちがいい。
　たぶん、留美という若い女の、膣の襞肉が新鮮で弾力性があるからなのだろう。
　留美が上半身を立てながら、上下に動く。

　締め付けがある。
　が、とにもかくにも、留美の上下動により、適度に、膣肉によって、雁首のところの包皮がめくれ、下になって寝ているわたしには、ジュニアの部分がとても気持ちがいい。
「うっ、ううう」
　気持ちがよくて、つい、わたしは両下肢を伸ばし、突っぱねてしまう。
「あああっ」
　わたしは、年甲斐もなく、情けない声を出していた。
　わたしは、留美の両膝をしっかりと手でにぎりしめる。
　もう限界だった。
　わたしは腰を突き上げる。と、目の前の暗闇に閃光が走って。グビグビッとばかり、上に向かって、思いっきり精液を吐き出してしまっていた。

　それから、わたしたちは、シャワーを浴びて、元の洋服に着替えてボックスに戻ってきた。
　そして、両方の長いすソファの背もたれを戻す。そして二つ長いすソファあいだにあった、テーブルを再び持ち運んだ。
　そして、店の女の子を呼び、ドリンクを注文する。
　わたしは真向かいに座っている桜庭にうながされて、財布を出した。
　見ると、桜庭は、留美に３万円を渡している。
　それでわたしも、ソファの横に座っている麻耶に３万円を渡すことにした…。
　お金。
　これで、後腐れなく、遊べるということだろう。

　女の子たちに話しかける。
　留美も麻耶もＯＬということだった。

　わたしは、なぜか、途中でセックスを中断させられた麻耶と話が合った。洋服の彼女は何か、清楚な感じがした。
　桜庭は留美の相手をしていた。

　彼女たちは、昼間のオフィスではどんな顔をして働いているのだろう。
　もっとも、それは、桜庭とわたしとて同じなのかもしれない。紳士面をし、女なんて、なんだみたいな顔をして働いているにちがいないからだ。
　でも、麻耶と会話をしていると、なんか、職場の上司と部下みたいな雰囲気になる。
「オジさん相手じゃ、つまんないだろうに」
「そんなことないですよ」
「若い男の子たちと、合コンはしないの？」
「したいとは思うけど、そういうのを世話する人がいないの」
「どうして？」
「みんな、忙しいのかな？。それともみんな、自分のことが忙しくて、ひとのことなんか、どうでもいいというか…」
「そんなもんかね。俺たちの若い頃には、そういう世話好きの子がいたけどね。そういうのをセットするのが趣味みたいな奴がいてね…」
「なんか、最近の若い男の子って、元気ないですよ」
「そうか。で、君って、上司に何を望む？」
「色々と、やさしく声をかけてきて欲しいです」
「そうなの？。やはり、こちらとしては遠慮があってね。なにせ、年がいっているし…。中年男が、若い女の子にとやかく言っても、わるい気がしてね」
「年なんか、関係ないでしょ。職場なんですから」
「ああ、まあね。しかし、上司といっても、遠慮があるからね」
「どうしてですか？」
「わたしは社長ではないわけで。わたしが直接、部下社員に給料を支払っているわけではないのだから。部下に注文をつけるにしても、一定の限界はあるさ」
「でも、有給休暇をいただきたいとか、情報収集でどこかに出張したいとか。日頃、上司に理解を得たいってこと、たくさんありますよ」
「まぁ、そうかもしれないが。とにかく、部下の若い女の子には、変なことを言うと、セクハラって、言われそうだし」
「そんなこと、気にしません。どんどん、仕事のことで話しかけてきて欲しいです」
「ああ、そういうものかね」
「男性の部下だとか、女性の部下だとか、そういう差別をするということ自体が、ジェンダー・ハラスメントですわ」
「……」

　しかし、わたしは何か変な気分に襲われていた。
　お金を払わずに、若い女の子にキスをしたり抱きついたりしたら、きっとセクハラで訴えられるだろう。
　しかし、お金を払ったら、彼女にキスをしたり、抱きついたり、挙句の果てには、彼女のアソコに、ペニスを嵌めることだって、できるのだ。
　お金、お金こそが万能なのだ。
　いや、お金でもって、すべてが割り切れるのだ、道徳的にいい、わるいという事柄だって。
　お金を媒介とすれば、後腐れなく遊べる。
　でも、そんなことでいいのだろうか？。
　俺たちが２０歳代の頃にも、合コンは流行っていて。もっとも、その当時は会社の上司たちから顰蹙を買ったものだが。ともかく、上司に何を言われようが、俺たちは、こっちのビルから男の子を５人選び、隣のビルから女の子５人を選んで連絡を取り合い、合コンをしたものだ。その費用たるや、安いものだった。飲み食いして、楽しくおしゃべりして。
　ところが麻耶や留美たちは、趣味と実益を兼ねて、中年男たちとのセックスを楽しんでいる。そういうことが正常なんだろうか？。
　若い独身の女の子にとっては、やはり、合コンで、若い独身の男の子たちと遊び、その中から将来の良き伴侶を見つけるというのが自然な形ではないのだろうか？。

　だが、彼女たちばかりが悪いのではないような気がする。会社だって悪い。会社は、相も変わらず保守的なのだから。
　社内の男女の不倫は絶対に許さない。
　そして、若い独身の男女同士の社内恋愛だって、すぐにうわさになり、好意を持って受け止められるということがない。そして、ふたりが結婚したら、どちらかが会社を辞めることになるだろう。
　もっとも、圧倒的に、女の子の方が辞めることになるのだが。
　例えば、仮に、カップルになった男の子の方が転職するとしよう。つまり、女の子の方が会社に残ったら、その女の子は会社に居づらくなるほどいじめに合うのだ。なんという男尊女卑の世界なんだろうか！。
　それに女の子が妊娠でもしようものなら、とたんに上司が嫌な顔をする。さらに育児休業の申請でもしようものなら、ネチネチと真綿で首を絞めるようにして、女の子が自ら進んで辞職願を出させるように、追い詰めていくのだ。
　そして、しかも、そういう陰湿なやり方を、苦労もなくやってのけるというような気の強い男たちが、管理部門に登用され、出世していく…。

　わたしは、彼女たちのからだに淫らなことをしながら、彼女たちの未来を憂う。だが、どうしようもなく無力なのだ、一介のサラリーマンでは…。そして、会社でも、若い女の子の顔色よりは、上司や人事担当部局の人間たちの顔色をうかがわざるを得ない…。
　カップル喫茶を出て、彼女たちとは別れた。
　
「おい、秋山、俺んちに行こう」
「いいよ。こんなに遅く。美津子さん、大迷惑だよ」
「明日は、土曜日だぜ。会社へ行く必要もない」
「しかし…」
「気にするなって。娘はもう家を出てしまった。それに長男も今、地方の大学に行っていてさ、部屋が余っているんだ。そこで寝て、明日、昼頃の新幹線で帰ればいいさ」
「しかしな…」
「その方が、涼子さんも安心だろ？」
「えっ？」
「マンションに着いたら、俺がおまえんちに、電話してやるよ。そして、涼子さんに、今晩、秋山はうちで泊めます、ご心配は要りませんから、とね」
「ああ。が、涼子には、あまり要らんこと、言うなよ」
「要らんことって、何だ？」
「その、つまり、カップル喫茶に行った、ということさ」
「ああ、わかったよ」
　わたしたちは、歩いてＪＲ新宿駅に向かっていた…。

　桜庭のマンションに着いた。
　美津子さんは、それでも、歓迎してくれた。
　ビールを、ごちそうになる。
　と、桜庭のやつ、わたしのケータイを横取りして。

「こんばんは」
「・・・」
「誰か、わかります？」
「・・・」
「はい、大正解」
　なんと、桜庭のやつ、涼子と話をしているのだ。
　桜庭のやつ、機嫌がよさそうだ。
　それに、何となく、涼子も快く、受け答えをしているように思われる。
　なんか、ちょっと、胸がうずく…。
　涼子が、食事時、涼子の会社の若い男の子たちの話をしても、ちっとも嫉妬心がわかないというのに…。
　結局、桜庭のやつ、俺に代わることもなく、涼子とのケータイを切ってしまっていた…。
　その間、わたしは、美津子さんにビールを注いでもらっていたのだが。

　もう時計の針は、夜中の１２時を回っている。
　わたしは部屋に案内され、さっそく体を休めることにした。

　わたしは、目覚めた。
　どこだろう？。
　見慣れない天井、壁。
　そうだ、わたしは、桜庭のマンションに泊めてもらったのだ。
　ケータイを見る。
　まだ、明け方の５時前だった。
　トイレに行きたくなった。
　寝る前に、ビールをたくさん飲んだせいかもしれない。
　わたしは起き出した。
　この桜庭のマンションには泊まったことがあるのだ。トイレの場所はわかる。

　用を足した。部屋に戻ろうと暗い廊下を歩いていく。
　と、廊下に、ややほの暗い灯りが漏れている。
　漏れているところに歩み寄る。戸がちょっと開いているようだ。
「ううっ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」
　何やら、悩ましい声が耳に入るのだ。
　わたしは緊張する。
（ひょっとしたら、長女も長男もいない。桜庭は美津子さんに挑んでいるのかもしれない…）
　耳に手をやる。そして耳を澄ます。
「うーん、はぁ、はぁ、あーん、はぁっ、はぁっ・・・」
　やはり、なんか、美津子さんの声のような気がする。
　わたしは半開きになった部屋の中を覗きたいという誘惑に駆られていた。
　わたしは身をかがめ、ほんのすこし開いているドアに顔を寄せる。
　中は見えない。ドアを指でそっと向こう側に押す。音はしない。で、ほんのちょっとならと、もう少し先に押す、５センチくらい。
　しかし、まだ、中は見えない。
　１０センチ。まだだめだ。見えない。
　１５センチ。これ以上は無理だ。わたしは、顔の頬をべったりと壁にくっつけていた。
　なんと、部屋にはベッドがあった。ひとつだけ。
　目を凝らす。
　どうも、ベッドの上には、黒い長い髪をした女の人が。
　女の人が、こっちの方を頭にして、仰向けに寝ている…。
　おそらく、美津子さんだろう…。

　目が慣れる。それに、部屋には豆電球が点いているみたいだった。
　美津子さんの腰のあたりには、タオルケットが巻いてあるような。
　でも、なんと、美津子さん、上のパジャマを脱ぎ、ブラジャーもつけず、おっぱいを出している。
　大きなおっぱいだ。
　美津子さん、それを自分の左手で揉んでいるようだ。
　それに、どうやら、右手は、タオルケットの下、股間のあたりに。
　股間の辺りのタオルケットが、もぞもぞと、上に盛り上がっているのだ。
（そうだ、ひょっとしたら美津子さんは、オナニー（手淫）をしているかもしれない…）
　わたしはドッキンとした。
　桜庭のやつがにくかった。美津子さんを構ってやっていないからだ。
　タオルケットの下の手の動きが速くなったのだろうか。モゾモゾとしたタオルケットの布地の波打ちが速く、大きくなっている。
　それにおっぱいを揉む手も早く、激しくなっていて…。
（そんな強く揉んだら、かたちがわるくなってしまうのに・・・）

「うっ、うううっ・・・」
　逃げたかった。見たくなかった。でも、わたしは、壁に右頬をくっつけ、お尻を廊下の地べたにくっつけたまま、動けないでいた。

「あっ、うううっ、うーん…」
　美津子さん、からだを弓なりにのけぞらせているような…。イッたみたいだ。
　わたしは、ようやく、気を取り直していた。
　腋の下に、冷たい汗を掻いていた。
　わるいことをしてしまった。
　美津子さんにとって、絶対に他人には見られたくないところを、見られてしまったのだ。
　わたしは、立ち止まらず、何も聞かなかったように、廊下を静かに歩き、部屋に戻ればよかったのに。
　しかし、わたしは、気を取り直し、音を立てないように、ゆっくりと、抜き足差し足で、部屋に戻って行った…。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）