３　桜庭と美津子さんのからみを…

　昼過ぎに、わたしは我が家にたどりついた。
「お帰りなさい」
　いつもの涼子がそこにいた。
　そして、笑顔で迎えてくれた。
　わたしは、新幹線の中で後ろ暗い気持ちがあった。でも、涼子の笑顔を見て、安心する。
　何か、どっと疲れが出たような気がした。
　なにせ、カップル喫茶に行き、二人の若い女の子を相手にしたのだ。疲れがないと言えば嘘になる。
　わたしは、寝ころがってテレビを見ていた。しかし、まぶたが重くなる。眠くて、眠くてしかたがない。

　わたしは、動転していた。
　美津子さんに喫茶店に呼び出されたのだ。
（なぜ、わざわざ、東京から、この地方都市までやって来たんだろう？）

　わたしは、会社の者に言い訳して、急いで会社を飛び出していた。
　目当ての喫茶店に行く途中、わたしは桜庭に内緒のまま、美津子さんとふたりっきりで会うことがためらわれた。
　しかし、わたしは美津子さんの、他人には見られたくないオナニー・シーンを覗き見したという後ろめたさがある。
　わたしは、言われた喫茶店に飛び込んでいた。
　そして、そこには、美津子さんがいた。
　涼子と美津子さん。どちらが美人かと言われれば、それは美津子さんだろう。
　でも、わたしは、とてもキラキラした目で、『わたし、秋山さんのこと、好きよ』と言った涼子が好きになり、涼子にプロポーズして、涼子と結婚した…。

　わたしは、コーヒーを注文した。
　コーヒーがやってくる。砂糖を一杯入れ、そして、ミルクも入れた。
「秋山さん、見たでしょ？」
「えっ！、何を？」
「まぁっ、しらばっくれて」
「……」
「このあいだ、秋山さんが、わたしたちのマンションに泊まった晩のことよ…」
「……」
「わたし、涼子に言いつけようかな？」
「それは…」
「困ります？」
「ええ、それは困りますよ。どうか、かんべんしてください」
「わるいと思っていらっしゃるのね」
「ええ、わるいと思っています。あやまります」
「あやまってすむことかしら？」
　美津子さんの目が妖しく光っているような…。
「そうね、ともかく、わたし、涼子に言いつけて、涼子に、しっかりお灸をすえてもらうことにするわ」
「でも、それは…。それはかんべんしてください。そんなこと、わざわざ、涼子に言わなくても」
「いいえ、わたし、昔は、涼子とは同じ会社で仲間だったの。ちゃんと、涼子に言うべきことは言っておかなくっちゃ。『おたくの旦那さまって、とってもお行儀がわるいわよ』って」
「はぁ……」
　わたしは、がっくりとしてしまった。涼子に要らぬ心配はかけたくなかった。涼子のことだ、菓子箱でも持って上京し、桜庭ご夫婦にあやまりに行こうと言うにちがいなかった。

「でも、それだけではとうてい足りないわね、罪の償い方としては…」
「えっ！？」
「だって、わたしは見られたくないものを見られたんですもの。少々のことでは許さないわ」
「かんべんしてくださいよ」
「じゃ、秋山さん、わたしの言うことを聞いてくださる？」
「と、言われても…」
「わたしを抱いて欲しいの」
「えっ！？」
「わたしのこと、お嫌？」
「いや、そんな」
「じゃ、涼子さんにわるいとか？」
「ええ、まぁ、そういうことは…」
「まぁ、にくらしい人！」
　美津子さんの顔が迫る。美津子さんが、目をつむり、わたしの方にくちびるを突き出してきて…。キッスを求めている…。いけない、いけない、桜庭に申し訳がない…。
「だめ、だめです。やめて、やめてください」

「あなた、あなた…」
「うん？」
「何よ、あなた、寝言ばかり言って。『やめて、やめて』とか、大きな声、出して…」
「あっ？。そんなことを言っていたか？」
「そうよ。うるさくて」
「すまなかった」
　わたしは、どうやら、テレビの前でうたた寝をし、美津子さんと会っている夢を見ていたらしい…。

　１週間が経った。
　電車から降り、歩いて我が家に向かうところだった。ケータイが鳴る。
　桜庭からだ。
「元気か？」
「ああ」
「今度さ、上京のときは、涼子さんと一緒に来いよ」
「えっ？」
「美津子のやつも、涼子さんに会いたがっているし…」
　美津子さんも、ということは、桜庭自身も涼子に会いたい、ということか…。
「ああ、わかった。実は、今、車の中でな。また、電話するから…」
　わたしはケータイを切った。
　何か、胸がドキドキする。
　若い頃、桜庭と涼子は、１年ばかり同じ部署に居たことがある…。

　夕食のときだった。
「ねえ、あなた、近々、東京出張、あるの？」
「うーん、９月中旬になればあるかもしれないが…。どうして？」
「桜庭さんから電話があったのよ」
「えっ、あいつ、わざわざ、自宅まで電話してきたのか？」
「う、ううん。わたしのケータイに」
「えっ？」
「あなた、あなたのケータイ、桜庭さんに貸してあげたことないの？。桜庭さん、そのとき、わたしのケータイの番号、記憶したみたいよ」
「・・・」
「それでね、桜庭さん、『旦那と、今度一緒に、東京に出て来いよ』って言うのよ」
「・・・」
「それでね、わたしも、久しぶりに東京に出てみたくなって。桜庭さんにも長く会っていないし…」
「そんなに会いたいのか？」
「えっ？、なに？」
「桜庭のやつに」
「あれっ？、なにっ？、あなた妬いているの？」
「別に…」
「でも、妬いてくれて、うれしいな」
「馬鹿、いい年して…」

　不思議なことだ。
　わたしは、その夜、湯上りの涼子に、ひどく官能を刺激されていた。
　いや、涼子を桜庭のやつなんかに抱かせてたまるか、と思っていた。
「今夜は抱きたいんだ。だから、先に寝室に行ってる。早く来い！」
　わたしは、そう言い捨てて、ベッドルームに入って行った。
　わたしは、ベッドの中で涼子を待っていた。
　涼子は、夜寝る前の、顔の手入れでもしているのか、なかなかやって来なかった。
（涼子のやつ、俺のセックスにも飽きたのかな？）

　しかし、やってきた。
「いやに、遅かったじゃないか！」
「あなた、待っていたの？」
「ああ、待っていた…」
　わたしは、震える手で、涼子のネグリジェを剥いだ。
　涼子を丸裸にした。そして、わたしも裸になる。
　涼子のからだにのしかかって行く。そして涼子のくちびるを激しく奪っていた…。

　わたしは上京していた。
　かつての上司の息子さんの結婚式に出席するために。
　平日の金曜日。わたしは有給休暇を取った。
　ことわってもよかった。
　でも、わたしは出ることにした。

　１１時から結婚式で。１２時から披露宴がはじまった。
　行かなくてもよかったかもしれない。
　しかし、わたしは、また、以前のように、この上司の引き（コネ）によって、本社に戻りたかった。
　せめて本社の課長になりたい…。
　わたしは、その上司のところにお酒を注ぎに行った。
「専務、おめでとうございます。しっかりしたお嫁さんですね。これで息子さんもさらに成長されていかれるでしょう。専務もご安心ですね」
　わたしは、歯の浮くようなお世辞を並べ立てていた…。

　午後２時半すぎに、披露宴は終わった。
　わたしは桜庭に連絡を取ることにした。
『あまり、涼子のケータイに電話なんかするなよ』とでも言いたかったのかもしれない。
　しかし、桜庭は会社を休んでいた。
　ケータイにかけてみることにした。
　しかし、ケータイに出ない。
　心配になる。
　自宅へ電話してみることにした。
「はい、桜庭でございます」
「秋山です。」
「秋山さん？」
「はい、そうです。このあいだは、どうも、遅くにお邪魔して、すみませんでした」
「いいえ、どういたしまして」
「ところで桜庭は？。会社を休んでいるようですが…」
「今、病院に行っていますの。でも、すぐに戻ってきますわ。秋山さん、こちらにお出でになりません？」
「いいんですか」
「いいですわ。それに桜庭もあなたに会えればきっと喜びますわ」

　わたしは、桜庭のマンションに向かった。
　桜庭はマンションに戻っていた。
「どうしたんだ？。会社、休んでいるというからさ」
「まぁ、上がれ」
　腕時計の針は、夕方の５時をちょっと回っていた。

　わたしは上がった。和室に案内される。
　料理が出た。
　ビールも。

「いやなに、精神科のクリニックに行ってきてさ、ちょっと睡眠薬をもらってきただけさ」
「眠れないのか？」
「ああ、時々な。夜なか、一睡もできないことがあって。目が冴えて…」
「どうして？」
「やはり、ストレスかな？」
「ストレスか」
「１０年前なら、上司とお酒を飲みに行って、わいわいがやがやとやっていればよかった。そして、適当に上司にゴマをすっておけば、出世の道も開けた。しかし、今はそうじゃない。交際費も使えないからめっきりお酒の席が減った。やはり酒の席じゃないと言いにくいことだってあるのに。それにかつては、それなりに仕事、やっておけばよかった。でも近頃は、仕事も目に見えた結果をきちんと出さなくては、評価してもらえなくなった…」

　わたしには、やや意外だった。
　桜庭はどちらかといえば、楽天家。そして社交家。
　飲み会がなくても部下との会話が取れ、多少、業務成績が上がらないからといって悩むタイプではないと思っていた。
　しかし、桜庭とて、やはり仕事のことで悩んでいるようだ。
　それに見かけより繊細なところもある。

　わたしたちは瓶ビールを注ぎあっていた。
「少し、酔ってきた。あまり飲むと、東京駅まで行くのが大変になる」
「いいじゃないか、泊まっていけば」
「涼子のやつが心配する」
「おお、それは、ごちそうさま。ところで、ちょっと昔のだが、無修正のビデオがある。それを久しぶりに見るかな。おまえも付き合えよ」
「しかし…」
「ああ、美津子のことか。あいつのことなら心配ない。あいつだって、こういうのを見るの、好きなんだから」
「ああ、そうなのか？」
　意外だった。美津子さんは何か清楚な気がするからだ。
　でも、美津子さんだって、セックスはきらいじゃないかもしれない。
　だって、あの夜、美津子さんは、ベッドでオナニーをしていた…。

　わたしと桜庭は、テレビの前に二人並んで、ビールを飲みながら、外国人のファックシーンを見ていた。
　男性の性器と女性の性器が大写しになるのだ。股間のモノが大きくならないはずがない。
　と、後片付けが一段落したのか、美津子さんが戻ってきた。
　美津子さんは、桜庭のそばに座ったみたいだ。
　画面では、男性が、大きくそしてスピードを上げながら、ピストン運動を。その画面にわたしは惹きつけられてしまって…。

「だめよ。秋山さんがいらっしゃるじゃない」
　わたしは驚いて、左横を見る。
　美津子さんが桜庭の体越しにこちらを見ている。

　どうやら、桜庭のやつ、無修正ビデオを見ながら、横にすわっている美津子さんにいたずらを仕掛けたみたいだった。

「桜庭、そんなことしたら、俺まで変な気持ちになるじゃないか。だから、おとなしくビデオを見ようよ」
「そうよ、あなた。いたずらしちゃ、いやよ」
　美津子さんが、くぎを刺している。
　わたしは、『そのとおりだ』と言わんばかりに、テレビを見ながら、うんうんとうなずいている。
　わたしにすれば、そういうことは、わたしが帰ってからにしてくれ、と言いたい気持ちなのだ。

「秋山さんだって、ご迷惑そうよ」
「いいじゃないか。秋山には涼子さんというかわいい奥さんがいるんだ。俺たちのことなんか、目じゃないって」
「そんなんじゃないわよ。恥ずかしいじゃないの。人（ひと）さまの前で」
　わたしは正面のテレビから顔をはずし、また、左横を見る。
　なんと、桜庭のやつ、横に座っている美津子さんの肩を抱いているようなのだ。

「桜庭、そのぉ、俺は、ビールもいただいたし、そろそろ東京駅から新幹線で…」
「秋山、まだいいじゃないか。最終の新幹線まで、まだ、たっぷり時間があるさ」
　背中をこっちに向けていた桜庭が、からだを捻じ曲げるようにして、こっちを見る。
「しかし…」
「しかし、何だよ？」
「つまり、そのぉ、俺はおまえたち夫婦の邪魔をしてはいけないしさ」
「いいじゃないか、たまには。人に見られながらセックスするのも刺激があってさ」

「いやよ」
　桜庭の向こう側にいる美津子さんが口をはさんでいる。
「確かに、そうだよ。美津子さんだって、いやに決まっている」
「そうか、秋山、おまえ、美津子のことが好きなんか？」
「馬鹿馬鹿しい」
　美津子さんがまた、口を挟んでいる。
　美津子さんの顔は、桜庭のからだでよく見えない。
「いや、そういうことじゃなくて。つまり、夫婦のことは、夫婦ふたりっきりの方がいいんじゃないかと思って。それで俺は、邪魔をしてはいけないので、帰ろうと思ってさ」
「秋山、俺たちは、今、夫婦生活がマンネリ化しているんだ。だからさ、俺たちを助けると思ってさ」
「あなた、そんなこと。秋山さんにとってはご迷惑なお話だわ」
「おまえは、秋山が好きなんだろ？。だから、秋山には見られたくないんだ、きっと」
「そんなんじゃないわよ」
「じゃ、何だ？」
「あたりまえでしょ。秋山さんがおっしゃったように、夫婦生活は、人（ひと）さまに見ていただくようなものではないのよ」

　美津子さんの顔はよく見えない。
　しかし、わたしは美津子さんの言葉に賛同し、早く、ここを出たかった。
　で、わたしは桜庭に言った。
「美津子さんも、そうおっしゃっているわけだから。おまえたちは、俺が帰ってから、ゆっくりと…」

「そうだ、それが常識だよ。しかし、俺は、俺は、そういうことでもしないと、勃起しなくなったんだよ」
　桜庭が仰向けになった。

「おまえと結婚して、もうすぐ２５年になろうとしている。性生活がマンネリになっているんだ。しかも、会社ではストレスがたまって。前のように、ゴルフは規制される、飲み会は減る。その中で、どうやって売り上げを伸ばせばいいんだよ」
「でも…。秋山さんに迷惑をかけてはいけないわ…」
「いいんだ、秋山のことは。秋山とは学生時代からの悪友なんだから」
「……」
　
　桜庭夫婦がふたりとも仰向けになってしゃべっている。
　わたしは居場所がないという感じだ。

　わたしは、桜庭に話しかける。
「桜庭、それにしても、家では涼子が待っているし、俺は帰るよ」
「待ってくれ、秋山。どうか俺を助けると思ってさ」
「……」
　桜庭のすがるような目。わたしは立ち上がって、部屋を後にすることができないでいた。
　桜庭のやつ、リモコンで、テレビの無修正ビデオを消してしまった。
　部屋が急に静かになったような。
　それに、わたしとしては、目のやり場がなくなった。

　桜庭は、美津子さんのからだの上を越えて、向こう側に。
　美津子さんの寝姿が、すっかりわたしの視野の中に入る。
　美津子さんは、桜庭とわたしとの間に寝そべっている形になってしまったのだ…。

　桜庭は、のしかかるようにして、美津子さんにキッスをしようとしている。
　美津子さんは手を突っぱねて。
「ねぇ、やめて。秋山さんにわるいわ」
「いいんだ、いいんだ。秋山は、理解のあるやつなんだから」
「いやいや」
　すでに、桜庭は、ブラウスの上から、美津子さんのおっぱいを揉んでいた。
　ボタンをはずす。
　すると、ブラジャーが見えてきて。
　ブラジャーが小さいのだろうか。
　美津子さんのおっぱいが、ブラから、はみ出ている。

　桜庭が美津子さんの上半身に、のしかかるようにして、おっぱいにキッスをしている。
「いやよ、いやよ、あなた」
　美津子さんが足をバタバタさせている。そして、美津子さんは、口をふさがれ、もがいているようで。しかし、わたしには、なぜか、それが何ともセクシーで。
　桜庭のやつ、美津子さんのスカートを毟り取って。
　そして、パンティーを少しずり下げて。
　強引に、股に手を突っ込んでいる。
　
　わたしは、胸がどきどきして。
「美津子、おまえ…」
「……」
「あのビデオのせいなのか…」
「……」
「ビショ、ビショじゃないか」
　
　美津子さんは、アソコを濡らしているらしい。
　桜庭は、美津子さんのおっぱいを吸いながら、股間の手を動かしている。
「あああっ、いけないわ、いけないわ、あなた」
「クチュクチュ」
　美津子さんの股間から卑猥な音が…。
　わたしは、その音に、こともあろうか、股間のモノを硬くしはじめていた…。

「あなた、ひどいわ、ひどいわ」
「いいんだ、いいんだ。感じてくれ。感じて欲しいんだ」
「あっ、あああっ、うっ・・・・」
　わたしはいたたまれなくなった。
「桜庭…」
　わたしは、ついにふたりに声をかけた。
「桜庭、俺は、帰るよ」
「いいじゃないか。もう少しいてくれないか。たのむよ」
「俺は邪魔したくないんだ」
「邪魔なんかじゃない、むしろ居て欲しいんだ」
「しかし…。俺は、そういう覗き見みたいな趣味はないし…」
「だったら、秋山、おまえ、美津子を抱いてくれないか？」
「えっ！？」
「美津子は、おまえのこと、好きなんだ。なぁっ、美津子」
　美津子さんを見る。
　美津子さんは目を瞑り、両手でおっぱいを隠し、恥ずかしそうにしている。
「おれ、ちょっと、席をはずすからさ。なぁ、秋山、美津子のやつを抱いてやってくれよ」
「いや、それは…」
「俺は、最近、立たなくなってしまってな。美津子の相手をしてやれなくなっているんだ。頼む、秋山…」
　何と、秋山のやつ、本当に部屋を出て行ってしまう。
「秋山、困る、俺は困る……」
　わたしは、立ち上がり、桜庭の後を追おうとする。
　しかし、下半身に力が入らない。
　ビールを飲みすぎたのか。
　それとも、無修正ビデオで外国人の男女の激しいセックスシーンを見て、度肝を抜かれてしまったのか。
　あるいは、桜庭と美津子さんの、もつれたありさまを見せつけられて、ショックを受けてしまったせいなのか。
　ともかく、どうしていいかわからないのだ…。

「ごめんなさい」
　そばに美津子さんがいた。起き上がって。手を組んで、胸を隠している。しかし足をくずして座っていて、何だか、わたしにはその姿が悩ましいのだ。
「ご迷惑なのにね」
　わたしは、完全に舞い上がっていた。美津子さんの悩ましい目つきと声。
　それに、見てはならないのに。美津子の大きなおっぱいが、美津子さんの細い腕から、漏れ出ている。
　そして、真っ白で大きな太ももが目に入る。
　パンティーだけの姿。
　わたしの顔面は蒼白になっているにちがいない。
　しかし、わたしの股間のモノは、硬くなっているのだ…。
　わたしは、ともかくこの家を出なければ、と思った。
「秋山さん、わたしのこと、きらいですか？」
「いや、そんな。いや、しかし、そんな問題じゃないんです」
「きらいじゃないのね。だったら、わたしを抱いてください」
「でも…」
「桜庭も、ああ言っているんですから」
「でも…」
「これは浮気とか不倫とか、そういう問題ではなく。男と女の仲ということですわ」
「えっ！？。僕にはよくわかりません」
「わたし、セックスをしたいのです。気心の知れた男性と。そして、心に鬱積したものを吐き出したいんです」
「……」
　わたしは、浮気とか不倫だとか、そういう場合のセックスのことを知っていた。
　それに、金銭を媒介とした、遊びとしての割り切りセックスのことも理解できていた。
　しかし、夫婦公認のセックスって、一体何だろう。そのことが理解できないでいた…。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）