４　人妻と不倫をしている錯覚に

　それにしても、美津子さんの姿は色っぽい。
　足をくずして…。大きなおっぱいだ。美津子さんは顔をうつむきかげんにし、恥ずかしそうに両腕でおっぱいを覆って隠そうとしてはいるが、その細い腕をはみ出している。おっぱいの裾野は見えるのだけれども、その腕をどかして、白いおっぱいの先端部や乳首を見せて欲しいと思う…。
　太い腿。そして、白いパンティ。
　足を伸ばさせ、パンティを取り、股を広げて、わたしのペニスを美津子さんのあそこに嵌めてみたいくらいだ。

「だめですの？」
「……」
「涼子さんにわるいと思っていらっしゃるのね」
「ええ、多少は、それも。それよりも」
「それよりも？」
「桜庭にわるいと思って」
「大丈夫ですわ。桜庭は、秋山さんに気を許していますもの」
「しかし、それに…」
「それに、って、何ですの？」
「何だか、悪い気がするのです」
「どうして？」
「わたしも男です。セックスの欲望があります。でも、そんな欲望の対象にするなんて、親友の奥さんを…」
「愛なんて、要らないんです」
「えっ？」
「そうでしょ、セックスに愛なんて必要ないんです」
「でも…」
「欲望を満たすために、女の人を抱いたら、いけないのですか？」
「そうは言っても」
「それに、女のわたしがいいと言っているのですから…」
「……」
「桜庭だって、それを望んでいるんですわ」
「……」
「秋山さんに抱かれたあと、きっと桜庭は、わたしのこと、抱きますわ。すごく刺激を受けて…」

　わたしは涼子のことを考えていた。
　わたしは、わたしなりに涼子のことを想っている、確かに結婚後２０年も過ぎた今ではセックスの回数も減ったけれども。

　昔のことだ。
　わたしは涼子と同じ会社に勤めていた。
　涼子が、「ねぇ、今度、御昼、そばでも食べに行かない？」と、誘ってくれたのだ。
わたしは、そのうちすぐに、涼子のことが好きになった。やがて、わたしは、わたしの方から涼子をデイトに誘うようになった。
　付き合いを重ねるうちに、結婚のことを考えるようになっていた。
　しかし、わたしは気が弱かった。
　その頃、わたしは涼子に言ったのだ。
「俺たちが付き合っていること、会社にバレたらまずいよな」
「どうして？」
「君が会社に居りづらくなる」
「そんなこと、関係ないわ。そうなったら、そうなったで、わたし、会社を辞めて、他の会社に移るもの」
　わたしは、涼子の度胸の良さに圧倒される思いだった。
　でも、そんな涼子の言葉に、わたしは、はっきりと涼子との結婚を決意したのだった…。

　涼子と結婚して、早や２０年が経つ。でも、わたしはわたしなりに涼子のことを愛していると思う。

「涼子さんには、内緒よ」
　気がつくと、目の前に、美津子さんの顔があった。
　うるんだ瞳。
『涼子には内緒』、その言葉が、突然、理性を麻痺させていく。
　単なる浮気なのだ。お金を払って、ソープランドで性欲を満たすことと同じことなのだ。そして、そんなことを涼子に言う必要はない。反って、『あなたって、不潔ね』と軽蔑されるだけだろう。
　わたしは、美津子さんの肩を抱いていた。
　抱き寄せる。美津子さんが目を瞑ってくれた。わたしは、桜庭のことも気にせず、涼子のことも気にかけず、欲望のために、美津子さんのくちびるを奪っていた…。

「ねぇ、秋山さん、待って。わたし、お布団を敷きたいわ」
「あの…」
「なに…？」
「コンドームはありませんか？」
「大丈夫ですわ。わたし、秋山さんのこと、信用していますから」
「でも、あなたの方が…」
「大丈夫。今日は、安全日ですから」

　わたしは、布団を敷くのを手伝っていた。
　敷き終わると、わたしは気ぜわしく、ズボンを取り、シャツを取り、トランクスだけになった。
　美津子さんはすでに仰向けに寝ていた。
　わたしは、恐る恐る近づき、おっぱいに手を…。
　とても大きなおっぱい。手に余る。涼子のそれより大きい。揉み応えがある。わたしはめずらしいおもちゃを与えられた子どものように、夢中になって、大きなおっぱいを揉み続けていた。
「ああっ、あっ、ふーん」
　美津子さんが腰を捻っている。
　それがセクシーで、わたしの股間のペニスがビックンと上に跳ねた。
　おっぱいを裾野から揉みあげる。そして、その頂点を見る。乳首がおっ立っている。その勃起した乳首に魅入られたように、わたしはそれに口を付けていく…。
　固い乳首が、柔らかなわたしの唇を刺激する。
　両の唇で、硬い乳首を挟む。
「あっ、ああ……」
　美津子さんの口が半開きになっている…。

　乳首を舐めているうちに、右手はすでに、美津子さんのパンティの上に。が、パンティが湿っているのだ。
　まさか、と思う。
　しかし、わたしは確かめたくなる。
　上から、そっと、パンティの中に手を差し込む。ざりっとした感覚。陰毛が深いようだ。がしかし、それがひどく淫靡な感じがして、ペニスの先がさらに硬さを増していくようだ。そして、指先をなでるように裂け目に当てる。
（あっ！）
　美津子さんの泉の淵はすでにあふれていた。
　おっぱいを揉んだせいだろうか。それとも乳首を、くちびるで愛撫したせいだろうか。
　いや、きっと、あの無修正ビデオの、男女のからみを見ての刺激にちがいない…。

「パンティを取りましょうね」
　美津子さんは、腰を浮かせてくれて。取りやすかった。
　美津子さんの下半身が剥き出しになる。
　毛深い、涼子よりも。
　わたしは、美津子さんが、ひとりでわが身を慰めていたシーンを思い出していた。
　桜庭のやつに構ってもらえなかったのだ。
　むろん、おれだって、同じことだが、涼子を抱いてやるのは、月に一度程度。
　でも、今は、桜庭にかまってもらえていない美津子さんがかわいそうに思えた。

　わたしは、顔を、美津子さんの股間に埋めていく…。
　そして、手の先で、毛深い陰毛を左右に掻き分けていた。
　と、茂みの中央に、ピンク色をした突起物が。それは、また、涼子のモノより大きかった。
　そして、美津子さんのクリトリスを口にふくむ。
「ああっ、そんな……」
　美津子さんがお尻を跳ね上げる。顔を見る。そんなにいやそうではない。いや、むしろ、媚を含んだような、うれしそうな顔に見えた。
　わたしはその美津子さんの表情に安心して、また、美津子さんのクリトリスを口に含み。そして、舌の先で、クリトリスの根っ子を捏ね上げるようにして、卑猥とも思えるような刺激を繰り返した。
　と、クリトリスの下の方から、ジュクジュクと水泡のようなものが沸き立っているような気配がした。
　手でさわる。淫液だ、多量の。
　わたしは、美津子さんの膣の中に中指を差し入れてみる。
　何か、ジュジュと音がするほどに、中から淫液があふれ出ている感じがした。
　くちゅくちゅと、膣の中を、中指でいじくる。
「はぁ、はぁ、はぁっ・・・」
　美津子さんの息が荒くなって。そして、わたしも、股間のペニスがギンギンに硬くなって。早く、美津子さんの中に嵌めたいと思うようになっていた。

　わたしのモノは、確かに、桜庭のモノとはちがって、大きく太くはない。もし、自慢できるとすれば、硬さだろう。
　細い耳かき棒だって、硬いからこそ、いいのだ。
　寝ころがって、グニュグニュと耳の穴を、硬い、木製の耳かき棒で、他人の手で掻き混ぜてもらえば、気持ちがいいのだ。
　大きくて太いモノは、いっぱい、いっぱい満たされることによって満足感を得ることができるにちがいない。しかし、細くても硬ければ、膣壁を上下、左右にえぐることができるので、きっと、女の人には、刺激的で快い快感をもたらすにちがいない。
　わたしは、そんなことを考えながら、美津子さんのクリトリスを舌先で刺激し、中指の腹で、膣の上っ面にあるＧスポットを掻いていた…。

「秋山さん、秋山さん・・・」
　わたしは、美津子さんの股間から顔を上げる。
「美津子さん、どうしました？」
「ねぇ、早く、来て…」
「いいのですか？」
「ええ、いいわ。早く入れて欲しいの」
「はい」
　わたしは、トランクスを脱いだ。
　何と、トランクスの前側の布が濡れていた。
　相当、先走りの、カウパー氏液が出たらしい。

　わたしは、美津子さんの足を左右に大きく広げ。そして、股間に身を入れる。美津子さんのお尻をちょっと上に上げるようにした。
　わたしは、美津子さんを犯そうとしている。
　いや、桜庭のやつがいないところで、美津子さんの膣の中に、ペニスを嵌め込もうとしている。
　親友の奥さんを。何と言う罪深いことを…。
　しかし、わたしのペニスは萎えるどころではなかった。ますます、その硬さを増しているのだ。
（桜庭、許してくれ）
　わたしは、上半身を立てていた。
　左手で、美津子さんの小陰唇を広げていた。
　そして、わたしは右手をペニスに添え、濡れそぼった美津子さんの膣口にあてがう。
「あっあっ…」
　中が熱い。ペニスの先っぽがとても気持ちがいい。
　わたしは、さらなる快感を求めるために、腰をゆっくりと美津子さんの股間に押しつけていった…。

　淫液のあふれた美津子さんの膣の中に、わたしのペニスはごくスムーズに入り込んで行く。
「ああっ、あああ、いいわ」
　わたしは、そんな感極まったような声をあげている美津子さんに誘われるように、上半身を倒し、美津子さんの胸に合わせていった。
　美津子さんのおおきなおっぱいが、わたしの胸に当たる。
　わたしは、ひらたくも固い胸板で、美津子さんのおっぱいを押しつぶしていた。
　そして、美津子さんが求めているようなので、美津子さんのくちびるに、わたしの唇を合わせていった。
　美津子さんが、わたしの舌に、舌をからませてくる。
　なぜか、頭の中が痺れる。
　美津子さんを愛しているわけでもないのに。なぜか、美津子さんがいとおしくなる。美津子さんが自らキッスをしてくれることも、手を下から伸ばして、わたしの首に巻きつけてきてくれることも関係しているのかもしれない。
　それに股間から腰の辺りが痺れるほどに気持ちよくて。美津子さんにディープ・キスをしながら、わたしは無意識のうちに、腰を上下動させていた。
「あああっ、いいわ、いいわ、秋山さん・・」
「僕も、僕も、締め付けられて、とてもいい気持ちです」
「ああ、うれしいわ」
　美津子さんが腰を捻る。
　キスをしながら、乳房をぎゅっとにぎり、強く揉みあげてみる。
「うっ、あっあっ、うっ、うううっ…」　
　わたしは、乳房を揉み、乳首を指先でいじくる。
　と、膣がきゅっと締まったような気がして。
「あっ、美津子さん！」
「ああ、いいわ、いいわ、いきそうよ、いきそうよ」
「待って、待って、一緒に」
「あああ、イクわ、イクわ、来て、来て・・」
　わたしは、美津子さんの切羽詰ったようなあえぎに、もうがまんできなかった。ピッチを上げる。
　上下に。そして、左右に。そして、思い切り深く突っ込み、上半身を反らした。
「あっ、あああ、アアアアッ！」
　美津子さんが体をのけぞらせ、ピクピクと胸のあたりの筋肉を痙攣させた。
　と、わたしも、ペニスに美津子さんの膣の締めつけを感じると、「うっ」とばかりに腰を深く入れ込み、美津子さんの奥深いところに、激しく気を放っていた…。

　わたしは、美津子さんに覆いかぶさっていた。
　気がつくと、額に汗が吹き出ている。そして、背中にも汗を掻いていた。
　がんばったらしい。
　自分の快楽のために。そして、美津子さんに喜んでもらうために。

　わたしは、ようやく、美津子さんのからだの上から降りた。
「秋山さん、ありがとう」
「……」
「とってもいい、イキ方をしたわ。こんなの久しぶりよ」
「……」
「さあ、今度は、桜庭の許に行ってやらなくては」
「……」
「あれでね、待っているのよ、わたしのことを…」

　わたしは、なぜか、胸がうずいた。
　桜庭と美津子さんは夫婦なのだ。セックスをするのはあたりまえのことなのだ。
　そんな夫婦に嫉妬するなんて、何て自分という男は、卑怯で、下劣なんだと思う。

　考えてみれば、桜庭と美津子さんはたまたまセックスについては倦怠期になっていて。その倦怠期の、ぬるま湯的な関係を吹っ切るために、わたしを必要としただけなのかもしれない…。

「そうですか。では、僕は、どうしたらいいのでしょうか」
「わたしたちの営み、そばで見ていてくださる？」
「いえ、それは…」
「帰りたい？。涼子さんのところへ」
「ええ」
　わたしは、思わず、答えてしまっていた…。

　確かに、最近は、涼子との間で、セックスは時々しかない。しかし、涼子のそばにいると、ゆっくりと安心して眠れそうな気がするのだ。
「いいわ。外からドアを閉めれば、自然にロックできるようにしておきますから。だから、秋山さん、そっと、お帰りになって…」

　わたしは、新幹線に乗っていた。
　それにしても、と思う。
　わたしは、とうとう美津子さんとセックスをしてしまったのだ。
　今はすっかり萎びてはいるが、ペニスの先が何か、美津子さんの締め付けにあったせいか、むずがゆい気がする。
　それに、何とも、刺激的なセックスだった。

　カップル喫茶で、若い女の子たちとセックスをした。それはかなり刺激的だった。しかし、それは所詮、金銭で買ったセックスだった。そんなセックスであるがゆえに、その時はかなり興奮したかもしれないが、すぐに忘れ去ることのできる快楽だった。お金さえ払えば得られる、手っ取り早い快楽なんて、結局はその程度の軽いものなのだろう。
　しかし、美津子さんとのセックスは何かちがうような気がする。お金で買った、若い女の子たちとのセックスよりもっと刺激的だった。
　美津子さんとのセックスには、まるで不倫をしたときと同じような、スパイス（香辛料）の効いた、激しい快感が伴っていたような気がするのだ。
　愛している、というわけではない。
　しかし、人妻と不倫をしているというような、ゾクゾクとした、背徳を伴う精神的な刺激があったような気がする。それは、とてもお金では買えない、頭の中の神経を麻痺させるような刺激であった。

　わたしは、家に着いた。
　時計は夜中の１２時を回っている。
　自分で家の鍵を開ける。
　わたしは、シャワーを浴びて寝ようと思った。
　あのまま、わたしは、逃げるようにして、美津子さんのマンションを出たのだ。
　わたしのペニスの先端部や茎の部分には、まだ、美津子さんの淫液がこびりついているような気がした。

「あらっ、どうしたの？。どうして帰ってきたの？」
　見ると、涼子が起き出していた。
　わたしは服を脱いで、風呂場に向かおうとしていたのに。
「どうしてって？」
「だって、桜庭さんから電話があったの」
「何と？」
「あなたがね、お酒、飲みすぎたものだから、今夜は、こっちに泊まらせるよ、って」
「それで、また、桜庭のやつ、おまえのケータイに掛けてきたのか？」
「ええ、そうよ」
「けっ、ケータイになんかに掛けさせるなよ」
「……」
「で、桜庭のやつ、何か、言っていたか？」
「別に…」
「何か、言っていただろう？」
「何も。単なる世間話よ」
「そうか。それだけか？」
「うーん、まぁ、なんか、今日は、確かに長電話だったわね。桜庭さん、家にいても、あんなに暇なのかしらね。それに、電話中、美津子さんは、どうしていたのかしら…」
「で、その電話、いつごろだったの？」
「そうね、８時過ぎだったわね」

　わたしはドキッとした。
　８時過ぎといえば、ちょうど、わたしが美津子さんとヤッていた時だ。
　桜庭のやつ、別室に退きながら、結局、気を紛らわすために、涼子のやつとケータイで話をしていたんだ…。
　わたしは、急に、桜庭のやつがにくくなっていた…。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）