４　入れさせてくれない女

　彼女はバスローブをはだけながら、ソファに座っていた。
　わたしは、パンティを脱がそうとした。最初は嫌がったが、足を閉じ、脱がしやすくしてくれた。
　そして、わたしが股に手を置くと、少し恥ずかしそうに、それでも、股を開いてくれたのである。

　だが、もうかなりの時間、クンニリングスをしているというのに、彼女は、なかなか声を上げてくれない。
　でも、舌先で確かめるに、確かに膣の中は濡れているのだ。
　彼女は感じている、少しは…。
　決して不感症ということではないはずだ。
　
　わたしは湯上りに、ビールを飲んでしまった、やけくそになって…。
　なにしろ、彼女ときたら、バスルームで、前側の首筋や、おっぱい・おなか、内腿や膣口のあたりを洗わせてくれなかったのだから。
　どうせ、アルコールが冷めない限り、帰りのクルマの運転はできないのだ。時間としては、タップリある…。

「ねぇ、ベッドに行きましょう」
　わたしは、そう言って、立ち上がった。
　クンニのやりすぎかもしれない。口というか、顎がだるくなったのだ。
　部屋のライトを落とす。
　彼女の許に戻った。
　彼女をソファから立ち上がらせる。
　彼女を横抱えにした。
　そして、彼女をベッドの上に寝かせつける。
　バス・ローブを脱がせた。
　彼女は素直に従い、少し起き上がりながら、バス・ローブの長袖から腕を抜いてくれる。

　再び、彼女をベッドに寝かせつけ、わたしは上半身を起こして、彼女を看る。
　恥毛は薄い方だろう。
　彼女の肢体は、スラリとして、わたしの官能を刺激した。
　彼女は、目を開けている。
　彼女の目の前なのに、わたしの股間のジュニアは、ビックンビックンと天に向かって飛び跳ねていた。

　わたしは、彼女の足を少し開かせ、股間に顔をつける。
　やはり、彼女とて、クリトリスは感じるはずだ。
　わたしは、ていねいに、クリトリスを舌で、下から上へと舐め上げていく。
　クリトリスがやや硬くなる。そして硬くなるにつれて、表皮が剥れる。
　ちょっと、股間から顔を離す。
　きれいなピンク色をした小豆（あずき）大ほどのクリトリス（陰核）であった。
　と、何やら、膣口からは、白い液状のものが滲み出ているような気がした…。
　淫液にちがいない。
　わたしは、中指をゆっくりと差し込んでみる、膣の中に。
　中指の腹を上にしながら、ゆっくりと奥へ…。
　締め付けがある。が、思い切って、挿し込む。中は濡れていた。
「アッ、ウッ！」
　上を見る。
　彼女は額に皺を寄せていた。
　苦しそうだ。
　痛そうな感じはない。ただ、決して気持ちいい、というような表情ではなかった。むしろ、何かに耐え、何かと戦っているような気配がした。

　わたしは、膣の中から中指をゆっくりと抜いてしまっていた。
　彼女をいたぶるのが切なかったのである。
　おなかを撫でる。
　すべすべとした肌であった。

　わたしは、人妻を抱いているとき、なぜか、彼女たちのご主人の顔は思い浮かばないのである。
　どうせ、彼女たちは、セックスが終われば、お金をもらい、ご主人のもとへ帰って行くのだ。
　そのご主人の姿を思い描いたところで、それは、全く詮（せん）がないことだった。だから、彼女たちを抱くとき、彼女たちの旦那のことは、決して考えようとしなかった。だから、当然のことながら、彼女たちのご主人の顔が浮かんでこないのかもしれない…。

　今、源氏名、「浮舟」のからだに、ご主人の匂いは、まったくしなかった。
　それに、他の男の匂いも。
　彼女は、まるで、処女のような、清潔な匂いがした。

　人妻の中には、ご主人以外の、他の男の匂いをぷんぷんさせている人もいた。
　それはわたしの勝手な感じ方かもしれないが。
　ともかく、そういう人妻のからだに、わたしは、清潔感というものを感じなかった。
　が、反ってそのような人妻との場合、セックスのやりがいというものは、感じていた。
　ご主人には、嫉妬をしたところではじまらない。
　しかし、他の男たちの匂いを感じると、わたしは、その男たちに対し、奇妙なライバル心が働くのだった。
　わたしは、他の男の匂いを感じると、その人妻に、息もさせないような激しいディープ・キッスをしてやった。
　乳房を、へしゃげる（＝ぺしゃんこになる）ほどに押しつぶし、揉みしだいた。
　乳首は、揉み上げた、女があまりの痛さに、目に涙をにじませるほどに。
　クリトリスは上から押しつぶすように、押さえつけ、そして、下からかき上げるように掻き上げてやった。
　そして、蜜のあふれた膣の中には、指を２本も突っ込み、グリグリと中を掻き回してやった。
　仰向けではなく、横にならし、片方の足を大きく上げさせ、わたしも、股を大きく広げ、まるで女の股を裂くほどに、わたしも股を密着させた、「松葉くずし」という体位で、彼女を責め立ててやった。
　そして、彼女のからだを裏返しにし、お尻を上げさせ、股を開かせ、バックからペニスを挿入し、腰に手をかけ、パンパンという音を立てながら、お尻のふっくらとした肉や膣の中の襞肉を責め立てていくのだった。

　しかし、浮舟には、なぜか、乱暴にできないのだ。
　浮舟には、ご主人以外に、セックスの相手はいないようであった。
　それに、あるいは、わたしは浮舟に、精神的な恋をしているのかもしれなかった…。

　わたしは、浮舟にキッスができなかった。なぜだろう。ずっと、口の中は清潔にし、さほど口臭はしないと思うのに…。
　くちびるを責めることはできなかったが、せめてもと思い、乳首に唇を当てた。
　乳房をやさしく揉みながら、乳首の先をチロチロと舌先で舐めた。
「あああっあぅ、あぅ・・・」
　クリトリスではないのに…。
　クリトリスよりも乳首が感じるのだろうか？。
　顔を見る。苦しそうだが、乳首を口で吸われるのは、さほど嫌ではなさそうである。

　わたしは、乳首を責めることにした。
　むろん、彼女を昇天させるまで責めるつもりだった。
　乳首を舐める。そして吸う。乳房の裾野を揉む。
　気持ちがいいのか、彼女が、腰をモジモジさせる。
　股を開かせる。
　その股の間に、わたしは、右足を一本入れる。そして、太ももの部分を彼女の股座に宛がい、彼女の股間を擦るように刺激する、ということを止めなかった。

　わたしは、右足で彼女の股間をこすりながら、からだを上にずらしている。
「ねぇ、どうですか。少しは感じてくれていますか？」
「……」
「あなたが感じてくれなくては、せっかく、クルマを５０分も飛ばして来た甲斐がありませんよ」
「ごめんなさい」
「どうしたんですか」
「感じていないことはないんです。でも…」
「でも、何です？」
「何か、胸につっかかるものがあって」
「それって、何なんですか？」
「わたしにも、わからないの」
「まぁ、いいでしょう。その、あなたの胸につかえているものを、わたしが取り除いてあげましょう」
「……」

　わたしは、右手で、浮舟の首を抱きかかえていた。
　そして、左手で乳房を揉みながら、左の太ももの上の肉で、彼女の股間を擦っていた。
「うーん、うううっ」
　見ると、彼女は目を瞑り、くちびるを半開きにしながら、呻いていた。
　その口元がかわいくて、わたしは、顔をかがめるようにして、彼女のくちびるを吸った。
　彼女はいやいやをした。
　しかし、構わず、彼女の口びるを吸い続ける。
　拒絶反応はない。がせ、積極的に応えている、という風でもない。
　口をこじ開け、舌を差し入れようとした。が、それは、口を瞑がれて拒絶されてしまう。
　しかたなく、閉じられた口唇のみを吸うことにした…。
　股間のペニスは痛いほどに硬くなっている。それは、彼女の腰の辺りをさまよっており、彼女は、わたしのペニスがどんな状態になっているか、察しているにはちがいない。

「はぁ、うーん」
　彼女がちょっと、背伸びをするようにして胸を反らす。
　くちびるをはずした。
「少しは、感じてくれますか」
「……」
　彼女は目を開けなかった。
　覗うに、何やら必死に耐えているような風情がある。

　かつて、江戸時代の頃、女郎屋で客（男たち）を相手にする女郎たちは、オルガスムス（＝絶頂感）を感じないように我慢をしていたらしい。確かに、女郎たちは、一晩に何人もの男たちを相手にするのだ。いちいちイッていたら、身が持たないだろう。
　男とて、一晩に４回も５回もイッていた日には、疲れてぐったりとしてしまう。会社員なら、あくる日の午前中は気だるく、あくびばかりをしていることになろう。
　女だって一緒だろう。何回もイッたら、やはり筋肉が緊張するし、疲れというものを感じるのではないだろうか。アクメを自制することは女でもありうることだ。浮舟には、何か、イッてはならない理由でもあるのだろうか。

　浮舟の股間を責めている、今度は、左の中指で。
　淫液は出ている。そして、淫液で濡れた中指で、クリトリスも柔らかく揉んでいく。
「あぅ、あう、はぁ、あぅぅぅ」
　彼女は感じている、確かに。

　でも、まだ興奮が弱いような気がする。
　若い人妻なら、挿入前の、クリトリスと膣に、指で刺激を与えるだけで、イッてしまうこともあった。しかし、浮舟は、イかない、押し寄せる波に耐えるような表情を見せて…。
「ねぇ、我慢しないで、一回目、イッてみせてよ」
「はぁ……はぁ、はぁはぁはぁ…、う〜ん………」
　わたしは、中指で、膣口から入ってすぐの上にある、Ｇスポットという性感帯を刺激している。

「うーん・・・、んっ、んっ、んんんんんっ…」
　気持ちがいいのか、彼女がお尻をちょっと上げ、上半身を反らす。
　中指も、愛液でびっしょりと濡れていた。
　でも、膣をもっと広げなくては、口径４．８センチのペニスを挿入されると、多少膣口のあたりが痛いかもしれない。
　わたしは、上半身を彼女にあずけるようにしながら、乳首を唇で舐め回す。
　そして中指で、膣口を押し広げるように掻き回した。

　ペニスの先が濡れているような気がした。
　男の我慢汁が、鈴口から漏れ出ているのだろう。

「発射寸前まで、生（ナマ）で、構いませんか？。出す直前には、コンドームをしますから」
　わたしは、彼女の耳元でそうささやいていた。
「……」
　返事がない。

　仕方がない。わたしは、ベッドの横のサイドボードの引き出しを開けて、コンドームを取り出した。そして、コンドームを装填する。ペニスはコチコチに硬くなっていた。
（やっと、挿入できるぞ！）
　そう思ったとき、ペニスがビックンと跳ね上がった。

　わたしは、念には念を入れるかのように、彼女の股間に顔を近づけ、そして、膣の中に指を挿し込んだ。
　確かに、内は濡れている。
　コンドームもしている。
　コンドームには、ゼリーがたっぷり塗ってある。
　やや狭い膣口だが、挿入しても、もう、さほどは痛くないだろう。

　わたしは、彼女の足首を持ち、股間を広げた。その中にわたしの体を入れようと思ったのだ。

　が、どうしたことだろう、彼女が突然、からだを横向きにしてしまったのだ。そして、むろん、股をしっかり閉じて。

　わたしは、何が起こったのか、しばし、呆然としていた。
　彼女は仰向けになっているはずだった。
　そして、足を大きく広げてくれるはずだった。
　そして、わたしのリードによって、下肢を膝のところで折り、Ｍ字型にパックリと股を開けてくれるはずであった。
　わたしは、そこに、わたしの股間を近づけ、ペニスを彼女のヴァギナに宛がい、腰を入れ込み、彼女の上半身にわたしの上半身を重ねていくつもりだった。
　むろん体とからだを重ねるだけではない。
　わたしは、彼女がたとえ嫌がったとしても、腰を上下動させながら、ペニスを抜き差ししなくてはならない。
　わたしは気持ちがよくなる。そして彼女も。
　彼女がイク。そして、わたしもそのとき、同時に射精をして、気持ちよくなりたいのだ。
　それが普通のことだろう。
　何も、わたしは、特別なことを望んでいるわけではないのだ。
　にもかかわらず、彼女は、横向きになって、胸のあたりに足膝を抱え込んで、じっとしているのだ。

　これでは、正常位で挿入できないではないか。
「ねぇ、お願いだから、冗談は抜きにしましょうよ」
「……」
　彼女は黙っている。
　からだをかがめ、彼女の顔を覗く。
　うっすらと、彼女は目を開けている。
「ほら、見てくださいよ。僕のジュニアときたら、先っぽからエッチ汁を出していますよ。実際、もう、僕は我慢できないのです、あなたを抱きたくて、抱きたくて…」
「……」
「ここまで来たんですから、どうかお願いです」
「……」
　わたしは、ひたすら懇願していた。ジュニアは天に聳えているのだ。納めるところに納めなくては、何とも、手の施しようがないではないか。
　わたしは、胸のところに膝小僧を抱え込み、視線を伏せている彼女を見下ろしていた。
　このまま、彼女のからだを裏返しにし、強引に、後ろからペニスを入れてやろうかと思った。そのくらいの腕力は、わたしにはあるように思えた。

「あなた、僕だって怒りますよ。強姦されてもいいんですか！」
　わたしは少し、わざとらしく、声を荒げていた。
「ごめんなさい」
「生理中、ってことでもないんでしょ？」
「ごめんなさい」
　なんと、彼女は目に涙を浮かべているのだ！。
　確か、彼女は３９歳のはずだ、１９や２０歳（はたち）のおぼこ娘（＝まだ男を知らないきむすめ）でもあるまいに。それに、世間のことは、もうわかっているはずだ。ここは、男と女が乳繰り合い、チ○ポとオ○ンコをくっつけ合う、「ラブ・ホ（テル）」というところなのだ。

「いったい、どうしたんです！」
　わたしは実際、怒っていた。横になった彼女を裏返しにし、背中を抱いて、ともかく、バックから挿入し、射精まで行かなくては、何ともやりきれない心境なのだ。
「……」
　彼女は無言のままだ。
　わたしは、彼女の丸っこいお尻に手を掛けた。後ろ向きに寝かせるつもりだ。
「お願い、止めて！」
　彼女が、突然、逆に仰向けになった。膝に手をやり、膝小僧を胸に抱え込んだまま。
　彼女の目に涙が溜まっている。
　わたしは、その目を見ているうちに、急に萎えてきたのだ。
「ご主人にわるいと思うんですか？」
　彼女は、首を横に振っている。
　どうやら、ご主人に対して不貞を働こうとしているという、後悔の涙でもなさそうである。
　だが、わたしは、だんだん、彼女の涙に負けていくようだった。
　彼女の横に身を横たえていく。
　そして、横向きになりながら、彼女の頭に手を掛けていた。
「さぁ、こっちに来て」
　わたしは彼女の小さな頭を、わたしの胸に抱きかかえていた。
「無茶はしないから、安心していいよ」
　わたしは、彼女の頭を撫でている。
「ごめんなさい、本当に。どうしていいのか、わからないの」
「いいよ。どうしても、入れて欲しくなかったんでしょ」
「ごめんなさい」
「ああ、わかったから」
　わたしは、髪を撫で、そして、彼女の背中を撫でている。
　と、彼女が身を摺り寄せてくる。彼女の股間が、わたしの下半身に。わたしのジュニアは萎えていたはずなのに、また、ムクムクと大きくなって…い‥く……。
　と、今度は、彼女が腰を引いていく…。
（ああっ、これじゃ、とてもじゃないが、入れさせてはくれそうもない…）
　わたしは情けなくなって、涙が出そうになってきた。体が寒くなってきた。シーツを掛ける。
　股間のモノは、もう萎えきってしまっていた。
　彼女の肩を抱いている。しかし、昼間のビールが効きはじめたらしい。まぶたがだんだん重くなってきたのである…。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）