５　若い人妻をベッドに誘う

　わたしは目覚めた。
　しかし、「浮舟」はいなかった。
　ベッドの横のサイドテーブルの上に何か紙切れが置いてある。
　それを手にした。
『ごめんなさい。お先に失礼します』
　右斜めに跳ね上がったような字だった。彼女の筆跡にまちがいない。
　彼女はもう帰ったらしい。
　わたしは気だるさを覚え、再び、眠りに落ちて行った。

　わたしは未練たらしい男のようである。
　入れさせてもくれなかった女なのに、あの女の顔が、時々、頭の中をよぎる、仕事中にもかかわらず、だ。
　わたしは、いても立ってもいられず、パソコンに向かい、「浮舟」の私書箱にメールを送っていた。

「このあいだはありがとう。わたしの愚痴を聞いてくれて…。でも、わたしの話の途中で、貴女、気分がわるくなって。大丈夫かしら、体調の方…。これでもわたし、貴女のこと、心配しているの。返事を待っているわ。　中野君子」
　しかし、「浮舟」からは何の音沙汰もなかった。

　二日ほど置いて、わたしは、またメールを入れていた、「浮舟」の私書箱に。
「お見合いがだめになったの。相手の男の方（かた）に、ことわられてしまって。どうしてなんでしょう。きっと、わたしが乗り気でなかったのね、本音のところでは。そういう気持ちが相手の男の方にも伝わって。やはり、こちらもある程度、本気にならなくては、相手の方だって…。でも、もう、ことわられたんですもの、あきらめるしかないわね、縁がなかったものとして。でも、今、わたし、とてもさびしいの。もし時間があったら、会って欲しいわ。わたしの話を聞いて欲しいの。　中野君子」

　しかし、「浮舟」からは、何の連絡もなかった。

　わたしは、溜（た）まっていた。
　吐き出す必要があった。
　フーゾクに行けばよいのに。
　しかし、わたしは、性に貪欲であった。
　フーゾク嬢相手では、どうしても燃えないのだ。
　相手は商売。いくらわたしががんばっても、彼女たちはイッてくれない。
　しかし、しろうとの人妻はちがう。
　出会い系サイトの人妻の中には、確かに、イッてくれる人がいるのだ。
　やはり、努力して報われる方がいいに決まっている。

　わたしは、ただただ、精嚢というタンクに貯まった精液という水を抜きたかった。
　目を充血させながら、パソコンに向かう。そして、人妻との出会いを紹介してもらうため、「依頼書」を、サイトの管理室に送信していた。

「年齢不問。Ｆ県Ｕ市内に在住の人妻ならどなたでも」
　わたしは、もう、わざわざ高速をクルマで飛ばしていくことがおっくうになっていた。それに、クルマで行けば、ビールやワインも飲めない。仮に飲んだにしろ、最近は酒気帯び運転ですら捕まるから、酔いを醒ますため、ラブホに一晩泊まらなくてはならない羽目に陥る。

　すぐに、管理室から返信があった。
　恥ずかしいことだが、わたしは口から涎をたらしながら、画面を食い入るようにながめている。
　該当者がいた、一人。
　名前は、リョウコ。むろん、本名ではなく、登録上のＨＮ（ハンドル・ネーム）であろう。
　添付ファイルを開く。
「身長１６７センチ、体重６２キロ、バスト７６センチ、ウエスト７２、ヒップ８９」
　大柄な女だ。
　中学、高校と部活で、バスケット・ボールをしていた、とある。
　ハイヒールを履いてこられたら、まったく同じか、むしろ、相手の方が、背が高く見えるだろう。

　ルックスを見る。
　決して美人とは言えない。
　どちらかといえば、ブス（醜女）と言えるかもしれない。
　しかし、全身を写したスナップ写真では、下半身が、がっちりしていた。よく見ると、何かしら、内腿には、肉がたっぷりとついているように思えるのだった。
　バスケット・ボールでシュートの体勢に入る時、腰を落とし、股を割る。それから背伸びをするように体を伸ばし、あみかごに向けてボールを放り投げる。
　ああいう股割りをしているゆえに、下半身の太腿の肉が、鍛えられているのかもしれない。
　筋肉の発達した、両方の太い腿に、挟まれてしまえば、きっとすごい締め付けを感じることができるだろう。そういう強烈な締め付けの中でこそ、窮屈感があり、そういう窮屈感を跳ね除けて、グビィグビィと射精できるなんて、それはきっとすばらしいことにちがいない…。
　見かけよりも、ともかくベッドでのからみが問題だ。
　相手の女の顔のことや、身長のことなんか、気にしてはおられない。
　ともかく、たくましい股ぐらで、わたしのほっそりとした腰を締め付けて欲しい。そして、発達した膣肉で、強烈にわたしのペニスを絞り上げて欲しいのだ…。

　わたしは、彼女のプロフィール画面と同時に、メールボックスの画面を立ち上げていた。わたしは、後先も考えず、その女を斡旋して欲しい、というメールの文章を打ち込みはじめていた…。
（うん？）
　わたしは、キーボードを叩きながら、驚いていた。
　リョウコという女のプロフィールをよく見ると、なんと、年齢は、２６歳だったのである。
　若すぎる。
　わたしは４８歳。わたしの娘といってもおかしくはないのである。
（これでは、ことわられるにちがいない）
　わたしは、パソコンを打つ手を、ためらっていた。
　が、わたしは、貪欲であった。
　わたしは、パソコンのキーボードを叩きながら、年収の金額をごまかしていた。
　そして、謝礼の金額は、「お気に召すまま」（＝Ａｓ　ｙｏｕ　ｌｉｋｅ　ｉｔ．）とした。つまり、若い人妻を、何とか、お金で釣ろうとしていたのである…。
　その上、わたしの顔写真や、全身のスナップ写真は、デジカメをできるだけ遠くに置いて写した。できるだけ顔の皺がわからないようにしたかったのである。実にあさましいことであった。が、しかし、わたしは、ともかく、抜きたかったのである、人妻の股ぐらの中に腰を沈めて…。

　わたしは待った。
　パソコンの会計ソフトを立ち上げ、マンションの家賃経理をしながら。

　新着メールが入る。
　人妻との出会いをサイト上でセットしてくれる管理室からの返信であった。
　リョウコという女が、わたしとの出会いをオッケーしてくれたらしい。
　管理室は、リョウコという女のメールアドレスをわたしに送信してくれたのである。

　わたしは、『勘〇奉行』という会計ソフトを閉じた。
　そして、さっそく、リョウコという女にパソコンでメールを送った。
　わたしは、ダメモトという感じで、デイトの誘いを試みていたのだ。
「どうですか、レストランでお食事でも。親子で仲良くフランス料理、なんていうのも、たまにはいいと思いませんか？」

　彼女からパソコンにメール返信があった。
「いいですよ。わたしの夫は、今、県外に働きに出ています。夕方からでも時間を取ることができますよ」

　彼女と数度のメールのやり取りをする。
　名前は、「美樹」と言った。
　彼女のご主人というのは、高いビルや橋をつくる鳶（とび）職の仕事をしていた。それで、県外の工事現場を飛び回っているらしく、今、２カ月くらい別居状態が続いているらしい。まだ、子どもはいない。
　メールを見る限り、彼女は、主人が仕事で居ない時、悶々として眠れない夜があるそうで、セックスにはとても関心があるみたいだった。

　性の欲望には個人差があるのかもしれない。
　例えば、睡眠欲にしろ、８時間はしっかり眠りたいという人もいるし、５，６時間でいいという人もいる。
　また、食欲にしろ、一日２食にして、その代わり腹一杯食べたいという人もいるし、一日三食、各食事の量は少なくても、きっちり三回は食べなくてはいけないという人だっている。
　でも、ともかく、彼女は、セックスの欲望は、強いものを持っているような気がした。だから、わたしは口説いた、一生懸命に、メールで。
「おいしいお肉を食べ、元気になって、おとうさんとお医者さんごっこをしようね」
　と。

　わたしたちは、市内のレストランで会うことにした。
　わたしは、約束の１５分前に着いた。
　彼女は、５分、遅れてやってきた。
「ごめんなさい。バスで来たんだけど、そのバスがなかなか来なくて…」
　ハァ、ハァと息をしている。
　バス停からここまで、走って来たのかもしれない…。
　ともかく初々しい。
　本当に精一杯努力して、時間に間に合うように来たのだろう。
「ああ。でも、来てくれないかな、と思って、心配していたよ」
「……」
「君にとっては、おとうさんみたいだけど、よろしく、ね」
　１８００年代後半や、１９００年代前半のワインは、さすがに無理だ。
　わたしは、１９００年代後半のフランス製の赤ワインを注文した。

　前菜が来る。
　彼女が迷っている。
　わたしは、おとうさんの役どころを演じていた。
「美樹、そんなに固くならなくていいよ。誰も見ていないからね。なに、外側から順番に取っていけばいいだけなんだから」
　わたしは、一番外側のナイフとフォークをゆっくりと取り上げた。
　彼女がおそるおそる、ナイフとフォークを取っている。あまりフランス料理は食べつけていないらしい。
　まあ、しかし、フルコース１人前、１万円もするようなフランス料理を食べるなら、若いうちは、むしろ中華料理店にでも行って、腹一杯、ギョーザ、鳥のから揚げやテールラーメンなどを食ったがいいに決まっている。若いときはみんな、質より量なのだから…。

　スープを飲む。
　スープが残り少なくなると、お皿を少し前方にかたむけ、スプーンの使い方としては、手前から向こう側に、斜めからゆっくりと入れ、スープを掬うようにする。
　それが彼女はできていない。スプーンを上からまっすぐ、かぶせるようにスープの中に入れ、手前へ掬おうとしている。しかも、お皿の底にスプーンの底をぶっつけるものだから、カチャカチャとお皿の鳴る音がする。
　しかもスプーンを固定して、その中のスープを啜ろうとするものだから、ジュルジュルという音がするのだ。スプーンを傾けさえすれば、スープは自然と口の中に入るのに…。
　そして、ワイングラスの持ち方もわかっていない。
　ブランデーじゃないんだから、グラスのふくらみのところを手の平でしっかりにぎってはいけない。グラスのふくらみの下の、細い支柱のところを親指と人差し指で摘む程度でいいのだ。

　魚料理が出た。
『的鯛のポアレー赤ワインソース』だった。
　彼女は、白身をナイフでつぶし、そのままフォークの腹に載せて、無造作に食べている。
　つい、わたしは言った。
「白身の魚にも、味付けはしてあるけど、ね。でも、そこにソースがあるでしょ。それを白身を絡めて食べるとおいしいよ」
「ウン？」
　彼女は怪訝そうであった。
　でも、彼女もやっとお皿にある、赤ワインソースに気がついてくれたようである。

　お肉料理。
　とてもやわらかい肉だった。
　国産和牛のＡ−５であろうか？。
　彼女ったら、ギコギコと力を入れて肉を切ろうとするものだから、ガチャガチャと、お皿にナイフが当たって、音がするのだ。
「うーん、ほらほら、お肉には、ここに筋が入っているでしょ。この筋に沿ってナイフを入れれば、もっと楽に切れるはずだよ」
「あっ、そうかぁ」
　まったく、彼女は素直であった。
　わたしは、そんな彼女の素直な顔に、好感が持てた。

　デザートが出た。
　ババロアだった。
　わたしは、あえて、エッチな話を避けていた。
「どんな間取りなの？」
「２ＬＤＫ」
「ふーん」
「子どもができたら、もっと広いところに住みたいな」
「そうだね。わたしの知り合いの不動産業者を紹介してあげるから…」
「どうして？」
「だって、安くて、いいところがいいじゃないか」
「うん、まぁ、そうね」

　しかし、わたしたちは、ワインに酔ってきたらしい。
「早く、子どもを作らないといけないね」
「でも、彼がなかなかうちに居ないから」
「そんなに…」
「けっこう、あちこちで、仕事があるみたいで」
「いいことじゃないか」
「でも、ケータイだけじゃ、さびしいよ」
「そうか、そういうこともあるのか。そういうときは、どうしているの？」
「……」
「ひとりエッチ（＝オナニー）しているんじゃないのか？」
「ばかぁっ！」
「でも、帰ってきた時は、いっぱいしてもらえるだろ。それに、濃いやつだから、妊娠しやすいはずだけどな」
「でも、まだ、できないよ」
「まぁ、そのうち、できるさ」

「で、聞きたいんだけど、男の人って、子どものある人妻とヤッた方が具合がいいの？」
「そんなことはないよ。人によりけりでしょ」
「でも、なんで、男の人は、そんなこと言うのかしらね、子どもを産んだことのある女とヤった方が、気持ちがいいなんて」
　彼女の顔を見た。真剣そうだった。
　わたしは、からかってみたくなった。
「うーん、子どもを産むと、反って、アソコが良くなる、という人も確かにいるらしいよね」
「そうなんですか？」
「俗説だけどね。子どもを産むと、女の人は、膣オーガニズムを感じるようになるんだって」
「へぇーっ、そうなんですか。じゃ、わたしはダメってことですか？」
「まさか。たとえ、膣オーガニズムを感じなくたって、ちゃんとクリトリスオーガニズムは感じるから大丈夫だよ」
「……」
「大丈夫。クリトリスオーガニズムにしろ、膣オーガニズムにしろ、子宮オーガニズムにしろ、男が勝手に理屈をつけただけだから。要するに、どんな種類のものであれ、オーガニズムさえ感じてくれれば、男は満足するものだから」
「ほんとう？」
「ああ、ほんとうさ。だから、君にも感じてもらえるように、僕も、がんばるからさ、よろしくね」
「……」

　わたしはレストランの支払いを済ませ、タクシーを拾ってシティホテルに向かった。
　そのホテルに、デラックス・ルームの予約がしてあった。
　タクシーの中で、彼女の手をにぎった。
　そして、わたしは、彼女にわたしのケータイの番号を教え、わたしのケータイに掛けてもらった。
　シティホテルに着くと、わたしは彼女を喫茶室に案内し、そこで待っていてもらうようにお願いをした。
　フロントで受付を済ませ、わたしひとりでエレベーターに乗り、部屋に向かった。
　そして、部屋から、喫茶室で待っている彼女のケータイを掛け、フロアの階数とルームナンバーを教えた。

　ノックの音がした。
　彼女を入れる。
「わぁっ、広い！」
　彼女が喜んでくれて、わたしもうれしかった。
「一緒に、お風呂に入る？」
「……」

　無理に誘わなかった。
　わたしは、ひとりでバスルームに向かった。
　大きなバスタブだった。
　タブにお湯を入れている。
　そのあいだに、わたしは、ボディソープをつけ、からだを丁寧に洗った。
　お湯に浸かる。
　と、誰かが、バスルームに入ってくる。
　見上げると、彼女だった。
「さあ、入りなさい」
　わたしは、バスタブに彼女を導いた。
　浴槽は大きくて、大人が横にふたり並んでも大丈夫だった。
　湯があふれる。
　それにしても、なんという大きな体なんだろう、彼女は。
　彼女は足を閉じている。お湯の中で、しゃがんでいるみたいだった。
「さぁ、楽にして」
　わたしは、浴槽の縁に頭を乗せさせ、背中を浴槽の側面にくっつけさせ、背もたれのようにさせた。
　お尻はバスタブの底にぴったりとつけさせ、両足を伸ばさせた。
　お湯を通して太ももが見える。それにしても、でっかい内腿ではある。
　わたしは身長が１７３センチで、体重は６２キロある。
　でも、わたしがその股の上に乗っかっても大丈夫なほど、彼女の太腿は大きくて頑丈そうだった。
　わたしは、自分の股を広げ、彼女の閉じられた太腿の上に乗りかかっていく。
　そして、上体を彼女の胸にくっつけるようにしながら、彼女の口びるを吸いに行った。
　彼女はわたしのキッスを嫌がらなかった。
　首に巻いていた手を下ろし、おっぱいにあてがう。乳房は大きくない。でも、その小さな乳房を揉んでいるうちに、乳首が大きく硬くなっていく。わたしは、彼女の首筋に、唇を這わせながら、その乳首を指先でころがしていた…。
「大きな乳首だね」
　わたしは少し顎のあたりが濡れた顔を上げて言った。
　彼女はとっても恥ずかしそうに笑った。
　その笑い顔につられて、わたしはいたずらを思いついた。
　手を彼女の股間にもぐらせて行ったのだ。
　彼女が、股間を閉じる。
「さぁ、別に恥ずかしがらないで」
　わたしは、そう言いながら、股の間に手を突っ込む。
　と、彼女が、股を開き気味にしてくれた。
「ありがとう」
　そう言いながら、彼女のくちびるに再び食らいつく。

　わたしはお湯の中で、少し腰を上にあげ、わたしのお尻と彼女の太腿との間に隙間を空けた。
　手をさらに彼女の股間の奥へと進める。
　手の平で、彼女の土手のあたりを撫でる。指が彼女の恥毛にからみつく。
　そして、指を折り曲げるようにして、しっかりと彼女の草叢の底に這わせる。草叢はさほど濃くはないようだ。
　と、折り曲げた中指の指先に、コリコリしたモノが当たる。クリトリスだ。今度はそれを中指の腹で揉み押さえる。
　と、そのクリトリスがムクムクと大きくなった。その大きさは、わたしの小指の先ほどの大きさにも思えるほどだった。
　上から押さえ込み、そして下から上に掻き上げる。
「あっ、ああっ」
　ペロッと、クリトリスを覆っている薄い皮が剥（む）けたようだった。
　そして、わたしは、膣の中へゆっくりと中指を挿し入れる。
「ああ、濡れてる！」
　わたしは大きな声を出していた。
　ワインで酔ったのだろうか？。
　見ると、彼女は顔を真っ赤にして、俯いていた。
　わたしは、調子に乗って、膣の中で中指を動かしている。
（狭い！）
　さすがに子どもを産んでいない若妻、膣口が締まっている。中指一本しか入らないほどに、中は窮屈なのだ。
　不安になる。
（ここを貫き通せるだろうか？）
　わたしは不安を解消するかのように、ぐにゅぐにゅと中指で膣の中を掻き混ぜている。中指を膣口の上の方に掻き上げ、もう一本、薬指を膣口の下の方から入れ込もうと試みる。
「うっ、うううう」
　彼女は苦しそうだ。
　申し訳ないと思う。
　しかし、少しでも膣口を広げておかないと、入れるのが大変そうなのだ。
　と、彼女の奥から、淫液が湧き出てきた。
　お湯とはあきらかに濃度のちがう、ねっとりした液体であった。
　その股間の淫液が多くなるにつれて、わたしは自信を回復しつつあった。
（これだけ濡れてくれば、絶対に刺し貫くことができる！）
　股間のモノがビックンと音を立てるかのように、大きくなっていく。

　わたしは、彼女の手を取った。
　そして、わたしの大きく、硬くなったペニスを、彼女の手に、にぎらせた。
「早く、君とつながりたい」
　わたしは、彼女の耳元に囁いた。
「ねぇ、それで、今夜は、コンドームをつけなくてはいけないかい？、それとも、純ナマでいい？」
「生理が近いの」
「ああ、じゃ、大丈夫だね、中出ししても」
「ええ…」

　わたしは、彼女より先に、バスタブから出て、そして、バスルームを後にした。早くベッドで彼女を押し倒し、彼女の中に、硬くなったペニスをねじ込みたいと思ったからだった。
　彼女を待った。
　やっと戻ってきた、バスタオルをからだに巻いて。
「いやに、遅かったじゃないか」
　わたしは、わざとのように彼女にもんく（＝抗議の言葉）を言った。
「そんなにきれいに洗ったら、もったいないよ」
「何が？」
　彼女はキョトンとしたような顔をしている。
「君の匂いがとても好きだからさ」
「えっ、なに？」
「さっき、バスタブの中でキッスをしたじゃないか。そのとき、君のからだから立ち上る匂いを嗅いだからさ」
「まぁ、あなたって、匂いフェチなの？」
「ああ、さほどのマニアじゃないけど、多少、他人よりは匂いに敏感なところがあるかもしれないな」
「わたし、って、いい匂いがしてるの？」
「ああ、そうだよ」
　彼女がちょっと、照れくさそうに笑った。
　そんな彼女を引き寄せる。そして、くちびるを奪った。キッスをしながら、彼女をベッドの上に押し倒していく。
　胸に当てていたバスタオルを剥いだ。
　乳首が大きくなり、ピンク色の色彩がさらに濃くなっていた。草叢もちらりと見えた。

　彼女の乳首を、わたしは唇に挟んだ。すると、乳首がさらに勃起して来た。
　カチンカチンになった乳首を啜る。
「あああっ、いやーん！」
　彼女が上体を反らす。
　どうしてなのだろう。彼女の乳首がおっ立ってくるのに併せ、わたしのペニスもさらに怒張してくる。
「いいじゃないか、こんなに硬くなっているんだもの。啜ると、とても気持ちがいいよ」
「いやいや」
　彼女が恥ずかしそうに身を揉む。
　わたしは、しっかりと肩から彼女の上体をベッドに押さえつけ、その硬くなった乳首に、舌先でさらなる攻撃を加える。
「ふーん、フンフン…」
　わたしは上目遣いに、彼女の顔をうかがう。心底、嫌がってはいないようだ。むしろ、気持ちが良さそうに見える…。
　いや、彼女の顔がとてもきれいに見えてくるのだ…。
「噛んでもいい？」
　わたしはわざとらしく尋ねる。
「いやいやっ！」
「軽くね、かるくだから…」
　わたしは、軽く、固い彼女の乳首に歯を当てた。
「あっ、ああああ・・・」
　彼女が、肉のついた、大きなお尻を左右に揺らし、身を揉んでくれている。
　きっと感じてくれているのだろう。
　しろうとの若妻というのは、なんて、性の快楽に素直なんだろう。ご主人にはわるいと思う。でも、こんなに感じてくれるのだ。自然と股間のペニスが跳ね上がって来てしまう。
（お金を払う、しっかりと。だから、許して欲しい）
　わたしは、そう心の中で、つぶやきながら、手を彼女の股間に差し込み、内をまさぐっていた。
（ああ、洪水のようだ！）
　中指が根元までびっしょりと濡れてくる。
　そして、頭の中が痺れる。
　もはや、わたしの理性は蕩けてしまっていた…。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）