13.芽生えた気持ち

　亜紀は不思議な感覚に襲われていた。

　先週の土曜日にここに連れてこられて、今日でちょうど7日目・・・この一週間は衣服などまともに身につけることは許されなかった。ほぼ1日中全裸、または移動などの時に一時的に体を隠すために素肌の上に羽織った薄手のコート・・・当然下着などは1週間全く身につけていなかった。

　しかし今日は目覚めると、ここに来たときと同じブラウスとスカートが置かれ、調教師が用意したのだろうか新品のブラジャーとパンティが一緒に添えられていた。

　昨日は怪しげなお店に全裸にコート1枚で連れて行かれ、薄暗い店内の半個室のようなところで調教師とセックスをした。そして声を掛けてきたカップルと相手を交換し、始めて会う中年男性二人と同じように店内で激しく交わった。個室といっても仕切りがあるだけで他の部屋を覗こうと思えば簡単にのぞける。亜紀が交わっている部屋の前も何度も男性が通りかかり、激しく男性から突かれる亜紀の悩ましい姿を見つめていった。
　それまでもここ一週間は器具で何時間も責められたまま放置されたり、夫には触れられたこともない肛門に大きな注射器のような器具を突き立てられ、薬を注入され、目の前で排泄までさせられたあげく、初めての肛門性交も経験した。
　人気のない山中などではあったが、白昼の日差しの中、野外で全裸をカメラにさらし、そこで浣腸やセックスまでした・・・毎日、毎日・・・何度も調教師のペニスをしゃぶり、激しく交わった。そしてそのすべての行為をサイトの会員たちに見られていることも知っていた。

　下着を身につけながら・・・亜紀は1週間の調教を一つ一つゆっくりと思い出していた。すべてが今まで経験したことのない行為・・・しかもどれもが逃げ出したくなるような恥ずかしい行為だった。何度も調教を受けることを断り、帰宅させてほしいとお願いしようとした。
　しかし、1日目、2日目と過ごし、厳しく、逆らえずとも、時には亜紀を抱きしめ、褒める、どこか紳士的な調教師の態度には醜い容姿は別にしても好感を持っていった。
　そして何よりも亜紀にとって刺激的だったのは亜紀の調教に対して掲示板に毎日大量に書き込まれる会員からのコメントだった。
　どのコメントも性欲に満ち溢れ、亜紀の体を真剣に欲する情熱が伝わってくるいやらしい内容だった。中にはパソコンの画面にうつった亜紀の写真をバックに硬く勃起したペニスの写真が貼り付けられていたり、プリントアウトした亜紀の写真に向かって精液を発射する動画を載せてきている会員もいた。
　今まで夫と淡白なセックスをしてきていただけに、これだけの数の男性が自分の体でこんなにも興奮していることを知り、激しい羞恥の中にも自らも性的な気持ちの高まりを感じるようになっていた。
　調教は見事に成功だった。

　久しぶりに人並みに衣服を身にまとった亜紀は、まるで夫婦かのように朝食を作り、調教師と二人で食卓を囲んだ。

「あ・・・あの・・・ありがとうございました・・・」

　二人ともほとんど食べ終え、調教師がコーヒーを口にしたところで亜紀が食卓の沈黙を破った。
　調教師はその言葉に答えるように笑みを浮かべる。

「はじめはどうなることかと思いましたがね・・・私の前で裸になることすら・・・だいぶためらっておられるように見えた。これは時間がかかるかなと正直おもいましたよ。何しろ1週間しか時間がないのでね。内容の濃い調教をするには時間を無駄にはできない・・・」

「お手数をおかけしてしまって・・・申し訳ありませんでした・・・」

　亜紀の口からは素直に謝罪の言葉が漏れた。今は調教を手間取らせたことに、心から申し訳ないと思っていた。

「旦那さんも楽しみにしていると思いますよ。奥さんの帰りを・・・」

「そ、そうだといいんですが・・・」

　調教師はリビングの角にある液晶テレビのスイッチを入れ、初日から撮り貯めたサイト公開用のビデオ映像を流し始めた。初日の全裸で椅子に縛り付けられての器具での責めから、昨日、店内でこっそりと調教師が隠し撮りした初対面の中年男性とのセックスまで、ダイジェスト版のような形で編集されているため、硬かった亜紀の表情が日を追うごとに羞恥と快感の波に飲み込まれ、恥じらいながらも淫らな表情に移り変わって行くのがよくわかる。

　映像を見終わると、調教師は出かける身支度を始めた。亜紀も物思いに耽りながら朝食の片付けをすませ。持ってきたわずかな荷物をまとめ、玄関に向かった。
　先に乗っていてくれと調教師から渡された車の鍵を見つめ、玄関から1週間過ごした空間を振り返る。こんなにも濃密で、淫らな1週間は生まれて初めてだった。廊下を見つめているだけでそこを全裸で歩く自分の残像が浮かんでくる。亜紀は一抹の寂しさと、切なさを感じていた。玄関の外に見える車・・・何度も全裸やコートのみ着ただけで乗せられた。今こうして衣服を身にまとった状態で乗るのが不自然なようにも感じてしまう。

　玄関で・・・亜紀の動き出した手が止まらない・・・ブラウスのボタンをはずし、ブラジャーのホックを取り、ブラウスの中から引き抜く・・・スカートの中に手を入れて・・・パンティを引き下ろして足首から抜いていた。下着を着けないだけでも亜紀の気持ちの不自然さはだいぶ解消し、ジンジンと体の芯から湧き上がる刺激を感じる。そういう状態でいないと落ち着かない。亜紀の体はそうなってしまっていた。

　脱いだブラジャーとパンティを玄関の下駄箱の上に置き、名残惜しそうに調教師の家に心の中で別れを告げ、車の助手席に座った。

　亜紀が脱いだパンティのクロッチには大きなシミができていた。玄関では支度を終えた調教師が脱ぎ捨てられた下着と外の車の中で何食わぬ顔で待機している亜紀の表情を交互に見ながら、自らの調教の成功を喜んでいた。


続く