4,調教前夜

　夫にヌードどころか、下着姿すら写真になどは撮らせたことはなかった。
　セックスをするために肌をさらすのとは違う。夫に裸体をさらすということに関しては同じではあるが、カメラを持っているだけで亜紀の心境は一変した。
　そのレンズが先ほど電話で話した調教師の大田の熱い視線と同様に感じる。
　夫と、もう一人の顔も見たことのない男性に裸体をさらす…
　結婚以来、夫の前で裸になることにこんなに羞恥を感じたことはなかった。

「どうした？亜紀・・・？やっぱり・・・恥ずかしいか？」
「うん…で、でも…大丈夫…」

　自ら大田に返事をした…決心をした…自分たち夫婦のため…
　そのことを思い出し、亜紀はゆっくりと着ているブラウスのボタンをはずし始めた。
　ボタンを３つはずしたところで正之の目にも亜紀のつけている薄い水色のブラジャーが見て取れた。亜紀の下着姿などは見慣れているはずだった。
　しかし今日はきれいに膨らんだ胸元を清楚な下着が包んでいるのを見つめるだけで、正之の股間にむずむずとした刺激が走る。
　亜紀もいつもとは違う明らかに興奮した視線を胸元に送られ、思わずボタンをはずしながらも胸元を手のひらで覆った。
　ブラウスから袖を抜き取り、夫の視線に戸惑いながらもスカートのホックをはずし、サイドのファスナーを下げるころには、正之の手はズボンの上をさすり始めていた。

「な、なによ…あなた…下着姿くらいで…」
　その言葉は夫だけでなく、自分にも言い聞かせていた。
　夫の正之も興奮していたが、亜紀自身も激しい羞恥を感じている。
　昨日までは全裸をまじまじと見られたとしても羞恥心のかけらも感じていなかったのが嘘のようだった。
　しかし、それは二人ともが先ほどの大田の電話の話を身を持って感じることにもなった。
　新しい刺激が加わることで、正之もこれだけ興奮し、亜紀も女としての羞恥心を激しく感じている。

「あ、亜紀…スカートを…早く…」
　正之が戸惑う亜紀に痺れを切らしてせかす。
　亜紀は黙ってうなずき、緩んだスカートを美しい丸みを帯びた尻の上を滑らせて足元に下ろし、両足を抜いた。
　亜紀はスカートを下ろすによってわずかに下半身にフィットしていないブラジャーとおそろいのパンティを引き上げなおし、夫のほうに向いた。
　デジカメのフラッシュ音だけが、静かなリビングに響く。

「よし…」
　何枚か亜紀の下着姿を撮影し、正之はカメラのデータを確認した。
「…」
　亜紀は手のひらで胸元と股間を押さえながらどんな風に写真が撮れているのか気になりながらも、夫の見ている画面を覗き込むことはなかった。

　正之がデジカメを撮影モードに切り替え、亜紀のほうを向き直った。
　もう次にすることは亜紀にもわかっている。

「ちゃんと・・・撮れてた？・・・」
「あ、ああ…大丈夫…」

　会話がないまま撮影が行われることに耐えかねて、亜紀がわかりきった質問を投げかけるが、その会話も続かない。
　10秒ほどの沈黙があり、亜紀は無言のまま背中のブラジャーのホックに手を伸ばした。
　ふくらみをしっかりと抑えていたカップが緩み、薄褐色の乳輪がわずかに覗いた。
　亜紀は夫の視線を意識しながら、カップを取り去る。
　まさに美乳という言葉がふさわしい亜紀の乳房…
　正之はもう目の前の女性が自らの妻だということを忘れてしまうほど興奮していた。
　知らぬ間にズボンの前をさすっていた手はカチャカチャとベルトをはずし、ファスナーを下げ、熱くそそり立ったペニスを取り出し、さすり始める。

「ちょ、ちょっとあなた…何してるのよ…やめてよ…」
　夫が自ら慰めるところなど初めて目の当たりにする光景だった。

「い、いいじゃないか…それより…早く…パンティを…」
　正之の右手がペニスを握り締め、激しくしごきたてるたびに、ペニスは亜紀に向かって背伸びをするようにビクンビクンと脈打っている。

　亜紀は仕方なくペニスをしごく夫の目の前でパンティを引き下ろしていった。
　亜紀自身もあまりの羞恥心に激しい胸の高鳴りを感じている。

　正之は全裸の亜紀を目の当たりにし、美しい形の乳房やきれいに生えそろった陰毛を見つめながら無言でペニスをしごき続けた。

　亜紀も目の前で自分の裸体で興奮しオナニーをしている男性が夫だということを忘れるほどに激しい羞恥を感じている。自らの全裸を見つめられてオナニーをされるという異常な行為…今までの生活からは想像もできないことだった。

「あ、あなた・・・しゃ、写真を・・・」
　亜紀は羞恥に耐え切れなくなり、自ら写真を撮ることを夫に勧めた。

「あ、ああ・・・・」
　すべきことを思い出し、夫の右手が名残惜しそうに勃起したペニスから離れ、デジカメを手にした。

　カメラを構える正之のほうから思わず顔を背ける亜紀。
　先ほどの下着姿の撮影とはやはり羞恥の度合が違った。
　体には何も身につけていないのだ。
　生まれたままの姿を写真に撮られること自体初めての行為…
　初めての刺激…今日何度この感覚を味わったことか…
　ありとあらゆる刺激が亜紀の体をどんどんと熱くさせた。
　正之は自らの興奮をぶつけるように何枚も亜紀の裸体にフラッシュを浴びせた。

　ようやく正之がカメラを置くときには亜紀も下半身をもじもじとさせる様子が正之にも見て取れた。正之が置いてあるパソコンにカメラをつなぐとすぐに液晶画面に撮影した下着姿や全裸の亜紀が映し出される。
　非常によく撮れており、まるでエロ本に載っている写真のようだった。
　メールの画面が開かれ、大田宛てにメールが送信される。
　送信中を示すバーが0％からどんどんと100％のメモリに向かって伸びていく。
　80％を超えたところで亜紀はパソコンの画面から目をそらした。
　正之はパソコンの席から離れて先ほどのアンケート用紙をFAXしている。
　亜紀だけがメールの送信を確認していた。もう後戻りはできない。

「写真…送ったのね…」
「あ、ああ・・・」
　メールが無事送られたことを確認すると正之はパソコンを閉じた。
　全裸の亜紀の肩を抱き、舌を絡めてキスをする。
　しばらく味わったことのない情熱的なキスだった。
　緩めた正之のズボンが自然にずるずると落ち、トランクスを持ち上げているペニスが亜紀の陰毛付近をつついた。
　亜紀はそのまま唇を離し、正之の前にひざまづき、トランクスを下ろした。
　結婚してから亜紀は正之にフェラチオをしたことはなかった。
　付き合っている時にラブホテルなどで盛り上がったときに何度かペニスを口に含んだことがあるくらいだった。
　その亜紀が、正之の前に全裸でひざまづき、自らトランクスを下ろしてゆっくりとペニスを口に含み、舌を這わせ始めた。

「あ、ああ・・・・亜紀・・・」
　正之は思わぬ行為に驚きつつも、久しぶりに味わう妻の口淫の快感に身をゆだねる。

　やがて二人がそのままベッドに移動し、これも二人にとって初めての行為になるシックスナインへと移るのにそう時間はかからなかった。
　目の前数センチにある妻の陰部…
　こんなにおびただしい濡れ方をしているのは見たことがない。
　舌を這わせるとわずかな酸味としょっぱさと甘さ…
　いろいろな味が混ざったようなぬるぬるとした液体が正之の口の中に広がった。
　舐めとったはずの液体は妻の膣口から泉のようにあふれ出てくる。

　二人はベッドの上で激しく交わった。
　昨日マンネリ化したセックスが行われた同じベッドの上とは思えないほど、二人のセックスは激しかった。
　正之は何度射精したかわからない…膣口、尻、胸・・・
　はたまたぐったりとした亜紀の顔にまで正之の精液は放たれた。
　激しい二人のセックスは深夜まで続いたのだった…

続く