16.最後の調教

　DVDはようやく漆黒の画面にフェードアウトしていった。最後の映像は薄暗いどこかの店内のわずかな隙間からのぞいているような映像だった。狭い半個室のようなところのソファの上で、全裸の亜紀が頭の薄い、でっぷりと太った中年男性と激しく交わっていた。

　聞けばカップル喫茶と呼ばれる店の店内で、二人でいた亜紀と太田に声を掛けてきて、亜紀を抱かせて欲しいと言ってきた男性だと言う。調教師の言葉ひとつで、初めて会う醜い男性にも恍惚の表情で抱かれている自らの妻の様子を、正之は興奮のみなぎる目で見つめていた。

「報告は以上になります。調教内容に契約違反と思われる点があったり、ご自身の目で奥様を見つめてみて著しく怪我を負ったりしている様子がなければ、ご清算手続きをとりたいのですがよろしいでしょうか？」

　正之はもう一度、下半身に何も身につけづ、恥ずかしそうにうつむいている美しい妻をみつめた。隣に座っているのは、あのマンネリを感じながらセックスをしていた女性ではなく、美しく清楚で、恥じらいに満ちながらも、淫らな変態行為を心待ちにしているM女性だった。

「ええ、はい･･･。そうしてください」

　正之ははっきりとした口調で答えると、太田の差し出す調教完了の確認書類にサインした。太田は請求書を静かに正之に差し出した。請求額は20万円、7日間の調教料と諸々の道具代、諸経費を含むと記されていた。かなりの高額の請求に亜紀は驚いた。亜紀にしてみれば、太田の性欲の思うがままにされ、何度となく太田の快楽のほど走りを体に浴びせられた。それにもかかわらず、このような大金を支払うとは･･･。しかし夫の正之は躊躇せず、下ろしたての銀行の封筒から1万円札の束を太田に丁寧に差し出した。

「･･･････17、18、19…20万円･･･確かに頂戴いたします」

　太田は現金をカバンの中にしまい、丁寧にカバンを閉じた。

「さて･･･これで一通りの調教が終了したことになります。最後にひとつ、これはあくまで依頼主であるご主人の任意で行わせていただいている調教があります。ご案内させていただいてもよろしいですか?」

「え、ええ･･･別途料金が発生するとかでなければ･･･お聞かせいただけませんか?」

　亜紀の心はすでに夫に戻っていた。夫をこれからも愛し、新しい関係に生まれ変われると思っているだけに、調教師から受ける最後の調教というものが亜紀には不安に感じられた。

「ご主人はこうして調教が終了したあと、一番あってはいけないし、好ましくない事はどんなことだと思われますか?」

「え、えっと･･･す、すみません。わかりません･･･」

「それはご主人の曖昧な態度によって、Mとして生まれ変わった奥さんの心が離れてしまうことです。奥さんは従順にご主人の言うことを聴くようにしつけしてきたつもりです。しかしご主人が遠慮をして曖昧な態度や、今までと同じような接し方をしていると奥さんの心が離れていくのは以前よりも早くなっています。それだけご主人のことを頼っている。信頼が大きいからこそ、信頼を失ったときの心の離れは大きいと言うことを忘れないでください」

「は、はい。･･･わかりました･･･」

「そこで、それをより強い信頼に変える調教を最後に行っておくということもできます。まあ、これはあくまで任意ですからいやであるならやめておくこともできます。しかし、今までに調教依頼を受けてきたご夫婦のその後をリサーチしたところ･･･この調教を行ったご夫婦は１組も元の関係に戻ってしまったと言うことは聞いておりません。今でも奥さんを妻として、従順なM女性として幸せに暮らしています。しかしこの調教を受けなかったご夫婦は･･･残念ながら約2割のご夫婦が･･･元のマンネリした関係に戻ってしまったと･･･正直にお話しますが、離婚してしまった夫婦もいらっしゃいます」

「そ、そうなんですか・・・な、内容はどんなことなんですか?」

　正之もまた、亜紀と同じ気持ちだった。亜紀とともに、新たな関係を気づくことに非常に喜びを得ていた。亜紀の美しさや、女性としての魅力を今回調教を受けさせたことで再認識することもできた。なによりこれからの亜紀との行為を思うと性的興奮を隠せなかった。亜紀を手放したくない･･･元の関係に戻ったり、離婚するのだけは絶対に避けたいと思っていた。

「ご主人の命令で、奥さんと私が今ここで、全裸でセックスをするんです。今まではコンドームをつけていましたが･･･今回だけはコンドームをつけません。生で･･･中出しもさせていただきます。私の精液を体内にしっかり受け止めることによって、奥さんが私に調教をされたと言う自覚をしっかりと認識し、ご主人もまた奥さんが調教を受けたと言う事実をご自分の目ではっきりと確認することにより、今後の奥さんへの接し方を意識していただけるいい機会になると思います。」

　正之も亜紀も驚きと動揺を隠せなかった。調教中、体や口内に精液を出されたことは数え切れないほどあったが、ペニスを膣内に挿入するときには必ずコンドームをつけていた太田。そういうところにも、亜紀は調教を受けながらも太田の紳士的な面を感じ取っていた。その信頼を最後に夫の前で、破られてしまうとは思ってもみなかった。

「し、しかし･･･そんなことをしたら･･･妊娠してしまう可能性が･･･」

「そうですね。もちろん奥さんが妊娠してしまう可能性があります。しかし、そのリスクを乗り越えてこそ強い信頼が生まれると言うわけです。先程も申しましたが、この調教は任意で行っておりますので、無理にとは言いません。ご主人の判断でお決めください」

　今までの正之なら、とんでもないと二つ返事で断っていただろう。しかし先程の太田の話が気になる上に、正之の心の中にはこの醜い体の中年男性と美しい愛妻の交わりをこの目で見てみたい、そういう気持ちも沸々と湧き上がってくる。同時に、もし本当に亜紀が妊娠してしまったときの心配もしていた。
　亜紀とのセックスを自分が認めた以上、もし子供が生まれたとしても太田の養育費を請求するわけには行かない、かといって堕ろすのも･･･。

「どうされますか？私はどちらでも構いませんよ」

　回答をせかす太田は二人に見せ付けるように図太い下半身を包み込む、少しきつめのスラックスの前をさすって見せた。股間は大きく盛り上がりを見せており、すでに勃起しているのが明らかにわかる。

　正之は亜紀と目を合わせた。亜紀自身、どうしていいかわからなかった。拒否したいと言う思いよりも、夫にすべてをゆだねる気持ちで正之を見つめた。正之にもその思いは伝わった。

「亜紀･･･脱ぎなさい。裸になるんだ･･･」

　亜紀ははっとしてもう一度正之の目を見つめた。正之の目は興奮で血走りながらも、真剣な目だった。
　何よりも言葉に力があった。ついていくと決めた夫の言葉･･･亜紀の心からも夫の真剣なまなざしを見ているうちに戸惑いが消えていった。

「は、はい･･･わかりました･･･」

　亜紀は素直にブラウスのボタンをはずし、袖を抜いた。ブラジャーを身につけていなかった亜紀はそれだけであっという間に全裸になってしまった。正之は全裸になった亜紀の体をじっくりと見つめてから肩を抱き、亜紀の体を太田の前へと促した。

「よ、よろしく･･･おねがいします･･･」

　決断をしたとはいえ、目の前の男性に自らの愛妻とセックスをすることを依頼する正之の唇は緊張と興奮で震えた。

「ご主人、よい決断をされたと思いますよ。これで奥さんとご主人の関係はより強固なものになる。奥さんは完全に従順なM女性になるでしょう」

　そういいながら太田も薄汚れたシャツを脱ぎ、ズボンとパンツを一まとめにして脱ぎ去ると、年甲斐もなくビンッと反り返ったペニスを自らしごきながら、ゆっくりと全裸の亜紀に近づいていった。
　太田の太った体が亜紀の可憐な体を包み込むように抱きしめ、正之の目の前で二人は情熱的なキスをし始めた。夫の目の前と言うこともあり、亜紀の舌の動きは積極的ではなく、緊張している様子が正之にも伝わってきた。
　太田の手が亜紀の手を握り、太ももにこすりつけられている勃起したペニスを握るように促す。亜紀のか細い指が震えながら硬くそそり立つペニスを包み込んでいく。

「奥さん、どうしました？今まで何度もこのチンポで貫かれ、お尻を痙攣させながらイッていたじゃないですか。ご主人の前だからってそんなに硬くなることはないですよ･･･」

「は、はい･･･申し訳ありません･･･」

　亜紀は一瞬チラッと夫のほうを見た。興奮した様子で二人を見つめる夫と目が合ってしまい、恥ずかしそうに目をそらし、うつむきながら太田のペニスを握った手をゆっくりと上下に動かした。手の中で快感をあらわすように太田のペニスがビクンビクンと脈打った。

　太田は何度もキスを浴びせていた亜紀の唇から口を離し、揉んでいた美乳から手を離すと、亜紀の肩を抱いて、その場にしゃがみこむように亜紀の体を促した。亜紀は素直に応じ、そして何を指示されるわけでもなく、当然のように顔の目の前に突き出されたペニスを口の中に含んでいった。

「んん･･･ぁぁ･･･」

　広いリビングに亜紀の唾液がペニスに絡み、唇をスライドする音だけが響く。太田は目を閉じ、その快感に酔いしれて思わず声を出した。声は夫の正之を意識したのかもしれない。正之もそう捕らえていた。しかし目の前で醜い中年男性が全裸の愛妻が行うフェラチオの快感に酔いしれるのは正之にたまらない刺激と興奮を与えた。

　二人の行為は長年連れ添った夫婦のようだった。呼吸がぴったりと合い、太田がどうして欲しいのか亜紀には全てわかっているようだった。硬く勃起したペニスがはちきれんばかりに口の中で弾けるように脈打ちだし、太田が亜紀の頭に軽く手を添えると、自然と亜紀はペニスから唇を離す。そして無言のままリビングの壁に手をつくと、太田のほうに美尻をそっと突き出した。
　太田は夫に正行に挿入がよく見えるように亜紀の尻の向きを微妙に調整し、ペニスをしごきながら亜紀のオマ○コに亀頭を近づけていった。亀頭で膣口を探るように上下にスライドさせる。亜紀も自然とペニスを求めるように、太田の動きに合わせてかすかに尻の動きがペニスを追っているように見える。勃起してパンパンに張った太田の亀頭に亜紀のオマ○コからあふれ出た液体が付着し、ヌラヌラと光っている。

　両手で背後から亜紀の両乳房を揉みながら、太田はついにゆっくりと腰を突き出した。亜紀の膣口がジワリと広がり、太田のペニスを飲み込んでいく様子が正之にもしっかりと見て取れた。

「！！･･･ぁぁぁ･･･はぁぁ･･･」

　太田のペニスが根元まで押し込まれると、今度は亜紀のほうが声にならないような吐息にも似た声を漏らした。太田はペニスをなじませるようにゆっくりとした動きで腰を振り始める。白っぽい液体の付着したペニス粘音とともに膣口を出入りしている。その動きはやがて次第に早く、深く、激しさを増していった。

　正之はその様子をじっと見つめていた。ズボンの中のペニスはギンギンに勃起している。これほどまでに興奮するとは正之自身、思っていなかった。あの新婚旅行の体験以来、妻に恥ずかしい思いをさせたい、その思いが募って他人への貸出し願望のようなものまで芽生えてきてしまっていた正之。それが今、目の前で現実に行われている。

　亜紀のあえぎ声が緊迫感を増してくる。尻肉に力が入り、太田が突き上げるごとに何度も痙攣しているのがわかった。数え切れないほどの絶頂感が連続して亜紀の体に訪れているのが見ているだけでも手に取るようにわかった。
　太田の腰の振り方も小刻みになり、深々と亜紀のオマ○コを貫いている時間が長くなってきていた。ペニスを最奥まで突き入れた状態で、太田の腰の動きが止まり、大田の体がわずかに痙攣しながら硬直している。
　正之は結合部を凝視した。
　ペニスの根元の尿道が何度もふくらみ、ドクンドクンとペニスから液体を放出している。亜紀は体の奥深くに熱い液体が放出されるのを感じ取り、壁に手を着いたままうつむいたままだった。


続く