5.調教の日の朝

　部屋に差し込むまぶしい朝日で正之は目を覚ました。
　隣に全裸のまま寝ている妻の亜紀の姿を見て昨夜の妻との激しいセックスを思い出す。
　久しぶりに味わった濃密な快感を思い出しながら、もう一つの事実を思い出していた。
　そう、今日はこの隣で全裸で寝ている愛妻を調教師に預ける日なのだ。
　調教師の大田から昨夜のセックスの最中に届いた返信FAXにもう一度目を這わせる正之。

《奥様の調教をお受けいたします。
　この美しい奥様の裸体に一つ一つ新たな刺激を与えるのが楽しみです。
　明日、奥様を引き取りにうかがいます。大田》

　乱筆だが、はっきりと記されている文字から調教師の大田のやる気が伝わってくる。
　昨夜、交わりながら二人でこのFAXを確認した。
　今日依頼を出して、明日から調教…本来ならあまりにも急すぎる話だが、淫らな気持ちが二人を支配していたため、そのFAXは激しいセックスのスパイスとなった。

　正之が立てる物音で亜紀もやがて目を覚ました。

「・・・・おはよう・・・」

　亜紀も同じく目を覚ましてすぐに昨夜のセックスを思い出したらしく、恥ずかしそうに布団で自らの裸体を覆った。
　そういう一つ一つの恥じらいの仕草でさえ、近年の二人にはなかったことである。

「あ、ああ・・・おはよう・・・」

　正之はあわてて読み返していたFAXをベッドのサイドテーブルに置いたが、亜紀の視線もそのFAXを見つめていた。
　二人の間にしばらく沈黙が続いた。
　しかし二人の気持ちの中に、調教を断るという選択肢はなかった。

「わ、私…シャワーを浴びて…支度…するわね…」
　亜紀は沈黙を破り、着替えを持ってバスルームに入っていった。

　昨夜の夫とのセックスは情熱的で刺激的で…
　今まで正之と何度となくセックスをしてきたが、間違いなく最高のものだった。
　大田から電話で言われたように、新たな刺激が加わることで愛する夫とこんなにも深く愛し合えることが身を持って認識できたのだ。

　正之は亜紀がバスルームに消えていくのを確認するとTシャツとトランクスを身につけ、パソコンを開く。
　デスクトップには昨夜撮影した亜紀の下着姿と全裸の写真が同じように保存されていた。
　もう一度大田のサイト「人妻調教クラブ」を確認しようと、記憶しているホームページアドレスを打ち込む。
　何度となく見慣れたサイトのトップページにその写真はあった。
　顔こそモザイクはかけられているものの紛れもなくそれは昨日メールで送信した亜紀の全裸写真だった。

《美人人妻亜紀30歳　本日より調教開始！》

　亜紀の写真の下には宣伝の文字がちかちかと光っている。
　ここに掲載された美しい女性たちの写真を何度も妻の亜紀に置き換えて想像していた。
　正之が想像していたことがまさに現実になったのだ。

《VIP会員の方はモザイクなしの画像をごらんいただけます》

　正之の手が震えていた。決して安い金額ではなかったが、正之は迷うことなく入会のための決済ページへと進んでいった。
　与えられたパスワードを入力すると会員専用のトップページへ飛ぶ。
　亜紀の顔にかかったモザイクは外れていた。
　恥じらいに満ちた表情の愛妻の裸体をインターネットの画面を通じてみるのは不思議な感覚だった。

《木内亜紀30歳　結婚5年目　子供なし　162センチ、50キロ　B83W59H85　Cカップ》

　亜紀の詳しいプロフィールまで克明に記載されており、知り合いが見れば亜紀のことだと一目でわかってしまう内容だった。
　サイトに記載されている数字が本当ならばこのサイトの有料会員はすでに3000人を超えている。今、亜紀の裸体を3000人の男がいやらしい視線で見つめているのだ。
　正之のペニスは激しく勃起していた。

　パソコンを閉じ、正行は亜紀のシャワーの音が響くバスルームの前へ来た。
　すりガラスには美しい亜紀の裸体がシルエットで映し出されている。
　先ほどインターネットで見た女性の裸体が扉ひとつ向こうにある。
　正行は亜紀の裸体のシルエットから目をそらすことが出来なかった。
　いつの間にか脱衣かごの中に入っている亜紀の着替え用の水色のナイロンのブラジャーとパンティに手を伸ばしていた。
　今まではこんなことをした記憶はなかった。
　しかし今は亜紀の下着を見ただけで正行の股間は反応してしまう。
　正行は脱衣所でトランクスをずらすと、亜紀のパンティで自らの勃起を包み込みしごき始めた。
　結婚してからもオナニーをすることはしばしばある。しかし自分の妻を思って妻の下着でオナニーをすることなど思いつくことすらなかった。
　しかしそれが今はたまらない快感となって正行のペニスを刺激する。
　正行の精液は急激なスピードで尿道を駆け上がって行った。

「！！！・・・・ちょ、ちょっと！あ、あなた・・・何やってるの！？・・」

　扉が開き、シルエットだった裸体がリアルに正行の視線にさらされるのと、正行の精液が亜紀のパンティに放出されるのはほぼ同時だった。
　正行は射精の影響でがくがくとひざが震えて動くことが出来ず、もちろん取り繕うことも出来ない。
　すべての精液を亜紀の目の前でパンティに放出するとティッシュ代わりにするかのようにパンティでペニスに付着した精液をふき取った。

「調教の依頼をしたのは・・・・あなたなのよ・・・後悔しているの？・・・」
　亜紀は怒ることもせず、風呂上りの裸体をさらしたまま夫の気持ちを確かめた。

「い、いや・・・後悔はしていないけど・・・亜紀のすべてが・・・なんだかいやらしく見えてしまって・・・」

　亜紀はもう何もいえなかった。
　夫も同じように新しい刺激が加わったことによって自分に対して強く女を感じてくれているのがわかった。

「新しい下着を持ってきて…それは…はけないわ…」
　正行は黙って亜紀の下着を取りに行った。
　脱衣所に置かれたパンティからは湯気でも立ち上りそうなほどの熱気と精臭を放っていた。

つづく