１　出来ちゃった婚

　俺は、泊まりだった。
　そして、午後１１時も回った頃だった。
　トイレに行った。

　男子トイレを出ると、女子トイレから、何やらうめき声がする。

　俺は、入院患者でも、気分が悪くなって、吐いているのではないかと、思った。
　女子トイレであることは無視した。

　と、洗面台でうつ伏せになっている、白衣の看護師が…。
　見ると、その子は、内科の黒木舞（くろき・まい）だった。

「どうした？」
　彼女の耳元で問うが、返事がない。
　顔からは血の気が失せていた。
　
　俺は、彼女を抱きかかえていた。
　廊下を見回す。
　誰もいなかった。
　俺は急いで、彼女を自分の研究室に運び込んでいた。


　実は、３週間前だったか、高沢婦長から、彼女が妊娠していると聞いていた。
　彼女は、まだ新採１年とちょっとしか経っていないはずだ。
　２０歳で看護学校を卒業しており、確か、まだ２１歳のはずだった。
　高沢婦長の話だと、しかし、付き合っている男がいて、出来ちゃった婚をし、しかし、互いに勤めもあり、新婚旅行には行っていないらしかった。

　そんなわけで、俺は、この３週間足らずの間に、まるで、色情マニアのように、黒木舞への肉体に関心を持ちはじめていた…。

　むろん、彼女のパンティやストッキングを盗んだわけではない。
　
　看護師詰め所に出入りしながら、黒木舞のさわった品々を、極めて巧妙に採取していたのだ。
　彼女の触った書類、ボールペン、洟をかんで捨てたティッシュペーパー、洗った手を拭いたタオルなどなど…。

　つまり、俺には、すでに、彼女の体液濃度、血液濃度などがわかっていたのだ。

　俺の頭の中には、液状睡眠薬の適量濃度が、すでにインプットされている。
　
　俺は、クライアント（患者）の体液濃度、血液濃度、効用時間にマッチした、睡眠薬の濃度計算のソフトを、麻酔科の北前医師からもらっていたのだ。

　
　俺は、彼女を、部屋に連れ込み、簡易ベッドの上に、仰向けに寝かせつけていた。
　俺は、濡れたタオルで、彼女の口許を拭いてやった。
　そして、そのタオルの匂いを嗅いでみる。

　俺は、内科が専門で、産婦人科のことはよくわからない。
　しかし、彼女は、つわりのような気がした。

　軽く、彼女の頬を叩いてみる。
　彼女は目を覚まさなかった。
　呼吸は正常である。
　彼女は、ちょっと気を失っているだけみたいだった。


　どうやら、俺は、絶好のチャンスを手に入れたらしい。

　俺は、パソコンで、麻酔科の北前医師のソフトを呼び出していた。
　そして、黒木舞にふさわしい睡眠薬濃度を、確認した。

　それからは、猛スピードで処理を進める。
　注射器に適量の睡眠薬を取り込み、彼女の右腕に注射した。

　これで、おそらく、彼女は最低１時間は、目を覚まさないはずだ。

　俺は、看護婦詰め所に電話を入れた。

「もしもし」
「高沢です」

「ああ、婦長さんですね。松井です。看護師の黒木さんに、今、僕の研究室に来てもらっています。１時間ほど、データの打ち込みを手伝ってもらいますから、よろしくお願いします」
「困ります」

「理事長に頼まれているんですよ。明日の朝一番で、うちのクライアント（患者）の１００人分の、ピロリ菌と胃潰瘍との相関データを、理事長出身の大学の医局まで、送らなくてはならないんですからね」
「午前１時に引継ぎのミーティングがあるんです」

「わかりました。それまでには終わらせます」
「……」

　明らかに、高沢婦長は機嫌がわるかった。
　腕もわるい、性格も悪い医者であった、俺は…。
　そんな俺のわがままなど、ききたくないにちがいなかった。
　しかし、俺が、理事長兼院長の甥であることを、高沢婦長は知っている。
　婦長は、しぶしぶ、承諾せざるを得ないだろう…。

　腕時計を見る。
　今、午後１１時半。
　入院患者たちはよく寝ている時間だし、明け方勤務の看護師たちとの交替時間の、午前１時までには、まだ少し時間があった。

　簡易ベッドに横になっている黒木舞の鼻や口から、軽い寝息が漏れた。
　俺は、やっと、安心した。
　そして、麻酔医の、北前医師のソフトの完成度に、改めて敬服した。

　俺は、研究室のドアに、内側からカギをセットした。

　俺は、すぐさま、簡易ベッドのもとに戻り、彼女の頭から、キャップ（帽子）を取った。
　シューズも脱がせた。
　白衣のワンピースの裾を上半身へと、捲り上げる。
　パンティ・ストッキングを、上から下へと剥いで行く。

　俺は、そのパンティ・ストッキングの、ちょうど股間に当たるところを、嗅いでみる。
　特に、おしっこの匂いがするわけでもなかった。

　おなかを看る。
　が、彼女が妊娠しているなんて、婦人科でもない俺には、ちょっと、わからなかった。
　が、想像していた以上に、彼女のおなかは、真っ白で、きれいな肌だった。

　おそるおそる、白のパンティを降ろす。

　黒い茂みが現われた。
　そんなに多くはない。
　彼女の性格そのもののように、か細い茂みであった。

　俺は、彼女の足首からパンティを取り外すと、すぐに、茂みに口をつけた。
　いい匂いがした。

　俺は、麻酔科の北前医師のデータに全幅の信頼を置いていた。
　後、１時間は、麻酔が効いていて、黒木舞が目を覚ますことはないはずだ。

　そして、北前医師のデータに基づき、適切な濃度の覚醒薬注射を打てば、彼女は目覚め、午前１時からのミーティングに間に合うだろう。

　俺は、机の引き出しから、コンドームを取り出した。
　そして、それをワイシャツのポケットに入れておいた。

　俺は、３６歳になるが、独身だった。
　ならば、コンドームなど必要ないのだが…。

　ところが、俺は必要とした。

　病院のすぐ近くのマンションに住んでいるが、時々は、デルヘル嬢（デリバリー・ヘルス嬢）に来てもらわなくてはならなかったのだ。
　ヘルスやソープランドなど、風俗店に出かけて行けばいいのかもしれないが…。
　しかし、ケータイに緊急電話や緊急メールがしょっちゅう入るのだ。
　ナニをするにも、やはり、病院の近くでスルに限る…。


　俺は、簡易ベッドを少し、上にリフトアップさせた。
　仰向けに寝ている彼女の股間が、立っている俺の股間と、ちょうど同じ高さになるよう、ベッドを上げたのだった。

　俺は、彼女の膝を折り、彼女の股間を少し広げて、彼女の下肢の格好が、Ｍ字型になるようにした。
　そして、俺は、腰をかがめながら、彼女の股間に、おのれの顔を近づけて行った。


　実際、俺は、どこか歯車が欠けているというか、毀（こわ）れているとしか、いいようがない。

　普通の人間なら、車の運転ぐらい、できるだろう。
　しかし、俺には、できないのだ。

　学生時代、サッカー、バスケットと人並みにはできた。
　パソコンや内視鏡操作もできる。
　
　運動神経が悪いのでもなければ、機械に弱いというほどでもないのだが…。

　ともかく、車の免許は取ったことは取ったのだ、自動車学校に通って。
　そして、車も買った。
　しかし、車庫入れのたびにお尻をぶっつけ、そのたびに、修理工場に車を持ち込まねばならなかった。
　もうこれ以上の出費は避けねばならない。
　タクシーを使った方が、はるかに安上がりなのだから…。


　普通の人間なら、人妻を好きになるなんてことはないだろう。
　仮に、人妻が好きになったとしても、その人妻を何とかしようなんて考えないだろう。
　それに、何より、仮にそういうことを考えたにせよ、それを実際にやろうなどとはしないだろう。
　人妻とは、他人の所有物なのだ。それを盗むなど、泥棒と同じだ。

　普通の人間には、理性というものがある。
　確かに、頭の中では、他人の物だって、欲しくてたまらなく思うことがあるだろう。
　思うことまではいい。
　つまり、実際に、他人の物を盗んでは、それは罪になると、理性でもって、悪しき行動に移るのを抑え込めることができるのだ、普通の人間は…。

　しかし、俺の場合は、そうような、よこしまな欲望を制御する、理性の歯車が毀れているような気がする。
　それは、たぶん、生れてこのかた、まったく父親の顔を知らずに育ったという、俺特有の家庭環境のせいもあるかもしれないと、俺自身は思っているのだが…。


　つい、最近まで、俺は、黒木舞という看護師のことを、オンナとして意識したことはなかった。

　確か、３週間前のことだった。
　突然、俺の研究室に、高沢婦長がやってきたのだ。

「すみません。お願いごとがあるのですが」
「何でしょうか？」
　俺は、一応、ベテランの看護師に敬意を払っている。
　管理職としても、なかなか優秀だ。
　それに彼女は、年齢的にも、確か、俺より一回り上のはずだ。

「実は、うちの看護師の黒木舞が妊娠しているんです」
「ああ、そうなんですか」

「産前休暇に入るまで、しばらく期間がありますが、よろしくお願いしたいのです」
「どうして？」

「あまり、体調がよくないみたいなのです」
「そうですか…」

「かといって、彼女、私傷病休暇を取れない事情もあるようなのです」
「……」

「ですから、先生方に、あるいはご迷惑をおかけする場面もあるかと思いまして、こうして、ご配慮をお願いに上がったわけなんです」
「ああ、わかりました」

　婦長も、２人の子供を持っておられる。
　たぶん、妊娠すると、産前産後の休暇に入るまで、大変な苦労があることを、身をもって体験されているのかもしれない…。

　その明くる日の夜だった。
　俺は、夜勤だった。
　たまたま、俺は、看護師たちの詰め所の前を通りかかったのだ。

「黒木さん、できちゃった婚なんです、って。式も挙げないらしいわよ」
「新婚旅行もしないんですって」
「ご主人は、建設現場で、働いているんです、って」
「どうやら、黒木さん、うちの内科に来る前、ちょっとばかり外科にいたことがあって。その外科病棟に、ご主人が、入院していたんだって…」

　そういううわさ話が、廊下まで筒抜けだった。

　俺は、それから、黒木舞を意識するようになった。
　実際、最初、６９歳男性の、開腹による大腸癌摘出手術を手伝ってもらった時は、お人形さんみたいに整った顔立ちはしているが、動作が鈍くて、使い物にならない看護師だと思ったものだったが…。
　
　結婚していると知ってから、黒木舞をそれとなく観察している自分に気づいてはいた。
　それに、実に、黒木舞は、きれいだった。
　結婚したせいなのか、それとも妊娠したせいなのか、内科に来たばかりの頃に比べ、黒木舞は、格段にきれいになっているような気がした。

　恋人がいない女を相手にするのは、なぜか、ためらわれる。
　バージンの女を相手にするのは、なぜか、ためらわれる。

　たぶん、無責任な俺にとって、『ステディな（定まった）恋人になってちょうだい』だとか、『妊娠したから結婚してちょうだい』だとか、女に責任を取らされる、というようなことが、いやなのかもしれない…。


　俺は、人妻だから黒木が好きなのか、きれいな顔立ちをしているから好きなのか、よくわからない。

　しかし、黒木が結婚してから、急に女っぽくなって、俺の肉感を刺激するようになったことは確かなのだ。

　他に好きな男がいる、しかも処女ではない。
　それなのに、そんな女に、セックスアピールを感じる、とは…。
　俺は、やはり正常な人間ではないらしい。
　どこか、歯車が毀れている、狂っている。


　そんな正常な意識を持たない男の前で、女は、睡眠注射を打たれ、眠っているのだ。

　黒木舞の股間に近づくにつれて、俺の頭脳の歯車は、ますますそのズレを大きくしていく。理性という歯車が回らなくなっているのだ。

　黒木の恥毛が、俺の鼻柱に当たり、その毛先の何本かが、鼻腔の中に入り込んで来る。

　そして、恥毛が、敏感になった俺の唇に触れるようになったとき、俺は、目頭を熱くし、性欲を制御する、理性の歯車が、完全に停止するのを覚えていた。

　俺は、彼女の大陰唇を舌先で舐めはじめた。

　頭の中の、冷たく固い理性の細胞が、蕩け始めていく。

　そして、徐々に、股間のペニスの海綿体へと、血流が注ぎ込まれていくのを感じるのだった。

　俺のくちびると舌先は、さらに、女の小陰唇へと突き進む。
　そして、舌先は、谷間の、黒木舞の尿道口を捉えていた。
　尿の匂いがしない。
　黒木舞のならば、もっと、そのアンモニアっぽいの匂いが、そのちょっぱい味が、欲しいのに…。

　俺の舌先は、ついに、膣口に達する。
　ほんのわずかだが、湿り気を感じる。

　が、穴そのものは、何という小ささなのだろう！。

　俺は、誰もができる車の運転ができないほど、人並みはずれて、車体感覚や運動機能が持てないでいる。
　がしかし、その反動なのか、こんな小さな舌先だけは、人並み以上に、敏感らしい。
　
（こんな小さな穴に、果たして、俺のペニスが納まるのであろうか！？）

　俺の竿（さお）の長さは、大したことがない。
　学生時代、仲間の中には、１６センチの奴もいたし、１５センチのモノを持つ者もざらにいたというのに、俺のモノは１３センチしかなかった。
　しかし、太さだけは自信があった。
鰓（えら）の張ったところの周囲は、５０ミリほどある。
　実際、受け手側がの穴が、五円玉（＝直径２２ミリ）くらいであれば、５０ミリの砲弾では、なかなか突入できないかもしれない。

　無理矢理、入れようとすれば、彼女は目を覚ますかもしれない。

　いやいや、麻酔科の北前医師の、混合率を信ずるべきなのだ。
　彼女は、決して目を覚まさないはずだ。

　俺は、そう自分に言い聞かせつつ、さらに、顔を下へさげていく。
　しわしわの皮膚を持つ会陰部へ舌を這わせる。

　そして、さらに下り、舌先は、彼女のアヌスをとらえていた。

　彼女の、閉じられたアヌスを舌で舐めてみる。

　と、彼女が腰を揺らした。

（アッ、目を覚まさせてしまったか！）
　俺は、彼女の股間から急いで顔を上げ、彼女の顔を見る。

　彼女は、目を開けてはいなかった。
　その表情からは、やはり、ぐっすりと眠っているとしか思えない。
　俺は、ホッとした。
　夢の中とはいえ、彼女は、ちょっと、こそばゆさを感じたのかもしれない…。

　俺は、再び、股間に顔を埋めていく。
　舌先で、アヌスをこじあけている。
　彼女のウンチなら、厭わない。

　舌先を動かしてみるに、このアヌスは、直径３０ミリくらいなら開きそうな具合だった。
　このホールには、ほぼ毎日、直径３０ミリの便は通っていそうな気がする。

　もし、ペニスを膣口に挿入できないとすれば、このアヌス（肛門）に埋め込むしかないだろうと、俺は思いはじめていた。

　それで、俺は、彼女の軽いお尻を両手で持ち上げながら、しきりに、舌先で、アヌスを愛撫し続けていた…。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）