２　我慢できず中出しを

　俺は、自分の部屋に鍵をかけていた。

　そして、麻酔科の北前医師の、混合率に全幅の信頼を置くことにした。
　彼女は、決して目を覚まさない。
　だから、俺は、部屋のライトを点けたままにしている。

　俺は、おのれの欲望に忠実であろうとした。
　だから、彼女の尻を、両の手のひらに載せるようにして持ち上げ、しきりに、舌先で、彼女のかわいらしいアヌスを舐め続けた。

　しかし、さすがに、腰にだるさを感じるようになった。
　中腰のせいだ。

　俺は、膝を床の上についた。

　そして、手の力も抜き、彼女のお尻を簡易ベッドの上に降ろした。

　改めて、アルファベットのＭの字の形に、彼女の股間を広げ、彼女の膣を愛撫することにした。

　尿道の上にあるクリトリスはまだ、その姿を見せていなかった。
　クリトリスの上の方、土手の筋肉を上に引っ張り上げ、小陰唇を指で左右に広げてみる。
　すると、膣口は、十円玉くらいの大きさになっているように見えた。
　ここは、相当、弾力性のあるところらしい。
　五百円玉くらいの大きさになれば、こじあけて入れれば、入れられそうな気がした。

　俺は、舌先で、膣口の口径を大きく広げようと、しきりに試みていた。
　が、無理であった。
　それに、膣壁から滲み出る淫液も少ない。
　たぶん、内分泌液の発生量は、脳神経と連結しており、睡眠剤で、脳神経が麻痺させられている状態では、どうしても膣内の内液分泌量は少ないのにちがいない。

　午前１時のタイムリミットまで、残された時間は少ない。

　俺は、彼女の股間から顔を離した。
　人差し指一本を、彼女の膣口に、あてがう。

　やはり、淫液が少ない。
　いきなりだと、目を覚まさせるにちがいなかった。
　ゆっくりと、挿入していく、時間をかけて…。

　人差し指の第一関節まで、突っ込む。
　さらに、第二関節まで、入れ込む。
　そこで、挿入をやめ、指先で、膣内を、かき回してみる。

　やわらかで、あたたかい。
　それは、まるで、彼女の性格のようにも思えた。

　そんな彼女を、俺は、いたぶっている。
　俺は、涙が滲みそうになった。
　情けないのか。いや、うれしいのか？。

（ひょっとして、この黒木舞という女に、俺は、惚れている、というのだろうか？）

（いや、そんなことはない。眠っている女に、睡眠剤を打ち、彼女の心の無い状態で肉体をいたぶるなど、男の風上にも置けない所業だ。そんな卑劣な男に、精神性をうんぬんする資格など、あろうか？）

　俺は、うなだれていた。
　が、その俺の目に入ったのは、こともあろうに、ピンク色をした、小豆大ほどの、小さな豆（クリトリス）だった。

　俺は、その陰核に、頬ずりしたくなった。
　それは、それほどに、可愛い、花芽であった。

　俺は、再び、膝を床につき、顔を彼女の股間にくっつけって行った。

　彼女の芳しい匂い。
　そして、陰核の表面の美しさ。

　それは、麻酔状態の女とは、とても思えぬほどに、雌としての存在理由を、俺に、訴えかけて来た。

　俺は、股間のペニスが痛いほどに硬くなっているのに気がついた。
　そして、わずかだが、トランクスの前側の布切れが濡れているのもわかった。
　どうやら、ペニスの鈴口から、我慢汁（カウパー氏液）が漏れ出ているらしい。

　もう時間がなかった。
　
　俺は、立ち上がった。
　白衣を脱ぎ、椅子の背に掛けた。

　ワイシャツの下の方のボタンを二つはずし、裾のあたりをたくしあげる。
　ベルトをゆるめ、ズボンを下に降ろす。
　そして、トランクスをずり下げた。

　ペニスは、垂直に立ち、亀頭部の縦ラインの裂け目は、天井を仰いでいた。

　俺は、ペニスの幹を左手の指でつまみ、床と水平になるまで、右の親指で、ペニスの亀頭部を押さえつけた。
　右手で、ペニスの先を誘導しつつ、黒木舞の膣口に向けて、足を、やや、がに股に開きつつ、腰を近づけていく。

　ペニスの先からは、しずくが滴り落ちているように見える。

　ペニスの先端部が、彼女の膣口に当たる。
　何という、快い刺激なのだろう。
　まだ、挿入はしていないというのに。
　こうして、くっつけているだけで気持ちがいい。

　たぶん、好きな女だからこそ、そうなんだろう…。

　ずっと、このまま、彼女の膣口に、チン○をくっつけていたい。

　がしかし、俺は、本能に負けていた。
　しきりに、腰を前へ前へと進め、膣内への侵入を図ろうとしていた。

　が、どうしたことか、もうそれ以上は、前に進めないのだ。
　指先で、ペニスの進入位置をしっかりと固定し、胸を反らして、腰をしっかり突き出して、がんばっているというのに。

　俺は、額に汗を掻いていた。
　あせっている。

　俺は、いったん、腰を引いた。

　からだをかがめ、顔を股間にくっつけながら、彼女の膣口を観察する。
　やはり、濡れが足りないようだ。

　彼女は、俺の挿入を拒否しているのだろうか。
　いや、そうではない。睡眠剤のせいなのだ。
　意識がない分、それだけ、彼女は催していないのだ。

　俺は、簡易ベッドのそばを離れた。
　机の一番下の引き出しを開けた。
　ローションがあった。

　デリヘル嬢の、奈美のものだった。
　以前、俺の部屋に来たとき、忘れていったものだった。

　からだのコンディションがわるく、どうしてもアソコの濡れ具合が悪いときは、このローションを膣内に塗り、すべりを良くするのだと言っていた…。

　俺は、黒木舞の許に帰っていた。
　人差し指に、ローションを塗りまくった。

　その、どろどろになった指先を、膣内に押し込む。

　俺は、コンドームをつけようかと思った。
　むろん、射精しそうになったら、つけるつもりだった。

　が、射精の寸前まで、ナマで、ダイレクトで、楽しみたかった…。

　俺は、ナマのペニスをしごいた。
　硬さが復活して来る。

　腰をやや落とし気味にし、ペニスのねらいを定めて、その先っぽを、彼女の股間へ向かわせる。

　ペニスの先が濡れる。
　あたたかな淫液ではなかった。
　やや冷たい感じのするゼリー状をしたローション液だった。

　が、それでも構わない。
　ともかく、膣内に突入さえすれば、ペニスだって、俺の歯車の毀れた頭脳だって、それなりに満足するだろう。

　腰を小刻みに４，５回、前後させる。
　ジャンプの前の助走というか、はずみをつけるためだった。

　そして、一気に押し込む。

　ヌルッと入った。

「ああっ」
　何と言う、気持ち良さであろう。
　そして、何という心地よい締め付けなんだろう。
　彼女は、ご主人と、あまりセックスを重ねないうちに、妊娠をしてしまったかのように思える。

　が、しかし、下を見ると、入っているのは、なんと亀頭部のみであった。
　亀頭部のみで、これほどの快感が得られるのだ。
　根元まで押し込めば、いったい、どれほどの快感が得られるというのであろうか？。

　俺は、ゆっくりと、奥へと押し込もうとする。
　が、動かない。
　困った。
　いったん引き戻し、それから一気に奥へ押し込むしかない。

　俺は、後ろへ腰を引いた。
　しかし、抜けない。
　いや、むしろ、彼女の股間が、こっちへ引きずられて来るような気がした。

　抜けない、でも、気持ちがいい。
　と、膣口の筋肉が、鰓（えら）の張ったところを、キュッと締め付けた。
「ああっ！」
　俺は声が漏れそうになって、あわてて、手でおのれの口を塞ぐ。

　が、快感の痺れは止まらない。

（あっ、いけない、まだコンドームをしていないというのに…）
　俺は、目を瞑り、肛門の穴を閉じるようにして、射精をこらえた。
　が、だめだった。

『ドクッン！』
　第一次発射の音が、耳にまで届いて来た…。

『ドクッ、トグッ、ドックン、ドクーン、ドクドクドク―――ッ！』

　俺は、あまりの気持ち良さに、口からよだれを流していた。

　そして、射精し終わると、がっくりと、床の上に膝をつき、それから、よろよろと上体を横揺れさせながら、床の上に転がり落ちていった…。

（彼女の膣の締め付けが強くて抜けなかったのではない。あまりの気持ち良さのために抜きたくなかっただけなのだ。何という、おろかさ…）
　
　虚脱感と情けなさ…。

　と、俺は、我に返った。
　時計を見る。
　午前０時４５分だった。

　俺は、急いで、立ち上がり、足首のあたりにまとわりついている、トランクスやズボンを引き上げた。
　そして、彼女を目覚めさせる注射を左腕に打った。
　彼女にパンティを穿かせようとする。

　その時、彼女の股間に視線が行き…。
　何と、彼女の膣口から、ドロリと、白い精液が漏れ出ようとしているではないか。

　彼女は妊娠している。
　だから、重ねて妊娠することはない。
　しかし、彼女は膣内の異物に気づく。

　俺は、直径５ミリ程度のマドラー（ガラス製の混ぜ棒）に、脱脂綿を巻きつけ、そして、その上に、ガーゼを巻いた。
　それを、彼女の膣内に差込み、中からきれいに精液を掻き出す作業を試みた。
　一回目の清掃が終了。

　精液で汚れた脱脂綿とガーゼを剥ぎ取り、そして、また、ガラス棒に、新しい脱脂綿とガーゼを巻きつけ、それを、彼女の膣内に差し入れ、掻き混ぜながら、中をきれいにしていく。
　二回目の作業が終了。

　三度、繰り返した。
　三度目は、もうさすがに、ガーゼにくっついている精液の量は減っていた。

　年甲斐もなく、多量の精液を若い女の子の膣内に生出しするなど、この上もなく恥ずかしい…。

　が、とにもかくにも、これでもって、彼女も、目覚めて、最初のおしっこの時、膣内にちょっとした違和感を覚える、などということはないだろう…。

　俺は、彼女の白衣をきちんと直した。
　彼女の頬を、軽く、指でつつく。
　と、彼女が目を覚ました。

（ああ、やっぱり、こうして目を開けると、彼女はまるで西洋人形のように可愛い…）

「黒木君、気分はどうですか？」
「……」
　彼女はキョトンとしている。
　今まで自分の身に何が起こっていたか、まったく見当がつかないみたいだった…。

「トイレから帰るとき、君が洗面台によりかかりながら、気を失っているのを見かけてね。どうも、つわりがひどかったらしい。それで、僕の部屋に来て、休んでもらっていたんだよ。どう、気分の方は。持ち直したかい？」
　彼女は、ゆっくりと、簡易ベッドから上体を起こした。

　俺は、彼女の父親のように振る舞おうと思った。
　彼女の額に、手を当てる。
　そして、もう片方の手では、彼女のか細い手首をにぎり…。

「うーん、熱もないし…。心拍も落ち着いているし…」
　俺は、彼女に微笑みかけている…。
　俺は、まるで、ジギルとハイド氏みたいだ…。

　彼女は、立ち上がった。
　俺は、彼女の足許に、彼女のシューズを並べてやった。
　
　彼女は、シューズを穿くと、俺の方を見ずに、ドアの方に向かっていく。

　俺は、あわてて、ドアまで走り寄って行く。
　そして、後ろ手で、彼女にはわからないように、ドアのロックをはずした。

「あのさ、高村婦長には、『黒木さんに、大学病院に送るデータの処理をお願いしています』って、言ってあるからね」
「……」
　彼女は、ちらっとこちらは見たが、何も言わず、一礼もせず、廊下の方に出て行った…。

（彼女は、俺が変なことをしたことに、気がついていたのだろうか？）

　そんなことはありえない。
　俺は、麻酔科の北前医師の腕前を信用することにした…。


　黒木舞を俺の部屋に連れ込んでから３日が経った。
　特に変わったことはなかった。

　高村婦長が、黒木舞からのご注進でも受けて、クレーム（苦情）を言って来るわけでもなかった…。

　それに、看護師詰め所などで、俺は黒木舞と顔を合わせたが、特に、俺を避けるとか、蔑むとか、そのようなそぶりを示すということはなかった。
　俺は、内心、胸を撫で下ろしていた…。


　数日後のある日、俺は、病院の廊下を一人で歩いていた。
「先生！」
　俺は、誰かに呼び止められたようだ。
　振り向くと、白衣の看護師が立っていた、５メートルくらい先に。

「わたし、見ちゃいましたよ」
「……」

（誰だったろう？）
　看護師が、俺の方に近づいてくる。
　俺は、それとなく、名札を見た。

　佐田川由香だった。
　確か、新採１年目のはずだった。
　まだ、２１歳くらいだろう。
　俺は、落ち着き払おうとしていた。
　何と言っても、相手は、年が１５歳も下の女の子なのだから。

「うーん、佐田川さん、君は、一体、何を見た、というんだい？」

「わたし、先生が、看護師を抱いて、お部屋に入られるところを…」

　どうも、不幸中の幸だったらしい。
　運び込んだ看護師の顔までは見られていなかったらしい…。

「ああ、あれね。ちょっと、気分が悪くなったらしくてね。でも、すぐ良くなられたから、君は、心配しなくていいよ」
「でも…」

「何か？」
　俺は、あくまで、とぼけるつもりだった。

「わたし、あの時、先生の部屋の前まで、行ったんです。すると、何か、先生の部屋から、うめくような声が聞こえて来たんですけど…」
　看護師の佐田川が、上目遣いに俺を見る。

（黒木舞は、あのとき、声を上げるようなことはなかったはずだ。アヌスを愛撫しているとき、身をよじるようなことはしていたが…）

　俺は、１５歳も年下の女の子に、なめられてたまるかと、思った。
「そうだった？。でも、大丈夫。彼女は、１時間ばかりで、とっても、元気になったからね…」
　俺は、そう言うと、踝を返して、入院患者のいる部屋に向かった。
　が、気になる。
　俺は、歩いて来たところを、引き返していた。

　佐田川由香が、背を向けて、歩いている。
　俺は、早足で彼女の背に近づいた。

「ところで、今度、一緒に、食事に行かない？。フレンチ・レストランに案内するよ」
「……」
　突然の声かけだったように思うのだが…。
　佐田川由香は、驚いている風はない。
　かなり度胸の据わった子らしい。

「おいしいところだよ。直近の、君の非番の日はいつなの？。その日、絶対、俺は、有給休暇を取るからさ」
「……」

　佐田川由香は、黙ったまま、どんどん先の廊下を歩いていく。
　もう、これ以上行けば、誰かに出会うにちがいない。

　確か、日曜日の夜勤なら、人は少ないはずだ。

　俺は、佐田川由香の耳元に囁いていた。
「じゃ、今度の日曜日、午後７時、フレンチ・レストラン『ユーゴ』で待っているからね」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）