１３（＝最終話）　僕の書いた物に品位はあるのか

　なかなかエレベーターが降りて来ない。
　ふと、隣りの、上りのエレベーターを見る。それは、１階で止まっていた。

　目を戻すと、下りのエレベーターが、降り始めていた、１２階から…。

（まだあるな、この３階に下りて来るまでには…）

　僕は、急に、この美人の奥さんの官能的な顔が見たくなった。書く人間の本能なのか…。

「僕だって、書く時には、すごく苦労するんです」
　僕は、僕の左横に立っている美和子さんに言うともなく言った。
「……」
　返事はなかった。
　が、僕は、ひとりごとのようにしゃべる。

「書けなくなることだって、あるんです。そんな時は、どうしたらいいのか、本当にわからなくなってしまうんです。そして、そんな時は、すごく孤独感を味うんです。いくら、物を書く人間は、孤独に耐える力がなくてはならない、と思っても…」

　見ると、上りのエレベーターがやって来て、ドアが開いた。
　僕は、左腕を取られていた。
　からだの均衡をなくす。その均衡を取り戻したとき、すでに僕は、エレベーターの中にいたのだった…。

「何階ですの？」
「１５階です」
　僕は、彼女の問いに答えてから、急に、胸騒ぎが、しはじめた。

　僕は、目を閉じた。
「僕のような男でも、いいのでしょうか？」
　僕は、僕自身に問い掛けるかのように、言葉を発していた。

「今は、小説のこと、お忘れになって。そして、わたしの方を真正面から見てください」
　僕は、彼女の声を聞いた。目を開けた。
　僕のすぐそばに、彼女が立っていた。
　エレベーターの中で、いるのは、僕たちだけだった。
　からだをねじって、彼女の顔を覗く。
　彼女の目は真剣だった。茶化すようなまなざしではなかった。
　僕は、自分の目を信じることにした。僕は、場所を移動した。彼女の前に立った。彼女の肩を抱き寄せた。そして、少し首を曲げながら、僕の唇を、彼女のくちびるに重ねて行った。甘かった。彼女は拒絶反応は、全く示さなかった。で、くちびるをさらに差し込む。そして、歯茎を開け、舌を吸おうと思ったとき、「チンッ」という音がして、僕は、思わず後ずさった。振り返ると、すでにドアが開いていて、エレベーターの上部を見ると、１５階のところにランプが止まっていた。僕は、ドアを閉じないよう、手で押し、彼女に、外に出るよう、うながした。彼女は、静かに、外へと出てくれた。僕は、ドアに当てがっていた手を下ろし、彼女に続いて、エレベーターから降りていった。
　

　彼女は、部屋に入ると、真っ先に、「わたし、シャワーを浴びてくるわ」と言った。

　僕は、ソファにすわり、待っていた。
　僕には、時間があるのだ。
　それに、彼女は、しゃべり言葉より、書き言葉を信じる、と言ってくれたのだ。

　僕は、しゃべるのは苦手だ。書くことは、好きだ。
　僕には、そんな取り得しかない…。

　彼女がバスルームから出ると、僕も、シャワーを使うことにした。
　ていねいに、からだを洗った。ボディ・シャンプーも使って。彼女にきらわれたくないから。

　部屋に戻ると、彼女の姿がない。
　あわてる。
　が、ベッドの上を見ると、こんもりと盛り上がっている。

　僕は、ベッドに行き、シーツを剥いだ。
　彼女は、手を股間に置いていたが、仰向きになっていて、すでに、バスローブさえ取っていた。
　裸身が白い。乳房は大きくはなかったが、乳首はピンク色というより、サーモンピンクに近かった。

　僕は、バスローブを脱ぎ、ボクサーパンツをぬいで、ベッドの上に上がった。身をかがめ、彼女のくちびるにキッスをする。

　すると、彼女は、僕の首に手を巻くようにして、僕の唇を吸ってくれた。
　なおも僕が、ディープキッスを挑むと、舌先を僕の口の中に入れ、そして、その僕の舌先をあさると、くちびるを深く突っ込んできて、僕の舌を吸いはじめた。
　僕は、キッスだけで気持ちよくなって、すでにペニスは硬く、大きくなっているのに気がついた。このままでは、入れる前に暴発してしまいそうだ。僕は、彼女のキッスを逃れるように顔をはずした。
　
　僕は、おっぱいに顔を移し、彼女の乳首を吸っていた。
　乳首はすでに硬くなっている。

　そして、わき腹をなでる。
　すべすべとしている。
　腋の下をさわると、彼女はちょっとくすぐったそうに、上半身をくねらせた。
　
　おなかをさすり、そして、太腿へと手を移動させる。
　きめの細かい膚だった。

　僕は、乳首を吸いながら、固く閉じられた股座に手をやり、内腿をなでさすっている。

「ああ、ふぅぅ…」
　彼女は、吐息を漏らす。その吐息にはやるせなさが感じられ、僕のペニスをビクッンとさせた。
　僕は、あせる。
　早くしないと、僕の方が先にイッテしまうことになる…。

　僕は、さらに、彼女の下半身を攻めることにした。
　太腿の辺りに、唇を這わせる。

　と、さっきの食事の席で、岡本先生が言っておられた、
『ご主人はね、とても仕事で忙しくって、彼女は、なかなか、相手をしてもらえないらしいんだ』
　という言葉が思い起こされた。

　ご主人は、きっと大きなお金と品物を動かしておられるのだろう。そして、それには、納入期限とか納品期限があるにちがいない。それに、取引先の手違いがあって、手形や小切手が落ちないことだってあるだろう。だから、ご主人にとっては、なかなか、ゆとりの時間がないのかもしれない。
　とすれば、今、僕がしてあげられることは、時間をかけて、じっくりと愛撫してあげることしかない…。

　僕は、彼女の内股のあたりに、手やくちびるで、執拗な愛撫を加えていた。
　と、上の方から、彼女の大きな吐息が、そして、あえぎ声が漏れる。
　彼女は、お尻をよじって、何かに耐えようとしていた。

　僕のくちびるは、内腿から膝頭へと這って行く。
　膝頭の後ろのところは、手で揉んでいた。

　膝頭から下肢へ移る。
　ふくろはぎのところを、手でゆっくりとさする。
　ときどき、ふくろはぎの筋肉を揺らすように揉む。

　僕は、足首を揉んでから、指で、彼女の足の指を開く。そして、指と指の間に、自分の中指を通す。彼女が、膝を立てる。僕は、間に手を入れ、その縦膝を両方、左右に大きく開かせる。パカッと股が割れ、その奥から、ムッとした匂いが立ち込める。
　僕は、その匂いに誘われるように、股間に顔を突っ込んだ。

　と、彼女の上半身がしなり、お尻が持ち上がる。
「アッ、アアア、アーッ」
　彼女があえぐ。

　股間は、濡れそぼっていた。僕のくちびるが濡れて来るのだ。

「ああ、あなたの、あなたのものが欲しいわ」
　彼女の手が、伸びて来て、僕の肩の肉を摘む。

　僕は上半身を起こす。手を股座に置いたとき、彼女の下肢は、伸び切るものの、股は自然に大きく開かれていった。

　僕は、股間を見る、自分の。
　すでに、ペニスは、ビックンビックンと脈打っていた。
　入れたくなった。入れないままに射精するのも、もったいない。

　が、僕は、一瞬、われに返り、奥さんにささやく。
「奥さん、コンドームをしなくてはいけませんよね…」
「ああ、そうだわね。大丈夫と思うけど、付けてくださると、うれしいわ」

　僕は、コンドームを装填した。

　ふたたび、彼女の股間に手をやる。そして、指を割れ目の中に差し入れてみる。濡れていた。
　僕は、入れようとした。
　が、僕は、亀頭部のところをすでに、奥さんに、指でつつまれていたのだった…。

　僕は、奥さんに導かれるまま、奥さんの中に入っていく。

　中は、熱くて、とても気持ちがよかった。
　僕は、上半身を倒し、彼女の胸のうえに、僕の胸をぴったりとくっつける。

「ああ、いいわ」
　彼女は、腰を持ち上げ、そして、深く深く、僕を受け入れようとする。

　彼女は、仰向きなのに、下から、左右に腰を振って来る。
　僕は、面食らっていた。
　こんなに、女性の方が積極的に動くなんて。

「ああ、いいわ、いいわ、もっと、もっと、もっとよ」
　僕は、彼女の膣の締め付けに、頭の中がボーッとしてきた。それに、腰のあたりがむずがゆい。
（まずい、射精が近い…）

　僕は、目をつむり、歯を食いしばった。

「ああ、気持ちいいことよ、いいわ、いいわ」
　僕は、彼女の声に気を移され、からだがブルブルと震えるのを感じた。

「ああ、ダメです、そんなに動かないでください、ダメです、ダメです」
　でも、彼女は、身をくねらせ、僕の腰をしっかりと抱きとめていた。
「あああ、あっ」
　僕は、こらえ性がなかった。僕の意思に反して、ジュニアは、ドックン、ドックンとその身を波打たせながら、彼女の膣のなかに、精液を打ち放っていた…。

　僕は、ベッドの上で仰向けになっていた。
「すみません」
「いいの」
「すみません、あまりに気持ちよくて…」
「でも、少し休んだら…」
「そうですね」
　僕は、そう言いながらも、復活まで、どれだけ時間がかかるのか、不安だった。が、今は居直るしかない。お金はなくても、時間はあるわけだから。それに、彼女のような美人の女の人のアクメの顔を見られるなんて、男としては、最高の喜びではないか。
　が、コンドームが抜け落ちそうになっているのに気がつく。
　僕は、あわてて、上半身を起こし、コンドームを抜いた。
　びっしりと、精液が溜まっている。立川未知さんのことを忘れるため、近頃は、雑文を書きまくっていて、マスは掻いていなかったのだ。
　僕は、恥ずかしくて、すぐに、それをティッシュで、くるんだ。

　と、横にいた彼女も半身を起こしてきた。
　そして、僕の股間に、顔をくっつけていくではないか。
「いけません、そんなきたないことを、あなたがされたら…」
「でも、とっても、いい匂いだもの…」

「しかし…」
「わたし、この匂い、好きよ」
　僕は、小首を傾げざるを得ない。
（女の人の中にも、匂いフェチの人って、いるんだろうか？）

「どうして？」
　僕は、しつこく聞く。
「だって、これって、男の人の匂い、って感じがするもの…」
「……」
　僕は、あきらめた。
　彼女がそうしたいのなら、そうさせてあげようと思った。僕には、実際、捨てるものなんて、何にもないのだから…。

　僕は、彼女に言った。
「じゃ、ちょっと、シャワーで流してきます。いくらなんでも、まだ、これには、精液がくっついていますから」
「いいわ、わたしが、バスルームに行って、タオルを濡らしてきます。あなたは、ここで、待っていて…」
　僕は、彼女に任せることにした。

「ああ…」
　僕は、天を仰ぎ、呻いていた、あまりに気持ちよくて。
　彼女が、お湯で濡らしたタオルで、僕のペニスを拭いてくれたのだ。
　やさしい手つきだった。

「これで、いいかしら？」
「しかし、そのぉ…」

　が、ことわるひまもなく、からだを折り曲げ、股間に顔をつけられた彼女に、パックリとばかり、ふにゃふにゃになっているペニスを口に咥えられていた。

「ああ」
　僕は、また、気持ちよくて、声を上げる。

　と、彼女の舌先が、僕のペニスの先端部にある裂け目に当たる。

「あああ…」
　僕は、あまりに気持ちよくて、涙を流す。

　と、僕のペニスの、カリの張ったところに、彼女のくちびるが当たる。
「アッ！」
　僕は、あまりの心地よい刺激に、思わず腰を浮かしていた。そして、ペニスに血潮が流入したらしく、フニャフニャだったモノが、急に勢いづいて来たような気がした。

　僕は、彼女の肩に置いた手で、彼女に合図した。
　すると、彼女は股間から顔を上げた。
　くちびるが濡れている。
　いや、それよりも、彼女の口元が、妖しくゆがんでいるのに、僕はドキッとした。それは、まるで、どこかで見た、怖くて、妖艶な雪女の顔のようだった。が、その顔が、また瞬間のうちに変わり、幼女のような、おどけなさを宿した。

「どうなさったの？」
「いえ、その、もう、僕のモノ、用が足りるのかな、と」
「うふっ」
　彼女が、口を手でふさぎながら、笑う。
　それは、まるで、『そんなこと言わなくても、もう、さっきから、ギンギンになっていらっしゃることよ』とでも言いたげな風であった。

　僕は、あどけなくて、それでいて、自然な女のお色気を振りまいている彼女を、今度こそは、オルガスムスに導かなくては、と思った。

　僕は、彼女を抱き寄せ、キッスをした。
　彼女の手が、僕の股間をまさぐっている。
　僕のモノは、十分に硬くなっていた。
　僕は、彼女のくちびるを吸いつつ、彼女をベッドの上に、ゆっくりと押し倒していった。

　僕は、くちびるへのキッスを止め、彼女の乳首を吸っていた。そして、彼女の股間を右手で、優しく、撫でさすっていた。
　と、親指が、コリッとしたものに触れる。
　僕は、それを傷つけないように、優しく、さすった。
「あああ」
　彼女があえぐ。
　中指を折り、先っぽだけを窪みの中に入れ込む。十分に、茂みの奥は潤っていた。

「ねぇ、早く」
「ええ」
　でも、僕は、すぐに入れると、爆発してしまいそうな気がした。
　それで、別に、焦らすという意味合いは毛頭なく。ただ、挿入するのを遅らせようと。しきりに、蜜壷の中の淫液で中指を濡らすと、クリトリスをなでさすり、乾くと、また、蜜壷に中指を戻して、その中で泳がせ、十分に濡れそぼると、また、中指を引き出し、濡れた指先でクリトリスを愛撫した。

「ああ、あなた、来て、来て、はやく、お願い…」
　でも、さっき、こんな彼女の誘いに気を移され、あえなく、早くに射精してしまったという反省がある。
　僕は、彼女には悪かったが、僕の早漏性を回避するために、顔を股間にくっつけた。そして、濡れたクリトリスにキッスをした。むろん、中指を中に突っ込んだまま…。
　僕は、彼女の膣の中から中指をゆっくり抜き、そして、また、ゆっくりと挿し入れる。一方で、僕は、クリトリスの包皮を舌先で、剥いたり、被せたりすることを繰り返していた。

「ああ、あなた、あなた、欲しいわ、欲しいわ」
　彼女は、身をよじらせ、腰を揺らす。そうすると、僕は、しっかりと彼女の腰を捕まえていなくてはならなかった。
　と、彼女が、僕の肩をつかんだ。早く、僕の上半身を、上へ引き上げ、挿入をうながそうとしているかのようだった。

　僕も、もう、ペニスの先からは、先走りのエッチ汁が出ているのを感じている。
　もし、このまま入れたら、ものの３分もしたら、射精してしまうだろう。

　時間を取らなくては…。

　僕は、股間から顔を上げた。
「入れますから、コンドーム、付けてもらえますか」
　僕は、わざとに落ち着いて、言葉をしゃべった。

「あらっ、そうなの？」
　彼女ときたら、まるで、避妊のことは、忘れている風だった。

　僕は、コンドームを取り出し、封を切って、起き上がってきた彼女に渡した。
　彼女が、装填してくれる。
　これで、多少、時間稼ぎができた。

　装填してもらい、僕は、「ありがとう」と言って、彼女の白い肩を撫でた。そして、濡れた彼女のくちびるにキッスをした。そして、彼女をまた、ベッドに押し倒して行った。
　彼女の股を大きく、開かせる。

　股間を指でまさぐる。
　中は、十分、潤っていた。
　僕のペニスは、ゴムの中で窮屈感を覚えるほど、内から力を漲らせていた。

　僕は、彼女のまたぐらの中に身を差し入れ、天を突くほどに猛々しく勃起したペニスを上から押さえつけるようにして、彼女の草叢の奥に突っ込んだ。

「アッ、ア――ッ！」
　彼女が、腰を突き上げる。で、僕のペニスは、スッポリと根元まで入り込んだ。

　僕は、彼女の上半身に、わが身を重ね、しっかりと、彼女との密着感を味わいたかった。でも、そうすると、動きにくいと思われた。どうせ、僕は、ピストン運動しても、ものの３分と持たないかもしれない。そんなことになったら、また、彼女をイカセられないまま、僕だけが射精してしまうことになるだろう。
　短い時間でも、しっかりと動き、しっかりとクリトリスを愛撫してあげなくては、彼女に満足感を与えてあげることはできない。

　僕は、上半身を彼女の上にかぶせつつも、左手で、上体を支えて、彼女と僕との間にすきまをつくり、抜き差しをはじめる。

「ああ、いいわ、いいわ、もっと突いて」
　僕は、その言葉を無視した。
　彼女の言いなりになって、激しく動けば、それだけ膣壁で、ペニスがこすれ、気持ち良さのために、僕は、すぐに暴発してはまうだろう。
　この際、彼女にクライマックスを与えるには、彼女の言葉に逆らうしかない。
　僕は、わざとに、ゆっくりと、抜き差しをした。そして、抜き差ししながら、空いていいる右手で、彼女の恥骨を愛撫し、クリトリスには、特に親指の腹で、撫で回すように刺激を加えて行った。

「あっ、もう、だめ、死ぬわ、死ぬわっ」
　僕も、彼女のあえぎに気持ちを引きつけられ、だめになりそうになる。
　つっかえ棒となっていた左手をはずし、彼女の上半身にしがみつく。
「僕、もう、ダメです、ダメです、イキそう、イキそぉっ」

　彼女が、腰を突き上げ、僕の背中を激しく抱き締めてくる。頭の中が痺れる。
「ダメだ、イクッ、イッてしまうぅぅ！」
「わたしも、イクわ、イクわ、イク、イク、イク―――ッ！」

　僕は、彼女の指先が背中に食い込むのを一瞬、感知したが、それよりも、ドクッ、ドクッとばかり、激しくペニスが躍動し、彼女のからだの中に精液を打ち込んでいくのを感じていた…。

　僕は、彼女のアクメに達した顔を見られなくて残念だったが、彼女のぐったりとしたからだから、反って、彼女の官能の高まりを感じられて、満足だった。
　が、徐々に、ペニスが萎んでいく。コンドームがはずれてしまいそうだった。それに、あまり長く居たらいけないと思い、彼女の上から、降りた。
　コンドームをはずし、それから、彼女を横抱えにした。
　彼女は、僕の胸に寄り添ってきてくれた。
　そうだ、僕には、時間があるのだ。
　彼女の飽きが来るまで、じっと抱いていてあげようと思った。

　彼女は、スヤスヤと眠っていた。
　目覚めたら、彼女は、経済的勇者の許に帰っていくのだろう。

　それはそれでいいのだ。
　人は、毎日毎日、８時間は働けるのだ。
　しかし、人は、毎日毎日、８時間、セックスをしているわけにはいかないのだ。

　僕には、お金がない。
　それは、現代社会においては、決定的な欠陥だ。

　この時代を恨め。
　おのれの能力のないことを恨め。

　だが、恨んでも、どうしようもないことだってある。
　僕には、書くことしかない。
　たとえ、それが、エロ小説であろうとも…。
　それで、他人の命を奪う、ということでもあるまい。
　僕は、僕自身が生きるために、小説を書くんだ、人に後ろ指を指されようとも…。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（おわり）