５．

　恭子が俊之の気持ちに気がつき、俊之の欲望に火が点いてから数日。
　俊之、晶子、恭子、この３人の屈折した関係に少し変化が現われたのは、次の週の日曜日のことだった。

　この日、珍しく恭子の友達が彼女を訪ねて来ていた。
「こんにちわ。」
「いらっしゃい。恭子ちゃんの友達？・・待って、今、呼ぶから・・」
　たまたま俊之が、玄関に応対に出た。
（「うわぁ〜、凄い身体。堪んないな・・」）俊之は思わず、その子の姿に見蕩れてしまった。
　胸元が大きく開いたピンクのタンクトップに、超ミニのプリーツスカートを穿いたその女の子は、顔は恭子ほど可愛くはないが、大きな胸と細く括れたウェスト、それに長くすらっとした脚の組み合わせが、とても刺激的だ。
　すぐに恭子が、２階の自分の部屋から降りて来る。
「あら、香織。・・珍しいわね、どうしたの？」
「うん・・ちょっと・・」
「あがって。ちょうど暇だったの。」
「ありがとう・・お邪魔します。」
　最初は暗かった香織の表情が、徐々に明るくなり、すぐに笑顔になった。
　自分の部屋に向かう恭子に続いて、香織も階段を上がってゆく。
　俊之は、階段を上がる４本の細く引き締まった脚に、完全に目を奪われていた。
　それは、揺れるミニスカートの中のショーツをぎりぎりで隠しながら、白く美しい太股のラインを根本まで剥き出しにしている。
　恭子は、俊之の刺すような視線に最初から気が付いていたが、わざと香織に頻繁に話しかけ、彼女の注意を自分に向けさせて、俊之が自分たちの脚を心ゆくまで眺めるのを助けた。
（「見たいの？、お兄さん・・そんなに見たいなら、好きなだけ見せてあげる・・」）
　ところが俊之の方は、彼女たちの下半身に完全に意識を奪われ、そんな恭子の心遣いには全く気がつかない。
　恭子は、そんな俊之の姿を、じれったい気持ちで視線の端に捉えていた。

　それから頭の中で、恭子の素足に指を這わせ、そのままスカートの中に両手を滑り込ませる妄想をしながら、部屋に戻った俊之は、
「なあ・・寝室に行かないか・・」と、勃起しかけた股間に痛みを感じながら、晶子を誘った。
「えっ？」
　いつものように買い物に出かけるために、部屋着から外出着に着替え終わったばかりの晶子が、びっくりした様子で俊之の顔を見つめ返す。
　ここ数年、こんな事は一度も無かったからだ。
「悪い・・さっき、スカートの中が見えちゃったんだ。」
　俊之は、欲望を開放した股間を晶子に見せつけながら、そう言った。
　頭の中に渦巻く、恭子の生脚を一瞬でも忘れたい、その一心だった。
「あなた・・」晶子は、激しく勃起した俊之の股間をじっと見つめながら、これから訪れるであろう久しぶりの悦楽を想像して、頬を紅色に染めた。
　俊之が夢遊病者のような足どりで、ソファに座る晶子の前に立つと、彼女は四つん這いの恰好で俊之の腰に縋りついた。
　それから、うっとりとした表情で俊之の股間に顔を近づけ、垂直にそそり勃っている彼の長いペニスに、自分の冷たい首を絡みつける。
「はあぁ〜〜・・」堪らずに長い吐息を漏らした俊之は、瞳を閉じ、天井を見上げながら、顎の下に彼のペニスを挟み込みながら、恍惚とした表情を浮かべている恭子の顔を、頭の中で思い描いていた。
　我を忘れた晶子が俊之のペニスの裏側に口づけを始めると、我慢が出来なくなった俊之は、晶子をソファの上に押し倒し、彼女のブラウスのボタンを乱暴に外しはじめる。
　そして、剥き出しになった妻の腹に頬を埋め、両手で彼女の素肌をゆっくりと撫で回した。
　下になった晶子は、そんな夫の行動を愛おしく思い、彼の髪を優しく撫であげる。

　やがて身を起こした俊之は、ゆっくりと晶子のスカートを捲りあげた。
　晶子はこの日、薄手のブルーのショーツを身に付けていた。
　透き通るように白い晶子の肌が、ショーツの下に透けて見えている。
　レースの刺繍が施されたクロッチ部分の上からは、黒々とした晶子の陰毛の影が覗いていた。
　俊之は、ツルツルとした感触のショーツの表面に触れる。
　そして、ほっそりとした晶子の腰骨から、真っ黒な股間に向かって、静かにその指を滑らせた。
「はんっ・・あぁ〜・・」
　晶子はいつになく優しい俊之の指の動きに、思わず悦びの声をあげる。
　そして、ショーツの上から舐め清めるように舌を這わせる、俊之の情熱的な愛撫に、びっくりしたように眼を見開いた。
「ど、どうしたの？・・あっ、だめっ・・あんっ・・」
　俊之はさらに、晶子のへそから陰部に向かって伸びる、一本の筋に沿って舌を這わせる。
　そのまま、晶子のショーツのウェスト部分を引っ張り上げた俊之は、その中に顔を突っ込み、彼女の陰毛の中に自分の舌先を潜り込ませた。
「はっ、ん・・いやぁんっ・・はぁうぅ・・」
　忽ち、感度のよい晶子の身体が大きく仰け反り、俊之の顔の動きに合わせて、小刻みに震え始める。

　俊之はこの時、晶子のすべすべの肌に触れながら、頭の中で恭子の幼い女体を思い浮かべていた。
（「やはり似ているな・・肌ざわりも、色合いもそっくりだ。・・あぁ、恭子ちゃん・・」）


６．

　その頃、２階では・・
　恭子と香織の二人が並んでベッドの端に座り、お気に入りのアイドルの、コンサートＤＶＤを観ていた。
「ねえ、これ凄くない。わぁ〜、綺麗・・きゃ〜」
　はしゃいだ恭子が、画面を見つめながら、香織の腕にしがみつき、歓声をあげる。
　だが、相手の香織の方は、いつの間にか画面から視線を外して、隣にいる恭子の横顔をじっと見つめていた。
　その視線が徐々に恭子の細い首から、自分の腕に押しつけられている柔らかいバストに降りてゆく。
「あれ、香織？・・どうしたの？」
　モニタではなく、自分の方を観ている香織の視線に気付いた恭子は、不思議そうに香織の瞳を覗き込んだ。
　真っ正面から、瞳の奥をじっと覗き込まれた香織は、その澄んだ視線に照らされたように、顔を真っ赤に上気させる。
　そして、「・・恭子・・私・・恭子のこと・・」と呟くと、いきなり恭子の肩に強く抱きついた。
「か、香織？！・・」
　びっくりして、目を大きくしながら、どうしていいか判らずに体を固くする恭子。
「恭子のことが好きなの！、どうしようもないぐらい・・」
　香織はそのまま、夢中で恭子の身体を自分の方に向けさせると、相手の唇を奪おうとする。
　だが、次の瞬間、恭子の怯えたような表情に気がつくと、咄嗟に彼女の身体から手を放し、身体を捩って恭子に背を向けた。
「ごめんなさい。忘れて・・嫌いにならないで・・お願い・・」
　香織は、顔を後ろに背けながら、泣きそうな声でそう言った。
　突然の出来事に、暫く声も出せなかった恭子だったが、やがて
「気にしないで・・友達でしょう。」と、精一杯、明るく振る舞いながらそう呟く。
　しかし、その笑顔は不自然に引き攣っていた。
「ちょっと、飲む物をとって来るわね・・待っててね。」
　恭子は、香織から逃げ出すようにして、自分の部屋を出る。
　恭子は、困ったような表情のまま、ゆっくりとした足どりで階段を降りた。
（「どうしよう・・」）
　その頭の中は、動揺し、混乱したままだった。

　一方、恭子の足音に気が付いた階下の二人は、我に返り、驚いて飛び起きる。
　予定では、俊之と晶子の二人は、買い物に出かけて、既に家には居ないはずだった。
「恭子よ！、いやだっ・・どうしよう」「わっ！・・急いで・・」
　近づいて来る足音に焦った二人は、慌てふためきながら、服の乱れを急いで直した。
　もう二人が出かけてしまっていないと思っている恭子は、そのまま居間のドアを開ける。
「あれ、まだ居たの？」二人を見つけた恭子は、不思議そうな表情で、俊之と晶子の顔を眺めた。
「えっ・・あ・・うん・・」二人は服を気にしながら、何食わぬ顔で返事をしたが、恭子にはその場の不自然さが、すぐに判ってしまった。
　目を潤ませ、頬をバラ色に染めた晶子。
　首筋に口紅の痕を付け、額に汗を浮かべた俊之。
　部屋一杯に漂う、独特の匂い。
　二人のシャツとブラウスの裾は、くしゃくしゃになって、ズボンとスカートのウェスト部分から、うえに、はみ出している。
　その部屋には、あの痕跡がはっきりと残っていた。
「・・・」
　恭子の顔に一瞬、驚きの表情が浮かび、すぐにそれは悲しみを含んだ苦渋の表情に変わった。
　唇を震わせ、俯いたまま逃げるように、自分の部屋に戻る恭子。
　晶子と俊之の二人は、顔を見合わせ、それから、困ったような顔で俯き、沈黙してしまう。

　部屋に駆け戻った恭子は、ドアを閉めると、いきなり、まだ項垂れている香織の背中に抱きついた。
「きゃあ！・・なに？、どうしたの？・・いきなり」
「・・・」
　何も言わず、そのまま、後ろから香織の腰に腕を回し、そのうなじに自分の唇を押し当てる恭子。
「き、恭子？・・なにかあったの？、あっ！、んっ・・あぁ・・」
　恭子は香織の質問には答えず、そのまま彼女をベッドの上に押し倒すと、タンクトップの胸の隙間を下に引き広げながら、相手の豊かな谷間にその顔を埋めた。
　最初は驚いていた香織だったが、そのうちに、その顔に恍惚とした幸せの表情が浮かぶ。
「あぁ、恭子・・大好き！・・」
　嬉しさのあまり感極まった香織が、逆に恭子に抱きつき、彼女を自分の下に組み敷くと、その首筋に唇を押し当てる。
　下になった恭子の方は、嫌な事を忘れるかのように、静かにその瞳を閉じ、香織の手を自分のスカートの中に誘った。
　やがて、美少女二人の柔らかい唇が重なり合い、その腰が、股間に滑り込んだ相手の手の動きに合わせて、妖しくくねり始める。
　初めは、女同士の愛の交歓に躊躇っていた恭子だったが、やがて、その頭の中は、股間に滑り込んだ香織の指と、胸を這い回る彼女の舌によって真っ白になってゆく。
（「あぁ、香織・・気持ちいい・・もうどうでもいい・・お願い、止めないで・・」）
　そのうちに、相手の身体の事は全て熟知している唇と舌が、剥き出しの処女の股間に吸い付く。
「はっあぁッ・・あっ・・んッ、んーーッ！・・」
　そのまま恭子は、今までに味わったことのない快感に、その全身を激しく痙攣させていた・・