| ８ 進むべきか否かまだ迷って 僕は、サラリーマンだ。 サラリーマンで気をつけなくてはいけないこと、 それは、一つは上司の機嫌を損ねないこと。 二つ目は、社内不倫をしないこと。 だが、今の時代、 社内不倫について、以前ほどには、罪悪視していないように思われたりもする。 今時は、合コンなど、男と女が出会う場はあるし、また、出会い系サイトで知り合った者同志でラブホに行くなどということもあり、別段、社内恋愛をしなくても、男女とも、セックスをする機会が増えて来た。 そして、セックスそのものに対する見方が、ゆるやかになって来た。 すなわち、婚外セックスを罪悪と見なさなくなった、という社会的背景があるのかもしれない。 今まで、会社においても、島村さんは、僕に対して距離を置いていたように思う。 しかし、今、肉体関係を結んでしまってからは、微妙ながら、変わってきた。 これまで、会計関係の決裁文書では、持ち回りということもあって、彼女が自分の席を立ち、僕のそばにまでやって来るということはあった。 けれども、それはごく、まれのことで、せいぜい、そんなことは３日に１回もあればいい、という程度だった。 しかし、体の関係ができたから後は、単なる社内供覧の書類ですら、彼女は、それを手に持って、わざわざ、僕のそばにまで、やって来て、 「はい、これ、見て、みんなに回してね」 と、にっこり笑いながら言うのだった。 僕は、その時、思わず赤面しそうになるのだが、周りの人間に気づかれないよう、必死で、平気をよそおうのだった。 そして、午前１０時とか、午後３時とか、会社の休憩時間になると、彼女は自分のものにだけでなく、僕のマイカップにも、コーヒーを入れてくれるのだ。 むろん、カモフラージュなのか、課長や課長代理にも、コーヒーを注いではいたが…。 僕は、ともかく、会社の内では、彼女との仲を気づかれないよう、慎重な振る舞いを心掛けていた。 妙に、馴れ馴れしくしないことだ。 以前と同じように、と自分に言い聞かせていた。 つまり、島村さんに対しては、丁寧な言葉使いを続け、あまり、接近しないよう、心がけていたのだ。 僕は、やはり、まだ、本社に戻りたいという気持ちを、根強く持っているように思える。もし、島村さんとの社内恋愛がバレると、勤務評価は決して良くはならないだろう。たとえ、その恋愛が結婚にまで結びついたとしても。 つまり、けっこう、うちの会社は、保守的なのだ。 社員同志の恋愛に冷たい、と言えるだろう。 何故なのだろうか？。 その理由は、よくわからない。 たぶん、社内恋愛といっても、それは不倫もあるし、独身男女の恋愛でも結婚にまで発展しないケースもあり、会社としては、そういう悪い結果になるなら、ともかく、すべての社内恋愛に対して、否定してかかっているのかもしれない。 つまり、たとえ、社内恋愛から結婚にまで結びついたとしても、同じ会社での共働きは認められず、女性の方は、寿（ことぶき）退社を勧められるのがオチだった…。 僕は、彼女のマンションに行くのを差し控えていた。 彼女に嫌われたくないからだ。 マンションの部屋に行けば、僕は必ず、彼女のからだを求めるだろう。 それが、エッチな僕の本心なのだ。 彼女との結婚、それについては、考えないようにしている。 しかし、ともかく、からだだけを求めているなんて、そんなあからさまなことを、彼女に悟られたくないのだ。 僕は、彼女に精神的にも、惚れているのかもしれない。 もう、あれから、１０日も経っている。 僕は、彼女が抱きたくなった。 かといって、僕のマンションに呼ぶわけにも行かない。 僕のマンションは、会社が借りてくれているものだった。だから、彼女を連れ込んでいるところを、支社の他の部・課の社員に、見られるかもしれない。それはいかにもまずい。 けれども、あまり長い空白期間を置くのも、どうかと思いはじめた。 僕は、断られて元々と思い、彼女を中華料理のお店に誘った。 存外なことに、彼女は受けてくれた。 中華料理店は、会社から、随分と離れたところにあった。 店に入ると、コースを頼んだ。 「会いに来てくれなかったのね」 僕は、彼女に、にらまれていた。 僕としては、彼女が待ってくれているなんて思わない。 でも、そんなことを言ってくれて、正直、僕は、うれしかった。 「だって、君が、僕のこと、本当に好きなのかどうか、よくわからなかったし…」 と、僕はあえて探りを入れていた。 「わたしの気持ち、わかっているでしょ」 「ああ」 僕は、うれしかった。 でも、僕は、わざと、すねて見せる。 「しかし、君の体だけが目的じゃないことを、どうやって示していいのか、わからなかったもの…」 「わたしのこと、抱きたいの？」 「ああ」 僕は、正直に答える。 「抱いてもいいわよ」 「そうなの？」 僕は、内心うれしいのだが、強いて、本当にいいのか、確認している。 「どうして？」 と彼女が不審そうに聞く。 「だって、こんな僕でもいいのか、と思って」 「大丈夫だわ。貴男は、ちゃんと、わたしのこと、女として見てくれているもの」 僕は、その彼女の言葉で安心した。 やはり、彼女は、男の人には、自分のことを女として見てもらいたいのだ。 仕事ができる、性格も少々きつい。 だから、ある意味、男性からは、警戒される面があったのかもしれない。 その壁を僕は、どうやら、突き破ったらしい。 僕は、気が弱いところがある。 一方、彼女は気が強い。 そういう、僕にはないものを彼女に見て取り、彼女のことが好きになったのかもしれない…。 彼女が、席を立つ。 僕も、急いで席を立つ。 が、彼女は、バッグから財布を出し、そのバッグを僕に手渡した。 僕は、しかたなく、彼女のバッグを持つ。 何か、女の持ち物を勝手に持たされたみたいで、気分はよくない。 と、彼女がレジで、勘定を済まそうとしている。 僕は、また、自尊心を傷つけられたような気がした。 僕たちは店を出た。 僕は、彼女のカバンを彼女に押し付けていた、まるで、『自分のものぐらい、自分で持てよ』と言わんばかりに。 それから、 「いくらだった？」 と、僕は彼女に聞いた。 「いいわよ」 「よくないよ。今日は、僕が誘ったんだから、僕に払わせてよ」 「大丈夫よ、わたしに任せて」 「じゃ、せめて、割り勘にしてくれないかな」 僕もしつこい。 が、彼女もしつこくて、僕が、大体の見当をつけ、一人分３，０００円と見て、３，０００円を彼女に渡そうとするのだが、彼女はそれを受け取ろうとはしなかった。 僕たちは、バスに乗る。 二人で並んで座っているのだが、お互い、口をきかない。 （なぜだろう？） と僕は自問自答をしている。 たぶん、僕は、男としてのプライドにこだわっているのだろうと思う。 僕は、彼女より、多少、年上だ。 それに僕は本社採用で、彼女は地方採用なので、確実に僕の方の給与が高いはずなのだ。 だから、せめて、僕としては、僕の支払いにしたかったのだ。それなのに、彼女は僕に払わせなかった。これではまるで、ヒモみたいではないか…。 「寄っていかない？」 気がつくと、僕たちはもう一緒にバスを降り、僕は彼女と並んで通りを歩いていた。 僕は、横を向く。 彼女の横顔を見るに、恥ずかしそうな感じがある。 それでようやく、僕は、彼女に誘われているのに気がついた。 「コーヒーだけなら…」 僕がそう言ってから、もう一度、横にいる彼女を見ると、彼女は少し、安堵したような表情を見せていた。 がしかし、僕は、なぜか、まだ自信がなく、照れくさそうに言葉をついだ。 「わるいね。でも、俺だって、しっかりしているんだから、コーヒーだけと言ったら、コーヒーだけで帰るからね」 「……」 彼女は押し黙った。 彼女は少し機嫌を損ねたような感じだった。 僕は、彼女のマンションの部屋に上がり込んだ。 コーヒーをごちそうになる。 彼女はあまりしゃべらなくなった。 何やら、苦くて、あまりおいしいとは言えなかった。たぶん、不機嫌そうな彼女が何を考えているのか、僕にはわからなくて、コーヒーの味すら、まずくしているのかもしれない。 「じゃ、俺、帰るね」 「どうして？」 「だって、俺は、君に約束したもの、さっき。コーヒーを飲んだらすぐに帰る、って」 「いいじゃない」 彼女が口を尖がらせて言う。 「どうして？」 「まだ、時間が早いもの」 彼女にそう言われて、僕は腕時計を見た。確かに、まだ９時前ではあった。 「時間は早くても、このまま、ここに居ると、ろくなことにはならないから…」 「何、ろくなこと、って」 「いや、失言。君のことを、とやかく言ったつもりじゃないよ。俺のこと、俺のこと。このままだと、俺、また、もよおしてしまうから…」 僕は、頭を掻いた。 実際、そのとおりなのだ。 女がそばにいれば、やはり、僕はエッチなことをしたくなってしまう。ひとつ部屋に、男と女がいるのだもの。スケベェな俺には、当然な成り行きだ。 「抱きたい、わたしのこと？」 彼女の目は真剣だった。 僕は、正直に答えるしかなかった。 「ああ、ごめん。僕は君が欲しいよ。どうしてだかは、よくわからないが…」 「あなた、まだ、わたしたちが結婚を前提としていないから、セックスをするのに、気後れしているんでしょう？」 「えっ！」 僕は、びっくりした。 ズバリ、彼女は、僕の気持ちを言い当てているような気がしたからだ。 「ごめん」 と僕は、あやまった。 が、即座に彼女は言った。 「いいのよ。ともかく、あなたは、ちゃんと、わたしのこと、女として見てくれたのだから」 僕は、そんな彼女の言葉を耳にしながら、目をぱちくりとさせていた。 （確かに、僕は、この女と結婚する気持ちはないが、ともかく、この女とヤリたい、というのは本音なのだ） 僕が自問自答していると、 目の前の彼女が、急に、立ち上がった。 そして、上着を脱いだ。 「わたし、シャワーを浴びて来るわ」 「ああ」 僕は、動揺を隠しながら、そう言った。彼女はどうやら僕に抱かれてもいいような雰囲気なのだ。僕はありがたかった。こんなスケベェな男を相手にしてくれる彼女のことが…。 彼女に勧められるままに、僕もシャワーを浴びることにした。 ボディ・シャンプーを使い、体をきれいにする。 何と言うことだ。彼女を抱けるという期待感で、僕の股間のジュニアはすでに硬くなっていた…。 シャワールームを出て、元の部屋に戻ると、灯りが落とされていて薄暗く、 彼女は、すでに絨毯の上に布団を敷き、僕を待っている風だった。 彼女は、ブラジャーとパンティだけの姿だった。 僕も、トランクスだけになった。 そして、僕は、彼女の体に重なった。 彼女は、自分から進んで、僕の背中に手を回して来た。 僕は、そのことで、彼女もセックスをしたかったのでは、と思った。僕ひとりがエッチな気分ではなかったのだと思い、救われたような気持ちになった。 僕は、彼女に抱かせてもらっていると思った。 感謝しなくては、と思った。 それで、僕は、彼女の耳もとに口唇を寄せ、 「愛しているよ」 と言った。 彼女がほんの少し、身をよじらせた。 その彼女の動きで、僕は、彼女が僕の告白をきちんと受け止めているように思えた。 僕は、彼女の口に吸いつく。 すると、彼女も、その僕の情熱的なキッスに応えるように、僕のくちびるを思い切り吸っていた。 僕は、首の根っ子から乳房にくちびるを這わせる。 乳房を揉みながら、乳首を啜った。 乳首が硬くなる。 彼女は感じてくれているみたいだ。 おなかも、手でさわりながら、キスをする。 僕のくちびるが恥骨に達する。 そして、恥毛の中に指を入れ込む。 恥毛を掻き分け、クリトリスを捜す。 舌先でクリトリスの表皮を剥く。 「あっ！」 と言って、彼女が弓なりに反り返る。 彼女の両足を無理矢理広げさせる。 膣口に、くちびるを付けると、もう中は、愛液が洪水のように溢れていた。 「上に、上に来て」 彼女が僕の肩に手を掛け、僕を上へ引き上げようとしている。 僕は、ずり上がった。 彼女がもう、僕とひとつになりたいと思っていることを察したのだ。 ずりあがった僕は、彼女の顔を見つつ、訊いた。 「スキンをつけようか？」 「ナマのあなたが欲しいわ」 僕は、一瞬迷った。 しかし、一か八か、運を天に任せるしかなかった。 場合によっては、妊娠させるかもしれない。 でも、ナマで差し入れる誘惑には、もはや勝てなかった。 彼女の足首を押し上げ、膝を曲げて、Ｍ字型に開脚させる。 すると、彼女が僕のペニスの先を掴み、自ら膣の中に挿し入れた。 「ああ、いいわ」 彼の女が呻く。 僕も、この間のヤッた時よりも、膣の締め付け具合がきつく、中の蜜壷も熱く煮えたぎっていて、とても気持ちがよかった。 僕は、がんばることにした。 今、僕が彼女にできることと言ったら、セックスで気持ちよく、イカせてあげることしかなかったからだ。 三浅一深。 リズムをつけながら、「浅く」を三回、そして一回は、「深く」ペニスを挿し込んだ。 それを無我夢中で繰り返す。 すると、彼女は僕にしがみついてきた。 「あああ、イク、イクわ、いいの、いいの、いいわ」 彼女の体が痙攣する。 そして、彼女は、グーンとからだを反らしたあと、ぐったりと布団の中に自らの体を沈み込ませた。 僕は、休んだ、彼女のからだの上で。 もっとも、両肘を立て、彼女が重たくないように、と気を配った。 ５分くらいも経っただろうか。 彼女の呼吸が、落ち着いて来たように感じられた。 僕は、彼女に聞いた、 「もう一度、動いてもいいかな？」 と。 僕はまだ射精していなくて、ペニスは硬いままで、彼女の膣内にしっかりと納まっていたのだ。 僕は、ゆっくりと動いた。 （いち、にぃー、さん、しぃーーー。…… いち、にぃー、さん、しぃーーー。・・・・） 口の中で、声を出さないよう、数字を数える。しぃ（四）の時は、ゆっくりと彼女の股間の奥深くまで、腰を沈めた。 「ああ、また、また、また変になるわ…」 僕はあせらず、腰を使った。 「ああ、また、また、また、おかしくなるぅぅぅ…」 僕は、強いストロークで責め続けた。 「ああ、いいわ、いいわ、もっと、もっと、もっとよ」 僕のペニスが、彼女の膣の力で捻じ曲げられ、食いちぎられそうになる。 が、それでも、僕は、小刻みにでも動き続けていた。 （つづく） |
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| 2012.1.14掲載 |
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