| ２ ひょうたんから駒 僕は、彼女が自分とかなり年齢が近いということにショックを受けていた。 彼女、つまり僕の会社と同じビル内のＯＬで、ケータイのアドレスで見て知ったのだが、名前は野本美夏という。 僕は彼女の年は２３歳ぐらいと思っていたのに。実際は３２歳だった。 （美人は、若く見えるのかな？） 僕の年は４２歳。 彼女と親子ほどにも離れていれば、自然に一定の距離を置いて付き合えることもできたのに。 また、彼女が最近、彼氏と別れて寂しい思いをしているということを心が穏やかならざることになっていた。 女がこんな不安定な心境の時に誘惑すれば、ラブホであっても付いて来る可能性が高く、僕のスケベェ心を刺激したからだった。 セコンドピアット（２番目の皿）の料理が出された。 鯛のソテーだ。 オリーブオイルで焼き上げられた皮付きの白身の上に、アンチョビーがよく効かされたソースが掛けてある。 お店の人に、ロゼに近いくらいに明るい色をした赤ワインを勧められる。 その赤ワインの名前は、なんでも、「リヴィエラ・リグーレ・ディ・ポネンテ・ロッセーゼ」と言うらしい。 お店の人が僕たちのテーブルから離れて行き、僕たち二人だけの世界になると、僕は途端に、気まずい思いにさらされた。 （早くここを出て、ともかく、タクシーを拾い、彼女を送り出したいものだ） と、ケータイが鳴った。 僕は急いで、ポケットに手をやる。 が、僕のケータイからではないみたいだった。 僕が顔を上げると、彼女が席を立っていた。 ケータイを耳に当てて。 そして、席をはずして背を向け、遠くに行ってしまう…。 （まあ、しようがないか…） と僕は思う。 せっかくのメイン料理なのに。 たぶん、電話は、別れた彼氏からなんだろうと思う。 で、年甲斐もなく、ちょっと妬けて、赤ワインのグラスを傾ける。 「ごめんなさい、中座しちゃって」 彼女が戻っていた。 僕は、やはり、ホッとする。 「いやいや。でも緊急の用事じゃなかったよね」 「なに？」 「いやなに、君の会社から緊急のお呼び出しが、かかって来た、とか…」 「そんなこと、ないない、ないわよ。電話はモト彼からなの」 「ふーん…」 が、僕が見るところ、彼女はそんなに機嫌がわるそうではなかった。むしろ機嫌がよくなったような気がする。 （やはり、女の子は、別れた彼氏から未練の電話をもらうのは、まんざらきらいことでもなさそうだな？） むしろ、機嫌が悪くなったのは、僕の方だった。 デイト中に、しかも、メイン・ディッシュの時に、モトカレから電話なんだもの。 僕は、まるで、彼女、すなわち美夏の今カレのような気分になっているようなのだ。 「あなた、元カレの話、聞きたいの？」 彼女が、いたずらっぽく尋ねる。 「そんなもん、聞きたくなんかない」 と、僕は、はっきり言った。 店の人がやって来たので、僕は、ちょっと早い気はしたが、デザートを出してもらうように頼んだ。 「そんなに急がなくても…」 ふくれっ面をして、彼女が言った。 「だって、君、これから、モト彼と、お茶するんだろ？」 「まさか！」 「だって、君はまだ、モト彼のこと、好きなんだろ？」 僕は、理性のかけらもないような悪餓鬼みたいに、美夏を責めている。 「好きでも別れなくっちゃならないことって、あるのよね」 「ふーん」 僕はふて腐れていた。４０の坂を超した男がみっともない、と思いつつも。 僕は、ドルチェ（＝デザート）のジェラート（＝アイスクリーム）をスプーンで掬っては口に運んでいた。 「ねぇ、カラオケ、行かない？」 美夏もアイスクリームを食べていた。 「オレ、演歌しか歌えないから…」 僕はそっけなかった。 「いいじゃない、演歌で」 「そうかな？」 「それに個室でね、大きなソファが置いてあるの」 「ふーん」 「そのソファの上でエッチなこともできるのよ」 「そんなこと。風営法にひっかかるから…」 「当局側の検査の時はちゃんと廊下側の大きな窓を、開けるらしいの。でも、普通の時はブラインドをしっかり下ろしちゃっているから…」 僕は無口になった。 たぶん、エッチなことを想像しているのだ。 妻と離婚して７年が経つ。 自慰でしのいではいるが、生身の貝が欲しいことは欲しいのだ…。 美夏に引きずられるようにして、カラオケ・ルームへと向かう。 せっかく美夏お勧めのカラオケに来たのに。 美夏は、なかなか歌おうとしない。 自分が歌えば、最近の歌になり、古い歌しか知らない僕を、萎縮させることになるとでも思っているのか…。 が、僕は、居直り、カラオケで演歌を歌った。 氷〇きよしさんとか、ジ〇ロさんの持ち歌を。 というのも、美夏が言っていた、大きなソファが気になるからだった。 それは、本当に、簡易ベッドになりそうなほどにも長さと幅があったからだった…。 それを忘れるには歌うしかない…。 僕は、いつしか、ルームライトの灯りを落として、ブルース調の歌を歌い、美夏とチークダンスを踊っていた。 実際、部屋には、廊下側に大きな窓があるものの、そこにはしっかりと木の引戸がしてあり、廊下からは、この部屋の中は、決して見られないようになっていた。 僕はしつこい。 モト彼のことが気になるのだ。 「大丈夫なのか、本当に、彼氏に会いに行かなくてさ」 「大丈夫よ。もうカレとは終りよ」 僕は、途端に、ペニスが硬くなるのを感じ、腰を離した。しかし、彼女は僕の腰を引き戻した。 「いいのよ。硬いのが当たると、わたしも、気持ちよくなるもの」 「……」 「そういう過去のこともわかった上で、割り切って、わたしと付き合ってくれるといいけどな」 彼女の、そんな言葉に、僕は驚いて、体を離し、まじまじと彼女の顔を見た。目が潤んでいた。それに茶化している風にも見えなかった。 僕は、彼女を引き寄せた。 そして、くちびるを重ねた。 彼女は僕に抱きついて来た。そして、くちびるを開いた。僕は、そのくちびるを吸った。彼女が少し舌を突き出して来る。僕は、その舌を吸う。彼女は自分の舌先を僕の舌にからめて来た。とても上手だと思った。ひょっとしたら、彼氏とはもう、５，６年も付き合い、セックスも、かなりの数をこなして来たのかもしれない。 曲が終わり、僕たちはふたり並んでソファに腰掛けた。 奥行きが８０センチばかりもあり、背もたれが遠くに感じられる。 彼女が、僕の膝の上に手を置いた。 僕は、何も言わなかった。 ただ、このあいだ、たまたま電話に出たら、人事部の同期のやつで。彼は支社長に用事があったのだが…。 その同期の彼に、 『私生活でも、しゃんとしなくちゃ、本社には永久に帰れないぞ』 と言われたことを思い出していた。 「美夏、そんなことをしたら、俺はオオカミになるぞ」 僕は、乱暴に、そう言った。 いつも、いつも、他人の出張旅費の支払いと精算ばかり。自分が本社に行くことはない。それに外部から、商品に対するクレームの電話があると、すぐに総務課に回ってくる。僕は、自分自身の単調な生活が、いやで、いやで、たまらなかった。 「エッチなこと、してもいいよ」 彼女が、下から僕を覗き込んでいる。 「好きでもないのに、そんなこと、していいのか？」 「……」 僕の問いに、彼女は下を向いた。 実際、僕たちは、最近、最上階の喫煙室で知り合った仲でしかない。 彼女は、よく煙草にむせた。 煙草をにぎる手つきも決して慣れたものではなかった。 完全に、無理をして煙草を吸っている感じだった。 そこに、僕は同情していただけなのだ。 「オレさ、おまえに新しい彼氏ができるまでの、つなぎの彼氏になりたいけど、いいかな？」 「……」 彼女はちょっと顔を上げた。 少し、笑っているような感じだった。 僕は、ともかく、欲求不満だった。だから、彼女の返事を待つこともなく、彼女を抱き寄せ、キスをした。そして、キスをしながら、彼女の胸に手を置いた。彼女はいやがらなかった。それで、少し手に力を込めながら、乳房を揉んでみた。 「ああ…」 「どうした？」 「気持ちがいいわ」 「どうして？」 「久しぶりなの、こうして、自分以外の手で、揉んでもらうの」 彼女は甘えるように言った。 彼女の率直さに、僕は、愛おしさを感じた。 「吸ってもいいか？」 「ええ、好きにしてくれていいよ。実は、彼氏と別れてから、毎晩、一人でいじくっていたから…」 僕は、ブラウスを脱がし、ブラをはずした。 そして、彼女をソファの上に寝かせつけた。 乳房の裾野に僕は、舌を這わせた。 そして、手で乳房を、やわやわと揉みながら、やがて尖って来た乳首を吸った。 「ああ、あああ…」 彼女があえぎ声を漏らす。その喘ぎ声が僕のペニスに、久しぶりに芯のある硬さをもたらした。 と、誰かの手が股間に伸びている。 が、すぐに彼女の手だと悟った。 「硬くなっているわ」 「ああ、そうだな」 「もっと硬くしたいわ」 「そんなに硬くなったら、どうしていいか、わからなくなるぞ」 「いいの、いいの。今は、わたしは安全日だから」 情けないことに、安全日と聞いて、僕のペニスはグーンと頭をもたげた。 が、ヤレるとわかって、急に、僕は起こした半身をフリーズさせてもいたのだ。 と、彼女が急に半身を起こした。 見ると、彼女の手が僕のズボンのジッパーに伸びていた。 僕は、驚きながら、ポカーンと、彼女の手さばきを見ていた。 少なくとも、僕の別れた妻にはない積極的な姿勢だった。 ズボンを引き下げられ、そして、トランクスすら引き下げられた。 ピローンと僕のペニスが飛び出た。 「うれしいわ、こんなに元気になってくれていて…」 彼女は、そんなことを言いながら、背中を曲げ、頭を下げて、顔を僕の股間へと向かわせている。 「止めろよ、きたない」 僕は、彼女の頭に手をやって止めようとした。 しかし、すでに彼女は、パックリと僕のペニスを口に咥えていた。 ヌルッとした彼女の舌が感じられる。 止めさせようとするのだが、彼女の頭は、僕の股間のところから、てこでも動かない。 彼女は、ペニスの幹の部分をつまみながら、ペニスの先端部の割れ目、鈴口の辺りを舌でペロペロと舐めている。 くすぐったいが、気持ちがいい。 僕は、目をつむってしまう。 そして、鰓の張ったところに彼女のくちびるが当たる。 すごく気持ちがよくて、目をしっかりと閉じなくてはならない。 が、幸いにも、赤ワインを飲んで酔っているせいか、射精はまだ我慢できそうだ。 そして、鰓の下の括れたところに、舌が這わせられたのに気がつく。 「うっ、ううぅぅ」 僕は呻く。しかし、よほど気持ちがいいのか、目に涙がにじむのだ。 元カレに仕込まれたのだろうか？。 それにしても、こんなことをしてまで元カレに尽くしていた彼女が、僕は愛おしくなった。 「ねぇ、僕だけ気持ちよくなってもなんだから、お互いに舐め合いをしてみない？」 「そんな。あなた、いいの？」 「ああ、いいよ。美夏のクリトリス、僕の舌で硬くしてみたいし…」 「もう、硬くなっているよ、わたしのあそこ…」 不思議なことに、彼女は自らスカートをズリ下げている。 「えっ、本当に？」 僕は、中指を自分の口の中に突っ込み、しっかりと唾液で濡らした。その濡れた中指を彼女のパンティの中に差し込んだ。繁みを分け入り、中指をさらに降ろしてクリットを探す。 「あった！」 僕は叫んだ。確かに硬くなっていた。 そして、彼女のものは、妻のものより、ずっと大きくて、硬かった…。 （つづく） |
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| 2011.9.19掲載 |
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