携帯マル秘人妻サイト

26．

　杏子から『携帯マル秘人妻サイト』の説明と誘いを受けた美也子は、思ってもみなかった刺激的な内容に即答できなかった。

『登録メンバーは誰一人として、決していかがわしいことをしているつもりはないの。日常に変化をつけたり夫婦間が上手く維持できるようにするとか、皆、真面目な気持ちで参加してるのよ。正当化していつ訳じゃないの。だからこそメンバー制にして規約を遵守し、一定人数以上は増やさないことにしてる・・・・・・・・』

　杏子の真摯な姿勢に美也子はその趣旨を信じることにした。
（でも・・・・セックスが目的というのが・・・・）
　興味を感じないわけではなかった。

　美也子は現在28歳、子どもは居なかった。
　夫はごく普通のサラリーマンで最初から共働きの予定だった。
　夫との間に特別不和になるようなこともなく、今日まで大きな問題も無かった。
　否、一点だけ夫に正直に言っていないことがあった。
　それは結婚して３年ほど過ぎた今日まで、セックスによる快感を感じたことがなかったのだ。

（わたしが不感症なのかも知れない・・・・）
　そんな不安もあり、夫には伝えることが出来なかったのだ。

（毎晩のように夫を求めるわけにはいかないし・・・・そうだわ！杏子さんの誘いに応じていろんな人と・・・・そう、セックス経験を重ねれば感じるように？そうなれば夫も喜ぶし、勿論、わたしも・・・・そうよ！夫の為、夫婦円満の為に・・・・）

　美也子は結婚するまで処女で、全くセックスの経験が無かったのだ。
　細身でプロポーションに自信の無かった美也子は、男に好まれるわけがないと思い、興味を持つことも無かった。
　だが結婚してセックスを経験し、他の人妻たちの話しを聞いているうちに、やはり快感というものを体感してみたいと思うようになった。
　夫とのセックスの時には懸命に感じようとするのだが、人が言う絶頂感などとは、ほど遠いものに思えた。
　夫の為、夫婦円満の為と大義名分を掲げたが、美也子の本心としては、とにかく感じたかったのだ。

　身長155cm、スリーサイズは79・56・80と全てが小振りだった。
　顔は鼻筋が通り、目はスッキリとし、口は小さめで、どちらかと言えば美形だった。
（でも参加条件の相手の男性がいない・・・・）
　相手をしてくれそうな男性に全く心当たりが無く、美也子は諦めかけていた。

　そんなある日の夜、開発企画室でひとり残業をしていた。
「やぁ、美也ちゃん、遅くまで悪いなぁ～これじゃ、ご主人に叱られちゃうかな？」
「あっ、稲垣主任、エッ、主人ですかぁ？今日は残業で遅くなるので、夕食は外で済ませてと連絡しました」
　美也子は椅子から立ち上がり上司である稲垣に答えた。

「そう、理解のあるご主人で良かった」
　稲垣は美也子の直属の上司で30歳、独身の出世株だった。
　仕事は出来て性格も明るいので、上からも下からも受けが良かった。

　無論、美也子も稲垣には尊敬の念を抱いていた。
「それより、新しい携帯の仕様なんですが・・・・チョッと見ていただけますか？」
　美也子は立ったまま少し前屈みになり、ＰＣの操作を始めた。
「ゥアッ！・・・・・・・・」
　美也子は驚きの声を上げ、そのまま声を詰まらせた。

「いつも思っていたけど、美也ちゃんのお尻って魅力的だよね」
　前屈みになって突き出す形になっていた美也子のお尻を、稲垣が愛しそうに擦っていた。

「しゅ、主任！何をしてるんですか！？」
　美也子が振り向いて稲垣を睨みつけて言った。
「そ、そんな顔をしないでくれよ。せっかくの美人が台無しだよ！そのまま説明しててくれるかな？その間だけでもいいんだ・・・・ずっと思っていたんだ。美也ちゃんのお尻は魅力的だって・・・・だから、頼むよ！」
　そう懇願する稲垣の顔は日頃の精悍とした雰囲気ではなく、ある種、懸命な様相に美也子の目には映った。
（稲垣主任・・・・そうだわ！それなら、いっそのこと、アレを頼もうかな？）
　美也子は偶発的な稲垣の行為を受け入れ、サイト参加条件であるセックスの相手を稲垣に頼もうと思った。

　美也子は優しい微笑を浮かべ、再度、稲垣の方に向き直した。
「じゃぁ、主任・・・・わたしの方もお願いがあるのですが・・・・」
「いいよ！美也ちゃんのお尻に触れるのなら、何でも言ってくれ」
「じゃあ、チョッと説明しづらいのですが・・・・・・・・」
　美也子は自分がまだ絶頂を感じたことが無いということは伏せ、『携帯マル秘人妻サイト』のことを稲垣に説明した。

「エッ！危ないサイトじゃなくて、そんな安全なサイトがあるのか・・・・それで、美也ちゃんも参加しようと思っているわけ？」
「えぇ、最初そんな気は無かったんですが、わたしたち夫婦も共に忙しくて、あまり夜の方は・・・・別に夫婦関係を壊す気持ちは全く無いし、いい気分転換になって夫婦生活にもプラスかと」
「う～ん・・・・僕はまだ独身だから、何とも言えないけど・・・・美也ちゃんがそう割り切れるのなら、僕も喜んで協力するよ」
「ありがとうございます。主任なら他の人妻の女性たちも喜ぶわ！」
「エッ、そうかな～？」
「えぇ、わたしが保証するわ！でもセックスの方は今から経験しないと分からないけど・・・・」
　そう言うと、美也子は黙ってＰＣの操作を始め出した。

　稲垣は開発企画室のドアのロックを確かめて戻り、美也子の突き出されたお尻を擦り始めた。

（わたしのお尻が魅力的だなんて・・・・意外だわ！稲垣主任に求められるなんて、何だか嬉しいわ・・・・あうっ、スカートの上からなのに・・・・か、感じる！）
　美也子は突然で思ってもみなかった稲垣の求めと、こういう形での淫猥な行為に、異常な興奮を覚えていた・・・・。

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2008.12.6掲載

［27話］／［25話］

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