携帯マル秘人妻サイト

57.

　杏子は稀美恵のサイト参加を大喜びしていた。
「沙希さん、どんな感じ？」
「縁者としては何とも・・・・でも登録男性にとっては大歓迎じゃない！」
「ホントにそうね。これからの評判が楽しみだわ！」
　杏子は稀美恵の遠縁の沙希に稀美恵のサイト参加を伝え、次の登録者候補の話しをした。

　杏子が次に誘ったのは、柿島碧、31歳だった。
『碧さんのご主人、海外に出張して半年になるのよ！何でもないようにしてるけど、多分・・・・だって、男が放っておけないような雰囲気のある女性じゃない？』
『そうね・・・・それでご主人の出張は？』
『まだ１年以上は現地に居るらしいの。出張先がヨーロッパなので、なかなか戻ってこれないらしくて・・・・』
『お子さんは？』
『小学生の女の子がひとり・・・・もう、あまり手も掛からないし』
　杏子の友人からの紹介だった。

　事実、最近の碧は不安定な精神状態にあった。
　子どもを学校に送り出し家事を片付けると、心の中にポカンと空洞ができたような日々が続いていた。

「どうかしら？」
　杏子は碧に『携帯マル秘人妻サイト』への登録参加を促した。

「エッ！えぇ・・・・」
　碧にとっては空洞感を満たす絶好の機会に思われた。
（確かにいいチャンスだけど・・・・）
　サイトに参加した後の自分のことを想像した碧は、不安になった。
「どうかしたんですか？」
「えぇ・・・・主人が出張から戻ったら、わたし大丈夫かと？」
「ご主人、戻られても忙しいんじゃ？碧さん、ご主人に満足すれば心配はないと思いますが、そうじゃなければ不満が暴発する可能性も？」
「そうね・・・・」
「ご主人と離婚を考えているのなら問題はないと思いますが、そうでなければ、円満な生活を維持する為にも・・・・」
「えぇ・・・・」
　確かに杏子の言うとおりだと思った。

　碧のセックス経験は普通だったが、なかなか絶頂感が得られなかった。
　そんな碧が初めてオルガを感じたのは、夫が長期出張する２週間前のことだった。
（毎日でもイキたい！）
　やっとセックスの悦びを得た碧は、夫に出張のことを告げられ愕然とした。

　碧の空洞感の原因がセックスにあることは明確だった。
　身長159cm、スリーサイズは86・58・87、際立った美人ではなかったが、どこか気になる瞳、何気なく見ても、もう一度見らずにはいられない、そんな気にさせる不思議な魅力を持ったオンナだった。
　さらに碧の魅力を大きくしていたのが口唇だった。
　大きくはないのだが、プルッとした艶やかな口唇は、オトコに淫らな欲望を駆り立てるような妖しさがあった。

　そんな熟し始めたオンナの身体を、碧は持て余していた。
　夫が出張してからの１ヶ月間は毎晩のように自分で慰めていたが、どうしても絶頂には達しなかった。
（初体験から10年も経ってやっと悦びを感じたのに・・・・）
　２ヶ月、３ヶ月・・・・碧は自分ではどうにもならず、諦めるしかなかった。
　そして渇いた欲望は空洞となり、６ヶ月が過ぎたのだった。

　そんな時に杏子からサイトへの誘いがあったのだ。
（満たされたいけど・・・・わたし夢中になりそうで、自分が怖いわ・・・・）
　碧は自分の中の淫欲を抑え切る自信が無く、サイト参加を即断できなかった。

　杏子と会う３日前、以前に勤めていた会社の紹介でＨＰ作成のアルバイトの話しがあった。
『ネットで原稿を送るので、デザインをお願いしたい・・・・』
　デザイン・構成が出来た段階でメールで送り返せば、クライアントには会わずに自宅で全てが完結出来るということだった。
（鬱々してても・・・・）
　碧は空洞感が少しでも埋めればいいと思い、アルバイトを引き受けた。
　依頼のＨＰは新しい商品をＰＲするためのWebサイトだった。
　碧は家事を終えると、ＨＰ作りに没頭した。
　商品が実用的であることをＰＲするトップページを構成し、モニター募集というアイデアを加え、チェックボックスで応募者のニーズを収集できるようにした。
『将来、ネット販売も考えてデザイン・構成してみました』
　クライアントの反応は最高の評価を碧に返してきた。
『収集したデータを分析してネット上に反映させる・・・・』
　碧の企画力にも期待をしたクライアントは、碧と直接会って今後の運営を相談したいと言ってきたのだ。
『それは、そちらで上手くやってもらえませんか？わたしはあくまでＨＰ作成のバイトですので・・・・』
　無理のない程度に気分転換したかった碧は、バイト仲介の営業担当に回答した。

　杏子と会って２週間後・・・・、碧は次のＨＰのデザインを作成していた。

　ピンポ～ン！
「はぁ～い！」
　２階の自分の部屋でＰＣに向かっていた碧は、玄関のチャイムの音に慌てて階段を降りて行った。

「初めまして、僕は半月ほど前にＨＰ作成を依頼しましたもので・・・・」
　ドアを開けると、見知らぬ男が名刺を差し出して挨拶をしてきた。
「エッ！あ、あのぉ～」
「すみません！＊＊会社の営業さんに無理を言いまして、どうしてもあなたとサイト運営の話しをしたいと・・・・」
　碧は困った顔をした。
（××さん、絶対に自宅は教えないって・・・・もぉ～どうするの！）

　男は仁村祐、35歳、父親から相続した小さな会社の経営者だった。
「ご迷惑なのは百も承知で、お話しだけでもお願いします！」

　額に汗して懸命に頼む仁村に、碧は根負けして家の中に入れた・・・・。

あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。

2009.3.4掲載

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秋水さんの他作品（2009.2/2現在）
『淫香』	『淫蜜』	『サブリミナル』
『サイコ・・・千年王国』	『ＳＥＸ仕置人　ミカ』	『劇団ＩＮ＝イン』
『青春放浪記』	『淫界大迷宮』	『雨宿り・・・』
『実践結婚相談所』	『プロフェッショナルのオンナたち』	『萠・・・その性』
『性春浪人』	『市役所の人妻たち』	『平成の団地模様part1』
『ベビーシッター亜季』	『主婦の中に潜むオンナ・・・』	『性少女・・・Ａ』
『引越しサービス』	『犯す！』	『平成の団地模様part2』
『恵子・・・不惑の時』	『撮られた女』	『哀しくも悦びの・・・性（さが）』
『強姦日記』	『続平成団地模様』	『異次元ＰＯＳＴ』
『妄想と現実の狭間で』	『遠い日の記憶』