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80.

　荷物の整理をした沙織は１階に降りていった。
「あら！」
「やぁ、荷物は片付いたかい？」
「え、えぇ、それよりこれは？」
　沙織はテーブルの上に並んだ料理を見て驚いた。
「口に合うかどうか分からないが・・・・」
「お義父さんが作ったんですか？」
「あぁ、女房が死んでからだが、いろいろ勉強したよ」
「す、すみません」
　沙織は意外な昭一郎の好意に驚くと同時に、申し訳ないと思った。
（そうか・・・・お義母さんが亡くなってからは、お義父さん自分で・・・・そうよね。独りになって大変だったのよね・・・・）
　沙織は昭一郎への認識が変わる思いがした。

　食事が済むと、昭一郎はコーヒーを淹れて持って来た。
「お義父さん、これからはわたしも」
「じゃあ、交替でやろうか？３ヵ月後には、また自分でしないとならなくなるから、何もかも沙織さんにしてもらうと、後が大変だからね」
「アッ、そう、そうですね」
　沙織はコーヒーを飲みながら頷いていた。

「今日、明日は僕も休みだから、沙織さんもゆっくりしてればいい。主婦は大変だから、たまには骨休めしないとね！」
「え、はい・・・・でも、それじゃ、お義父さんが・・・・」
「イヤ、女房に先立たれ、初めて有り難味を感じてね・・・・まぁ、その時には手遅れだったけどね。ァハハハハ～～」
　沙織は昭一郎を見る目が徐々に変わってきた。

　沙織は何となく満たされた気分になっていた。
「そう言えば、沙織さんは何かスポーツをしているのかな？」
「エッ、えぇ、まぁ、でもどうして？」
「こうして見ると、主婦とか人妻という感じじゃなく、全体的に引き締まってエネルギッシュな雰囲気だから」
「そうですか？今はウォーキングとダンスエクササイズぐらいで、高校生の時は新体操をしてましたが・・・・」
「それで、そんなにプロポーションがいいんだね」
「エッ、そんなことありませんよ。お義父さんの方こそ、若々しくて年齢を感じさせませんわ！」
「イヤ、若い時のようには・・・・そうだ！少し休んだら、ウォーキングに行かないか？自然の中を歩くのは気持ちのいいもんだよ」
「そうですね！オゾンもいっぱい吸えそうですね。お義父さんはいつも？」
「あぁ、時間があるとスケッチを兼ねて散策するんだ」
「スケッチ？」
「あぁ、水墨画と水彩を趣味程度にやってるのでね」
「えぇ～っ、本当ですか？是非、見させてください」
「人に見せるほどのものは描いてないのだが・・・・じゃあ、僕の部屋で」
　そう言うと昭一郎は沙織を連れ、奥の自分の部屋に案内した。

　部屋は窓以外の壁は書籍と自分の描いた絵で占められていた。
「うわぁ～本と絵の世界だわ」
　机と椅子、ベッドに低いテーブル、机の上にはノートＰＣがあった。

「スケッチブックに写生して来るので・・・・」
　昭一郎は何冊ものスケッチブックを沙織に見せた。

「お義父さん、パソコンもなさるんですか？」
「あぁ、仕事上、一通りはね。インターネットは仕事にも趣味にも役立つから」
　沙織は次第に昭一郎に親近感を感じていた。
「絵は勉強なさっていたんですか？」
　沙織はスケッチと壁の完成した絵を見ながら昭一郎に聞いた。

「学生の時にサークル程度にね。今は墨を使って全体を描き、墨の濃淡だけじゃなく水彩を加えてるんだ」
「うぅ～ん、詳しいことは分かりませんが、わたしは好きです」
「それは嬉しいなぁ～沙織さんのような女性にそう言ってもらうと」
「わたしも描いてみたいなぁ～」
「それじゃ、一緒にスケッチして、帰ってから仕上げようか？」
「えぇ」
　ふたりは意気投合といった感じで、ウォーキング＆スケッチに出掛けた。

　ふたりは川の堤を歩き、川と樹木の風景をスケッチした。
　沙織は身体にフィットしたジーンズに黒のハイネック、それにポンチョのようなものを頭から通して着けていた。
　昭一郎もジーンズにＴシャツ、その上にカラーシャツをラフに着けていた。

「やっぱりお義父さんは若いですね！とても役所の課長さんには見えませんね」
「ハハハ～～それは困ったなぁ、役人としては失格かな？」
「いえいえ、そういうことじゃなくて、そのぉ～」
「イヤイヤ、冗談だよ。誉め言葉だと思って聞いているよ。沙織さんは、華奢な感じだと思っていたから、僕の方こそ、本当に素敵な雰囲気に驚いているよ！」
「えぇ～っ、昭二さんからは誉められたことなんて一度もありませんよ」
「え、そうか？昭二は沙織さんのどこを見ているんだろうな」
　ふたりは楽しい時間を過ごし、帰宅した。

　家に着いたふたりは手や顔を洗った後、昭一郎の部屋に入った。
「もう夕方になるから、夕飯の支度をしないと・・・・」
「エッ、でも、絵を・・・・」
「それじゃ、基本的な段取りだけしてあげるから、後は僕が夕飯の支度をしている間、好きなように仕上げてみたらどうかな？」
「エッ、本当にいいんですか？」
「ハハハ、昼間言ったように、これは僕の為でもあるんだから」

　昭一郎は墨と水彩の支度を始めた。
「・・・・・・・・・・といった具合に筆だけじゃなく何を使っても・・・・墨の濃淡の色は無限に感じる世界だが、水彩には水彩の良さが・・・・」
　昭一郎は自分がスケッチした絵を基に沙織に手順を教えた。

　沙織は真剣な表情で聞き、恐る恐る筆を手に描き始めた・・・・。
　

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2009.5.27掲載

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秋水さんの他作品（2009.4/4現在）
『淫香』	『淫蜜』	『サブリミナル』
『サイコ・・・千年王国』	『ＳＥＸ仕置人　ミカ』	『劇団ＩＮ＝イン』
『青春放浪記』	『淫界大迷宮』	『雨宿り・・・』
『実践結婚相談所』	『プロフェッショナルのオンナたち』	『萠・・・その性』
『性春浪人』	『市役所の人妻たち』	『平成の団地模様part1』
『ベビーシッター亜季』	『主婦の中に潜むオンナ・・・』	『性少女・・・Ａ』
『引越しサービス』	『犯す！』	『平成の団地模様part2』
『恵子・・・不惑の時』	『撮られた女』	『哀しくも悦びの・・・性（さが）』
『強姦日記』	『続平成団地模様』	『異次元ＰＯＳＴ』
『妄想と現実の狭間で』	『遠い日の記憶』	『ＳＥＸ仕置き人チェリー』