136. 浜村は両親と妻、子どもと6人で暮らしていた。 8年前、突然インポになり、それ以降はセックスレスだった。 そんな浜村が遥と医療センターで善後策を打合せした時、長く感じなかった淫欲を遥に感じたのだ。 (あの薄く小さな口唇、あどけない大きな瞳、申し訳なさそうにオドオドと話す口調と声、キュッと盛り上がったお尻・・・・久し振りだなぁ〜こんな気持ちになったのは。何とか一度だけでも遥さんと・・・・) そう思った浜村だった。 慌しい日々が続いていた。 浜村の母親だけでなく若葉会の入所者10人の対応は、多忙を極めていた。 何かと責任を問われる立場の遥は、精神的に疲弊していた。 遥は基本的には土日休みだったが、夫に心労を言っても理解されず、気分転換にはならなかった。 週明けの月曜日は土日の報告を聞いての対応に追われた。 『・・・・ベッドから移動したことが分かるパッドを、購入していただきたいのですが・・・・』 浜村の携帯に遥から連絡が入った。 その夕方、遥が事務整理をして帰ろうとした時、施設の事務所に浜村が来た。 「お電話いただいた件で」 「あぁ、どうも、こちらへ。少しお待ちください」 遥は事務所の応接室に浜村を通した。 17時30分、施設には介護ヘルパーが3名居たが、事務所の責任者と事務の女性は、遥に挨拶して帰っていった。 (まだ片付けなきゃいけない仕事が・・・・) 遥は憂鬱な気分だった。 「お待たせしました。コレが電話でお話しした物です」 遥は浜村に挨拶をしパンフレットを渡した。 「佐原さんにお任せします」 「エッ!宜しいんですか?費用も掛かりますが」 「佐原さんが必要だと仰るのですから、そのように」 「分かりました。こちらも助かります」 遥はホッとした様子で安堵の色を見せた。 「大変みたいですね」 「いえ、浜村さんは結構、頑張って・・・・」 「そうじゃなくて、佐原さんのことですよ」 「エッ、わたしの?」 遥は浜村の言葉に驚いた顔をした。 「ケアマネージャーのお仕事は大変だと聞いてます」 「いえ、皆さんのお仕事も大変で」 遥は少し焦ったように口調を乱して答えた。 (そうそう、この口調、声が堪らない。一番堪らないのは、その話す時の薄い口唇) 浜村は遥の顔を愛しく感じながら見ていた。 (浜村さんて、いつも感じの良い人・・・・) 遥も浜村の応対を快く感じていた。 「ところで、佐原さん、妙なことを聞くようですが、佐原さんの口唇、魅力的だと皆さんに言われるでしょ?」 「エッ!わたしの口唇、ですか?」 遥はオドオドした感じで自分の口唇を触った。 「特にお話しされてる時の口唇は本当に魅力的で」 「そ、そんなこと、初めて」 「エッ、そうですか?不思議だなぁ〜まぁ、大きな瞳もチャーミングだからかなぁ?」 「そんな・・・・」 「それそれ、その仕草も、いいです」 遥は浜村への応えに困惑した。 その間に浜村は立ち上がって遥の背後に居た。 「佐原さんには、ズッとご迷惑ばかりお掛けして、そのお詫びと言ったら何ですが、肩凝ってませんか?」 「エッ!えぇ、まぁ」 「神経を酷使するから、肩や首など凝りますよね?もし、宜しければ、僕が肩を・・・・」 そう言いながら、浜村は遥の肩に指を置いた。 「いえ、そんなこと」 「遠慮なさらないで、ほら、こんなに凝ってる。ここ痛くないですか?痛かったら言ってください」 浜村は遥の細い肩を軽く圧した。 「ぅぅっ」 「やっぱり痛いですか?じゃぁ、解れるまで擦りましょう」 遥の答えを聞く前に、浜村は遥の凝った肩を擦り始めた。 遥は浜村のマッサージを拒絶しようと思ったが、その心地良さにジッとしていた。 (あぁ、気持ちがいい・・・・浜村さん、上手だわ。それにわたしの口唇が魅力的だなんて・・・・) 遥は久し振りに煩わしい日常を忘れていた。 無言のまま時間が過ぎていた。 施設の中にはふたりだけではないのだが、この時はヘルパーの声を掛からなかった。 「どうですか、少し解れたみたいですが?」 「エッ、あっ、す、スミマセン!すっかり」 「いいんですよ。僕がこうしたくてしてるんですから。もう少し、このまま続けましょう。少し力を入れますよ」 浜村は慌てる遥を制し、指圧をし始めた。 (あぁぁ、いつの間にか浜村さんの厚意に甘えて・・・・) 遥はもう少し浜村に甘えていたいと思った。 浜村は遥の細い肩を優しく指圧し、首筋も揉み解した。 「少し痛いかもしれませんが、ここも」 浜村は遥の肩甲骨の周囲と腕寄りの箇所を圧し擦った。 「ぁぅっ・・・・」 遥が小さく呻き、痛さを伝えた。 「やっぱり・・・・少し我慢すれば痛さも快感に変わるから」 遥は浜村の言うとおりにした。 (痛さも快感に・・・・イヤだわ、わたしったら変なことを) 遥は浜村の言葉からセックスを連想し高揚した・・・・。 |
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2009.11.16掲載 |
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